| 【発明の名称】 |
超音波診断装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴 木 隆 夫
【氏名】福 喜 多 博
【氏名】萩 原 尚
【氏名】西 垣 森 雄
【氏名】伊 藤 嘉 彦
|
| 【要約】 |
【課題】媒質または音場における音速の周波数依存性を考慮した厳密な開口合成法を用いた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】走査機構5に駆動される超音波探触子1の位置を記憶する手段10と、送受信回路2で受信した反射信号を記憶する手段6と、信号に所定の遅延を与えて群遅延量を補正する手段7と、信号の搬送波の位相を補正する手段8と、信号を加算する手段9を有し、開口合成により断層像を再構成する際に、開口合成における受信信号の整相方法を、受信した反射信号の群遅延量の補正と搬送波の位相遅延量の補正の双方を行なう。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 超音波探触子と、前記した超音波探触子の位置を制御する手段と、受信した反射信号を記憶する手段と、信号に所定の遅延を与えて群遅延量を補正する手段と、信号の搬送波の位相を補正する手段と、信号を加算する手段を有し、開口合成により断層像を再構成する超音波診断装置において、開口合成における受信信号の整相方法は、受信した反射信号の群遅延量の補正と搬送波の位相遅延量の補正の双方を行なうことを特徴とする超音波診断装置。 【請求項2】 搬送波の位相を補正する手段は、受信信号を直交変換処理することにより補正を行なうことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。 【請求項3】 搬送波の位相遅延量の補正を行なうかどうかを任意に切り換える手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。 【請求項4】 搬送波の位相遅延量の補正を行なうかどうかを開口合成処理中に切り換える手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。 【請求項5】 波面制御手段を有する超音波探触子を持つ超音波診断装置であって、求めようとする位置と探触子の位置関係によって搬送波の位相遅延量の補正を行なうかどうかを切り換える手段を備えたことを特徴とする請求項4記載の超音波診断装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、開口合成法を利用した超音波診断装置に関する。 【0002】 【従来の技術】超音波診断装置において、超音波の進行方向に直行する方向の分解能(方位分解能)を高めるための手段として開口合成法が知られている。図7は従来の単一の振動子を用いた開口合成法のブロック図を示しており、振動子101、振動子の走査機構102、送受信回路103、開成合成処理部104および画面表示部109からなり、開成合成処理104は、受信波形メモリ105、位置情報メモリ106、信号遅延部107、信号合成部108から構成される。開口合成法では、振動子101を走査機構102で移動させて送受信回路103で送受信を行ない、複数の受信信号を得る。この受信信号を信号遅延部107で適切な遅延を与え、信号合成部108で合成することにより(整相加算)、振動子101からの距離に依存しない良好な方位分解能を持った合成信号を得ることができる。従来、信号遅延部107で受信信号に与える遅延量は、音速一定とし、求めようとする対象の位置と送受信を行なった振動子の位置関係から求めていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般の媒質または音場では、音速に周波数依存性があることが知られており、超音波診断装置の探触子から放射される音波により形成された音場は、回折等の影響により、この音速の周波数依存がとくに認められる。また、音波の波形はパルスであり、単一周波数ではない。したがって、厳密な開口合成を行なう場合には、音速の周波数依存を考慮した遅延量を与える必要がある。 【0004】本発明は、上記従来の問題を解決するもので、媒質または音場における音速の周波数依存性を考慮した厳密な開口合成法を用いた超音波診断装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記問題を解決するために本発明は、パルスの伝わる速度である群速度と、搬送波の伝わる速度である位相速度の双方を用いて整相加算を行なうことを特徴としたものである。以上により、媒質または音場における音速の周波数依存性を考慮した厳密な開口合成が得られる。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、超音波探触子と、前記した超音波探触子の位置を制御する手段と、受信した反射信号を記憶する手段と、信号に所定の遅延を与えて群遅延量を補正する手段と、信号の搬送波の位相を補正する手段と、信号を加算する手段を有し、開口合成により断層像を再構成する超音波診断装置において、開口合成における受信信号の整相方法は、受信した反射信号の群遅延量の補正と搬送波の位相遅延量の補正の双方を行なうことを特徴とし、開口合成における媒質または音場の音速の周波数依存を補正した厳密な開口合成を実現できるという作用を有する。 【0007】また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の搬送波の位相を補正する手段は、受信信号を直交変換処理することにより補正を行なうことを特徴とし、搬送波の位相遅延量の補正を直行変換により実現できるという作用を有する。 【0008】また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1記載の搬送波の位相遅延量の補正を行なうかどうかを任意に切り換える手段を備えたことを特徴とし、音速の周波数特性がまったく無い、または無視できることがあらかじめわかっている場合には、搬送波の位相遅延量の補正を行なわないようにすることができるという作用を有する。 【0009】また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1記載の搬送波の位相遅延量の補正を行なうかどうかを開口合成処理中に切り換える手段を備えたことを特徴とし、音速の周波数特性が大きい領域と音速の周波数特性がまったく無い、または無視できる領域が混在している場合、開口合成処理中でも、位相遅延量の補正を行なうかどうか切り換えることができるという作用を有する。 【0010】また、本発明の請求項5に記載の発明は、波面制御手段を有する超音波探触子を持つ請求項4記載の超音波診断装置であって、求めようとする位置と探触子の位置関係によって搬送波の位相遅延量の補正を行なうかどうかを切り換える手段を備えたことを特徴とし、波面制御手段を有する超音波探触子を持つ超音波診断装置において、少ない演算量で厳密な開口合成を実現できるという作用を有する。 【0011】以下、本発明の実施の形態について、図1から図4を用いて説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1における超音波診断装置のブロック図を示す。探触子1は、走査機構5により位置を変えながら送受信を行なう。送受信部2は、探触子1に駆動パルスを供給し、そして探触子1からの受信信号を増幅、ディジタル化する。開口合成処理部3は、受信波形メモリ6と位置情報メモリ10と音場情報メモリ11と群遅延量補正部7と位相補正部8と信号加算部9とからなる。受信波形メモリ6は、送受信部2からの高周波受信信号を記憶し、位置情報メモリ10は、探触子の位置情報を記憶し、音場情報メモリ11は、探触子1から放射される音波の位相遅延、群遅延などの音場情報を記憶する。探触子1の位置情報は、1回の送受信により得られた受信信号に対応している。群遅延量補正部7は、受信信号に所定の遅延を与えて群遅延量を補正する。搬送波位相補正部8は、受信信号の搬送波の位相を補正する。信号加算部9は、群遅延量と搬送波の位相の補正を終えた受信信号を加算する。画像表示部4は、開口合成処理部3の出力である合成信号を、TV等の映像信号に変換し、モニタ等の表示装置に表示する。 【0012】以上のように構成された超音波診断装置について、図2を用いてその動作を説明する。図2は被合成走査線23上の各点の合成信号を、探触子の位置を変えて送受信して得られた受信信号A〜Cを用いて開口合成を行う場合について説明するものである。まず、音場の群遅延特性をもとに、所定の遅延を受信信号A〜Cに与え、群遅延量を補正する。これにより求めるべき被合成走査線23上にある反射体21からの反射パルスの位相は一致し、被合成走査線23からはずれた位置にある反射体22からの反射パルスの位相は一致しない。次に、各々の受信信号に含まれるパルスの搬送波の位相を補正する。これら3つの信号を加算して、被合成走査線23上の合成信号を得る。これにより、被合成走査線23上にある反射体21からの信号はパルスの位相、搬送波の位相ともに一致するために増幅され、被合成走査線23からずれたところにある反射体22からの信号は減衰する。 【0013】以上のように、本発明の実施の形態1によれば、媒質または音場における音速の周波数依存を考慮した厳密な開口合成を行なうことができ、良好な方位分解能を得ることができる。 【0014】(実施の形態2)図3は本発明の実施の形態2における搬送波の位相補正にFFTを用いた超音波診断装置のブロック図を示す。探触子1は、走査機構5により位置を変えながら送受信を行なう。送受信部2は、探触子1に駆動パルスを供給し、そして探触子1からの受信信号を増幅、ディジタル化する。開口合成処理部3は、受信波形メモリ6と位置情報メモリ10と音場情報メモリ11と群遅延補正量計算部16と搬送波位相補正量計算部17と遅延回路12とFFT回路13と乗算回路14とIFFT回路15と信号加算部9とからなる。受信波形メモリ6は、送受信部2からの高周波受信信号を記憶し、位置情報メモリ10は、探触子1の位置情報を記憶し、音場情報メモリ11は、探触子1から放射される音波の位相遅延、群遅延などの音場情報を記憶する。探触子1の位置情報は、1回の送受信により得られた受信信号に対応している。群遅延補正量計算部16は、受信信号の群遅延量の補正量を計算し、遅延回路12は、受信信号に群遅延補正量だけ遅延させることで、群遅延量を補正する。FFT回路13は、受信信号を複素周波数成分に変換する。搬送波位相補正量計算部17は、受信信号の搬送波の位相補正量の周波数成分を計算し、乗算回路14で補正量を受信信号の周波数成分に乗算する。IFFT回路15は、遅延処理を行なった複素受信信号を時間軸信号に変換する。信号加算部9は、群遅延量と搬送波の位相の補正を終えた受信信号を加算する。画像表示部4は、開口合成処理部3の出力である合成信号を、TV等の映像信号に変換し、モニタ等の表示装置に表示する。 【0015】以上のように、本発明の実施の形態2によれば、FFTを用いて受信信号を複素周波数信号に変換することにより、受信信号のパルスの波形を変形せずに、搬送波の位相を補正することができる。 【0016】なお、以上の説明では直行変換はFFTを用いたが、これに限るものではない。 【0017】(実施の形態3)図4は本発明の実施の形態3における超音波診断装置のブロック図を示す。探触子1は、走査機構5により位置を変えながら送受信を行なう。送受信部2は、探触子1に駆動パルスを供給し、そして探触子1からの受信信号を増幅、ディジタル化する。開口合成処理部3は、受信波形メモリ6と位置情報メモリ10と音場情報メモリ11と群遅延量補正部7と搬送波位相補正部8と信号加算部9とスイッチ18および19とからなる。受信波形メモリ6は、送受信部2からの高周波受信信号を記憶し、位置情報メモリ10は、探触子の位置情報を記憶し、音場情報メモリ11は、探触子1から放射される音波の位相遅延、群遅延などの音場情報を記憶する。探触子1の位置情報は、1回の送受信により得られた受信信号に対応している。群遅延量補正部7は、受信信号に所定の遅延を与えて群遅延量を補正する。搬送波位相補正部8は、受信信号の搬送波の位相を補正する。制御部20は、超音波診断装置全体の制御部であり、選択した探触子1の作り出す音場の音速の周波数特性が無く、媒質の音速の周波数特性も無い場合などにスイッチ18および19を操作して、搬送波位相補正部8を切り離す。信号加算部9は、群遅延量と位相遅延量の補正を終えた受信信号を加算する。画像表示部4は、開口合成処理部3の出力である合成信号を、TV等の映像信号に変換し、モニタ等の表示装置に表示する。 【0018】以上のように、本発明の実施の形態3によれば、搬送波位相補正部8の前後にスイッチ18および19を設け、これらを制御部20が制御することにより、音速の周波数特性がまったく無い、または無視できることがあらかじめ分かっている場合に、搬送波位相補正部を切り離すことができ、位相遅延量補正のための計算量を減少させることができる。なお、搬送波位相補正部を切り離した場合は、従来の開口合成手段とまったく同じ構成となる。 【0019】(実施の形態4)図5は本発明の実施の形態4における超音波診断装置のブロック図を示す。探触子1は、走査機構5により位置を変えながら送受信を行なう。送受信部2は、探触子1に駆動パルスを供給し、そして探触子1からの受信信号を増幅、ディジタル化する。開口合成処理部3は、受信波形メモリ6と位置情報メモリ10と音場情報メモリ11と群遅延量補正部7と搬送波位相補正部8と信号加算部9とスイッチ制御部21とスイッチ18および19とからなる。受信波形メモリ6は、送受信部2からの高周波受信信号を記憶し、位置情報メモリ10は、探触子1の位置情報を記憶し、音場情報メモリ11は、探触子1から放射される音波の位相遅延、群遅延などの音場情報を記憶する。探触子1の位置情報は、1回の送受信により得られた受信信号に対応している。群遅延量補正部7は、受信信号に所定の遅延を与えて群遅延量を補正する。搬送波位相補正部8は、受信信号の搬送波の位相を補正する。スイッチ制御部21は、開口合成処理中に、音場情報と探触子1の位置情報から、求めようとする位置の音速の周波数特性がまったく無い場合または無視できる場合に、スイッチ18および19を操作して、搬送波位相補正部を切り離す。信号加算部9は、群遅延量と位相遅延量の補正を終えた受信信号を加算する。画像表示部4は、開口合成処理部3の出力である合成信号を、TV等の映像信号に変換し、モニタ等の表示装置に表示する。 【0020】以上のように、本発明の実施の形態4によれば、位相遅延補正部8の前後にスイッチ18および19を設け、これらをスイッチ制御部21が制御することにより、音速の周波数特性が大きい領域と音速の周波数特性がまったく無い、または無視できる領域が混在している場合、開口合成処理中でも、位相遅延量の補正を行なうかどうか切り換えることができ、位相遅延量補正のための計算量を減少させることができる。 【0021】(実施の形態5)図6は本発明の実施の形態5における波面制御手段を有する探触子1と、探触子1から放射される音波の作る音場の特性を示している。探触子1は、波面制御手段として音響レンズ25を有し、放射する超音波を焦点26に収束させる。このとき超音波の作り出す音場は、音波が焦点26へ収束するメインローブ領域27と、音波が四方に拡散するサイドローブ領域28に分けられる。メインローブ領域27における音波は、焦点を中心とする球面波とみなすことができ、音速の周波数依存性は無視することができる。したがって、求めようとする位置がメインローブ領域27にある場合には、群遅延量のみを補正し、搬送波の位相補正量の計算は省略することができる。サイドローブ領域28における音波は、周波数によって拡散する度合が異なるため、音速に周波数依存性を生ずることになる。したがって、求めようとする位置がサイドローブ領域28にある場合には、群遅延量と搬送波の位相遅延量の双方を補正する必要がある。 【0022】以上のように、本発明の実施の形態5によれば、波面制御手段を有する探触子を用いた場合には、音速の周波数依存性を無視できる領域とできない領域を生ずるので、求めようとする位置と探触子の位置関係から、求めようとする位置がサイドローブ領域28内である場合には群遅延量と位相遅延量の双方を補正し、求めようとする位置がメインローブ領域27内である場合には搬送波位相補正部を切り離せば、位相補正のための計算量を減少させることができる。 【0023】なお、以上の説明では波面制御手段として音響レンズを用いたが、これに限るものではなく、凸面振動子や凹面振動子を用いたもの、さらに電子的手段により波面を制御するようにしたものに対しても同様に実施できる。 【0024】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、媒質または実際に使用する超音波探触子のつくる音場の特性に近い、厳密な開口合成を行なうことができ、振動子からの距離に依存しない良好な方位分解能を得ることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005821 【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年(1998)2月5日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】蔵合 正博
|
| 【公開番号】 |
特開平11−216143 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)8月10日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−24276 |
|