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【発明の名称】 混合静脈血酸素飽和度測定装置
【発明者】 【氏名】林 克巳

【要約】 【課題】混合静脈血酸素飽和度を、非侵襲で簡単に測定する。

【解決手段】oxyHbならびにdeoxyHbに吸収される、互いに異なる複数の波長成分からなる測定光L1、L2を、送光プローブ102aにより経皮的に肺動脈3へ送り込み、該肺動脈3を経て減光した測定光L1、L2を受光プローブ102bで受光する。そして演算手段110により、測定光L1、L2の肺動脈脈波による減光度変化を検出し、前記各波長成分ごとの減光度変化に基づいて肺動脈血の酸素飽和度を演算する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 oxyHbならびにdeoxyHbに吸収される、互いに異なる複数の波長成分からなる測定光を発する光源手段と、生体の混合静脈血が流れる肺動脈近傍に配されて、前記測定光を経皮的に肺動脈へ送り込む送光プローブと、前記肺動脈を経て減光した前記測定光を受光する受光プローブと、この受光プローブが受光した測定光の、肺動脈脈波による減光度変化を検出する減光度変化検出手段と、この手段が検出した前記各波長成分ごとの減光度変化に基づいて混合静脈血の酸素飽和度を求める演算手段とからなる混合静脈血酸素飽和度測定装置。
【請求項2】 前記演算手段が、前記波長成分の数をnとしたとき、n元連立Lambert-Beer方程式を解いて前記混合静脈血のoxyHb濃度ならびにdeoxyHb濃度を求め、これらの濃度に基づいて酸素飽和度を求めるものであることを特徴とする請求項1記載の混合静脈血酸素飽和度測定装置。
【請求項3】 前記演算手段が、予め形成された前記波長成分の各々ごとの減光度変化の比と酸素飽和度との回帰曲線を記憶しておき、この回帰曲線に基づいて、前記減光度変化から酸素飽和度を求めるものであることを特徴とする請求項1記載の混合静脈血酸素飽和度測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、混合静脈血酸素需給バランスを示す混合静脈血の酸素飽和度を、非侵襲で測定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】臨床において、酸素飽和度測定の意義は極めて大きい。これは、生命活動維持のために酸素が最重要な物質であり、各組織への酸素供給ならびに各組織の酸素消費を示す酸素飽和度の測定が、生命活動維持の直接的モニタを意味するからである。
【0003】酸素飽和度は、動脈血系の酸素飽和度と静脈血系の酸素飽和度とに分けられる。動脈血系の酸素飽和度は、各臓器が生命活動を維持するのに十分な酸素を供給できているか否かを示す指標であり、その測定についてはパルスオキシメータと呼ばれる機器によって非侵襲測定が実現されている。
【0004】一方、静脈血系の酸素飽和度は酸素需給バランスを示す指標として位置付けられるものであり、その測定により、循環異常で組織に十分な酸素が供給されていないことや、臓器代謝が異常になったことを知ることができる。
【0005】ところで、全身の静脈血は右心房に集まり、肺動脈を経て肺へ送られる。したがって、肺動脈を流れる混合静脈血の酸素飽和度(SvO2)を測ることで、全身的な酸素需給バランスを知ることができる。混合静脈血酸素飽和度SvO2は、全身的な酸素需給バランスを知る良い指標とされており、連続的にトレンドとして見ることができるので、心臓手術を含め重症患者のモニターに頻用されている。
【0006】従来は、オキシメータ付きSwan-Ganz カテーテルを右心カテーテルの手法で肺動脈まで刺し入れて、混合静脈血酸素飽和度SvO2を侵襲的に測定することがなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのオキシメータ付きSwan-Ganz カテーテルオキシメータは、侵襲的処置が求められることから、技術的に高度な知識とテクニックが必要であり、汎用するのは困難となっている。
【0008】本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、混合静脈血酸素需給バランスを反映する混合静脈血血酸素飽和度SvO2を、非侵襲で簡単に測定できる装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による混合静脈血酸素飽和度測定装置は、肺動脈に測定光を照射し、肺動脈血によるこの測定光の減光度を経皮的に捉えることにより、混合静脈血酸素飽和度SvO2を光学的に測定するように構成されたものである。
【0010】すなわち本発明による混合静脈血酸素飽和度測定装置は、具体的には、oxyHbならびにdeoxyHbに吸収される、互いに異なる複数の波長成分からなる測定光を発する光源手段と、生体の混合静脈血が流れる肺動脈近傍に配されて、前記測定光を経皮的に肺動脈へ送り込む送光プローブと、肺動脈を経て減光した前記測定光を受光する受光プローブと、この受光プローブが受光した測定光の、肺動脈脈波による減光度変化を検出する減光度変化検出手段と、この手段が検出した前記各波長成分ごとの減光度変化に基づいて混合静脈血の酸素飽和度を求める演算手段とから構成されたものである。
【0011】なお上述の演算手段は、例えば、前記波長成分の数をnとしたとき、n元連立Lambert-Beer方程式を解いて混合静脈血のoxyHb濃度ならびにdeoxyHb濃度を求め、これらの濃度に基づいて酸素飽和度を求めるように構成することができる。
【0012】さらにこの演算手段は、予め形成された前記波長成分の各々ごとの減光度変化の比と酸素飽和度との回帰曲線を記憶しておき、この回帰曲線に基づいて、前記減光度変化から酸素飽和度を求めるように構成することもできる。
【0013】
【発明の効果】まず、上記構成の装置による混合静脈血酸素飽和度測定の基本的な仕組みについて説明する。
【0014】図2に示すように、気管支2の分岐点は肺動脈3と隣接している。そこで、例えば気管支カテーテル101で気管支分岐点まで侵入することにより、気管壁を介して肺動脈血の酸素飽和度を光学的に測定することができる。
【0015】この測定は具体的に、1対の送光プローブと受光プローブとの間の肺動脈血による減光度を、経皮的に測定することにより行なう。
【0016】肺動脈には右心室の内圧変化が伝搬され、肺動脈は脈動を有している(図3参照)。そこで、肺動脈が収縮した時の減光度と、肺動脈が拡張した時の減光度との差を取り、肺動脈血に起因する減光度変化のみを抽出することにより、肺動脈血つまり混合静脈血の酸素飽和度を測定することができる。
【0017】減光度の測定は、図4に示すようなoxyHbとdeoxyHbの吸光帯にある最低限2波長(例えば、700nm近辺の波長λ1と、900nm近辺の波長λ2)の測定光を用いて行ない、各波長での減光度変化から肺動脈血の酸素飽和度を演算する。ここで、血中Hbの内、主要HbはoxyHbとdeoxyHbであるので、他のHbは無視している。
【0018】以上説明した通り、本発明による混合静脈血酸素飽和度測定装置は、混合静脈血酸素飽和度を光学的に測定するものであるから、本装置によれば、特に高度な知識やテクニックを用いなくても、混合静脈血酸素飽和度を非侵襲で簡単に測定可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】<第1実施形態>図1は、本発明の第1実施形態による混合静脈血酸素飽和度測定装置を示すものである。この図1において、1は被検者、2は気管支、3は肺動脈、4は心臓を示す。前述の図2は、上記気管支2の部分を拡大図示したものである。
【0020】本装置100は、気管支カテーテル101と、送光プローブ102aと、受光プローブ102bと、送光ファイバ103aと、受光ファイバ103bと、集光レンズ104a、104bと、ダイクロイックミラー105a、105dと、ミラー105b、105cと、ディテクタ(光検出器)106a、106bと、光源107a、107bと、AD変換器108a、108bと、光源ドライバ109a、109bと、演算手段110と、コントローラ111と、ディスプレイ112とから構成されている。
【0021】送光プローブ102aと受光プローブ102bは気管支カテーテル101に組み込まれて、気管支分岐点へ押し当てられる。
【0022】光源107aとしては、例えば波長λ1=690nmの測定光L1を発するLDもしくはLED光源が用いられる。光源107bとしては、例えば波長λ2=890nmの測定光L2を発するLDもしくはLED光源が用いられる。
【0023】これらの光源107a、107bは、コントローラ111からの信号に基づいて、それぞれ光源ドライバ109a、109bによって同時に駆動される。一方の光源107aから射出された測定光L1は、ミラー105cおよびダイクロイックミラー105dで反射し、集光レンズ104bで集光されて送光ファイバ103aへ入力される。別の光源107bから射出された測定光L2はダイクロイックミラー105dを透過し、集光レンズ104bで集光されて送光ファイバ103aへ入力される。
【0024】送光ファイバ103aを経て送光プローブ102aから測定部位に照射された測定光L1の一部は気管支壁を透過して、肺動脈3へ達する。肺動脈3に達した光束の反射光は受光プローブ102bに拾われ、受光ファイバ103bを経て集光レンズ104aへ導かれる。
【0025】肺動脈3では、そこを流れる混合静脈血の酸素飽和度に応じて、波長λ1=690nmの測定光L1および波長λ2=890nmの測定光L2がそれぞれ異なった吸収を受ける。
【0026】集光レンズ104aで集光された波長λ2=890nmの測定光L2は、ダイクロイックミラー105aを透過し、ディテクタ106aに受光される。集光レンズ104aで集光された波長λ1=690nmの測定光L1は、ダイクロイックミラー105aおよびミラー105bで反射し、ディテクタ106bに受光される。
【0027】ディテクタ106aの出力は波長λ2=890nmの測定光L2の減衰を表しており、AD変換器108aによってAD変換された後、減光度信号S2として演算手段110へ入力される。またディテクタ106bの出力は波長λ1=690nmの測定光L1の減衰を表しており、AD変換器108bによってAD変換された後、減光度信号S1として演算手段110へ入力される。
【0028】受光プローブ102bで採取される光信号は、肺動脈3の脈動を反映する光信号として観測される(脈動については図3参照)。演算手段110は、上記脈動による減光度変化を示す減光度信号S1、S2から、混合静脈血の酸素飽和度SvO2 を算出する。ここでは一例として下式の連立Lambert-Beer則【0029】
【数1】

【0030】を解いてoxyHb濃度CoxyおよびdeoxyHb濃度Cdeoxyを求め、Coxy + Cdeoxy =100 酸素飽和度SvO2 = Coxy/100の関係から酸素飽和度SvO2を算出する。μoxy 1、μdeoxy 1、μoxy 2、ならびにμdeoxy 2としては、予め測定した値が用いられる。
【0031】以上のようにして求められた酸素飽和度SvO2は、ディスプレー112に表示される。このとき、必要に応じてoxyHb濃度CoxyおよびdeoxyHb濃度Cdeoxy等をディスプレー112に表示してもよい。
【0032】なお、以上の説明から明らかなように、本実施形態では演算手段110が、肺動脈脈波による減光度変化を検出する減光度変化検出手段を兼ねている。
【0033】<第2実施形態>以上説明した第1実施形態では、混合静脈血酸素飽和度を求める上で連立Lambert-Beer則を用いたが、生体組織は強散乱体であるためにLambert-Beer則が正しく成立しないことがある(散乱により、各波長での光路長ΔLが異なるからである)。そこで、同演算を行なう代わりに他の方法を用いてもよい。
【0034】他の方法として、例えば図5に示すように縦軸に酸素飽和度、横軸に実測したψ=ΔA1/ΔA2を取った、酸素飽和度とψ=ΔA1/ΔA2との回帰曲線を作成しておき、この回帰曲線を参照して酸素飽和度を求めるように演算手段を構成することが考えられる。
【0035】そのようにする場合、回帰曲線の作成に当たっては、予め人の多くの人の混合静脈血酸素飽和度を実測しておいて、それを検量線とする。そして本番の測定においては、実測したψ=ΔA1/ΔA2の値から回帰曲線を参照して、被験者の混合静脈血酸素飽和度を求めるようにする。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史 (外1名)
【公開番号】 特開平11−244264
【公開日】 平成11年(1999)9月14日
【出願番号】 特願平10−50496