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【発明の名称】 磁気共鳴診断装置
【発明者】 【氏名】喜種 慎一

【要約】 【課題】血流からのMR信号が極端に低下することなく、しかも脂肪制御効果も十分維持できるような3次元MRアンギオグラフィーの可能な磁気共鳴診断装置を提供することである。

【解決手段】本発明のシーケンサ10は所定のパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源7,8,9と送受信器5,6を制御するようになっており、パルスシーケンスは、付加的効果を与えるプリパルスと、被検体の3次元領域から3DFT法に従ってMR信号を収集するイメージングシーケンスとを含み、プリパルスは3DFT法の3次元k空間の原点付近を含む一部の領域にのみ付加的効果が及ぶように印加されるようになっているものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 静磁場に重ねて傾斜磁場を印加可能な傾斜磁場印加手段と、前記静磁場中の被検体にRFパルスを送信すると共に前記被検体からのMR信号を受信可能なRF送受信手段と、前記傾斜磁場印加手段と前記RF送受信手段とを制御する制御手段とを備えた磁気共鳴診断装置において、前記制御手段は所定のパルスシーケンスに従って前記傾斜磁場印加手段と前記RF送受信手段とを制御するようになっており、前記パルスシーケンスは、付加的効果を与えるプリパルスと、前記被検体の3次元領域から3DFT法に従ってMR信号を収集するイメージングシーケンスとを含み、前記プリパルスは、前記3DFT法の3次元k空間の原点付近を含む一部の領域にのみ付加的効果が及ぶように印加されるものであることを特徴とする磁気共鳴診断装置。
【請求項2】 前記プリパルスは、脂肪抑制パルスであることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項3】 前記プリパルスは、MTCパルスと、それと実質的に同時に印加される傾斜磁場パルスとを含むSORSパルスを有することを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項4】 前記パルスシーケンスは、前記イメージングシーケンスにより3次元k空間上での低周波領域のMR信号を収集するときには前記プリパルスを印加し、一方、前記イメージングシーケンスにより3次元k空間上での高周波領域のMR信号を収集するときには前記プリパルスを印加しないようになっていることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項5】 前記イメージングシーケンス内の励起パルスは、パワープロファイルが撮影血流の血流方向に応じて成形されているISCEパルスであることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項6】 前記イメージングシーケンスにより3次元k空間上での高周波領域のMR信号を収集するときの繰り返し時間は、前記イメージングシーケンスにより3次元k空間上の低周波領域のMR信号を収集するときの繰り返し時間よりも、短縮されていることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴診断装置。
【請求項7】 前記脂肪抑制パルスは、MTC効果を有することを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脂肪抑制をかけて頭部等の血流を効果的に撮影する3次元MRアンギオグラフィー(血流撮影法)の可能な磁気共鳴診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図10にフィールドエコー法を基本とした従来の3次元MRアンギオグラフィーのパルスシーケンスを示している。このMRアンギオグラフィーの原理は、撮影ボリューム内の脳実質や臓器等の静止物体はその縦磁化があまり回復していないうちに次々と励起されるので信号レベルは徐々に低くなっていくが、血液(水)は常にフレッシュな状態でボリュームに流入してくるので、静止物体ほどは信号低下は見られない。このため血流が静止物体に比べて相対的に強調されたような画像(血流画像)が得られることになる。
【0003】このようなMRアンギオグラフィーでは、画質向上のために様々な工夫がなされている。代表的には、イメージングシーケンスを繰り返すごとにその直前に脂肪抑制パルスをプリパルスとして印加して、脂肪抑制を図っている(図11参照)。
【0004】また、近年では、SINCパルスとオフセットパルスで構成されて、水のプロトンの共鳴周波数から少しずれた周波数のMTC(Magnetization Transfer Contrast) パルスと呼ばれるRFパルスを、イメージングシーケンスの直前にプリパルスとして印加し、これにより起こる水のプロトンと、脳実質を主に構成する高分子のプロトンとの間のMTC効果によって、脳実質からの信号を水(血液)からの信号よりも相対的に弱くして血流抽出能を高めるといった技術も開発されている。
【0005】さらに、この技術を応用して、特開平6−319715号公報に開示されているように、MTCパルスをスライス選択傾斜磁場と共に印加して(SORSパルス)、このSORSパルスで心臓から撮影領域22より遠い領域21を励起することにより、動脈流を強調するような技術も開発されている(図12)。
【0006】このように様々に工夫されている3次元MRアンギオグラフィーであるが、上述したように脂肪抑制パルスをイメージングシーケンスを繰り返してMR信号を収集する毎に印加していたので、3次元k空間の全域にわたって、当該脂肪抑制パルスのサイドローブ(広帯域化)が磁場不均一性を伴って影響し、脂肪と一緒に水のプロトンも抑制されてしまい、血流画像が完全に落ちてしまうという事態が起こる可能性があった。
【0007】かかる脂肪抑制パルスのサイドローブの影響を少なくするには、sinc波形の脂肪抑制パルスを例えば±π長から±4・π長に延長して、狭帯域化することが効果的である。しかし、脂肪抑制パルスを長くすればその分、撮影時間を延長せざるを得なくなり、臨床上不都合が生じる。さらに、MRアンギオグラフィーでは、上述したように縦磁化の不十分な回復を利用して静止物体の信号低下を図っているので、繰り返し時間TRが長くなるような脂肪抑制パルスの延長はとても許容できない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、血流からのMR信号があまり低下することなく、しかも脂肪制御効果も十分維持できるような3次元MRアンギオグラフィーの可能な磁気共鳴診断装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、静磁場に重ねて傾斜磁場を印加可能な傾斜磁場印加手段と、前記静磁場中の被検体にRFパルスを送信すると共に前記被検体からのMR信号を受信可能なRF送受信手段と、前記傾斜磁場印加手段と前記RF送受信手段とを制御する制御手段とを備えた磁気共鳴診断装置において、前記制御手段は所定のパルスシーケンスに従って前記傾斜磁場印加手段と前記RF送受信手段とを制御するようになっており、前記パルスシーケンスは、付加的効果を与えるプリパルスと、前記被検体の3次元領域から3DFT法に従ってMR信号を収集するイメージングシーケンスとを含み、前記プリパルスは、前記3DFT法の3次元k空間の原点付近を含む一部の領域にのみ付加的効果が及ぶように印加されるようになっているものである。
【0010】(作用)磁場不均一性を伴って脂肪抑制パルスのサイドローブの影響は、従来のように、3次元k空間の全域でなく、画像コントラストに支配的な原点付近の一部領域だけに及ぶことになり、血流信号があまり落ちることなく、しかも、プリパルスによる付加的効果も奏することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明による磁気共鳴診断装置の一実施形態を説明する。図1に本実施形態に係る磁気共鳴診断装置の構成を示す。コイルガントリ20には、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、RFコイル3が設けられている。傾斜磁場コイル2は直交するXYZの3軸にそれぞれ対応する傾斜磁場電源7,8,9から電流の供給を受けて、静磁場磁石1及び静磁場制御装置4とにより形成された静磁場にXYZ各軸の傾斜磁場を重畳するために設けられている。これら3軸の傾斜磁場を個別に又は適当に組み合わせて、撮影ボリュームの幅や位置を決めたり、MR信号にスライスエンコードをかけたりするための傾斜磁場GS (GSE)、MR信号に位相エンコードをかけるための傾斜磁場GPE、MR信号に周波数エンコードをかけるための傾斜磁場GROを形成するようになっている。
【0012】また、RFコイル3は、送信器5と共に被検体PにRFパルスを印加し、また受信器6と共に被検体からMR信号を受信するために設けられている。ここでは、RFコイル3は、送受信兼用としているが、送信用と受信用とを別々に設けてもよい。
【0013】シーケンサ10は、後述する所定のパルスシーケンスに従って、送信器5、受信器6、傾斜磁場電源7,8,9を制御する。コンピュータシステム11は、装置全体のホストコンピュータとしての機能の他に、受信器6からのMR信号から3DFT(3次元フーリエ変換)法に従ってMR画像、ここでは血流画像を再構成する演算機能を有している。表示部12には、コンピュータシステム11で再構成された血流画像が表示される。
【0014】図2には、本実施形態により選択的に脂肪抑制がかけられる3次元k空間上での低周波領域を示し、図3(a)には図2の低周波領域のMR信号を収集するためのパルスシーケンスを示し、図3(b)には図2の低周波領域以外の高周波領域のMR信号を収集するためのパルスシーケンスを示している。これらの図からわかるように、イメージングシーケンスとしては、short TRのフィールドエコー法と、3DFT(3次元フーリエ変換)法に従って組まれている。なお、イメージングシーケンスは、short TRのフィールドエコー法以外のエコー等の発生シーケンスと3DFT法との組み合わせであってもよい。
【0015】本実施形態では、このイメージングシーケンスで、3次元k空間上で、スライスエンコード方向に関して画像コントラストに支配的な低周波領域のMR信号を収集するときには、その直前に、プリパルスとしてSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加するが、高周波領域のMR信号を収集するときには、SORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しない。
【0016】このように高周波領域ではSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しないようにしているので、磁場不均一性を伴って起こる脂肪抑制パルスのサイドローブの影響は、従来のように、3次元k空間の全域でなく、画像コントラストに支配的な低周波領域だけに及ぶことになり、血流信号が極端に落ちることなく、しかも、脂肪抑制効果やSORSパルスによる脳実質抑制効果といった付加的効果も奏することができる。
【0017】また、高周波領域ではSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しないので、図4に示すように、イメージングシーケンスにより3次元k空間上の高周波領域のMR信号を収集するときの繰り返し時間TRHIGHは、低周波領域のMR信号を収集するときの繰り返し時間TRLOW よりも短縮して、撮影時間を短くすることができる。
【0018】なお、イメージングシーケンス内の励起パルスには、動脈において心臓から遠い血流も、心臓に近い血流と同等のコントラストで描画することを目的として開発されたISCEパルスを採用してもよい。心臓から遠い動脈血流では、心臓に近い動脈血流よりも励起回数が多くなり、その励起回数に応じて静止物体と同様に信号レベルが小さくなってしまうことがある。
【0019】一般的な励起パルスのパワープロファイルファイルは図5(a)に示すようにほぼ一定に成形されている。これに対して、ISCEパルスでは、図5(b)に示すように心臓から遠方になるほどパワーが高くなるようなパワープロファイルに成形している。このようなパワープロファイルによると、心臓から遠くなればなるほど、フリップ角を深くとることができるので、信号レベルの低下を補償することができる。
【0020】このような本実施形態によれば、脂肪や脳実質部は十分抑制されているにも関わらず、血流は末梢まで十分描画される。
【0021】なお上述では、3次元k空間上のスライスエンコード方向に関して低周波領域のMR信号を収集するときには、その直前に、SORSパルスと脂肪抑制パルスを印加するが、高周波領域のMR信号を収集するときには、その直前にSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しないと説明したが、図6(a)、図7に示すように3次元k空間上の位相エンコード方向に関して低周波領域のMR信号を収集するときに、その直前に、SORSパルスと脂肪抑制パルスを印加し、位相エンコード方向の高周波領域のMR信号を収集するときには、その直前にSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しないようにしてもよい。また、図6(b)、図8に示すように3次元k空間上のスライスエンコードと位相エンコードの両方向に関して柱状の低周波領域のMR信号を収集するときにだけ、その直前に、SORSパルスと脂肪抑制パルスを印加し、それ以外の領域のMR信号を収集するときには、その直前にSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しないようにしてもよい。
【0022】また、上述では、3次元k空間上の低周波領域のMR信号を収集するときには、そのイメージシーケンスを繰り返すごとに、SORSパルスと脂肪抑制パルスを印加すると説明したが、図9に示すように、SORSパルスと脂肪抑制パルスを1回印加した後に、その効果がある程度維持されている間に、イメージシーケンスを繰り返すようにしてもよい。
【0023】また、SORSパルスと脂肪抑制パルスの効果を発揮させる3次元k空間上の低周波領域としては、3次元k空間の原点付近を含む一部領域であればよく、ゼロエンコードを必ず含む必要はない、つまり3次元k空間の原点のMR信号を収集するときにはSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しないようにしてもよい。
【0024】また、3次元k空間上でのSORSパルスの効果を与える低周波領域と、脂肪抑制パルスの効果を与える低周波領域とは、同一である必要はなく(異なっていてもよく)、例えば3次元k空間上の位相エンコード方向に関する低周波領域にSORSパルスの効果を与え、3次元k空間上のスライスエンコード方向に関する低周波領域に脂肪抑制パルスの効果を与えるようにしてもよい。
【0025】また、3次元k空間上の低周波領域のMR信号を収集するときには、SORSパルスと脂肪抑制パルスを印加し、高周波領域ではSORSパルスと脂肪抑制パルスを印加しないと説明したが、脂肪抑制パルスだけをこのように選択的に印加し、SORSパルスは常に印加して、3次元k空間の全域にわたってそのSORS効果が及ぶようにしてもよい。
【0026】また、脂肪抑制パルスだけをこのように選択的に印加し、SORSパルスは常に印加しないようにして、3次元k空間の全域にわたってそのSORS効果を発揮させないようにしてもよいし、逆に、SORSパルスだけをこのように選択的に印加し、脂肪抑制パルスは常に印加しないようにして、3次元k空間の全域にわたってその脂肪抑制効果を発揮させないようにしてもよい。
【0027】その他、本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく種々変形して実施可能であるのは勿論である。
【0028】
【発明の効果】本発明によると、血流からのMR信号があまり低下することなく、しかも脂肪抑制等の付加的効果も十分維持できる。
【出願人】 【識別番号】594164531
【氏名又は名称】東芝医用システムエンジニアリング株式会社
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成9年(1997)10月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
【公開番号】 特開平11−104106
【公開日】 平成11年(1999)4月20日
【出願番号】 特願平9−271423