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【発明の名称】 体動ノイズ除去パルスオキシメトリの装置および方法
【発明者】 【氏名】青柳 卓雄

【氏名】金本 理夫

【要約】 【課題】簡単な構成によって体動アーテファクトの影響を受けないで正確に酸素飽和度を測定すること。

【解決手段】CPU6は、A/D変換部5の出力から各波長の透過光の減光度の変化分ΔAi(i=1,2) を取り込み、ECG 検出部10の出力も同様に取り込む。次に基準とする第2波長に対応するフィルタの特性を変えながらフィルタリングを行い、そのフィルタ出力ΔA'2 とECG (脈波同期信号)との相関係数r が最大の場合のフィルタ特性を採用し、各波長におけるフィルタ出力ΔA'(i) を求め、これによりΦ12= ΔA'1/ΔA'2 を求め、このΦ12と、次の関係から動脈血の酸素飽和度Saを求める。 Φ12={Ea1(Ea1+F) }1/2 /{Ea2(Ea2+F) }1/2 ここで、Eai=SaEoi+(1-Sa)Eri Eo; 酸化ヘモグロビンの吸光係数、Er; 還元ヘモグロビンの吸光係数、F ; 散乱係数。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生体組織に複数個の波長の光を照射する光照射手段と、各波長の組織透過光を光電変換する光電変換手段と、この光電変換手段が出力する信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度の変化分を検出する減光度変化分検出手段と、各波長についてこの減光度変化分検出手段の出力を入力とし、設定された通過帯域の周波数成分を通過させる可変フィルタと、この可変フィルタの通過帯域を設定する通過帯域設定手段と、前記可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求める酸素飽和度検出手段とを具備する体動ノイズ除去パルスオキシメトリの装置。
【請求項2】 通過帯域設定手段は、脈波に同期する信号を測定する脈波同期信号測定手段と、この脈波同期信号測定手段が測定した脈波同期信号と可変フィルタの出力との相関を求める相関検出手段と、この相関検出手段が検出した相関が最大となるように前記可変フィルタの通過帯域を制御する通過帯域制御手段と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の体動ノイズ除去パルスオキシメトリの装置。
【請求項3】 通過帯域設定手段は、脈波に同期する信号を測定する脈波同期信号測定手段と、この脈波同期信号測定手段が測定した脈波に同期する信号の周波数成分を求めその最大成分の周波数を決定する周波数決定手段と、この周波数決定手段が決定した周波数に基づいて可変フィルタの通過帯域を制御する通過帯域制御手段と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の体動ノイズ除去パルスオキシメトリの装置。
【請求項4】 脈波同期信号測定手段が測定する信号は心電図信号であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の体動ノイズ除去パルスオキシメトリの装置。
【請求項5】 生体組織に複数個の波長の光を照射する光照射手段と、各波長の組織透過光を光電変換する光電変換手段と、この光電変換手段が出力する信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度の変化分を検出する減光度変化分検出手段と、各波長についてこの減光度変化分検出手段の出力を入力とし、設定された通過帯域の周波数成分を通過させる可変フィルタと、この可変フィルタの通過帯域を段階的に設定する通過帯域設定手段と、この通過帯域設定手段により設定された各通過帯域についての前記可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求める酸素飽和度検出手段と、この酸素飽和度検出手段が求めた酸素飽和度のうち最大値をとるものを選択する最大値選択手段と、を具備する体動ノイズ除去パルスオキシメトリの装置。
【請求項6】 生体組織に複数個の波長の光を照射し、各波長の組織透過光を光電変換し、この光電変換した信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度変化分信号を検出し、各波長についてこの減光度変化分信号を、設定した通過帯域の周波数成分を通過させる可変フィルタに通し、この可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求める体動ノイズ除去パルスオキシメトリの方法。
【請求項7】 可変フィルタの通過帯域は、脈波に同期する信号と前記可変フィルタの出力との相関が最大となるように設定することを特徴とする請求項1に記載の体動ノイズ除去パルスオキシメトリの方法。
【請求項8】 可変フィルタの通過帯域は、脈波に同期する信号の周波数成分を求めその最大成分の周波数となるように設定することを特徴とする請求項1に記載の体動ノイズ除去パルスオキシメトリの方法。
【請求項9】 脈波に同期する信号は心電図信号であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の体動ノイズ除去パルスオキシメトリの方法。
【請求項10】 生体組織に複数個の波長の光を照射し、各波長の組織透過光を光電変換し、この光電変換した信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度の変化分信号を検出し、各波長についてこの減光度変化分信号を可変フィルタに通し、この可変フィルタの通過帯域を段階的に設定し、設定された各通過帯域についての前記可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求め、求めた酸素飽和度のうち最大値をとるものを選択する体動ノイズ除去パルスオキシメトリの方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はパルスオキシメータに関するものであり、特にその体動により生じる誤差の消去に関するものである。
【0002】
【従来の技術】パルスオキシメータは、波長が異なる複数の光を生体組織に照射してそれぞれの透過光Ii(iは各波長を示す) の脈動を求めこれに基づいて生体組織の減光度の変化分ΔAiを求めこれに基づいて血液の酸素飽和度SaO2を測定する装置である。ここで、ΔAiからSaO2を求めるには、まずΦij= ΔAi/ΔAj(jはi とは異なる波長を示す) を求める必要がある。そして、ΦijをSaO2に換算するには、実測により得られるΦijとSaO2の関係に基づいて行うか、あるいはΦijの実測値を理論式に当てはめることにより計算して求める。
【0003】このようなパルスオキシメータによる測定中、体動があると、透過光にアーテファクトが重畳する。体動によるアーテファクトが小ならば、連続測定されたΦij列中の異常値をその前後のトレンドに基づいて修正すればよい。しかし、体動によるアーテファクトが大ならば、Φij列の修正では対処できない。Φijを求める前に脈波形の修正が必要である。
【0004】体動アーテファクトの対応策の1つとして、特表平6-507485号公報に示されている装置がある。しかし、この装置は2個の波長を用いて酸素飽和度を測定する装置である。組織の厚みの脈動の影響を消去するためには使用する光波長を増すことが必要である。また測定できる血中物質の種類を増すためにも使用する光波長を増すことが必要である。このような多波長式あるいは多成分測定にも適用できる体動対策が必要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように従来は、パルスオキシメータの体動対策に適切なものが無かった。
【0006】本発明の目的は、多波長式あるいは多成分測定のパルスオキシメータにおいて、体動によるアーテファクトが大の場合であっても、その影響を受けずに精度の高い測定を行うことができるパルスオキシメータを提供することである。
【0007】また、組織の厚さの変動を考慮した場合にも適用できるパルスオキシメータを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】まず、組織の厚みの変動を無視する場合に用いられている従来の2波長式のSpO2(酸素飽和度)測定方法と、組織の厚みの変動を考慮する場合に有効である3波長式のSpO2測定方法を説明する(特願平7-4820参照)。
【0009】(1)2波長式SpO2測定の方法;組織の厚みの変動を無視する場合2波長λ1 、λ2 の光を生体組織に照射し、その組織透過光を光電変換する。この出力をI1,I2 とし、これを対数変換する。その変化分は生体組織の減光度の変化分ΔAiである。すなわち、ΔA1= ΔlogI1, ΔA2= ΔlogI2 である。これら生体組織の減光度の変化の原因は、大部分が組織内血液量の変化である。この組織内血液量の変化は、体動のない場合には組織内の動脈血の拍動によるものであり、理論的には次式が成立する。
【0010】ΔA1={Ea1(Ea1+F) }1/2 *Hb ΔDaΔA2={Ea2(Ea2+F) }1/2 *Hb ΔDaΦ12= ΔA1/ ΔA2={Ea1(Ea1+F) }1/2 /{Ea2(Ea2+F) }1/2ここで、Ea1=SaEo1+(1-Sa)Er1Ea2=SaEo2+(1-Sa)Er2Eo; 酸化ヘモグロビンの吸光係数。
Er; 還元ヘモグロビンの吸光係数。
F ; 散乱係数。
Sa; SaO2(動脈血の酸素飽和度)
Hb; ヘモグロビン濃度ΔDa;動脈血の厚さの変化分サフィックスの数字は、波長の種類を表す(以後の式についても同じ)。
【0011】上記の関係からΦ12がSaO2と対応することがわかる。従って、ΔlogI1,ΔlogI2 を測定してΔA1、ΔA2を求め、これらによりΦ12を求めた後、Φ12とSaO2との対応関係に従ってΦ12をSaO2に変換する。これが従来の2波長式パルスオキシメータであり、得られた値がSaO2である。
【0012】(2)3波長式SpO2測定の方法;組織の厚みの変動を考慮する場合3波長のλ1 、λ2 、λ3 の光を生体組織に照射し、その組織透過光を光電変換する。この出力をI1,I2,I3とし、これを対数変換する。その変化分は生体組織の減光度の変化分ΔAiである。すなわち、ΔA1= ΔlogI1, ΔA2= ΔlogI2 , ΔA3= ΔlogI3, である。これら生体組織の減光度の変化の原因は、次の2つである。
【0013】第1に、組織内血液量の変化が挙げられる。組織内の動脈血の拍動によるものである。第2に、純組織(血液以外の組織)の変動が挙げられる。組織内の動脈血の拍動によって純組織が伸展されて透過光に関する厚みが変化すること、によるものである。
【0014】ここで、体動なしとした場合、理論的には次式が成立する。
ΔA1={Ea1(Ea1+F) }1/2 *Hb ΔDa-Zt1ΔDtΔA2={Ea2(Ea2+F) }1/2 *Hb ΔDa-Zt2ΔDtΔA3={Ea3(Ea3+F) }1/2 *Hb ΔDa-Zt3ΔDtΦ12= ΔA1/ ΔA2=[{Ea1(Ea1+F) } 1/2 -Ex1]/[{Ea2(Ea2+F) }1/2 -Ex2]Φ32= ΔA3/ ΔA2=[{Ea3(Ea3+F) } 1/2 -Ex3]/[{Ea2(Ea2+F) }1/2 -Ex2]ここで、Ea1=SaEo1+(1-Sa)Er1Ea2=SaEo2+(1-Sa)Er2Ea3=SaEo2+(1-Sa)Er3であり、Exi=(Zti* ΔDt)/Hb* ΔDaと置いている。
【0015】このExi(i=1,2,3)には特願平7-4820に示したように、次の関係があるので、未知数としては1個とみなすことができる。
Ex1=A1Ex2+B1Ex3=A3Ex2+B3(A1,B1,A3,B3 は既知の定数である)
Eo; 酸化ヘモグロビンの吸光係数。
Er; 還元ヘモグロビンの吸光係数。
F ; 散乱係数。
Sa; SaO2(動脈血の酸素飽和度)
Hb; ヘモグロビン濃度ΔDa;動脈血の厚さの変化分ΔDt;純組織の厚さの変化分Zt; 純組織の減光率【0016】上記のΦ12、Φ32の連立方程式を解くならば、Sa,Ex2が得られる。これが従来の3波長式パルスオキシメータであり、得られた値がSaO2であって、純組織の脈動による誤差を消去することによって精度を改善したものである。
【0017】次に体動アーテファクトの原因について説明する。体動アーテファクトの原因は、(a)光学系の位置関係の変化、(b)動脈血の厚みの変動、(c)静脈血の厚みの変動、(d)純組織の厚みの変動、がある。以下、それぞれについて説明する。
【0018】(a)光学系の位置関係の変化;プローブを装着する部位が大きな加速度を持つことにより、急速に光源−組織−受光器の位置関係が変化する。これによる現象は複雑多様であるが、プローブの構造と装着法によってかなりの程度の低減化が可能である。
(b)動脈血の厚みの変動;動脈血は血管中で高圧であり、周囲組織に囲まれており、従って、動脈血の厚みの変動は大きくない。しかも、動脈血の厚みの変動は動脈血の脈動と同質のものであるから、Φを狂わせることにはならない。
(c)静脈血の厚みの変動;体が静止状態の場合には、静脈血の厚みの変動はない。従って考慮する必要がない。しかし、プローブ装着部位が加速度を持つ場合には影響が大きい。静脈血管は多くの場合に弛緩しており、従って静脈血は慣性によって血管内を移動しやすい。従って、静脈血の厚みの変動は大きいものであって、体動による透過光の乱れの最も大きい原因である。
(d)純組織の厚みの変動;純組織は、体が静止している場合にも、その中に存在する動脈血の拍動によって厚みが変化している。体動がある場合には、静脈の揺らぎによる厚み変動が加わる。純組織自体は慣性によってその厚みを変えるが、これの影響は極めて小と考えられる。その理由として、純組織は静脈血に比して、慣性による移動がしにくいということがあり、また、純組織は血液に比して減光率が小であることが挙げられる。
【0019】このように体動アーテファクトの原因には種々あるが、その中でも静脈血の厚みの変動が最も大きな原因となっている。これについての対策が本発明の目的である。
【0020】ここで上述した2波長式SpO2測定の方法(組織の厚みの変動を無視する)と、3波長式SpO2測定の方法(組織の厚みの変動を考慮する)に体動アーテファクトが影響した場合、すなわち体動ありの場合について説明する。
【0021】以下の説明において、ΔAiは、体動のない場合には拍動の脈波振幅として良いが、体動のある場合には適当な基準値からの変化分すなわち連続量であるとする。
(1)2波長式SpO2測定の方法(組織の厚みの変動を無視する)の場合体動のある場合には、組織内の動脈血の拍動に体動による乱れが加わったものと、体動による組織内の静脈血の量の変動と、の和であり、次式が成立する。
ΔA1={Ea1(Ea1+F) }1/2 *Hb ΔDa+{Ev1(Ev1+F) }1/2 *Hb ΔDvΔA2={Ea2(Ea2+F) }1/2 *Hb ΔDa+{Ev2(Ev2+F) }1/2 *Hb ΔDvΦ12= ΔA1/ ΔA2=[{Ea1(Ea1+F) } 1/2 +{Ev1(Ev1+F) }1/2 *(ΔDv/ ΔDa)] /[{Ea2(Ea2+F) }1/2 +{Ev2(Ev2+F) }1/2 *(ΔDv/ ΔDa)]【0022】ここで、Ea1=SaEo1+(1-Sa)Er1Ea2=SaEo2+(1-Sa)Er2Ev1=SvEo1+(1-Sv)Er1Ev2=SvEo2+(1-Sv)Er2であり、Eo; 酸化ヘモグロビンの吸光係数。
Er; 還元ヘモグロビンの吸光係数。
F ; 散乱係数。
Sa; SaO2(動脈血の酸素飽和度)
Hb; ヘモグロビン濃度ΔDa;動脈血の厚さの変化分Sv;静脈血の酸素飽和度ΔDv;静脈血の厚さの変化分である。ΔDvの原因は、体動によるものである。
【0023】この場合のΦ12からSaO2を求めることは困難である。もし、体動がある場合に、ΔA1、ΔA2を測定し、これによりΦ12を求め、このΦ12と、体動なしのΦ12の理論式からSaO2を求めようとすれば、静脈血の影響により、求めた値は実際のSaO2よりも低い値となる。これが体動アーテファクトの影響である。
【0024】(2)3波長式SpO2測定の方法(組織の厚みの変動を考慮する)の場合体動があると、組織内血液量の変化は、組織内の動脈血の拍動に体動が加わったものと、体動による組織内の静脈血の量の変動と、の和である。純組織の変動は、組織内血液量の変化によるものと、純組織自身の慣性による変動との和であるが、後者は小であるから無視することができる。
【0025】ここで次式が成立する。
ΔA1={Ea1(Ea1+F) }1/2 *Hb ΔDa+{Ev1(Ev1+F) }1/2 *Hb ΔDv-Zt1ΔDtΔDt= RaΔDa+ RvΔDvと置くと、ΔA1=[{Ea1(Ea1+F)}1/2 *Hb-Zt1Ra]ΔDa+[{Ev1(Ev1+F)}1/2 *Hb-Zt1Rv]ΔDv【0026】同様にして、ΔA2=[{Ea2(Ea2+F)}1/2 *Hb-Zt2Ra]ΔDa+[{Ev2(Ev2+F)}1/2 *Hb-Zt2Rv]ΔDvΔA3=[{Ea3(Ea3+F)}1/2 *Hb-Zt3Ra]ΔDa+[{Ev3(Ev3+F)}1/2 *Hb-Zt3Rv]ΔDv【0027】
【数1】

【0028】ここで、Ea1=SaEo1+(1-Sa)Er1Ea2=SaEo2+(1-Sa)Er2Ea3=SaEo3+(1-Sa)Er3Ev1=SvEo1+(1-Sv)Er1Ev2=SvEo2+(1-Sv)Er2Ev3=SvEo3+(1-Sv)Er3であり、Eo; 酸化ヘモグロビンの吸光係数。
Er; 還元ヘモグロビンの吸光係数。
F ; 散乱係数。
Sa; SaO2(動脈血の酸素飽和度)
Hb; ヘモグロビン濃度ΔDa;動脈血の厚さの変化分Sv;静脈血の酸素飽和度Zt; 純組織の減光率ΔDt;純組織の厚さの変化分ΔDv;静脈血の厚さの変化分Ra;ΔDaがΔDtに寄与する比率Rv;ΔDvがΔDtに寄与する比率である。
【0029】この場合のΦ12、Φ32からSaO2を求めることは困難である。もし、体動がある場合に、ΔA1、ΔA2、ΔA3を測定し、これによりΦ12、Φ32を求め、これらのΦ12、Φ32と、体動なしの場合のΦ12、Φ32の理論式からなる連立方程式からSaO2を求めようとすれば、静脈血の影響により、求めた値は実際のSaO2よりも低い値となる。これが体動アーテファクトの影響である。
【0030】以下に示す各発明は、上記の原理を踏まえた上での発明である。請求項1の発明は、生体組織に複数個の波長の光を照射する光照射手段と、各波長の組織透過光を光電変換する光電変換手段と、この光電変換手段が出力する信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度の変化分を検出する減光度変化分検出手段と、各波長についてこの減光度変化分検出手段の出力を入力とし、設定された通過帯域の周波数成分を通過させる可変フィルタと、この可変フィルタの通過帯域を設定する通過帯域設定手段と、前記可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求める酸素飽和度検出手段とを具備する構成とした。
【0031】この構成において、可変フィルタの通過帯域が適正に設定されるならば、そのフィルタ出力は体動アーテファクトの影響が無いものとすることができる。このため、体動アーテファクト無しとした場合に用いることができる、減光度の変化分と酸素飽和度の簡単な関係によって酸素飽和度を求めることができる。
【0032】例えば、2波長式SpO2測定方法(組織の厚みの変動を無視する)場合、2波長λ1 、λ2 の光を生体組織に照射し、その組織透過光を光電変換する。この出力をI1,I2 とし、これを対数変換する。その変化分は生体組織の減光度の変化分ΔAiである。すなわち、ΔA1= ΔlogI1ΔA2= ΔlogI2である。これら生体組織の減光度の変化の原因は、大部分が組織内血液量の変化によるものである。そして、体動によるアーテファクトが生じているならば、既述のように、これらΔA1, ΔA2の中に静脈血の変動によるものが含まれている。そこで、これらΔA1, ΔA2をそのまま用いて、Φ12= ΔA1/ ΔA2を求め、このΦ12と、体動アーテファクトがないとした場合に成立する次の関係式から動脈血の酸素飽和度Saを求めることはできない。
Φ12={Ea1(Ea1+F) }1/2 /{Ea2(Ea2+F) }1/2【0033】そこで、これらΔA1, ΔA2をそれぞれ可変フィルタに通す。この可変フィルタの通過帯域が適切な値に設定されていれば、そのフィルタ出力ΔA1',ΔA2' は、体動アーテファクトの周波数成分が除かれているので、Φ12= ΔA1'/ΔA2' を求め、上記Φ12の式を用いることができる。
【0034】ここで、F は既知であり、Ea1=SaEo1+(1-Sa)Er1Ea2=SaEo2+(1-Sa)Er2であるから、Φ12が分かるならば、Saを求めることができる。
【0035】請求項2の発明は、請求項1に記載の装置において、通過帯域設定手段は、脈波に同期する信号を測定する脈波同期信号測定手段と、この脈波同期信号測定手段が測定した脈波同期信号と可変フィルタの出力との相関を求める相関検出手段と、この相関検出手段が検出した相関が最大となるように前記可変フィルタの通過帯域を制御する通過帯域制御手段と、を具備する構成とした。
【0036】この構成によれば、可変フィルタの出力は、体動アーテファクトの影響が無い脈波同期信号との相関が最大となるように調整されるので、体動アーテファクトの要素が除かれたものとなる。ここで2つの波形の相関とは、例えば2つの波形の相関係数を言い、波形そのものの相関係数と、波形のスペクトルの相関係数の2つの場合を含む(以下同様である)。
【0037】請求項3の発明は、請求項1に記載の装置において、通過帯域設定手段は、脈波に同期する信号を測定する脈波同期信号測定手段と、この脈波同期信号測定手段が測定した脈波に同期する信号の周波数成分を求めその最大成分の周波数を決定する周波数決定手段と、この周波数決定手段が決定した周波数に基づいて可変フィルタの通過帯域を制御する通過帯域制御手段と、を具備する構成とした。
【0038】この構成によれば、可変フィルタの通過帯域は、体動アーテファクトの影響が無い脈波同期信号の周波数成分のうち最大の周波数が参照されて設定されるのであるから、可変フィルタの出力は体動アーテファクトの要素が除かれたものとすることができる。
【0039】請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の装置において、脈波同期信号測定手段が測定する信号は心電図信号であることを特徴とする。
【0040】請求項5に記載の発明は、生体組織に複数個の波長の光を照射する光照射手段と、各波長の組織透過光を光電変換する光電変換手段と、この光電変換手段が出力する信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度の変化分を検出する減光度変化分検出手段と、各波長についてこの減光度変化分検出手段の出力を入力とし、設定された通過帯域の周波数成分を通過させる可変フィルタと、この可変フィルタの通過帯域を段階的に設定する通過帯域設定手段と、この通過帯域設定手段により設定された各通過帯域についての前記可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求める酸素飽和度検出手段と、この酸素飽和度検出手段が求めた酸素飽和度のうち最大値をとるものを選択する最大値選択手段と、を具備する構成である。
【0041】この構成によれば、予め段階的に設定された通過帯域のそれぞれについて、そのフィルタ出力に基づいて酸素飽和度を求め、その後で、最大の酸素飽和度を選択するようにした。最大の酸素飽和度を選択する理由は、上記と同じである。
【0042】以下の請求項6乃至請求項10の発明は、順次請求項1乃至請求項5にそれぞれ対応する方法の発明である。
【0043】請求項6に記載の発明は、生体組織に複数個の波長の光を照射し、各波長の組織透過光を光電変換し、この光電変換した信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度変化分信号を検出し、各波長についてこの減光度変化分信号を、設定した通過帯域の周波数成分を通過させる可変フィルタに通し、この可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求めるようにした。
【0044】請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、可変フィルタの通過帯域は、脈波に同期する信号と前記可変フィルタの出力との相関が最大となるように設定することを特徴としている。
【0045】請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、可変フィルタの通過帯域は、脈波に同期する信号の周波数成分を求めその最大成分の周波数となるように設定することを特徴としている。
【0046】請求項9に記載の発明は、請求項7または請求項8に記載の発明において、脈波に同期する信号は心電図信号であることを特徴としている。
【0047】請求項10に記載の発明は、生体組織に複数個の波長の光を照射し、各波長の組織透過光を光電変換し、この光電変換した信号の変動に基づいて、生体組織の各波長についての減光度の変化分信号を検出し、各波長についてこの減光度変化分信号を可変フィルタに通し、この可変フィルタの通過帯域を段階的に設定し、設定された各通過帯域についての前記可変フィルタの出力に基づいて酸素飽和度を求め、求めた酸素飽和度のうち最大値をとるものを選択するようにした。
【0048】
【発明の実施の形態】第1の実施の形態;2波長SpO2測定装置(組織の厚みの変動は無視、脈波同期信号を参照してフィルタの帯域を調節)
図1に本実施の形態の構成を示す。光源1は2波長λ1,λ2 の光を発生する手段であり、駆動部2によって駆動されるものである。光源1から発生した光は生体組織3を透過し、その2波長の透過光は光電変換部4でそれぞれ光電変換されて電気信号とされ、A/D変換部5でデジタル信号に変換され、CPU(中央処理装置)6で処理されるようになっている。CPU6は上記の各部を制御するものであり、更にこのCPU6にはROM7、RAM8および表示器9が接続されている。ROM7はCPU6が実行する図2および図3のフローチャートに示すプログラムが格納されている。RAM8はCPU6が行う処理の過程で必要なデータを書き込み、それを読み出すために使用されるものであり、一部はリングバッファとして使用される。表示器9はCPU6が行った処理の結果を表示するためのものである。CPU6には、ECG (心電図信号)検出部10により検出されたECG がA/D変換部11でデジタル信号に変換されて至るようにされている。
【0049】このように構成された装置の動作を図2および図3を参照して説明する。CPU6は、これらのフローチャートに示す機能の他、2波長の光の電気信号Ii(i=1,2) を対数変換してその変動分ΔlogIi すなわちΔAiを求める機能およびサンプリング(sampling)パルスとピッチ(pitch) パルスを発生する機能を有している。
【0050】サンプリングパルスが発生すると、図2に示すようにリングバッファ(Ring Buffer) に各波長のΔAiを取り込む処理を行う。このとき、ECG もリングバッファに取り込む。
【0051】ピッチパルスが発生すると、図3に示すような処理を行う。すなわち、波長数を示すレジスタの内容を1にして(S31)、順次波長λ1 、λ2 のそれぞれについてリングバッファに格納されているデータをRAM8に設定されているスパンデータバッファ(Span data buffer)に1スパンデータ分取り込む(S32)。このとき、ECG も同様にRAMに設定されているスパンデータバッファに1スパンデータ分取り込む。
【0052】次にフィルタリングを行うのであるが、まずフィルタ定数を初期値に設定する(S33)。次のステップS34では以下の処理を行う。フィルタ定数からフィルタ特性(j) を求める。基準とする第2波長に対応するフィルタ出力ΔA'(2,j) を求める。次にΔA'(2,j) とECG (脈波同期信号)との相関係数r(j)を求める。フィルタ定数に刻み幅を加える。以上をフィルタ定数が終了値となるまで繰り返し行う。これにより、フィルタ特性に対応した相関係数r の列が得られる。
【0053】次のステップS35では、求めたr の列におけるr が最大の場合のフィルタ特性を採用する。
【0054】次のステップS36では、波長数i を1に設定し、次のステップS37では各波長におけるフィルタ出力ΔA'(i) を順次求める。ここで各フィルタは前のステップにより採用された特性に設定されている。
【0055】こうして求めたフィルタ出力ΔA'1 、ΔA'2 により、Φ12= ΔA'1/ΔA'2 を求め(S38)、このΦ12と、次の関係から動脈血の酸素飽和度Saを求める(S39)。
Φ12={Ea1(Ea1+F) }1/2 /{Ea2(Ea2+F) }1/2【0056】上記の実施の形態において、CPU6、ROM7およびRAM8から成るデジタルコンピュータの機能をブロックに分けて示すと図4に示すようになる。また、このとき、各部のタイミングチャートは図5に示すようになる。
【0057】上記の実施の形態において、ステップS34の代わりに、区間毎にECG (脈波同期信号)の周波数分析をし、その最大成分の周波数を決定し、これに基づいてフィルタの特性を決定するステップとしても良い。すなわちフィルタ通過帯域を、その決定した周波数成分およびその近辺としても良い。本実施の形態によれば、体動によるアーテファクトの影響が無い実際の脈波同期信号を参照してフィルタ特性を決定しているので、正確な測定を行うことができる。
【0058】第2の実施の形態;3波長SpO2測定装置(組織の厚みの変動を考慮、脈波同期信号を参照してフィルタの帯域を調節)
本実施の形態の構成は図1に示した構成において、光源1は3波長λ1,λ2,λ3 の光を発生する点、CPU6はこの3波長に関するデータを処理する点で異なっているが、他の点では同様である。
【0059】このように構成された装置の動作を説明する。サンプリングパルスが発生すると、図2に示すようにリングバッファに各波長の透過光の減光度の変化分ΔAiを取り込む処理、ECG を取り込む処理、を行うことは第1の実施の形態と同様である。
【0060】ピッチパルスが発生すると、図3に示すような処理を行う。この図は、第1の実施の形態に用いたが、第1の実施の形態と異なるのは、第1の実施の形態の場合、波長数は2であり、本実施の形態の場合、波長数は3である。従って、ステップS37では3つのフィルタ出力ΔA'1 、ΔA'2 、ΔA'3 が得られる。そしてステップS38では、Φ12= ΔA'1/ΔA'2 、Φ32= ΔA'3/ΔA'2 を求め、ステップS39では、求めたΦ12、Φ32と次の関係から酸素飽和度S を求める。
Φ12= ΔA1/ ΔA2=[{Ea1(Ea1+F) } 1/2 -Ex1]/[{Ea2(Ea2+F) }1/2 -Ex2]Φ32= ΔA3/ ΔA2=[{Ea3(Ea3+F) } 1/2 -Ex3]/[{Ea2(Ea2+F) }1/2 -Ex2]上記の実施の形態において、CPU6、ROM7およびRAM8から成るデジタルコンピュータの機能をブロックに分けて示すと図6に示すようになる。また、このとき、各部のタイミングチャートは第1の実施の形態と同じ図5に示すようになる。
【0061】この実施の形態においても、第1の実施の形態で説明したように、ステップS34の代わりに、区間毎にECG (脈波同期信号)の周波数分析をし、その最大成分の周波数を決定し、これに基づいてフィルタの特性を決定するステップとしても良い。
【0062】本実施の形態によれば、体動によるアーテファクトの影響が無い実際の脈波同期信号を参照してフィルタ特性を決定しているので、正確な測定を行うことができる。
【0063】第3の実施の形態;2波長SpO2測定装置(組織の厚みの変動は無視、フィルタの帯域を逐次変えて調節)
図7に本実施の形態の構成を示す。第1の実施の形態と異なるのは、心電図信号検出部を備えず、CPU6は、ROM7に格納された図8のフローチャートに示すプログラムに基づいて、処理を行う点である。
【0064】このように構成された装置の動作を説明する。サンプリングパルスが発生すると、図2に示したようにリングバッファに各波長の透過光の減光度の変化分ΔAiを取り込む処理を行うことは第1の実施の形態と同様である。
【0065】ピッチパルスが発生すると、図8に示すような処理を行う。この図に示すように、波長数を示すレジスタの内容を1にして(S81)、順次波長λ1 、λ2 のそれぞれについてリングバッファに格納されているデータをRAM8に設定されているスパンデータバッファ(Span data buffer)に取り込む(S82)。
【0066】次にフィルタ定数を初期値に設定し(S83)、フィルタ特性を逐次変更してフィルタリングを行い、各フィルタ特性におけるフィルタ出力ΔA'1 、ΔA'2から各Φ12を求め、各Φ12から酸素飽和度S を求めてS の列を求める(S84)。その中で最大値を採用しこれを表示器9に表示する(S85)。
【0067】本実施の形態によれば、脈波同期信号を検出する手段が不要であるので、構成が簡単である。
【0068】上記の実施の形態において、CPU6、ROM7およびRAM8から成るデジタルコンピュータの機能をブロックに分けて示すと図9に示すようになる。また、このとき、各部のタイミングチャートは第1の実施の形態と同じ図5に示すようになる。
【0069】第4の実施の形態;3波長SpO2測定装置(組織の厚みの変動を考慮、フィルタの帯域を逐次変えて調節)
本実施の形態の構成は図7に示した構成において、光源1は3波長λ1,λ2,λ3 の光を発生する点、CPU6はこの3波長に関するデータを処理する点で異なっているが、他の点では同様である。
【0070】このように構成された装置の動作も第3の実施の形態と殆ど同様である。第3の実施の形態と異なるのは、第3の実施の形態の場合、波長数は2であり、本実施の形態の場合、波長数は3である。従って、ステップS84では各フィルタ特性におけるフィルタ出力ΔA'1 、ΔA'2 、ΔA'3 を求め、Φ12= ΔA'1/ΔA'2 、Φ32= ΔA'3/ΔA'2 を求め、求めたΦ12、Φ32と次の関係から酸素飽和度S を求める。
Φ12= ΔA1/ ΔA2=[{Ea1(Ea1+F) } 1/2 -Ex1]/[{Ea2(Ea2+F) }1/2 -Ex2]Φ32= ΔA3/ ΔA2=[{Ea3(Ea3+F) } 1/2 -Ex3]/[{Ea2(Ea2+F) }1/2 -Ex2]【0071】上記の実施の形態において、CPU6、ROM7およびRAM8から成るデジタルコンピュータの機能をブロックに分けて示すと図10に示すようになる。また、このとき、各部のタイミングチャートは第1の実施の形態と同じ図5に示すようになる。
【0072】本実施の形態によれば、脈波同期信号を検出する手段が不要であるので、構成が簡単である。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、多波長、多成分の測定においても、体動アーテファクトの影響を受けないで正確に酸素飽和度を測定することができる。また、組織の厚さの変動を考慮した場合にも適用できるパルスオキシメータを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
【公開番号】 特開平11−216133
【公開日】 平成11年(1999)8月10日
【出願番号】 特願平10−23048