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【発明の名称】 磁気共鳴イメージング方法
【発明者】 【氏名】西村 和美

【氏名】高橋 哲彦

【要約】 【課題】MRI装置によるマルチスライス撮影において各スライスでの静磁場補正を精度よく行い、画像やスペクトルの歪みを解消する。

【解決手段】複数のスライスについて順次励起、信号計測を行い複数のスライスについての画像或いはスペクトルを再構成するMRI方法において、複数のスライス面を含む第1の空間について静磁場分布を計測し、その静磁場分布に基づき第1の空間の静磁場の不均一を補正する第1の付加的磁場を発生し、第1の付加的磁場の存在下で複数のスライス面の各々に対応する第2の空間についてそれぞれ静磁場分布を計測し、それら静磁場分布に基づき第2の空間の静磁場の不均一を補正する第2の付加的磁場の強度を求め、複数のスライス面の撮像を、第1の付加的磁場及び対応する第2の付加的磁場を発生させた状態で行う。第2の付加的磁場は1次項のみとし傾斜磁場のオフセットで実現する。これによりスライスの切換えに伴い高速にシムチャンネルを切換えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】静磁場中に置かれた検査対象に、高周波磁場、傾斜磁場を所定のパルスシーケンスで印加し、前記検査対象の複数のスライス面を順次励起するとともに前記複数のスライス面から生じる核磁気共鳴信号を順次検出し、前記核磁気共鳴信号をもとに前記複数のスライス面の画像或いはスペクトル情報を画像化する磁気共鳴イメージング方法において、前記複数のスライス面を含む第1の空間について静磁場分布を計測し、その静磁場分布に基づき前記第1の空間の静磁場の不均一を補正する第1の付加的磁場を発生し、前記第1の付加的磁場の存在下で前記複数のスライス面の各々に対応する第2の空間についてそれぞれ静磁場分布を計測し、それら静磁場分布に基づき前記第2の空間の静磁場の不均一を補正する第2の付加的磁場の強度を求め、前記複数のスライス面の撮像を、前記第1の付加的磁場及び対応する第2の付加的磁場を発生させた状態で行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気共鳴イメージング(以下、MRIという)方法に関し、特に静磁場の不均一性を改善したMRI方法に関する。
【0002】
【従来の技術】MRI装置は均一な静磁場内に置かれた被検体に生じる核磁気共鳴(以下、NMRという)を利用して、被検体の断層像やスペクトルを描出する画像診断装置であり、歪みのない画像や高精度のスペクトルを得るために静磁場の均一性が要求される。特に、EPI(エコープレナーイメージング)等の超高速MRIの場合には、高い磁場の均一性が望まれる。また、スペクトロスコピックイメージ等の高精度の計算の場合には、生体を磁場中に挿入することによって生じる静磁場不均一性をも解消する必要があり、これを軽減するために、被検体毎に磁場の不均一を補正することが必要である。
【0003】静磁場不均一性を補正する手法(シミング)として、磁性体を配置したパッシブシムあるいは、磁場補正用のコイル(シムコイル)に流す電流(シム電流)を調整するアクティブシムが用いられており、シムによる磁場調整の良否が画像に直接影響する。シムコイルは、通常互いに直交する磁場、例えば球面調和関数の各項に対応する磁場を発生する3チャンネル以上の静磁場発生コイルから成り、これらシムコイルに電流を流すことによって発生する付加的な静磁場と、主コイルが発生する静磁場を重ね合わせることにより、より均一な磁場を得るようにしている。
【0004】ところでMRIの撮像方法として、複数のスライス面を順次励起し、各スライス面からNMR信号を計測するマルチスライス撮影方法がよく知られている。この場合、シミングには以下の2つの方法がある。第1の方法は、撮影しようとする領域に対して最も均一度が上がるようなシム電流を求め、これを各シムコイルに流す方法である(図6)。すなわち、撮影スライスを含む最小の領域を対象にして、この範囲の静磁場が均一となるようなシム電流値を計算し、撮影に先立ってこのシム電流を流して所望の磁場を発生させて、静磁場不均一の補正の精度を向上させる。マルチスライスの場合は全スライスを含む最小の領域について静磁場不均一を補正するシム電流値を求める。以下、この方法を「手法1」という。
【0005】第2の方法は、スライス毎に対象スライス内の磁場不均一を補正するシム電流値を予め計算しておき、各スライスの撮影に先立って対応するシム電流を流してスライス毎に異なる磁場を発生させて、静磁場不均一の補正の精度を向上させる方法である(図7)。この方法を以下、「手法2」という。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】手法1でマルチスライス撮影する場合とシングルスライス撮影する場合とを比較すると、前者の方が静磁場不均一の補正精度が下がり、それに伴って画質も劣化する。例えば、lcmおきに5枚のスライスを撮影する場合、撮影領域の両端での静磁場分布は数ppm程度異なる場合がある。均一度を高めるためには高次シムチャンネルが必須であり、その場合でも0.3〜0.8ppmが限度である。
【0007】一方、手法2は、スライス毎にシミングを行うため撮影シーケンスに合わせて高速なシム電流値の切り替えが必須である。しかもシム精度を上げるためには多数のチャンネルのシムコイルを実装する必要があり、広いスペースと高コストが必要となる。
【0008】このように両方法とも一長一短であり、比較的簡易な構成で且つ高精度のシミングが可能な方法はなかった。そのため、マルチスライス撮影でのシミング精度が落ち、画質が劣化する傾向があった。本発明は、これらの問題を解決し、高精度のシミングを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のMRI方法は、静磁場中に置かれた検査対象に、高周波磁場、傾斜磁場を所定のパルスシーケンスで印加し、検査対象の複数のスライス面を順次励起するとともに複数のスライス面から生じるNMR信号信号を順次検出し、NMR信号をもとに検査対象の複数のスライス面の画像或いはスペクトル情報を画像化する際に、複数のスライス面を含む第1の空間について静磁場分布を計測し、その静磁場分布に基づき第1の空間の静磁場の不均一を補正する第1の付加的磁場を発生し、第1の付加的磁場の存在下で複数のスライス面の各々に対応する第2の空間についてそれぞれ静磁場分布を計測し、それら静磁場分布に基づき第2の空間の静磁場の不均一を補正する第2の付加的磁場の強度を求め、複数のスライス面の撮像を、第1の付加的磁場及び対応する第2の付加的磁場を発生させた状態で行う。
【0010】上述の如く構成された本発明では、全スライスを含む領域(第1の空間)については第1の付加的磁場によって静磁場不均一を補正し、各スライスに対応する領域(第2の空間)については、第2の付加的磁場によって個々に(各スライス毎に)静磁場不均一を補正することにより、任意断面の磁場不均一を高精度で補正することができる。好適には、第2の付加的磁場は1次項のみを発生する。第1の付加的磁場によりかなりの精度まで磁場不均一性が補正されているので、1次項のみで更に高精度な補正が可能であり、またこれにより少ないチャンネル数でスライス毎のシムの切換えを実施することができ、装置スペースの増大や高コスト化を抑えられる。また1次項のみとした場合には、第2の付加的磁場を発生する手段として傾斜磁場発生手段を利用することができ、オフセット値を変化させることにより装置への負担なく第2の付加的磁場を発生させることができる。
【0011】尚、本発明で対象とする撮影方法は、複数のスライスを目的とした撮影法であれば1つのスライスの繰り返し時間内で複数のスライスの撮影を行うマルチスライス撮影のほか、EPI法、高速スピンエコー法等何でも適用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、実施例を用いて本発明のMRI方法を詳細に説明する。
【0013】図3は本発明が適用されるMRI装置の概略構成図である。同図において静磁場発生磁気回路302は、被検体301内部に一様な静磁場HOを発生させるための電磁石または永久磁石から構成され、磁気回路302内の空間に、静磁場の不均一を補正するためのシムコイル318、直交するx、yおよびzの3方向に強度が線形に変化する傾斜磁場Gx、Gy、Gzを発生する傾斜磁場コイル309、高周波磁場を発生する送信コイル314a、被検体から生じる核磁気共鳴信号を検出するための検出コイル314bが設置されている。コイル314は送受信両用でもよく、図示のように別々でもよい。
【0014】シムコイル318及び傾斜磁場コイル309は、それぞれ電流を供給するための電源319、310が接続されている。シムコイルは低次から高次のコイルを組合せて多チャンネル化したもので、例えば、Z0、Z2、Z3、Z4、Z5、ZX、ZY、Z2X、Z2Y、XY、X2-2、Z(X2-2)、ZXY、X3、Y3、X、Y、Zの18チャンネルからなる。このうち1次項については傾斜磁場コイル309がシムを兼ねてもよい。これらシムコイルの特性、即ちシムコイルに流す単位電流当りの静磁場分布の変化は、このMRI装置固有の値として、予め測定され記憶されており、後述するシミングにおいてシム電流を計算するときに用いられる。
【0015】尚、傾斜磁場コイル309は渦電流の発生を抑制したアクティブシールド型を用いることが好ましい。渦電流が抑制されることにより、高速で切換えることができ、本発明によるシミングを効果的に行うことができる。
【0016】このような構成において、シンセサイザ311により発生させた高周波を変調器312で変調し電力増幅器313で増幅し、コイル314aに供給することにより被検体301の内部に高周波磁場を発生させ、核スピンを励起させる。通常は1Hを対象とするが、31P、13C等、核スピンを有する他の原子核を対象とすることもある。この高周波磁場による励起の際に、所望の方向に傾斜磁場を発生させることにより、任意のスライスを選択して励起することができる。
【0017】被検体301から放出される核磁気共鳴信号はコイル314bにより受信され、増幅器315を通った後、検波器316で直交位相検波され、A/D変換器317を経てコンピュータ308へ入力される。コンピュータ308は信号処理後、前記核スピンの密度分布、緩和時間分布、スペクトル分布等に対応する画像をCRTディスプレイ328に表示する。計算途中のデータあるいは最終データはメモリ324、325に収納される。傾斜磁場発生系303、送信系304はシーケンサ307によって制御され、このシーケンサ307と検出系305はコンピュータ308によって制御される。コンピュータ308は操作部321からの指令により制御される。
【0018】このような装置におけるマルチスライス撮影の手順を図1を参照して説明する。
【0019】まず図2に示すように撮像対象とするスライスs1、s2・・・を全部含む領域(第1の空間)Sについて静磁場分布を計測する。例えば、断面はTRS、撮影視野は250mm×250mm、スライス数は10スライス、スライス厚さ10mm、スライス間隔10mmとすると、静磁場分布を計測すべき空間は、250mm×250mm×200mmとなる。このとき計測する静磁場は、主コイルのみによって発生された磁場でもよいが、予め被検体のない状態で主コイルの磁場不均一性を補正するためにシムコイルに電流を加えている場合には、主コイルの発生する静磁場にシムコイルの発生する磁場を足し合わせた磁場のどちらであっても構わない。但し、本発明では実際に撮影する被検体を撮影空間に配置した状態で計測する。
【0020】静磁場の分布の測定方法としては、傾斜磁場の反転により得られるエコー信号の位相情報から求める方法やケミカルシフトイメージング法によりマルチピクセルのスペクトルを計測し、特定分子のスペクトルの周波数のずれから局所の静磁場強度を求める方法があり、どちらの方法も採用できるが、エコー信号の位相情報から静磁場分布を求める方法を簡単に説明する。
【0021】この方法では、図4に示すようにスライス選択のためのスライス傾斜磁場Gs403の印加と共に、90゜パルス401を印加して被検体組織を構成する原子核スピンを励起し、スピンの位相を変化させるために位相エンコード傾斜磁場Gp405を印加する。90゜パルスからτ時間後に、スライス傾斜磁場Gs404と共に180゜パルス402を印加する。その後リードアウト傾斜磁場Gr406を印加し、引き続きリードアウト傾斜磁場Gr406の反転パルス407を印加し、スピンエコー(図示せず)を発生させる。この場合、リードアウト傾斜磁場Grの反転のタイミングは、180゜パルスとエコー信号が最大となる時点との間隔412が、90゜パルスと180゜パルスとの間隔411(=τ)と、微小時間εだけ異なるように調整する。180゜パルス印加後から時間τが経過すると、90゜パルス印加直後からの静磁場不均一に起因するスピンの位相変化は完全に相殺されるため、上記計測で得られる画像S(x,y,z)には、微小時間εの間に、静磁場不均一により生じる位相情報だけが含まれる。この画像S(x,y,z)の実部と虚部をそれぞれSr(x,y,z)およびSi(x,y,z)で表すと、静磁場不均一分布E(x,y,z)は式(1)で表すことができる。
【0022】
【数1】

尚、式(1)中、γは磁気回転比を表す。
【0023】このように静磁場分布を求めた後、この静磁場分布と予め計測しておいたシム特性行列を式(2)に適用し、全スライス含む領域全体の静磁場不均一を最もよく補正するようなシム電流の組を求める。
【0024】
【数2】

式(2)中、Bjは画素jにおける静磁場不均一を表し、Ajkはシム特性を表す行列で、シムコイルk(k=1〜ch:chはチャンネル数)に単位電流を流したときの画素jの磁場の変化量を表す。またΔIkは、静磁場不均一Bjを補正するためのシム電流を表す。
【0025】このように算出された電流値をシムコイルに流す。シムコイルに始めから電流が流れていた場合は、その値に求めたシム電流値を足す(ステップ1)。既に述べたようにシムチャンネルは、例えば、Z0、Z2、Z3、Z4、Z5、ZX、ZY、Z2X、Z2Y、XY、X2-2、Z(X2-2)、ZXY、X3、Y3、X、Y、Zの18チャンネルからなり、撮像スライス全体を含む領域について高次のシミング(第1の付加的磁場による補正)が達成される。尚、これらのうちX、Y、Zは傾斜磁場コイルのオフセット値で調整する。
【0026】次に上述のシム電流を流した状態で、各スライス(第2の空間)毎に静磁場分布を計測し、各スライスの静磁場不均一を最もよく補正するようなシム電流の組を求めて記憶する(ステップ2)。前掲の例の場合、静磁場を計測する空間は、それぞれ250mm×250mm×10mmとなる。スライス毎の静磁場分布の測定は、第1の空間について測定した場合と同様に、図4に示すようなエコー信号に静磁場不均一のみによる位相情報をもたせて計測する方法や化学シフトイメージングを利用した方法が採用できる。またこのとき用いるシムチャンネルは、好適にはX、Y、Zのみとし、シム電流は傾斜磁場オフセットとして各傾斜磁場コイルに加えられる。
【0027】次いで各スライスの撮影に入る。このとき撮像スライス全体を含む領域について高次のシミングを行っている状態で、撮影対象となるスライスs1について記憶されたシム電流値を記憶手段から読み出し(ステップ3)、その値を傾斜磁場コイルにオフセットとして加えた後、スライスs1を撮影する(ステップ4)。以下、同様に撮影対象スライスが変るのに合せて、それに対応するシム電流値を記憶手段から読み出し傾斜磁場コイルに加え、撮影する(図5)。
【0028】例えば100ms毎に1スライスから10スライスまでをシングルショットEPIで順次撮影するとすると、これに伴って各スライスに対応したシム電流値(この場合、傾斜磁場オフセット)を100ms毎に切り替えていくことになる(ステップ3、5)。この際、傾斜磁場コイルは、アクティブシールド型コイルを用い、渦電流が抑制されているので、このような高速な切り替えに対応できる。
【0029】このように本発明によれば、高次シミングは撮影スライス全体に対するシミング(ボリュームシム)として行い、スライス毎には高速な1次シムを行うので、マルチスライス撮影時の磁場均一性が向上する。例えばボリュームシムは0.8〜0.3ppm程度が限度であるが、スライス毎の1次シムを組合せることにより、この値を更に0.2ppm程度まで下げることができ、極めて高い磁場均一度が得られる。従ってEPIや脳機能計測のような高い静磁場精度の要求される撮像方法において高信頼性の画像を得ることができる。
【0030】尚、本発明が適用されるマルチスライス撮影は、上述したシングルショットEPIの撮影を複数のスライスについて行う場合のみならず、1つのスライスの繰り返し時間内に第2、第3のスライスの励起と信号計測を行う撮影にも適用でき、その場合には、スライスの励起に合せて対応するシム電流値を加えるようにパルスシーケンスを制御する。
【0031】また以上の説明では、第2の空間のシミングは1次項のみのシミングとしたが、少なくとも静磁場の不均一が生じやすい軸に沿って2次項のシミングを加えてもよい。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、マルチスライス撮影を行なう場合に、全スライスを含む第1の空間で静磁場不均一を補正するシム電流を流した後、更に各スライスに対応する第2の空間の静磁場不均一を補正するシム電流の組を求め記憶しておき、各スライスの撮影に先立って、上記シム電流の組からスライスに対応する値を読み出しシムコイルに加えるようにしたので、生体を磁場中に挿入することによって生じる静磁場の不均一性を大幅に軽減することができ、それによって生じていた画像やスペクトルの歪みを解消させる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成9年(1997)10月6日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】多田 公子 (外1名)
【公開番号】 特開平11−104108
【公開日】 平成11年(1999)4月20日
【出願番号】 特願平9−272941