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【発明の名称】 マクスウェル項に関連する誤差を補償する方法
【発明者】 【氏名】イピング・ドゥー

【氏名】クシアオホング・ゾー

【氏名】マシュー・アブラハム・バーンスタイン

【氏名】ジョセフ・ケネス・メイアー

【要約】 【課題】マクスウェル項によって生じるz−オフセットを伴ったアキシャル画像における画像アーティファクトを減少させることのできる方法を提供する。

【解決手段】マクスウェル項によって生じる位相分散と釣り合わせるのに有用な勾配パルスを用いてEPIパルス・シーケンスを補償することにより、アキシャルEPI画像における信号低下及び信号の変動が補正される。スライス選択勾配を用いてEPIパルス・シーケンスを補償する4つの実施例が記載されており、又、第5の実施例は読み出し勾配を用いている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 パルス・シーケンスを用いて核磁気共鳴画像を収集する際に核磁気共鳴システムにおいてイメージング勾配により発生されるマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法であって、(a) RF励起パルスを発生する工程と、(b) システムの等価中心からある距離(z)に位置しているスライス内のスピンを励起させるように前記RF励起パルスと協働するスライス選択勾配を発生する工程と、(c) 対応する一連の核磁気共鳴グラディエント・エコー信号を発生するように極性が交番している読み出し勾配を発生する工程と、(d) 前記核磁気共鳴エコー信号を個別に空間エンコードするように位相エンコーディング勾配を発生する工程と、(e) 前記交番している読み出し勾配により前記核磁気共鳴エコー信号内に発生されるマクスウェル位相を補償する補償用勾配を発生する工程と、(f) 前記核磁気共鳴グラディエント・エコー信号を収集すると共に該信号を用いて画像を再構成する工程とを備えたマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法。
【請求項2】 前記補償用勾配は、前記スライス選択勾配の一部を形成しており、該補償用勾配の寸法は、前記交番している読み出し勾配の振幅及び前記システムの等価中心からの前記スライスの前記距離(z)により決定されている請求項1に記載のマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法。
【請求項3】 前記補償用勾配は、前記読み出し勾配が発生される前に発生される単一の勾配ローブである請求項2に記載のマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法。
【請求項4】 前記補償用勾配は、前記交番している読み出し勾配が発生されている時間の実質的に全体にわたって発生される単一の勾配ローブである請求項2に記載のマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法。
【請求項5】 前記補償用勾配は、前記核磁気共鳴エコー信号に対応していると共に該核磁気共鳴エコー信号の収集と実質的に同時に発生される一連の勾配ローブである請求項2に記載のマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法。
【請求項6】 前記補償用勾配は、前記収集される核磁気共鳴エコー信号に対応しており且つ該核磁気共鳴エコー信号の収集と収集との間に発生される一連の勾配ローブである請求項2に記載のマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法。
【請求項7】 前記RF励起パルスの後に且つ前記核磁気共鳴エコー信号の収集の前に、180°リフォーカシングRFパルスが発生されており、前記補償用勾配は、前記読み出し勾配の一部を形成していると共に前記180°リフォーカシングRFパルスが発生される前に発生されており、前記補償用勾配の正味の面積は、ゼロである請求項1に記載のマクスウェル項に関連する誤差を補償する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明の分野は、核磁気共鳴イメージング方法及びシステムである。より具体的には、本発明は、MRIシステムのイメージング勾配によって発生される「マクスウェル項」によって生じる画像アーティファクトの補正に関する。
【0002】
【従来の技術】人体組織のような物体が一様の磁場(分極磁場B0 )にさらされると、組織内のスピンの個々の磁気モーメントは、この分極磁場に沿って整列しようとするが、各スピン固有のラーモア周波数で分極磁場の周りを歳差運動する。物体、即ち組織が、x−y平面内に存在すると共にラーモア周波数に近い磁場(励起磁場B1 )にさらされると、整列後の正味のモーメントMz は、x−y平面に向かって回転する、即ち「傾斜」して、正味の横(方向)磁気モーメントMt を発生することができる。励起したスピンによって信号が放出され、励起磁場B1 を停止させた後に、この信号を受信すると共に処理して画像を形成することができる。
【0003】これらの信号を利用して画像を形成するときに、磁場勾配(Gx 、Gy 及びGz )が用いられる。典型的には、イメージングされるべき領域は、これらの勾配が、用いられている特定の局在化方法に従って変化するような一連の測定サイクルによって走査されている。結果として得られるNMR受信信号のセットをディジタル化すると共に処理し、多くの周知の再構成手法のうちの1つを用いて画像を再構成する。
【0004】線形磁場勾配(Gx 、Gy 及びGz )の不完全性が、再構成される画像にアーティファクトを発生することは周知である。例えば、勾配パルスによって発生される渦電流が磁場を撹乱し、画像アーティファクトを発生することは周知の問題点である。又、このような渦電流誤差を補償する方法も、例えば、米国特許第4,698,591号、同第4,950,994号及び同第5,226,418号に開示されているように周知である。
【0005】更に、上述の勾配が、イメージング空間の全体にわたって完全に一様なわけではなく、画像の歪みをもたらすおそれがあることも又、周知である。この非一様性を補償する方法は周知であり、例えば米国特許第4,591,789号に記載されている。
【0006】
【数1】

【0007】
【発明が解決しようとする課題】超伝導マグネット内で実行されるアキシャル・エコー・プラナ・イメージング(EPI)において、オフ・センタのスライス(z≠0)における画像では、スライスのz−オフセットが増加するにつれて信号の大きさが低下することが観察されている。このアーティファクトは、いくつかの問題を引き起こす。信号強度の変動は、連続したアキシャル2次元画像の積層(スタック)が他の平面にリフォーマット(reformat)されるときには特に、臨床診断及び治療計画を混乱させるおそれがある。信号強度の低下は又、画像の信号対雑音比(SNR)を低下させる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、マクスウェル項によって生じるz−オフセットを伴ったアキシャル画像における画像アーティファクトを減少させる方法である。より明確に述べると、本発明は、対応する一連のエコー信号を発生して、イメージング勾配によって発生されるマクスウェル磁場によって生じる位相分散に起因する信号低下を補償するような交番型読み出し勾配を採用したパルス・シーケンスの改良である。この補償は、既存の勾配パルスに対して勾配面積を追加する、即ち、マクスウェル位相誤差に釣り合う勾配パルスを追加する又は一連の勾配パルスを追加することにより行われる。この補償用勾配は、NMR信号の収集に先立つ単一のパルスとして印加されることもできるし、又はデータ収集中にわたって印加されるより低振幅のパルスとして印加されることもできる。補償用勾配は又、各々のNMR信号の収集と収集との間に印加される一連のより小さな勾配パルスとして印加されることもできるし、又は各々のNMR信号の収集中に印加される同じく一連のより小さな勾配パルスとして印加されることもできる。スピン・エコーEPIでは、補償は又、2極の勾配波形を追加することにより適用されることもできるし、又は180°リフォーカシングRFパルスの前に、周波数エンコーディング軸内の流れ補償された3極の勾配波形を追加することにより適用されることもできる。
【0009】本発明の一般的な目的は、システムの等価中心(イソセンタ)からずれた所にあるアキシャル画像における信号低下を防止することにある。発見されたところによると、所与のアキシャル位置及び所与のパルス・シーケンスについて、信号低下の原因となっている空間的に2次のマクスウェル位相分散を算出し、空間的に線形(1次)の位相によって近似することができる。次いで、マクスウェル位相を相殺する1つ又は複数の勾配パルスを追加することにより、パルス・シーケンスを補償することができる。
【0010】
【発明の一般的な記載】
【0011】
【数2】

【0012】式(1a)及び式(1c)から、以下の式が得られる。
(∂Bx /∂x)+(∂By /∂y)+(∂Bz /∂z)=0 (2)
(∂Bx /∂y)=(∂By /∂x) (3a)
(∂By /∂z)=(∂Bz /∂y) (3b)
(∂Bz /∂x)=(∂Bx /∂z) (3c)
以上の4つの方程式(2)及び(3a)〜(3c)は、全部で9つの偏導関数を含んでおり、そのうちの5つのみが独立である。次の作業は、これら5つの独立変数を選択することである。(∂Bz /∂x)≡Gx 、(∂Bz /∂y)≡Gy及び(∂Bz /∂z)≡Gz (Gx 、Gy 及びGz は線形勾配である。)であることがわかっているので、最初の3つの独立変数としてGx 、GyびGz を直ちに選択することができる。円筒座標における放射形対称のGz 磁場については、(∂Bx /∂x)及び(∂By /∂y)は同一であるはずである。しかしながら、より一般的な場合を網羅するために、第4の独立変数として、無次元の対称パラメータαを選択する。即ち、 α≡−(∂Bx /∂x)/Gz (4a)
又は 1−α≡(∂By /∂y)/Gz (4b)
最後の独立変数は、(式(3a)に基づいて)便宜的に以下のように選択することができる。
【0013】
g≡(∂Bx /∂y)=(∂By /∂x) (5)
この時点で、式(2)及び式(3)に記述されている偏導関数のすべてを、5つの独立変数Gx 、Gy 、Gz 、α及びgを用いて表すことができる。
【0014】
【数3】

【0015】すべての項を用いると、総合的磁場は、以下の式のようになる。
【0016】
【数4】

【0017】ここで、1次まででは、【0018】
【数5】

【0019】である。上の式には、2つの重要な意味がある。第1に、B0 磁場は、横方向の磁場Bx 及びBy があるので、もはやz軸に沿って整列してはいないということである。第2に、B0 磁場の大きさは、単純にB=B0 +Gx x+Gy y+Gzzによって与えられるのではなく、 B(x,y,z)=(Bx2+By2+Bz21/2 (9)
によって与えられるということである(B0 +Gx x+Gy y+Gz zは単に、総合的磁場のうちのz成分を表しているに過ぎない。)。式(9)に対して、x、y及びzのそれぞれに関して3回のテイラ級数展開を順次実行すると、磁場が通常のゼロ次及び1次の空間的依存性を有しているばかりでなく、より高次の空間的成分を示すことがわかる。2次までのテイラ展開の結果は、式(10)によって与えられる。
【0020】
B=B0 +Gx x+Gy y+Gz z +(1/2B0 )[α2z2+g2 ]x2 +(1/2B0 )[(1−α)2z2+g2 ]y2 +(1/2B0 )[Gx2+Gy2]z2 −(gGz /B0 )xy +(1/B0 )[gGx −(1−α)Gyz ]yz +(1/B0 )[gGy −αGxz ]xz (10)
MRIで用いられている勾配システムについては、g=0であり、α≒1/2である(円筒対称性により)。これらの条件下で、式(10)は以下のように単純化される。
【0021】
B=B0 +Gx x+Gy y+Gz z +(1/8B0 )Gz22 +(1/8B0 )Gz22 +(1/2B0 )[Gx2+Gy2]z2 −(1/2B0 )Gyz yz −(1/2B0 )Gxz xz (11)
式(10)及び式(11)は、線形磁場勾配が印加されているときには常に、マクスウェル方程式を満たすようなより高次の勾配磁場が発生されることを示している。これらのより高次の勾配磁場を「マクスウェル項」又は「マクスウェル磁場」と呼ぶ。
【0022】マクスウェル項を含めると、2次元NMR信号の方程式は以下のようになる。
【0023】
【数6】

【0024】
M =(1/8B0 )Gz22 +(1/8B0 )Gz22 +(1/2B0 )[Gx2+Gy2]z2 −(1/2B0 )Gyz yz −(1/2B0 )Gxz xz (12c)
ここで、γは磁気回転比であり、BM はマクスウェル磁場であり、φM は関連する位相誤差である。式(12a)〜(12c)によって示唆されるように、マクスウェル位相誤差は、各々のパルス・シーケンスの細部に依存している。パルス・シーケンスによっては、位相誤差はゼロであることもあるし、無視できるものであることもあり、すると、画像の劣化は生じない。しかしながら、他の殆どのシーケンスでは、無視できない位相誤差が発生されるので、歪み、ゴースト、画像シフト、シェーディング(暗影)、ボケ(blurring)及び強度低下等の様々な画質の問題が起こる。
【0025】
【数7】

【0026】
M =(1/2B0 )(Gx2+Gy2)z2 (14)
ここで、B0 は主磁場である。式(13b)及び式(14)を組み合わせると、以下の式を得る。
M =(1/2B0 )Gro22 (15)
マクスウェル磁場BM は、スライスが無限に薄いとすると、中央のスライス(z=0)では消失する。しかしながら、オフ・センタ・スライスの場合には、BMはスライス位置zに関して放物線状に増大する。
【0027】読み出し勾配によって誘起されるマクスウェル磁場BM は、時間変化する位相を発生し、これをマクスウェル位相と呼ぶ。マクスウェル位相は、エコー・トレインの最中に蓄積するので、エコーとエコーとの間で異なっている。しかしながら、あるスライスの画像強度は主として、k空間データの中心によって決定される。アキシャル・スライスの信号強度低下は、ky =0でのエコーに対応しているマクスウェル位相を用いて推定されることができる。
【0028】
【数8】

【0029】ここで、Gro0 は読み出しウィンドウの勾配振幅であり、NTE(=1,2,3,…)はky =0に対応しているエコーのインデクスであり、techoは2つの連続するエコーの間の時間間隔(即ち、エコー間隔)であり、triseは読み出し勾配の立ち上がり時間である。これらを図10に示す。式(17)〜(19)における第2項は、図10に示すように、プリフェイジング・ローブと読み出し勾配ローブの2分の1とによって発生されるマクスウェル位相の差を表している。
【0030】
ηz2 =(γ/2B0 )Gpp2 (tpp−(4/3)tR )z2 −(γ/4B0 )Gro0 2 (techo−(4/3)trise)z2 (19b)
ここで、Gppはプリフェイザの勾配振幅であり、tppはプリフェイザのパルス持続時間であり、tR はプリフェイザの傾斜持続時間である。次いで、以下の式で係数εを ε=(γ/2B0 )Gro0 2 (techo−(4/3)trise)+η/NTE (20)
と定義して、 ΦM (z)=εNTE2 及び dΦM (z)/dz=2εNTEz (21)
となるようにする。
【0031】2次の(quadratic)アキシャル位相を近似するために、1次の(linear)アキシャル位相ψM用いることにする。1次位相は、スライスの中央z0 では2次位相と同じ傾斜を有している。−Δz/2<z−z0 <Δz/2について、 ψM (z0 ,z)=2εNTE0 z+定数 (22)
式(22)において加算されている定数の位相は、振幅画像における信号強度には寄与しないことに留意されたい。式(22)に示す1次のアキシャル位相分散に起因するあるスライスについてのz0 における信号損失が、以下の式で与えられることは容易にわかる。
【0032】
【数9】

【0033】ここで、s(z=z0 )はこのスライスについてのz0 における信号強度であり、s(z=0)はこのスライスについての等価中心における信号強度であり、m0 はスライスの磁化である。式(23)では、このスライスが矩形のプロファイルを有しているものと仮定されている。数値シミュレーションの示すところによれば、式(22)に示す1次の位相分散による信号損失は、従来のスライス厚さについては、式(21)に示す2次の位相分散による信号損失と近似的に同じである。
【0034】式(22)によって示されている位相分散は、対応する1次のアキシャル位相を加えることにより大部分、補償され得る。これを行うには、スライス選択波形Gz に対して、2次のマクスウェル位相を補償する勾配面積を追加すればよい。この位相補償を行うために、4つの異なる方法を開発した。第1の方法では、TEにおいて(即ち、シングル・ショットEPIにおけるky =0のエコーにおいて)2次のマクスウェル位相を補償する1次のアキシャル位相を発生する勾配ローブが追加される。この1次位相の傾斜は、z0 における2次のマクスウェル位相の傾斜と符号が反対であるだけで同じ大きさを有していなければならない。この勾配の面積を、既存の勾配ローブ、例えば、スピン・エコーEPIにおける180°パルスの右側クラッシャ又はグラディエント・エコーEPIにおけるリフォーカシング勾配ローブに加えることができる。代替的には、この面積を、新たな勾配ローブを用いることにより追加することもできる。これを達成するためのスライス選択勾配上の台形勾配ローブの面積は、以下のようにして算出される。
【0035】この勾配ローブが、立ち上がり時間t1 、パルス持続時間tbase及びその平坦頂における勾配振幅Gz0を有しているならば、補償用勾配ローブは、z方向に沿って以下の1次位相を発生する。
【0036】
【数10】

【0037】ここで、Az0は台形ローブの面積である。この勾配ローブからの位相の蓄積は、このスライスについて等価中心においてはゼロであるが、スライスのz−オフセットが増加するにつれて線形に増加する。この台形ローブによって発生される1次位相がz0 においてマクスウェル磁場によって発生される2次位相を補償するようにするためには、以下の関係式が満たされていなければならない。
【0038】
dφ(z)/dz=−dψM (z0 ,z)/dz (25)
ここで、ψM (z0 ,z)は式(22)によって与えられている。式(22)、式(24)及び式(25)を用いると、台形ローブの面積は、z0=−(2/γ)εNTE0 (26)
となるはずである。次いで、式(24)及び式(26)を組み合わせると、台形ローブの振幅は、z0=(z0 )=−(2εNTE0 )/γ(tbase−t1 ) (27)
によって与えられる。tbase及びt1 が固定されているならば、勾配振幅Gz0はz−オフセットz0 に比例することに留意されたい。
【0039】マクスウェル位相は、各々のEPIパルス・シーケンスが進行するにつれて蓄積していくので、各々の収集されたエコーは異なるマクスウェル位相を経験する。本発明による第2の方法では、式(27)によって定義される勾配の面積を、連続するエコーとエコーとの間の勾配「ブリップ」(blip)に分割する。この方法により、マクスウェル位相のエコー間補正(inter-echo correction)が行われる。この方法を用いると、各々のブリップの面積は、z0=−[Gro02(techo−(4/3)trise)z0 ]/B0 (28)
によって決定される。
【0040】式(17)〜式(19)の第2項が無視できるものでなければ、第1のブリップの面積を修正して、この項からの寄与を含むようにしなければならない。この補償は、エコー内補正(intra-echo correction)を応用することにより更に改善され得る。この方法(即ち、第3の方法)を用いると、小さな勾配振幅を有している台形勾配ローブが、各々のエコー収集の最中にスライス選択勾配上に印加される。この勾配の存在下では、マクスウェル位相は各々のサンプリングされる点について補償されている。追加される台形勾配ローブの振幅は、z0=−Gro20 /B0 (29)
によって決定される。式(29)によって与えられる勾配振幅は又、傾斜サンプリング(ramp-sampling)が用いられている場合のEPIにおけるマクスウェル位相を補償するために印加することもできる。
【0041】補償方法の更にもう1つの改良(即ち、第4の方法)は、EPIパルス・シーケンスの読み出し部分の最中に一定のスライス選択勾配を印加するというものである。この方法は、第3の方法の近似である。この方法によって、マクスウェル磁場の影響を完全に近い状態で補償することができる。この方法は又、前述した第2の方法及び第3の方法に比較して減少したピークdB/dtを有している。なぜなら、この方法は、読み出し勾配がその波形の傾斜部分にあるときにスライス選択勾配のスイッチングを要求しないからである。このような減少したピークdB/dtによって、末梢神経への刺激の可能性を防止し易くなる。この方法を用いると、一定のスライス選択勾配の振幅は、z0=−[Gro020 (techo−(4/3)trise)]/B0echo (30)
によって与えられる。
【0042】スピン・エコーEPIパルス・シーケンスを補償する更にもう1つの方法は、読み出し勾配トレインに対して勾配磁場ローブを追加するというものである(即ち、第5の方法)。読み出し軸に沿った空間エンコーディングを中断させないために、この補償用磁場勾配はゼロの正味面積を有していなければならない。このことは、2極の波形、又は3つのローブを有する速度補償された波形によって達成され得るが、この波形は180°RFパルスの前に印加されなければならない。この2極波形によって発生されるマクスウェル位相は、ky =0に対応するエコーに先立つEPIパルス・シーケンス内のNTE個の読み出し勾配ローブによって発生されているマクスウェル位相と同じでなければならない。1つの例として、この2極波形の持続時間及び立ち上がり時間がそれぞれ2techo及びtriseに等しいときに、2極波形の所要の勾配振幅GM は、読み出し勾配の振幅M =(NTE/2)1/2ro0 (31)
よりも大きい。式(31)に示す勾配振幅が勾配システムによって支持される最大振幅よりも大きいならば、2極波形の持続時間を延長する必要がある。この解決法は、追加される2極波形がアキシャル・スライスのz−オフセットに対して独立であるという利点を有している。しかしながら、大きな勾配振幅又は長い持続時間を有している2極波形が必要であるため、大きなNTE及び大きな読み出し勾配振幅を用いる手法においてこの解決法を適用することが妨げられる可能性がある。又、この解決法は、180°リフォーカシングRFパルスが存在していないグラディエント・エコーEPIには適用することができない。
【0043】マクスウェル項に誘起される信号低下は、水平に配置された超伝導マグネットについてのアキシャル・スライスにおいて最もはっきりするが、同様の問題が、サジタル画像及びコロナル画像においても観察される可能性がある。例えば、Gz を読み出し勾配として用いて収集されるコロナル画像(xz平面)については、対応するマクスウェル項は、M =(Gz22 /8B0 )+(Gz22 /8B0 ) (32)
となる。式(32)の第1項によって、平面内(in-plane)の画像の歪みが生じ、又、第2項は、スライス選択方向(y方向)に沿った2次の位相を発生して、その結果、アキシャル画像について議論したものと同様の信号低下が生じる。アキシャル画像について提示した理論的分析及び補正方法のすべてを、マクスウェル項の係数が4分の1の大きさとなることを除き、コロナル画像及びサジタル画像に対して同様に適用することができる。読み出し勾配がコロナル画像におけるx軸に沿って選択されているときには、y方向に沿った2次のマクスウェル磁場は発生されないことに留意すると興味深い。従って、この画像は、信号低下を経験しない。同じ議論は又、読み出し方向がy軸に沿っている場合のサジタル画像についても真となる。
【0044】前述のマクスウェル項の分析では、水平に配置された超伝導マグネット構成が仮定されていた。垂直磁場の永久マグネット又は垂直磁場の抵抗型マグネットが用いられているときには、物理的なz軸が患者の前後方向に対応している。従って、コロナル画像が最も顕著な信号低下を示す。超伝導マグネットにおけるアキシャル・スライスについて提示したアーティファクトを補正するための原理と同じ原理を、僅かな特記的変更を加えるのみでこの場合にも同じく適用することができる。
【0045】多数のショットを用いるマルチ・ショットEPIのように、位相エンコーディングによるマクスウェル位相が無視できないものとなる場合には、マクスウェル位相の算出は、位相エンコーディング勾配波形及びプリフェイズ・エンコーディング勾配波形からの寄与も含んでいるべきである。以上に述べたマクスウェル磁場の影響の補正方法は、非台形の波形、例えば、シヌソイド形(正弦波)の波形を読み出し用に用いている場合に対しても容易に適合させることができる。式(19)に示したマクスウェル位相の算出は、これに応じて修正されるべきである。
【0046】いわゆる非対称EPIシーケンス、即ち「スキップ・エコー」EPIシーケンスでは、読み出し勾配のもう1つの変形を用いることができる。これらのシーケンスでは、読み出し勾配ローブが同じ極性を有しているときにのみエコーが収集される。グラディエント・エコー・アンド・スピン・エコー(GRASE)シーケンスにおいては、エコー・トレインはスピン・エコーとグラディエント・エコーとの組み合わせである。前述した補正方法を修正して、非対称EPI及びGRASEにおいてもマクスウェル磁場の影響を補正することができる。
【0047】傾斜サンプリングが用いられている場合には、第1、第2、第4及び第5の補正方法を修正なしで適用することができる。但し、第3の方法は、適正な補正を行うためには修正する必要がある。
【0048】
【実施例】先ず、図1について説明する。同図には、本発明を組み込んだ好ましいMRIシステムの主要な構成要素が示されている。システムの動作は、キーボード及び制御パネル102と、表示装置104とを含んでいるオペレータ・コンソール100から制御される。コンソール100はリンク116を介して、独立した計算機システム107と交信しており、計算機システム107は、オペレータがスクリーン104上での画像の形成及び表示を制御することを可能にしている。計算機システム107は、バックプレーンを介して互いに交信しているいくつかのモジュールを含んでいる。これらのモジュールは、画像プロセッサ・モジュール106と、CPUモジュール108と、画像データを記憶するフレーム・バッファとして当業界で知られているメモリ・モジュール113とを含んでいる。計算機システム107は、画像データ及びプログラムを記憶するためのディスク記憶装置111及びテープ・ドライブ112に結合されており、又、高速シリアル・リンク115を介して別個のシステム制御部122と交信している。
【0049】システム制御部122は、バックプレーン118によってまとめて接続された一組のモジュールを含んでいる。これらのモジュールは、CPUモジュール119と、パルス発生器モジュール121とを含んでおり、パルス発生器モジュール121は、シリアル・リンク125を介してオペレータ・コンソール100に接続している。リンク125を介して、システム制御部122は実行されるべき走査シーケンスを指示する命令(コマンド)をオペレータから受け取る。パルス発生器モジュール121は、システムの構成要素を動作させて、所望の走査シーケンスを実行する。モジュール121は、発生されるべきRFパルスのタイミング、振幅及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを発生する。パルス発生器モジュール121は、一組の勾配増幅器127に接続しており、走査中に発生される勾配パルスのタイミング及び形状を指示する。パルス発生器モジュール121は又、患者に接続されたいくつかの異なるセンサからの信号、例えば電極からの心電図(ECG)信号又はベローズからの呼吸信号を受信する生理学データ収集制御装置129から患者のデータを受信する。最後に、パルス発生器モジュール121は、走査室インタフェイス回路133に接続しており、走査室インタフェイス回路133は、患者及びマグネット・システムの状態に関連した様々なセンサからの信号を受信する。走査室インタフェイス回路133を介して、患者位置決めシステム134も又、走査に望ましい位置に患者を移動させるための命令を受信する。
【0050】パルス発生器モジュール121によって発生される勾配波形は、Gx 増幅器と、Gy 増幅器と、Gz 増幅器とで構成されている勾配増幅器システム127に印加される。各々の勾配増幅器は、全体的に参照番号139で示すアセンブリ内の対応する勾配コイルを励起して、収集される信号を空間的にエンコードするのに用いられる磁場勾配を発生する。勾配コイル・アセンブリ139は、分極マグネット140と全身型RFコイル152とを含んでいるマグネット・アセンブリ141の一部を形成している。システム制御部122内の送受信器モジュール150がパルスを発生し、これらのパルスは、RF増幅器151によって増幅されて、送信/受信(T/R)スイッチ154によってRFコイル152に結合される。患者の内部の励起した核によって放出される結果として生ずる信号は、同じRFコイル152によって検知され、送信/受信スイッチ154を介して前置増幅器153に結合され得る。増幅されたNMR信号は、送受信器150の受信器部において復調され、濾波されると共にディジタル化される。送信/受信スイッチ154は、パルス発生器モジュール121からの信号によって制御されて、送信モード時にはRF増幅器151をコイル152に電気的に接続し、受信モード時には前置増幅器153をコイル152に電気的に接続する。送信/受信スイッチ154は又、送信モード又は受信モードのいずれの場合にも、分離型RFコイル(例えば、頭部コイル又は表面コイル)を用いることを可能にしている。
【0051】RFコイル152によって捕えられたNMR信号は、送受信器モジュール150によってディジタル化されて、システム制御部122内のメモリ・モジュール160へ転送される。走査が完了してデータの配列の全体がメモリ・モジュール160内に収集されたときに、アレイ・プロセッサ161が動作して、このデータを画像データ・セットへフーリエ変換する。この画像データ・セットは、シリアル・リンク115を介して計算機システム107へ伝送されて、ここで、ディスク・メモリ111に記憶される。オペレータ・コンソール100から受信された命令に応答して、この画像データ・セットをテープ・ドライブ112に保管してもよいし、又は画像プロセッサ106によって更に処理してオペレータ・コンソール100へ伝送すると共に表示装置104に表示してもよい。
【0052】図1及び図2について詳細に説明する。送受信器150は、電力増幅器151を介してコイル152Aの所でRF励起磁場B1 を発生すると共に、コイル152B内に誘導された結果としての信号を受信する。上述のように、コイル152A及びコイル152Bは、図2に示すような分離型であってもよいし、又は図1に示すような単一の全身型コイルであってもよい。RF励起磁場の基本周波数、即ち搬送周波数は、周波数合成器200の制御下で発生されている。周波数合成器200は、CPUモジュール119及びパルス発生器モジュール121から一組のディジタル信号を受信する。これらのディジタル信号は、出力201の所で発生されるRF搬送波信号の周波数及び位相を示している。命令に従って発生されたRF搬送波は、変調器及びアップ・コンバータ202に印加され、ここで、その振幅は、やはりパルス発生器モジュール121から受信された信号R(t)に応答して変調される。信号R(t)は、発生されるべきRF励起パルスの包絡線を画定しており、記憶された一連のディジタル値を順次読み出すことによりモジュール121内で発生されている。これらの記憶されたディジタル値は又、オペレータ・コンソール100から変更可能であり、任意の所望のRFパルス包絡線を発生することができる。
【0053】出力205の所で発生されたRF励起パルスの振幅は、バックプレーン118からディジタル命令を受信している励起信号減衰器回路206によって減衰される。減衰されたRF励起パルスは、RFコイル152Aを駆動する電力増幅器151へ印加される。送受信器122のこの部分に関する更なる詳細については、米国特許第4,952,877号に記載されている。
【0054】図1及び図2について説明を続ける。被検体によって発生された信号は、受信器コイル152Bによって捕えられ、前置増幅器153を介してもう1つの受信信号増幅器207の入力へ印加される。受信信号増幅器207は、バックプレーン118から受信されたディジタル減衰信号によって決定されている量だけ信号を更に増幅する。
【0055】受信される信号は、ラーモア周波数又はそれに近い周波数であり、この高周波信号は、ダウン・コンバータ208によって次の2段階の処理で下降変換(ダウン・コンバート)される。即ち、先ず、NMR信号を線201の搬送波信号と混成し、次いで結果である差信号を線204の2.5MHzの基準信号と混成する。下降変換されたNMR信号は、アナログからディジタルへの(A/D)変換器209の入力へ印加され、A/D変換器209は、アナログ信号をサンプリングしてディジタル化すると共に、これをディジタル検出器及び信号プロセッサ210へ印加し、ディジタル検出器及び信号プロセッサ210は、受信された信号に対応する16ビットの同相(in-phase(I))値及び16ビットの直角位相(quadrature(Q))値を発生する。受信された信号のディジタル化されたI値及びQ値の結果であるストリームは、バックプレーン118を介してメモリ・モジュール160へ出力され、ここで画像を再構成するのに用いられる。本発明の好ましい実施例に採用されているEPIパルス・シーケンスを図3に示す。スライス選択勾配パルス251の存在下で90°RF励起パルス250が印加されており、スライス内に横磁化を発生する。励起したスピンは、スライス選択勾配上の負のローブ252によってリフェーズされ、次いで、ある時間間隔が満了すると、180°RFリフォーカシング・パルス260がスライス選択勾配パルス262の存在下で印加される。このEPIパルス・シーケンスの間には、参照番号253に示すように、総数でNy (例えば、Ny =128)の独立したNMRエコー信号が収集される。各々のNMRエコー信号253は、個別に位相エンコードされて、単調な順序でky 空間を走査する。
【0056】NMRエコー信号253は、振動型読み出し勾配255の印加によって発生されるグラディエント・リコールド・エコーである。読み出しシーケンスは、プリフェイジング読み出し勾配ローブ256で開始し、読み出し勾配が正値と負値との間を振動するのと同時にエコー信号253が発生される。各々の読み出し勾配パルス255の最中に、各々のNMRエコー信号253から総数でNx (例えば、Nx =128)のサンプルが採取される。連続したNy 個のNMRエコー信号253は、一連の位相エンコーディング勾配パルス258によって別個に位相エンコードされる。収集されるエコー信号の前にプリフェイジング位相エンコーディング・ローブ259が発生されて、中央のビュー(ky =0)を所望のエコー時間(TE)の所に配置する。読み出し勾配パルス255が極性をスイッチするのと同時に後続の位相エンコーディングパルス258が発生され、これらのパルス258は、位相エンコーディングをky 空間の全体にわたって単調に上方に段階的に変化させる。
【0057】従って、EPIパルス・シーケンスの完了時には、別個に位相エンコードされたNy 個のNMRエコー信号253の別個に周波数エンコードされたNx 個のサンプルが収集されている。ノン・スキップ・エコーEPI用の行フリッピング(row-flipping)の後に、このNx ×Ny の要素から成る複素数の配列が、その両方の次元(ky 及びkx )に沿ってフーリエ変換されて、その2つの次元(x及びy)の各々に沿ったNMR信号の大きさを示す画像データ・セットを発生する。
【0058】図4を詳細に見ると、図3のEPIパルス・シーケンスのスライス選択勾配波形を変更することにより、本発明の第1の好ましい実施例が実現されている。より具体的には、180°RFパルスに関連した右側の勾配クラッシャ272の直後に、台形の勾配ローブ270が追加されている。補償用勾配ローブ270の面積は、固定された持続時間と固定された立ち上がり時間とを有しており、その振幅は、前述した式(27)に従って、スライスのz−オフセットに比例している。
【0059】図5を詳細に見ると、本発明の第2の好ましい実施例が、各々のEPIパルス・シーケンスの最中に、エコーの収集と収集との間でマクスウェル位相を補償している。このことは、連続したエコー信号の読み出しと読み出しとの間にスライス選択勾配ブリップ274を追加することにより行われている。各々の勾配ブリップ274の面積は、前述した式(28)に従って算出されている。
【0060】図6を詳細に見ると、本発明の第3の好ましい実施例が、各々のEPIパルス・シーケンスの最中にエコー信号が収集されるのと同時にマクスウェル位相を補償している。このことは、各々のエコー信号の読み出し中にスライス選択勾配ローブ276を追加することにより行われている。これらの台形勾配ローブ276の振幅は、前述した式(29)によって決定されている。
【0061】図7を詳細に見ると、本発明の第4の好ましい実施例が、EPIパルス・シーケンスの読み出し部分の最中にマクスウェル位相を補償している。このことは、読み出し時間の全体にわたって一定の低振幅のスライス選択勾配278を追加することにより行われている。本発明のこの実施例を用いる場合に、補償用勾配278の振幅は、前述した式(30)によって与えられている。
【0062】図8を詳細に見ると、本発明の第5の好ましい実施例において、補償用勾配磁場が読み出し方向に印加されている。より明確に述べると、2極の勾配波形295が、180°RFパルス260に先立って読み出し勾配によって発生されている。2極の勾配295の正味の面積は、読み出し軸に沿った空間エンコーディングに影響を与えないように、ゼロになっている。補償用の2極の勾配波形295によって発生されるマクスウェル位相は、中央のエコー(ky =0)が収集される点までは、交番型読み出し勾配255によって発生されるマクスウェル位相に等しくなるように設定されている。この振幅を、2極の勾配295の持続時間を延長することにより減少させることもできる。
【0063】図9を詳細に見ると、本発明が採用されたときに達成される効果が、補正を行わない従来のEPIパルス・シーケンスと比較されている。システムの等価中心(即ち、z=0)の両側へ14cmにわたって位置している15のアキシャル・スライスが収集された。信号強度は、矩形の関心領域内のすべてのピクセルについて画像強度を積分することにより測定された。実線290によって示すように、未補正の画像についての信号低下は、等価中心から14cmの距離において近似的に50%であった。他方、破線292によって示すように、本発明の第1の好ましい実施例を用いて同じアキシャル・スライスを収集するときには、有意の信号低下は存在しない。
【出願人】 【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【出願日】 平成10年(1998)6月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】生沼 徳二
【公開番号】 特開平11−104110
【公開日】 平成11年(1999)4月20日
【出願番号】 特願平10−184341