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【発明の名称】 内視鏡の対物駆動機構
【発明者】 【氏名】伊藤 慶時

【要約】 【課題】操作ワイヤを介する遠隔操作によって対物枠を傾けることなく軸線方向に移動させて、ピンぼけの発生なくフォーカシングやズーミングを行うことができ、しかも軽い操作力量で円滑な操作を行うことができる内視鏡の対物駆動機構を提供すること。

【解決手段】挿入部1の先端内に軸線方向にスライド自在に配置されたスライド筒55に操作ワイヤ25の先端を連結し、軸線回りに回転自在に配置されたカム筒50にスライド筒55から突設されたピン65が係合するカム溝51を形成して、操作ワイヤ25によってスライド筒55を軸線方向に移動させることによりカム筒50が回転駆動され、それによって対物枠34と受像部枠35の少なくとも一方を軸線方向に駆動するようにした内視鏡の対物駆動機構において、カム溝51を、軸線方向に対して10°ないし45°の角度をなす方向に傾けて形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】遠隔操作によって軸線方向に移動する操作ワイヤの先端を挿入部の先端内に軸線方向にスライド自在に配置されたスライド筒に連結し、軸線回りに回転自在に配置されたカム筒に上記スライド筒から突設されたピンが係合するカム溝を形成して、上記操作ワイヤによって上記スライド筒を軸線方向に移動させることにより上記カム筒が回転駆動され、それによって、対物光学系が取り付けられた対物枠と像伝達手段の受像部が取り付けられた受像部枠の少なくとも一方を軸線方向に駆動するようにした内視鏡の対物駆動機構において、上記カム溝を、上記軸線方向に対して10°ないし45°の角度をなす方向に傾けて形成したことを特徴とする内視鏡の対物駆動機構。
【請求項2】上記対物枠と上記受像部枠のうち軸線方向に駆動されるように配置された枠と上記スライド筒の各々から上記カム筒に向けてピンが突設されていて、上記各ピンが別々に係合する複数のカム溝が上記カム筒に形成されている請求項1記載の内視鏡の対物駆動機構。
【請求項3】上記スライド筒を先側に向けて付勢する付勢手段が設けられている請求項1又は2記載の内視鏡の対物駆動機構。
【請求項4】上記対物枠と上記受像部枠とを引き離す方向に軸線方向に付勢する付勢手段が設けられている請求項2又は3記載の内視鏡の対物駆動機構。
【請求項5】上記対物枠と上記受像部枠の少なくとも一方の移動によって、フォーカシングとズーミングのいずれか一方又は両方が行われる請求項1、2、3又は4記載の内視鏡の対物駆動機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、フォーカシング又はズーミング等の機能を有する内視鏡の対物駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】内視鏡においてフォーカシング又はズーミング等を行うためには、挿入部の先端に内蔵された対物光学系部分を遠隔操作によって軸線方向に移動させる必要がある。
【0003】そこで従来は、対物光学系が取り付けられた対物枠を挿入部の先端内に固定的に配置された固定筒内に軸線方向にスライド自在に嵌挿し、遠隔操作によって軸線方向に移動する操作ワイヤの先端を対物枠に連結して、操作ワイヤを介して対物枠を軸線方向にスライドさせることによりフォーカシング又はズーミングを行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】内視鏡の挿入部は細長くて各種の内蔵物が通されているので、フォーカシングやズーミング等の遠隔操作は操作ワイヤを介して行わざるを得ない。
【0005】しかし、上述のように対物枠に操作ワイヤの先端を直接連結して操作ワイヤを進退させると、操作ワイヤの引っ張り力が対物枠に直接作用するので、対物枠が固定筒とのガタ分だけ傾いて観察画像が部分的にピンぼけになってしまう不具合が発生していた。
【0006】そこで本発明は、操作ワイヤを介する遠隔操作によって対物枠を傾けることなく軸線方向に移動させて、ピンぼけの発生なくフォーカシングやズーミングを行うことができ、しかも軽い操作力量で円滑な操作を行うことができる内視鏡の対物駆動機構を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の対物駆動機構は、遠隔操作によって軸線方向に移動する操作ワイヤの先端を挿入部の先端内に軸線方向にスライド自在に配置されたスライド筒に連結し、軸線回りに回転自在に配置されたカム筒に上記スライド筒から突設されたピンが係合するカム溝を形成して、上記操作ワイヤによって上記スライド筒を軸線方向に移動させることにより上記カム筒が回転駆動され、それによって、対物光学系が取り付けられた対物枠と像伝達手段の受像部が取り付けられた受像部枠の少なくとも一方を軸線方向に駆動するようにした内視鏡の対物駆動機構において、上記カム溝を、上記軸線方向に対して10°ないし45°の角度をなす方向に傾けて形成したことを特徴とする。
【0008】なお、上記対物枠と上記受像部枠のうち軸線方向に駆動されるように配置された枠と上記スライド筒の各々から上記カム筒に向けてピンが突設されていて、上記各ピンが別々に係合する複数のカム溝が上記カム筒に形成されていてもよい。
【0009】そして、上記スライド筒を先側に向けて付勢する付勢手段が設けられていてもよく、上記対物枠と上記受像部枠とを引き離す方向に軸線方向に付勢する付勢手段が設けられていてもよい。
【0010】なお、上記対物枠と上記受像部枠の少なくとも一方の移動によって、フォーカシングとズーミングのいずれか一方又は両方が行われるとよい。
【0011】
【発明の実態の形態】図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図2は内視鏡の全体構成を示しており、可撓管状の挿入部1の基端に操作部2が連結され、挿入部1の先端部分に形成された湾曲部4は、操作部2に設けられた湾曲操作ノブ3を回転操作することによって、任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる。
【0012】湾曲部4の先端には、対物光学系等が内蔵された先端部本体10が連結されている。また、挿入部1と操作部2との連結部付近には、挿入部1内に挿通配置された処置具挿通チャンネルの入口である処置具挿入口5が突出配置されている。6は、フォーカシング又はズーミングの操作を行うための光学系操作レバーである。
【0013】操作部2の後部に連結された可撓性連結管7の先端にはコネクタ8が連結されており、このコネクタ8は、後述する照明用ライトガイドファイババンドルに対する照明光の供給及び先端部本体10に内蔵の固体撮像素子で撮像された映像信号の処理等を行うための光源装置兼ビデオプロセッサ(図示せず)に接続される。
【0014】図3は先端部本体10の正面図であり、11は、観察像を取り入れるための観察窓、12は、被写体を照明する照明光を射出するための照明窓、13は処置具挿通チャンネルの出口、14及び15は送気ノズル及び送水ノズルである。
【0015】図4は、観察窓11と照明窓12の各中心線を通る断面における挿入部1の先端部分の側面断面図、図5はそのV−V断面図であり、4及び10は、前出の湾曲部及び先端部本体である。
【0016】照明窓12には照明光の配光角を広げる凹レンズ17が嵌め込まれていて、その内側にライトガイドファイババンドル18の射出端が配置されている。また観察窓11には、対物光学系の第1レンズであるカバーレンズ20が嵌め込まれており、その内側に、対物レンズ群21と固体撮像素子24等が配置されている。22はYAGレーザーカットフィルター、23はカバーガラスである。
【0017】湾曲部4の骨組みは、複数の節輪をリベットで回動自在に連結して構成されており、その最先端の節輪4aが、先端部本体10の後端部外周面に被嵌されて固定ネジ4bによって連結固定されている。
【0018】4cは、固定ネジ4bを螺合させるために先端部本体10に形成された凹み内に配置されたネジ駒、4dは湾曲操作ワイヤ、4eは、伸縮自在なゴム製の外装チューブである。
【0019】図7は、通常観察状態における対物光学系20,21と固体撮像素子24の周辺の構成を拡大して示し、図6及び図8は、VI−VI断面及びVIII−VIII断面を示している。
【0020】先端部本体10に軸線方向に形成された孔に嵌挿固定された固定外筒27に対して、固定内筒28(固定筒)が後側では図6にも示されるように直接嵌合して固定ネジ29で固定され、前側においては両者27,28の間にスペース環30が介挿固着されていて、両者27,28の間には両端部を除く全長にわたって一定の隙間が確保されている。
【0021】カバーレンズ20は固定内筒28の先端に水密的にカシメ固定されていて、カバーレンズ20の側面と先端部本体10との間を塞ぐように前蓋31がスペース環30に接合されている。
【0022】前蓋31とカバーレンズ20の側面との間の隙間には脱泡したエポキシ系接着剤が充填されており、前蓋31と先端部本体10との嵌合面にはシール用のOリング32が装着されている。
【0023】固定内筒28内には、対物レンズ群21が取り付けられた対物枠34と、観察像を撮像するための固体撮像素子24が取り付けられた受像部枠35とが、互いに独立して軸線方向に進退自在に嵌挿されている。33はOリングである。
【0024】対物レンズ群21はレンズ筒36内に組み付けられてカシメ固定されており、そのレンズ筒36が対物枠34に接合されている。ただし、レンズ筒36を対物枠34にネジ固定してもよい。
【0025】37は、不要周辺光をカットするための遮光マスクである。明るさ絞りは対物レンズ群21の前端面に配置されている。対物枠34と受像部枠35との間には、両者34,35を遠ざける方向に付勢する第1の圧縮コイルバネ47が介装されていて、ガタつきが防止されている。
【0026】固体撮像素子24は、例えばTAB(テープオートメイティングボンディング)基板等の可撓性基板44の先端に固着されていて、カバーガラス23が固体撮像素子24の前端面に接合され、YAGレーザーカットフィルター22がカバーガラス23の前端面に接合されている。
【0027】可撓性基板44内には、固体撮像素子24の駆動回路等を構成する電子部品が搭載されたバッファ基板43が配置されていて、その後方に信号ケーブル45が引き出されている。
【0028】カバーガラス23と固体撮像素子24と可撓性基板44の外周面には、電気絶縁性の薄い絶縁テープ38が連続的に巻かれていて、導電性の筒状体からなるシールド筒40がその外側に被嵌されている。シールド筒40には信号ケーブル45のシールド線が接続されている。
【0029】シールド筒40の先端は固体撮像素子24の側面の途中の位置にあるので、そこからカバーガラス23の先端位置まで、絶縁テープ38の外面部分には脱泡した電気絶縁性のエポキシ系接着剤41が充填されている。
【0030】そして、その部分からシールド筒40の外周にわたってさらに絶縁テープ39が連続的に巻かれていて、シールド筒40と受像部枠35との間の電気絶縁性が確保されている。46は、受像部枠35内にゴミが侵入するのを防止するために後端側に充填されたシリコン系接着剤である。
【0031】このようにして固体撮像素子24と電子回路とが収容されたシールド筒40は、受像部枠35にねじ込まれた固定ネジ42により押圧固定されている。この固定ネジ42は、通常観察状態でピント出し調整を行う際に一旦緩めて、さらに後述する近接拡大観察状態に切り換えてピントの確認を行い、良い状態ならば締め付けてシールド筒40を受像部枠35に固定する。
【0032】ただし、その固定ネジ42の先端面とシールド筒40の外周面との間には絶縁テープ39が介在しているので、受像部枠35とシールド筒40との間の電気絶縁性が確保されている。
【0033】固定内筒28の外周面には、第1、第2及び第3のカム溝51,52,53が形成された円筒形のカム筒50が、軸線回りに回転自在に被嵌されており、そのカム筒50を囲む位置に、操作ワイヤ25によって駆動されて軸線方向にスライドするスライド筒55が配置されている。
【0034】スライド筒55に穿設された孔に操作ワイヤ25の先端が通されていて、その先端に抜け止め環57が固着されている。スライド筒55は、光学系操作レバー6を操作して操作ワイヤ25を操作部2側から牽引する動作によって、図7において右方にスライド駆動される。
【0035】そして、操作ワイヤ25を逆方向(即ち、前方)に移動させると固定内筒28の外周を囲んで配置された第2の圧縮コイルバネ58の付勢力により、図7において左方にスライド筒55がスライド駆動される。なお、第2の圧縮コイルバネ58の付勢力は、通常観察状態において第1の圧縮コイルバネ47の付勢力より強く設定されている。
【0036】62と63は、挿入部1内において操作ワイヤ25を案内する二重構造の案内管であり、内側が可撓性チューブ62、外側が断面形状が矩形の密着巻きコイルパイプ63からなり、固定外筒27に半田付け固定された接続パイプ61に接着固定されている。可撓性チューブ62は、挿入部1内の各種内蔵物に塗布された潤滑剤が侵入するのを防止する機能を有する。
【0037】スライド筒55には、カム筒50に形成された第1のカム溝51に先端がガタ無く移動自在に係合する第1のピン65が、内方に向けて突出する状態にねじ込み固定されている。
【0038】また対物枠34には、第2のカム溝52に頭部が係合する第2のピン66が外方に向けて突出する状態にねじ込み固定されており、受像部枠35には、第3のカム溝53に頭部が係合する第3のピン67が外方に向けて突出する状態にねじ込み固定されている。
【0039】なお、固定内筒28には、第2のピン66と第3のピン67が通過する直進溝68,69が軸線と平行方向に形成されている。また、第2のピン66と第3のピン67は、頭部が第2のカム溝52と第3のカム溝53に係合するので、図9にも示されるように、組み立て時にドライバーの先を係合させるスリ割り溝66a,67aが、側面に露出しない半月状の窪みにより形成されている。
【0040】図1は、第1ないし第3のカム溝51,52,53と第1ないし第3のピン65,66,67との係合状態を示す展開図であり、各ピン65,66,67は図7及び図8等に示される通常観察状態の位置にある。
【0041】なお、第1のカム溝51がカム筒50の軸線方向(即ち、光軸方向)となす角度θは、軽い操作力量で円滑な動作を行わせるために10°〜45°の範囲にあることが望ましい。この実施の形態ではθ≒30°に設定されている。
【0042】この通常観察状態から操作部2の光学系操作レバー6を操作して操作ワイヤ25を牽引すると、図10に示されるように、スライド筒55が第2のコイルバネ58の付勢力に抗して後方(図10において右方)にスライドし、それと共に移動する第1のピン65と第1のカム溝51との係合によって、カム筒50が軸線回りに回転駆動される。その回転角度は最大で90°である。
【0043】カム筒50が軸線回りに回転すると、カム筒50に形成された第2及び第3のカム溝52,53と係合する第2及び第3のピン66,67が軸線方向に移動させられ、対物枠34が前方(図10において左方)にスライドすると共に受像部枠35が後方(図10において右方)にスライドする。
【0044】なお、第1のカム溝51の長さはカム筒50の回転角にしてちょうど90°であるが、第2と第3のカム溝52,53はカム筒50を90°回転させたときの両端部分が共に第1のカム溝51より長く形成されている。その結果、第1のカム溝51とそれに係合する第1のピン65が、カム筒50の回転角度を規制するストッパになっている。
【0045】図11は、カム筒50が90°回転した状態の第1ないし第3のカム溝51,52,53と第1ないし第3のピン65,66,67との係合状態を示す展開図であり、図12はXII−XII断面を示している。
【0046】この図10ないし図12に示される状態においては、カバーレンズ20は移動することなく対物レンズ群21が前方に移動して、固体撮像素子24が後方に移動する。
【0047】その結果、ズーミングが行われて、例えば通常観察時には視野角が120°で観察距離が5〜100mmの範囲だったものが、視野角が40°で観察距離が2〜4mmの範囲になって、顕微鏡的な近接拡大観察状態になる。
【0048】そして、光学系操作レバー6を中間の任意の位置で止めれば、操作ワイヤ25とスライド筒55を介して駆動される対物枠34と受像部枠35とが移動範囲の中間位置で止まって、通常観察状態と近接拡大観察状態との間の任意の倍率で観察することができる。
【0049】なお、θが45°を越える程度に第1のカム溝51がカム筒50の軸線方向に対して大きく傾いていると、操作力量が大きくなるだけでなく、近接拡大状態から通常観察状態に切り換える際の抵抗が大きくなるので、第2の圧縮コイルバネ58のバネ力を強くする必要があり、そのために第2の圧縮コイルバネ58の素線径が太くなって先端部本体10が太くなってしまう。
【0050】しかし、本発明においては、第1のカム溝51がカム筒50の軸線方向に対してなす角度が10°ないし45°の範囲なので、第2の圧縮コイルバネ58の素線径を細くすることができ、その結果、先端部本体10を細径に形成して優れた挿入性を得ることができる。
【0051】なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えばフォーカシングだけが行われるものでもよく、フォーカシングとズーミングの両方が行われるものでもよい。また、操作ワイヤ25の牽引によって移動するのが対物レンズ群21と固体撮像素子24のいずれか一方でもよい。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、遠隔操作によって操作ワイヤを牽引すると、軸線方向にスライドするスライド筒によってカム筒が軸線回りに回転駆動され、それによって対物枠と受像部枠の一方又は両方が軸線方向に駆動されてフォーカシングやズーミングが行われるので、対物枠を傾けることなく良好なピント状態でフォーカシングやズーミングを行って鮮明な観察像を得ることができ、カム筒を回転駆動するためにスライド筒に突設されたピンが係合するカム溝を、軸線方向に対して10°ないし45°の角度でカム筒に形成したことにより、軽い操作力量で円滑に動作させることができると共に、スライド筒を操作ワイヤの牽引方向と反対の方向に向けて付勢してある場合にその付勢手段を小さくして、挿入部の先端を小型化することができる。
【出願人】 【識別番号】000000527
【氏名又は名称】旭光学工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】三井 和彦
【公開番号】 特開平11−42203
【公開日】 平成11年(1999)2月16日
【出願番号】 特願平9−202678