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【発明の名称】 赤外線体温計
【発明者】 【氏名】萩 浩司

【要約】 【課題】校正点の数を増加することなく、測定精度を向上することができる赤外線体温計を提供する。

【解決手段】赤外線体温計(体温計)は、赤外線センサーおよび温度センサーを備えた検温部と、演算部311、メモリーおよびタイマーを備えた制御手段と、A/D変換器と、表示部と、ブザーとを有している。赤外線センサーの出力値xは、演算部311の演算器311bに入力される。温度センサーの出力値yは、演算部311の直線化手段311aに入力され、y´に変換され、演算器311bに入力される。このy´と環境温度との関係を示す特性は、略直線状となる。演算器311bでは、赤外線センサーの出力値xと、直線化手段311aの出力値y´と、メモリー312から読み出した各係数a〜iおよびjとを所定の多項式f2 (x,y´)に代入して体温を求める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 測定部位から発せられる赤外線を検出する赤外線センサーと環境温度を検出する温度センサーを有し、前記赤外線センサーからの信号値と前記温度センサーからの信号値を、これらの信号値をパラメータとする近似多項式に代入することで体温値を演算する赤外線体温計において、前記近似多項式に代入する温度センサーからの信号値は、前記環境温度への依存特性が略直線状であることを特徴とする赤外線体温計。
【請求項2】 前記温度センサーは、サーミスタであり、前記サーミスタからの直接信号値を前記環境温度への依存特性が略直線状となるように変換することで、前記近似多項式に代入する温度センサーからの信号値を算出する請求項1に記載の赤外線体温計。
【請求項3】 前記近似多項式の次数は、前記赤外線センサーからの信号値と前記温度センサーからの信号値のパラメータについて、それぞれ2次以上である請求項1または2に記載の赤外線体温計。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤外線温度計に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、赤外線の技術が進歩する中で、赤外線体温計が多く使用されるようになっている。
【0003】赤外線体温計では、測定部位から発生する赤外線の強度を赤外線センサーで検出するとともに、環境温度を温度センサーで検出し、これら赤外線センサー出力および温度センサー出力とから短時間で体温を求める。このため、従来より使用されている一般的な体温計と比較すると測定時間を短縮することができるという大きな利点があり、例えば、落ち着きのない幼児や子供の体温を測定する場合には極めて有用である。
【0004】赤外線センサー出力と温度センサー出力とから体温を求める方法としては、赤外線センサー出力および温度センサー出力と、体温との関係を多項式で近似し、この多項式に赤外線センサー出力および温度センサー出力の値を代入して、体温値を求める方法がある。以下、この方法を具体的に説明する。
【0005】赤外線センサーの出力値をパラメータx、温度センサーの出力値をパラメータyとすれば、体温値は、下記(1)に示す多項式f1 (x,y)で表すことができる。
【0006】
1 (x,y)=a13 +b12 +c1 x+d12 y+e1 xy +f1 xy2 +g1 y+h12 +i13 +j1 ・・・(1)
【0007】但し、上記(1)式のa1 〜j1 は、定数(a1 〜i1 は係数)である。従って、この多項式f1 (x,y)の各係数a1 〜i1 およびj1 が判っていれば、赤外線センサーの出力値xおよび温度センサーの出力値yを前記多項式f1 (x,y)に代入することにより、体温を求めることができる。
【0008】この場合、各係数a1 〜i1 およびj1 は、校正、すなわち、複数の校正点におけるxおよびyの値(データ)と、そのときのターゲット温度値とを上記(1)式に代入し、これにより得られる連立方程式を解くことにより、予め設定されている。
【0009】しかしながら、上記(1)式は、あくまでも近似式であり、xおよびyの値と、対象温(測定部位の温度)との関係を正確に表しているものではないので、従来の赤外線体温計では高精度の体温測定ができないという欠点がある。
【0010】なお、校正点の数を増加することにより近似精度を向上させることはできるものの、この場合には、校正点の数が増加するので、校正(各係数a1 〜i1 およびj1 の設定)に手間がかかるとともに、長時間を要するという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、校正点の数を増加することなく、測定精度を向上することができる赤外線体温計を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(3)の本発明により達成される。
【0013】(1) 測定部位から発せられる赤外線を検出する赤外線センサーと環境温度を検出する温度センサーを有し、前記赤外線センサーからの信号値と前記温度センサーからの信号値を、これらの信号値をパラメータとする近似多項式に代入することで体温値を演算する赤外線体温計において、前記近似多項式に代入する温度センサーからの信号値は、前記環境温度への依存特性が略直線状であることを特徴とする赤外線体温計。
【0014】(2) 前記温度センサーは、サーミスタであり、前記サーミスタからの直接信号値を前記環境温度への依存特性が略直線状となるように変換することで、前記近似多項式に代入する温度センサーからの信号値を算出する上記(1)に記載の赤外線体温計。
【0015】(3) 前記近似多項式の次数は、前記赤外線センサーからの信号値と前記温度センサーからの信号値のパラメータについて、それぞれ2次以上である上記(1)または(2)に記載の赤外線体温計。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の赤外線体温計を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0017】図1および図2は、それぞれ、本発明の赤外線体温計(以下、単に「体温計」と言う)の正面図および側面図、図3は、本発明の体温計においてプローブにプローブカバーを装着した状態を示す図1中のA−A線断面図、図4は、本発明の体温計の内部構造を模式的に示す断面側面図、図5は、検温部の構造を示す斜視図、図6は、本発明の体温計の回路構成例を示すブロック図である。なお、説明の都合上、図1、図2の上側を「上部」、下側を「下部」、図3、図4の上側を「先端」、下側を「基端」と言う。
【0018】図1〜図4に示すように、本発明の体温計1は、耳内(鼓膜)から発せられる赤外線の強度を測定することにより体温を検出する耳式体温計であり、ケーシング21を有する体温計本体2と、体温計本体2の正面に設置された電源スイッチ3および表示部5と、体温計本体2の背面上部に設置された測定スイッチ4とを有している。
【0019】プローブ6は、体温計本体2の上部正面側に、体温計本体2に対し着脱自在に設置されている。図3に示すように、支持台7は、大径部71と、その先端側の小径部72とを有し、大径部71および小径部72の外周には、それぞれ、雄螺子73、74が形成されている。
【0020】一方、管状のプローブ6の基端には、大径部71の先端面に当接する基部61を有するとともに、プローブ6の基端側内面には、前記雄螺子74と螺合する雌螺子62が形成されている。これらの雄螺子74と雌螺子62を螺合することにより、プローブ6が支持台7に支持、固定される。
【0021】また、プローブ6は、その外径が先端に向かって漸減する形状をなしており、プローブ6の先端外周部(縁部)63は、耳腔内へ挿入したときの安全性を考慮して、丸みを帯びた形状をなしている。
【0022】支持台7の中心部には、その先端から導入された赤外線(熱線)を検温部10の赤外線センサー101へ導くライトガイド(導波管)8が立設されている。ライトガイド8は、好ましくは熱伝導性の良い銅などの金属で構成され、その内面には、金メッキが施されている。
【0023】また、ライトガイド8には、その先端開口を覆うように保護シート81が被覆されている。これにより、ライトガイド8の内部にゴミ、塵等が侵入することが防止される。なお、保護シート81は、赤外線透過性を有するものであり、その構成材料としては、後述するプローブカバー11と同様の樹脂材料が挙げられる。
【0024】支持台7の大径部71には、リングナット9が螺合される。すなわち、リングナット9の基端側内面には、雌螺子91が形成され、この雌螺子91が大径部71の雄螺子73と螺合することにより、リングナット9が支持台7に支持、固定される。
【0025】このリングナット9は、雌螺子91の先端付近からその外径が先端方向へ向かって漸減するテーパ部92を有し、テーパ部92の内面には、プローブカバー11の胴部12に係合する係合部93が形成されている。
【0026】プローブ6にプローブカバー11を被せ、リングナット9を装着し、所定方向に回転操作して螺合すると、プローブカバー11の胴部12がプローブ6の傾斜部64とリングナット9の係合部93とで挟持され、プローブカバー11がプローブ6に対し確実に固定される。
【0027】なお、本実施例のプローブカバー11の開口端(基端)の周囲にフランジ取り付け基部等を設け、このフランジ等をプローブ6とリングナット9の間で挟持してプローブカバー11を固定することもできる。
【0028】従って、体温測定中等に、プローブカバー11がプローブ6に対しズレを生じたり、容易に離脱することが防止される。また、プローブカバー11をプローブ6から取り外すには、リングナット9を相当の力で回転操作して大径部71との螺合を解除しなければならないので、乳幼児が誤ってプローブカバー11を取り外し、口に入れる等の不都合も防止される。
【0029】リングナット9の先端面94は、ほぼ平坦な面を構成している。プローブ6を耳腔に挿入したとき、この先端面94は、耳腔入口付近に当接し、プローブ6の耳腔への挿入深さを一定の深さに規制する。このため、常に適正条件での測定が可能となり、耳腔への挿入深さの変動による測定誤差を防止することができるとともに、プローブ6の耳腔内に深く入り過ぎて耳の奥部を傷つけるといった不都合も生じない。
【0030】また、リングナット9のテーパ部92の外周面には、リングナット9を締めつける方向または弛める方向に回転操作する際の滑り止め効果を発揮する複数の溝(滑り止め手段)95が円周方向に所定間隔をおいて形成されている。なお、溝95のような凹部に限らず、凸部であっても同様の機能を発揮することができる。また、ゴムのような高摩擦材料を配してもよい。
【0031】プローブカバー11は、基端が開放し、先端が閉じた形状をなしている。このプローブカバー11は、外径および内径が先端へ向かって漸減する筒状の胴部12と、胴部12の先端部に形成された赤外線を透過し得る膜14と、膜14の外周部に形成され、該膜14より先端側に突出するリング状のリップ部15とで構成されている。
【0032】そして、胴部12、膜14およびリップ部15は、好ましくは樹脂材料により一体的に形成されている。この樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられる。
【0033】このプローブカバー11では、リップ部15が存在することにより、膜14がプローブカバー11の先端から所定距離(H)だけ基端側へ下がった状態となる。
【0034】これにより、プローブ6にプローブカバー11を装着し、耳腔内に挿入したとき、膜14が耳腔の内面やその周辺部に触れることや、プローブカバー11のプローブ6への着脱操作時等に指等が触れることが防止され、膜14の表面を清浄に保つことができるので、より高い測定精度を維持することができる。
【0035】このリップ部15は、その内側がプローブ6の先端部に嵌合する形状をなしている。すなわち、図3に示すように、プローブ6にプローブカバー11を装着した状態では、リップ部15がプローブ6の先端外周部63に嵌合する。これにより、耳腔内への挿入時(測定時)等に、プローブカバー11の先端部がプローブ6に対しズレを生じることが防止されるとともに、膜14が一定の張力で張られ、膜14にしわやたるみが生じることが防止されるので、測定精度の向上に寄与する。
【0036】また、リップ部15の先端は、丸みを帯びた形状をなしている。これにより、耳腔内への挿入に際し、痛みを感じたり、耳腔内壁を傷つけたりすることがなく、高い安全性が確保される。
【0037】図4に示すように、ケーシング21内には、回路基板30が設置されており、この回路基板30には、検温部10、マイクロコンピュータよりなる制御手段31、A/D変換器32およびブザー33が搭載されている。また、ケーシング21内には、バッテリーを収納する電源部40が設置され、この電源部40より、回路基板30の各部へ電力が供給される。
【0038】図6に示すように、検温部10は、赤外線センサー101と、温度センサー107とで構成されている。
【0039】制御手段31は、演算部311、メモリー(RAM、ROM、EEPROM)312およびタイマー313を内蔵している。そして、タイマー313には、無駄な電力消費を抑制するためのオートパワーオフタイマーが具備されている。
【0040】このオートパワーオフタイマーは、電源スイッチ3をオンの状態で放置した場合、タイマーをスタートさせてから所定時間(60秒)後に、自動的に電源をオフにするものである。オートパワーオフタイマーをスタートさせてから60秒以内に、電源スイッチ3がオフされた場合でも、60秒経過するまでは、タイマーは、そのカウント動作(時間計測)を継続する。
【0041】図5に示すように、赤外線センサー101は、サーモパイル(熱電対列)102を備えている。そして、熱絶縁帯105を介して中心側に位置する集熱部106にサーモパイル102の温接点103が、熱絶縁帯105の外周側に冷接点104がそれぞれ設置された構成をなしている。
【0042】この赤外線センサー101からは、温接点103と冷接点104との温度差に対応する信号が出力される。
【0043】図6に示すように、この赤外線センサー101の出力信号(アナログ信号)は、A/D変換器32によりデジタル信号に変換された後、制御手段31に入力される。以下、A/D変換器32によりデジタル信号に変換された赤外線センサー101の出力信号を、単に、赤外線センサー101の出力信号と言う。なお、前記赤外線センサー101およびA/D変換器32により、赤外線検出手段が構成される。
【0044】また、図5に示すように、赤外線センサー101の近傍には、温度センサー107が設置されている。この温度センサー107は、赤外線センサー101の熱絶縁帯105より外周側の温度、すなわち冷接点104の温度を検出するとともに、雰囲気の温度(環境温度)を検出する。温度センサー107としては、例えば、サーミスタを用いることができる。
【0045】この温度センサー107からは、冷接点104の温度(環境温度)に対応する信号が出力される。
【0046】図6に示すように、この温度センサー107の出力信号(アナログ信号)は、A/D変換器32によりデジタル信号に変換された後、制御手段31に入力される。以下、A/D変換器32によりデジタル信号に変換された温度センサー107の出力信号を、単に、温度センサー107の出力信号と言う。なお、前記温度センサー107およびA/D変換器32により、温度検出手段が構成される。
【0047】このような検温部10では、赤外線センサー101および温度センサー107により、それぞれ赤外線照射により暖められた温接点103と赤外線が照射されない冷接点104との温度差に相当する信号と、環境温度に相当する信号とを得、後述する制御手段31の演算部311で、これらの関数により体温を測定する。
【0048】図7は、制御手段31の演算部311の構成例を示すブロック図(概念図)である。
【0049】同図に示すように、演算部311は、温度センサー107からの出力信号(直接信号)が入力され、その値(データ)を変換する直線化手段311aと、この直線化手段311aからの出力信号および赤外線センサー101からの出力信号とに基づいて体温を求める演算器311bとを有している。
【0050】直線化手段311aは、温度センサー107の出力値(直接信号値)yをy´に変換する。この変換は、yを温度値(環境温度値)に変換することなく、直線化手段311aの出力値(yの変換後の値)y´と環境温度との関係を示す特性(y´の環境温度への依存特性)が略直線状となるようになされる。
【0051】本実施例では、直線化手段311aは、温度センサー107の出力値yを下記(2)式および(3)式によりy´に変換する。
【0052】
z=(y−β)/β ・・・・(2)
【0053】
y´=z/(1+z/2) ・・・・(3)
【0054】但し、上記(2)式のβは、環境温度が基準温度(基準環境温度)のときの温度センサー107の出力値である。
【0055】基準温度は、体温計の動作が保証される環境温度範囲のほぼ中心付近の温度に設定されている。例えば、保証される環境温度範囲が5℃〜35℃の場合、20℃付近に設定される。そして、このβは、体温計毎に、後述する校正により予め設定される。
【0056】この場合、上記(3)式の代わりに、下記(4)式を用いてもよい。
【0057】
y´=αz/(1+z/2) ・・・・(4)
【0058】但し、上記(4)式のαは、定数(実数)である。なお、上記(3)は、上記(4)式において、α=1としたときに相当する。
【0059】演算器311bは、赤外線センサー101の出力値(信号値)xおよび直線化手段311aの出力値y´を、これらxおよびy´と、体温との関係を表す3次(パラメータxおよびパラメータy´のそれぞれについて3次)の近似多項式f2 (x,y´)、すなわち、下記(5)式に代入して、体温(測定部位の温度)を求める。
【0060】
2 (x,y´)=ax3 +bx2 +cx+dx2 y´+exy´ +fxy´2 +gy´+hy´2 +iy´3 +j ・・・(5)
【0061】但し、上記(5)式のa、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、それぞれ、係数である。各係数a〜iおよびjは、体温計毎に、後述する校正により予め設定される。
【0062】上記(2)式、(3)式および(5)式を含む演算のプログラムは、予め、メモリー312に記憶されている。
【0063】次に、温度センサー107の出力値yを上記(2)式および(3)式によりy´に変換することにより、そのy´と、環境温度との関係を示す特性が略直線状になることと、この直線化による作用、効果とを説明する。
【0064】温度センサー107の出力値(直接信号値)yは、温度センサー107がサーミスタの場合、環境温度に応じて変化する温度センサー107の抵抗値Rに対応している。この温度センサー107の抵抗値Rは、下記(6)式で表される。
【0065】
R=R0 exp(B/T−B/T0 ) ・・・(6)
【0066】但し、上記(6)式のTは、環境温度、R0 は、環境温度がT0 の時の温度センサー107の抵抗値、Bは、定数であり、通常温度センサー107の「B定数」と呼ばれるものである。
【0067】また、ここで、環境温度のT、T0 の単位は[K]であり絶対温度値である。上記(6)式を変形すると、下記(6´)式が得られる。
【0068】
T=1/[{ln(R/R0 )/B}+(1/T0 )] ・・・(6´)
【0069】上記(6´)式より、環境温度Tは、抵抗値Rの変化に対して1/log曲線に沿って変化することが判る。この環境温度Tと、抵抗値Rとの関係を示す特性曲線を図12に示す。なお、図12での環境温度の目盛りは、環境温度を[℃]に換算したものである([K]とは、値が約273異なっている)。
【0070】一方、赤外線センサー101がサーモパイルの場合の出力値xは、温接点103と冷接点104との温度差の変化に対して略直線的に変化する。
【0071】このような1/log曲線状と直線状のセンサー出力特性とが混在する場合には、体温を、従来の技術で述べた(1)式に示すような多項式で近似することには無理があり、よって、体温の測定精度が低いものと考えられる。
【0072】そこで、この体温計1では、前述したように、直線化手段311aにより、前記1/log曲線状の出力特性を実質的に直線化させる。
【0073】ここで、環境温度が基準温度(基準環境温度)TTのときの温度センサー107(サーミスタ)の抵抗値(出力値)をRRとし、任意の温度での抵抗値R(出力値)の前記RRに対する変動率をZとすると、この変動率Zは、下記(7)式で表される。なお、下記(7)式は、上記(2)式に対応する。
【0074】
Z=(R−RR)/RR ・・・(7)
【0075】上記(7)式に上記(6)式のRを代入すると下記(8)式が得られる。
【0076】
Z=exp{(B/T−B/TT)}−1 ・・・(8)
【0077】また、下記(9)式で表されるR´を定義する。なお、下記(9)式は、上記(3)式に対応する。そして、環境温度T、TTは絶対温度での値となっている。
【0078】
R´=Z/(1+Z/2) ・・・(9)
【0079】上記(9)式に上記(8)式のZを代入すると、下記数1に示す(10)式が得られる。
【0080】
【数1】

【0081】上記(10)式で表されるR′と、環境温度Tとの関係を示す特性は、図8に示すように、ほぼ右下がりの直線となる。ここでも図12と同じく環境温度の目盛りは、環境温度を[℃]に換算したものである。
【0082】すなわち、直線化手段311aにおいて、上記(2)式および(3)式により、温度センサー107からの出力値yをy´に変換することにより、そのy´と、環境温度Tとの関係を示す特性は、実質的に直線状(略直線状)となる(直線化手段311aにより、図12に示す1/log曲線が、図8に示すように直線になる)。
【0083】このように、この体温計1では、直線化手段311aにより、y´と、環境温度Tとの関係を示す特性が略直線状となるように、温度センサー107からの出力値(直接信号値)yをy´に変換し、そのy´と赤外線センサー101の出力値xと(5)式の近似多項式とを用いて体温を求めるので、近似精度、すなわち、体温の測定精度が向上する。
【0084】なお、温度センサー107の出力値yを、まず、温度値(環境温度)Tに変換して、パラメータXとパラメータTの近似多項式を用いて体温値を求める方式も考えられるが、この方式の場合には、温度センサー107の出力値yから環境温度Tを求めるために、温度センサー107(サーミスタ)の熱電気校正が必要となる場合がある。これに対し、この体温計1では、温度センサー107の出力値yを環境温度Tに変換することなく、体温を求めるので、前記熱電気校正を行う必要がなく、その手間と時間が低減されるという利点を有する。すなわち、生産性が良く、量産に有利である。
【0085】この体温計1では、前述したように、上記(2)式のβと、上記(5)式の各係数a〜iおよびjは、校正により予め設定される。以下、この校正について説明する。
【0086】まず、βの設定を行う。この場合、環境温度が基準温度(例えば、25℃)のときの温度センサー107の出力値をβとしてメモリー312に記憶する。
【0087】次に、複数の校正点、例えば、複数の環境温度(例えば、7℃、15℃、25℃、35℃)において、それぞれ、温度が判っている複数のターゲット(基準ターゲット)の温度(例えば、32℃、37℃、42℃)についての赤外線センサー101の出力値xおよび温度センサー107の出力値yをそれぞれ検出する。
【0088】このときの温度センサー107の出力値yおよび前記βと上記(2)式、(3)式を用いて、y´を求め、そのy´と、赤外線センサー101の出力値xと、ターゲットの温度とを上記(5)式に代入して、a〜jについての連立方程式を得る。そして、この連立方程式からa〜jを、例えば、最小二乗法により求め、メモリー312に記憶する。以上で、校正が完了する。
【0089】次に、体温計1の作用について説明する。体温計本体2の支持台7の小径部72に前述したようにしてプローブ6を螺合、装着し、さらに、該プローブ6にプローブカバー11を被せる。次いで、その上から、リングナット9を挿通し、支持台7の大径部71に螺合する。これにより、プローブカバー11の胴部12がプローブ6の傾斜部64とリングナット9の係合部93とで挟持され、プローブカバー11がプローブ6に対し固定される。これにより、プローブカバー11の装着が完了する。
【0090】次に、電源スイッチ3をONの状態とし、所定時間経過後、体温計本体2を把持し、プローブカバー11で被包されたプローブ6を耳腔内に挿入する。
【0091】次に、測定スイッチ4を所定時間押圧する。これにより、体温の測定がなされる。すなわち、耳内(鼓膜)から放射された赤外線(熱線)は、膜14および保護シート81を順次透過し、ライトガイド8内に導入され、その内面で反射を繰り返して検温部10の赤外線センサー101に到達し、集熱部106に照射される。
【0092】図7に示すように、赤外線センサー101の出力値xは、制御手段31の演算部311の演算器311bに入力される。
【0093】一方、温度センサー107の出力値yは、制御手段31の演算部311の直線化手段311aに入力される。この直線化手段311aでは、温度センサー107の出力値yと、メモリー312から読み出したβとを用いて演算処理を行う。すなわち、温度センサー107の出力値yと、メモリー312から読み出したβとを上記(2)式および(3)式に代入して、y´を求め、そのy´を出力する。この直線化手段311aの出力値y´は、演算器311bに入力される。
【0094】演算器311bでは、赤外線センサー101の出力値xと、直線化手段311aの出力値y´と、メモリー312から読み出した各係数a〜iおよびjとを用いて演算処理を行う。すなわち、赤外線センサー101の出力値xと、直線化手段311aの出力値y´と、メモリー312から読み出した各係数a〜iおよびjとを上記(5)式に代入して体温を求める。
【0095】求められた体温は、表示部5に表示される。また、体温の測定が終了すると、それを報知するためにブザー33が鳴る。このブザー33の報知により、操作者は、プローブ6を耳腔から抜き取る。
【0096】
【実施例】次に、本発明の体温計の具体的実施例について説明する。
【0097】前述した本発明の体温計1に対して、校正を行い、上記(2)式のβと、上記(5)式の各係数a〜iおよびjとを設定した。この校正の条件は、環境温度を7℃、15℃、25℃、35℃とし、この4つの環境温度について、ターゲットの温度を32℃、37℃、42℃とした(校正点の数=12)。また、環境温度が25℃のときの温度センサー107の出力値をβとして設定した。このβと、各係数a〜iおよびjとを下記表1に示す。
【0098】また、比較例として、直線化手段311aを有していない体温計、すなわち、赤外線センサーの出力値xおよび温度センサーの出力値yを上記(1)式に代入することにより体温を求める方式の体温計を用意した。この温度計に対して、校正を行い、上記(1)式の各係数a1 〜i1およびj1 を設定した。この校正の条件は、前記本発明と同一とした。各係数a1 〜i1およびj1 を下記表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】これら本発明および比較例について、それぞれ、環境温度を10℃、20℃、30℃としたときに、温度が判っているターゲットの温度を測定し、ターゲットの実際の温度と、測定値とから残差(誤差)を求めた。
【0101】図9に、環境温度が10℃のときの本発明における残差(S1)と、比較例における残差(S2)とを示す。
【0102】また、図10に、環境温度が20℃のときの本発明における残差(S3)と、比較例における残差(S4)とを示す。
【0103】また、図11に、環境温度が30℃のときの本発明における残差(S5)と、比較例における残差(S6)とを示す。
【0104】これら図9〜図11のグラフから判るように、本発明では、校正点(環境温度:7℃、15℃、25℃、35℃)以外でも、残差がほとんど生じていない。すなわち、本発明では、直線化手段311aにより、y´と、環境温度Tとの関係を示す特性が略直線状となるように、温度センサーからの出力値yをy´に変換し、そのy´と赤外線センサーの出力値xとを用いて体温を求めるので、体温の測定精度が高い。
【0105】これに対し、比較例では、直線化手段311aを有していないので、環境温度が10℃のとき、0.3℃程度の残差が生じ、環境温度が20℃のとき、−0.1℃程度の残差が生じ、環境温度が30℃のとき、0.1℃程度の残差が生じており、体温の測定精度が低い。
【0106】以上、本発明の体温計を添付図面に示す実施例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。
【0107】例えば、前記実施例では、xおよびy´について、それぞれ3次の近似多項式を使用して体温を求めるよう構成されているが、本発明では、近似多項式の次数は、3次に限定されず、例えば、1次、2次または4次以上でもよい。
【0108】この場合、近似多項式の次数は、2次以上(特に、xおよびy´についてそれぞれ2次以上)が好ましく、近似精度がより高いという観点から、3次以上(特に、xおよびy´についてそれぞれ3次以上)がより好ましい。
【0109】また、前記実施例では、直線化手段311aは、上記(2)式および(3)式により、yをy´に変換するよう構成されているが、本発明では、y´と、環境温度Tとの関係を示す特性が略直線状となるように、yをy´に変換し得ればよく、yをy´に変換するときに用いる式(変換式)は、上記(2)式および(3)式には限定されない。
【0110】また、本発明では、上記(5)式から得られた体温に対し、所定の温度補正が行われるように構成してもよい。
【0111】また、前記実施例は、耳式体温計であるが、本発明は、測定部位から発せられる赤外線の強度を検出して体温を測定する赤外線体温計であれば、耳式体温計には限定されない。
【0112】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の赤外線体温計によれば、温度センサーからの出力値(直接信号値)を、変換後の値(信号値)と環境温度との関係を示す特性(信号値の環境温度への依存特性)が略直線状となるように変換する直線化手段を有しているので、校正点の数を増加させることなく、体温の測定精度を向上させることができる。
【0113】特に、直線化手段により、温度センサーからの出力値を温度値に変換することなく変換するので、熱電気校正を行う必要がなく、よって、生産性が良く、量産に有利である。
【出願人】 【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
【公開番号】 特開平11−113858
【公開日】 平成11年(1999)4月27日
【出願番号】 特願平9−306657