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【発明の名称】 屈曲機構
【発明者】 【氏名】前田 重雄

【氏名】遠山 修

【要約】 【課題】内視鏡先端など所望の屈曲部位を屈曲させ得る屈曲機構において、屈曲部が十分な可撓性を有し、大きな屈曲角を得ることができる屈曲機構を提供すること。

【解決手段】先端側が首振り部1aとなっているファイバスコープ1の、前記首振り部1aの基端側に、密巻状態を記憶した形状記憶合金コイル2a、2bが前記ファイバスコープ1を中心とした軸対称な位置に伸長した状態で設けている。前記コイル2a、2bの先端側はそれぞれ可動片4の両端4a、4bに接続しており、該可動片4は中心を支点として前記コイル2a、2bが接続された両端4a、4bが揺動可能となっている。前記コイル2a、2bの他端は固定部材5に接続している。牽引ワイヤ3a、3bは一端が前記可動片4の両端4a、4bに、他端がファイバスコープ1の先端に設けられた先端リング6にそれぞれ接続している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 屈曲部を有する長尺体と、前記屈曲部の一端側に設けられ、前記長尺体を中心として軸対称に配置された2組の形状記憶部材と、該2組の形状記憶部材をそれぞれ接続して連結するとともに、前記2組の形状記憶部材間の中央を支点として揺動可能に設けられた可動片と、前記2組の形状記憶部材の他端を接続し長尺体に対して不動な固定部材と、一端が前記可動片に連結され、他端が前記屈曲部を通って前記屈曲部の他端側に接続された牽引ワイヤとからなることを特徴とする屈曲機構。
【請求項2】 形状記憶部材が、形状回復により伸長する形状記憶合金コイルであることを特徴とする請求項1記載の屈曲機構。
【請求項3】 形状記憶合金コイルの長手方向以外の変形を抑制するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項2記載の屈曲機構。
【請求項4】 2組の形状記憶部材それぞれの固定部材側に、前記形状記憶部材を加熱するための光を照射する光ファイバを設けたことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の屈曲機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、所望の屈曲部位を屈曲させ得る屈曲機構に関し、特には医療用内視鏡など、細径のものに用いるのに好適な屈曲機構に関する。
【0002】
【従来の技術】屈曲機構を有する内視鏡として、例えば、特開昭63−136014号公報には、能動屈曲装置を適用した大腸内視鏡についての記載があり、該大腸内視鏡は次のように構成されている。複数のセグメントを直列に配置し、各セグメントは、円筒状の外装によって覆われたコイルスプリングを中心骨格とし、その両端にフランジが設けられ、これらを柔軟な外被で覆っている。そして、コイルスプリングの外装と外被との間の空間に、変態点以上の温度で密巻状態となる形状記憶合金材を伸長変形させた状態でコイルスプリングの両側の互いに軸対称な位置に3本を1組として配置されている。
【0003】このように構成された内視鏡においては、前記2組の形状記憶合金材の一方を加熱することにより、加熱された側の形状記憶合金材が収縮し、屈曲する。そして、前記加熱を停止すると前記形状記憶合金材は収縮力を失って、コイルスプリングの弾性力により伸長した状態に復元する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の構成では、形状記憶合金材を元の伸長状態に復元させるためにコイルスプリングが必要であり、各セグメントには形状記憶合金材やコイルスプリングなどが存在し、セグメント部分の剛性が大きくなる。そして、上記構成ではセグメント部分自体を屈曲させるので、該セグメント部分の剛性の大きさなどから、大きな屈曲角を得ることが困難であるなどの問題がある。
【0005】従って本発明は、内視鏡先端など所望の屈曲部位を屈曲させ得る屈曲機構において、屈曲部が十分な可撓性を有し、大きな屈曲角を得ることができる屈曲機構を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の屈曲機構は、屈曲部を有する長尺体と、前記屈曲部の一端側に設けられ、前記長尺体を中心として軸対称に配置された2組の形状記憶部材と、該2組の形状記憶部材をそれぞれ接続して連結するとともに、前記2組の形状記憶部材間の中央を支点として揺動可能に設けられた可動片と、前記2組の形状記憶部材の他端を接続し長尺体に対して不動な固定部材と、一端が前記可動片に連結され、他端が前記屈曲部を通って前記屈曲部の他端側に接続された牽引ワイヤとからなることを特徴とするものである。
【0007】このように構成された屈曲機構においては、屈曲部には牽引ワイヤが存在するのみであるため、屈曲部は剛性が小さく、可撓性が大きいため屈曲が容易であり、屈曲部は大きな屈曲角を得ることができる。
【0008】前記形状記憶部材は、前記可動片を介して前記牽引ワイヤを牽引することができればよく、材料や形状回復の方向性(形状回復が1方向であるものや、2方向であるもの)など特に制限はないが、例えば内視鏡などの細径の長尺体に用いる場合には、出力体積比が大きいなどの点から形状記憶合金が好ましく、さらに形状記憶合金を用いる場合には、変位量を大きくとれる点からコイル形状とすることが好ましい。また、形状回復の方向性については、形状回復させる際の安定性や繰り返し特性などの点からは1方向性形状記憶材料の方が好ましい。
【0009】また、1方向に形状回復する形状記憶部材を用いる場合、形状回復によって収縮する形状記憶部材、形状回復によって伸長する形状記憶部材のいずれをも用いることができる。
【0010】前記、形状回復によって収縮する形状記憶部材を用いる場合、形状回復させていない平常時でも前記可動片と固定部材との間の部位に引張り力(長尺体からみると圧縮力)が加わるため、例えば、内視鏡などのように屈曲または折れやすい長尺体などの場合には、前記可動片と固定部材との間の部位において、前記長尺体が屈曲または折れることもある。したがって、形状回復によって収縮する形状記憶部材を用いる場合、形状記憶部材の形状回復力および平常時の弾性力を弱くするか、前記部位において、補強用部材を設けた方が好ましい。それに対して、形状回復によって伸長するコイルを用いる場合、前記可動片と固定部材との間の部位には、伸長させる力(長尺体からみれば引張り力)が加わり、前記引張り力が発生しないので、前記可動片と固定部材との間の部位が屈曲などすることがない。したがって、前述のように形状記憶部材の形状回復力および平常時の弾性力を弱くする必要がなく、大きな屈曲角を得ることが容易であり、また、補強用部材を設ける必要がなく、前記可動片と固定部材との間の部位の剛性を小さくできるので、前記可動片と固定部材との間の部位の可撓性を大きくできるとともに、補強用部材がないので細径化にも適しているので好ましい。
【0011】また、形状回復によって伸長する形状記憶部材を用いる場合、形状記憶部材自身には常に圧縮方向の力が加わるため、形状記憶部材自身の剛性が小さい場合、形状記憶部材自身が形状回復による長手方向への変形以外の意図しない方向に屈曲してしまうことがある。したがって、形状記憶部材の長手方向への屈曲を抑制するためのガイド部材を設ける方が好ましい。
【0012】また、前記ガイド部材としては、前記形状記憶部材の変形力に耐え得る剛性を有し、かつ、内視鏡の可撓性を損なわないように小さい剛性である方が好ましい。また、態様としては、例えば、中空のチューブ内に形状記憶部材を挿入した態様や、形状記憶部材がコイルや中空部材などの場合には、内周側すなわち中空部分に芯材を設ける態様などがあげられる。
【0013】また、前記形状記憶部材に形状記憶合金材を用いる場合、加熱方法としては、前記形状記憶合金材の両端にリード線を接続して通電加熱する方法や、前記形状記憶合金材の一端側に光ファイバなどを設けて、該光ファイバから光を照射して加熱する方法など特に制限はないが、前記光を照射して加熱する方法とすることにより、電気を用いずに前記形状記憶合金材を加熱することができるので、特に医療用内視鏡などに好適である。
【0014】
【発明の実施の態様】以下本発明の実施態様につき詳細に説明する。図1、2は本発明の屈曲機構を用いた首振り内視鏡を示しており、図1はその長手方向断面図、図2は図1におけるA−A’断面図である。図にしたがって説明すると、首振り内視鏡は、長尺体であるファイバスコープ1を中心に有しており、先端側が屈曲動作を行う首振り部1aとなっている。該首振り部1aの基端側には形状記憶部材からなるコイル2a、2bが前記ファイバスコープ1を中心とした軸対称な位置に設けられている。前記形状記憶部材からなるコイル2a、2bの先端側はそれぞれ可動片4に接続されており、該可動片4は中心を支点として前記コイル2a、2bが接続された両端4a、4bが揺動可能となっている。また、前記形状記憶部材からなるコイル2a、2bの他端は、ファイバスコープ1に対して不動となっている固定部材5に接続されている。さらに、牽引ワイヤ3a、3bは一端が前記可動片4の両端4a、4bに、他端がファイバスコープ1の先端に設けられた先端リング6にそれぞれ接続されている。なお、形状記憶部材からなるコイル2a、2bは密巻状態を記憶しており、取付時には伸長した状態で取り付けられている。
【0015】このように構成された屈曲機構の屈曲動作について説明すると、形状記憶部材からなるコイル2aを加熱すると、コイル2aは収縮し、可動片4のコイル2aが接続された端部4aを手元側に移動させ、牽引ワイヤ3aを手元側に引張り、屈曲部1aを屈曲させる。また、それに伴い、前記可動片4は中央が支点とされているので、一端側4aと対称となっている他端4bを先端側に移動することになり、コイル2bを先端側に伸長させることになる。そして、前記コイル2aの加熱を止め、コイル2aが十分に冷却されると、コイル2a、2b両者の弾性力は同じとなり、釣り合った状態となるよう元の位置に戻ることになる。なお、前記コイル2a、2bが形状回復により伸長するコイルである場合は、一方を形状回復させることにより、加熱された側の可動片端部は先端側に移動され、それによって、もう一方の端部が手元側に移動し、牽引ワイヤを手元側に引張って、屈曲部1aを屈曲させる。
【0016】本実施態様では長尺体として、首振り内視鏡を用いた場合を示しているが、長尺体はこれに限定されるわけではなく、例えば、マニュピレータ、カテーテルなどにも用いることができる。前記長尺体は、少なくとも屈曲部が可撓性を有していればよく、長尺体全長にわたって可撓性を有し、その内の一部が屈曲部となるものであっても、可撓性がない本体と可撓性を有する屈曲部とを接続したものであってもよい。
【0017】前記可動片は、前記形状記憶部材を両端に接続可能であり、可動片の中央を支点として両端が揺動可能であれば特に制限はないが、一方の形状記憶部材の形状回復力を牽引ワイヤおよび他方の形状記憶部材に効率よく伝達するためには剛性が大きい方が好ましい。このような材料として具体的には、ステンレス、各種セラミック材料などを用いることができる。
【0018】前記固定部材としても、前記形状記憶部材を接続可能であり、前記長尺体に対して不動であれば特に制限はないが、前記固定部材が長尺体に対して不動であっても、弾性を有する場合には、前記形状記憶部材の端部は若干移動することになるので、形状回復力が前記移動に働き、その一部が失われることになる。したがって、前記形状記憶部材の形状回復力を効率よく取出すためには、固定部材は剛性が大きい方が好ましい。このような材料として具体的には、ステンレス、各種セラミック材料などを用いることができる。
【0019】前記牽引ワイヤは、駆動部による牽引を内視鏡に伝達でき、その際に生じる張力に耐え得るものであればよい。但し、前記駆動部による牽引を内視鏡に無駄なく伝達するためには、弾性伸びが少ない方が好ましく、また、スペースの点からは細くて引張強さの大きいものが好ましく、例えば、ステンレス、タングステンなどの金属製の極細線が挙げられる。
【0020】
【実施例1】以下具体的な実施例につき説明する。本実施例では、本発明の屈曲機構を首振り内視鏡に適用した例を示している。図1は本実施例の首振り内視鏡の長手方向の断面図である。図2は図1におけるA−A’断面図である。図にしたがって詳述すると、首振り内視鏡は、イメージガイドとライトガイドとからなるファイバスコープ1を中心に有しており、該ファイバスコープ1の先端側が首振り部1aとなっており、該首振り部1aの基端側には形状記憶合金コイル2a、2bが前記ファイバスコープ1を中心とした軸対称な位置に設けられている。前記形状記憶合金コイル2a、2bの先端側はそれぞれ可動片4の両端4a、4bに接続されており、該可動片4は、中心に楕円の孔を有した長方形の板状物からなり、前記孔にファイバスコープ1を通し、長辺の中心にあたる部分で可動片4の外周側に設けてある可動片固定リング7に連結され、長辺の中心を支点として前記形状記憶合金コイル2a、2bが接続された長辺の両端4a、4bが揺動可能となっている。また、前記形状記憶合金コイル2a、2bの他端は、ファイバスコープ1に対して不動となっている固定部材5にそれぞれ接続される。さらに、牽引ワイヤ3a、3bは、一端が前記可動片4の両端4a、4bに、他端がファイバスコープ1の先端にファイバスコープ1に対して不動に設けられた先端リング6にそれぞれ接続されている。そして、これらは外被10によって被覆されている。なお、形状記憶合金コイル2a、2bは密巻状態を記憶しており、取付時には伸長した状態で取り付けられている。
【0021】
【実施例2】本実施例では、本発明の屈曲機構を首振り内視鏡に適用した他の実施例を示しており、可動片4、形状記憶合金コイル2a、2b、ガイド部材8、可動片止めリング9以外の構成は前記実施例1と同様の構成としなっている。図3は本実施例の首振り内視鏡の長手方向の断面図であり、図4は図3におけるB−B’断面図である。図にしたがって詳述すると、首振り内視鏡は、イメージガイドとライトガイドとからなるファイバスコープ1を中心に有しており、該ファイバスコープ1の先端側が首振り部1aとなっており、該首振り部1aの基端側には形状記憶合金コイル2a、2bが前記ファイバスコープ1を中心とした軸対称な位置に設けられている。前記形状記憶合金コイル2a、2bの内周側にはそれぞれガイド部材であるステンレス線8a、8bが設けてあり、該ステンレス線8a、8bの両端は可動片4に接続されている。該可動片4は、中心に楕円の孔を有した長方形の板状物からなり、前記孔内に前記ファイバスコープ1を通し、前記可動片4の楕円孔の短径よりも少し大きな外径の可動片止めリング9をファイバスコープ1の可動片4の先端側の位置に固着している。これによって、可動片4は、長辺の中心を支点として前記形状記憶合金コイル2a、2bが接続された長辺の両端4a、4bが揺動可能となっている。また、前記形状記憶合金コイル2a、2bの他端は、ファイバスコープ1に対して不動となっている固定部材5にそれぞれ接続される。さらに、牽引ワイヤ3a、3bは、一端が前記可動片4の両端4a、4bに、他端がファイバスコープ1の先端にファイバスコープ1に対して不動に設けられた先端リング6にそれぞれ接続されている。なお、形状記憶合金コイル2a、2bは粗巻状態を記憶して、取付時には収縮させた状態で取り付けられており、ガイド部材であるステンレス線8a、8bは、可動片4の動作を妨げないように、平常時の状態では弛みをもって接続されている。
【0022】このように構成することによって、前記形状記憶合金コイル2a、2bは伸長する方向に力が加わるので、既に述べた補強用部材を必要としないことに加えて、ガイド部材であるステンレス線8a、8bを可動片4、固定部材5に接続し、形状記憶合金コイル2a、2bを前記ステンレス線8a、8bに外嵌状にするだけで、前記形状記憶コイルの両端を可動片4および固定部材5に接続する必要がないため、実施例1の構成に比べて作製が容易になるので好ましい。
【0023】
【発明の効果】以上説明した通りの本発明の屈曲機構によれば、屈曲動作は牽引ワイヤを引張ることによって行われるので、屈曲部には牽引ワイヤを設けるだけでよく、屈曲部における構成部材を少なくできる。したがって、屈曲部の剛性を小さくできるので、屈曲部の屈曲角を大きくすることができるという優れた効果を奏するものである。
【0024】さらに、中央部を支点として両端が揺動可能な可動片を用いて、該可動片の両端に2組の形状記憶部材を接続するよう構成したので、一方の形状記憶部材を形状回復させることによって、他方の形状記憶部材を変形状態とすることができるとともに、平常時、すなわち、形状記憶部材を形状回復させていない時は、2組の形状記憶部材は力の釣り合いによって元の形状に戻る。したがって、形状記憶部材を元の形状に戻すためのコイルスプリングなどを必要としない。即ち、構成部材を減少することができるので、内視鏡を細径化することが容易になるという優れた効果を奏するものである。
【出願人】 【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月3日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−104067
【公開日】 平成11年(1999)4月20日
【出願番号】 特願平9−287765