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【発明の名称】 超音波ドプラ診断装置
【発明者】 【氏名】佐々木 琢也

【氏名】神田 良一

【要約】 【課題】超音波画像に含まれるノイズの影響を抑制して最大周波数や重心周波数のトレース精度を向上し得る超音波ドプラ診断装置を提供すること。

【解決手段】本発明に係る被検体内の運動流体を含む診断部位との間で超音波ビームを送受信し、得られた受信信号から所望のレンジゲート位置の流体に起因したドプラ信号を抽出し、このドプラ信号に基づいてドプラスペクトラムを演算し、このドプラスペクトラムの時間変化を縦軸を周波数、横軸を時間、信号強度又はパワーを輝度として表すドプラ画像を作成する超音波ドプラ診断装置は、ドプラ画像の中のノイズが支配的な特定領域の輝度平均に基づいて閾値を決定し、ドプラ画像に対して輝度が閾値を越える周波数成分の中の最大周波数を時間ごとに検出する画像処理演算部301を具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体内の運動流体を含む診断部位との間で超音波ビームを送受信する送受信手段と、この送受信手段により得られた受信信号から所望のレンジゲート位置の流体に起因したドプラ信号を抽出する抽出手段と、この抽出手段により抽出されたドプラ信号に基づいてドプラスペクトラムを演算するスペクトラム演算手段と、このドプラスペクトラムの時間変化を縦軸を周波数、横軸を時間、信号強度又はパワーを輝度として表すドプラ画像を前記ドプラスペクトラムから作成する手段と、前記ドプラ画像の中のノイズが支配的な特定領域の輝度平均に基づいて閾値を決定する手段と、前記ドプラ画像に対して輝度が前記閾値を越える周波数成分の中の最大周波数を時間ごとに検出する手段と、前記最大周波数の時間変化を表示する手段とを具備したことを特徴とする超音波ドプラ診断装置。
【請求項2】 前記閾値決定手段は、前記ドプラ画像内の複数の領域の中から輝度平均が最小になる領域を前記特定領域として選択する手段を有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項3】 前記閾値決定手段は、前記特定領域内の輝度値の標準偏差と前記輝度平均とに基づいて前記閾値を演算する手段を有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項4】 前記最大周波数の時間変化に基づいて収縮期間を判定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項5】 前記収縮期間を、最大周波数の時間変化の中で最も高い周波数に所定の係数を乗算することにより、収縮期間を判定するための閾値を求め、最大周波数が当該閾値を越える時間範囲として判定することを特徴とする請求項4記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項6】 前記判定した収縮期間を検索範囲として、収縮期最高流速点、拡張末期速度点、最低流速点の少なくとも1つを同定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項7】 前記収縮期最高流速点を、前記検索範囲で前記最大周波数の時間変化の極大点に同定することを特徴とする請求項6記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項8】 前記拡張末期速度点を、前記検索範囲内で時間軸に沿って検索していき、最初に出現する極小点に同定することを特徴とする請求項6記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項9】 被検体内の運動流体を含む診断部位との間で超音波ビームを送受信する送受信手段と、この送受信手段により得られた受信信号から所望のレンジゲート位置の流体に起因したドプラ信号を抽出する抽出手段と、この抽出手段により抽出されたドプラ信号に基づいてドプラスペクトラムを演算するスペクトラム演算手段と、このドプラスペクトラムの時間変化を縦軸を周波数、横軸を時間、信号強度又はパワーを輝度として表すドプラ画像を前記ドプラスペクトラムから作成する手段と、前記ドプラ画像に対して血流信号存在領域を時間ごとに限定する手段と、前記血流信号存在領域の範囲内で重心周波数を時間ごとに計算する手段と、前記重心周波数の時間変化を表示する手段とを具備したことを特徴とする超音波ドプラ診断装置。
【請求項10】 前記血流信号存在領域限定手段は、前記ドプラ画像の中のノイズが支配的な特定領域の輝度平均に基づいて閾値を決定する手段と、前記ドプラ画像に対して輝度が前記閾値を越える周波数成分の中の最小周波数と最大周波数を時間ごとに検出する手段とを有することを特徴とした請求項9記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項11】 前記閾値決定手段は、前記ドプラ画像内の複数の領域の中から輝度平均が最小になる領域を前記特定領域として選択する手段を有することを特徴とする請求項10記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項12】 前記閾値決定手段は、前記特定領域内の輝度値の標準偏差と前記輝度平均とに基づいて前記閾値を演算する手段を有することを特徴とする請求項10記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項13】 前記重心周波数の時間変化に基づいて収縮期間を判定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項9記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項14】 前記判定した収縮期間を検索範囲として、収縮期最高流速点、拡張末期速度点、最低流速点の少なくとも1つを同定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項13記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項15】 前記収縮期最高流速点を、前記検索範囲で前記重心周波数の時間変化の極大点に同定することを特徴とする請求項14記載の超音波ドプラ診断装置。
【請求項16】 前記拡張末期速度点を、前記検索範囲内で時間軸に沿って検索していき、最初に出現する極小点に同定することを特徴とする請求項14記載の超音波ドプラ診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波のドプラ効果を利用して、血流などの体内の流体の運動状態を診断する超音波ドプラ診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】超音波の医学的な応用としては種々の装置があるが、その主流は超音波パルス反射法を用いて生体の軟部組織の断層像を超音波診断装置である。この超音波診断装置は無侵襲検査法で、組織の断層像を表示するものであり、X線診断装置、X線CT装置、MRIおよび核医学診断装置などの他の診断装置に比べて、リアルタイム表示が可能、装置が小型で安価、X線などの被曝がなく安全性が高く、さらに超音波ドプラ法により血流イメージングが可能であるなどの独自の特徴を有している。
【0003】このため心臓、腹部、乳腺、泌尿器、および産婦人科などでその活用範囲は広い。特に、超音波プローブを体表から割り当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行えるほか、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便である。
【0004】さらに近年では、超音波パルスドプラ法と超音波パルス反射法とを併用し、一つの超音波プローブで断層像(白黒Bモード像)と血流情報とを得るとともに、少なくともその血流情報をリアルタイムで表示できるようにした超音波ドプラ診断装置が普及している。
【0005】この超音波ドプラ診断装置は、血流情報として血流速度を計測するものであり、送信制御及び受信制御のためのパルス発生回路は、クロック回路、分周回路などを備えており、所定周波数のクロックパルスに基づいて超音波繰り返し周波数に相当するレートパルスを生成し、そのレートパルスをパルサに供給している。パルサは、供給されたレートパルスに同期して高電圧の駆動電圧パルスで超音波振動子を励振する。この励振により、超音波振動子から超音波パルスが生体内に送波され、この送波された超音波パルスの一部は、生体内の血管壁及び血管内の血流(主に赤血球)で反射して超音波エコーとなる。このエコーは、超音波のドプラ効果を受けている。つまり、生体内を流れている血流に対して超音波パルスを走波すると、流動する血流によって散乱され、ドプラ偏移を受ける。このため、超音波ビームの中心周波数fcがfdだけ変化し、受信周波数fはf=fc+fdとなる。このドプラ偏移周波数fdは、血流速度v、超音波ビームと血管の成す角度θ、音速cとして、およそ以下のように表される。
【0006】
fd={(2・v・cosθ・fc)/c}・fcこのため、受信信号からドプラ偏移周波数fdを検出することにより血流速度vを知ることができる。このために、まず前置増幅器でエコー信号を増幅し、その増幅信号をミキサでクロックパルスと混合し、その混合信号を次段のローパスフィルタで高周波成分(2・fc)を除去し、ドプラ偏移周波数fdを中心とする低周波分のみを抽出する。この信号をここではドプラ偏移信号と称する。
【0007】サンプルホールド回路では、レンジゲート回路からのサンプリングパルスに従ってドプラ偏移信号にゲートを掛けて、所望の観測位置、すなわちサンプリング・ラスタ上に設定されたレンジゲート(サンプリングポイント、サンプリングボリュームともいう)の位置に対応するドプラ偏移信号をサンプリングする。レンジゲート回路は遅延時間を任意に設定できる回路で、超音波パルスが振動子とレンジゲート位置との間を超音波が往復伝搬するに等しい時間だけレートパルスよりも遅延させ、且つ、設定されたパルス幅でサンプリングパルスを形成する。なお、レンジゲート位置は、オペレータにより、Bモード断層上の血流速度を得たい血管の位置に、トラックボールやジョイスティックで任意に設定される。
【0008】バンドパスフィルタでは、サンプルホールド回路のサンプリングで生じた高周波成分や血管などの固定反射信号及び比較的遅い生体内の動きに拠る比較的低周波のクラッタ成分を除去し、血流のドプラ偏移周波数成分のみを抽出する。この抽出信号を周波数分析器で高速フーリエ変換などの周波数分析にかけて、周波数スペクトルパターン(ドプラスペクトラム)を求める。
【0009】このようなドプラスペクトラムを周期的に得、これらを信号強度又はパワーで輝度を割り当てて、縦軸を周波数として、横軸の時間軸に沿って配列することにより、図12に示すようなドプラ偏移周波数の時間変化を作成し、これをリアルタイムで表示している。なお、この時間変化を表す画像を、ここでは“ドプラ画像”と称するものとする。
【0010】さらに、血流状態を詳細に検討しようとして、最高血流速度の時間変化を、図13中の太線で図示した如く、最大周波数(最高周波数)のトレースにより見ることがある。
【0011】しかしながらその場合、血流からのドプラ信号強度がかならずしも十分とれない場合もある。特に、最大周波数を示す血流信号の強度又はパワーの値は小さく、ノイズとの分別が重要である。通常ノイズと信号の分別は信号強度又はパワーに対する閾値処理によって行われる。閾値を決定する方法としては、ある位置(時刻)の血流成分の最大輝度値をもとに算出した値を基準値として用いるトレース方法(特開平7−303641号公報)、また、ドプラ波形の存在確率の低い領域の輝度分布から基準ノイズレベルを検出してトレースする方法(特開平7−241291号公報)等が提案されている。
【0012】また、重心血流速度の時間変化を、図14の太線で図示した如く、重心周波数のトレースにより見ることがある。さらに、これら最高速度や重心速度のトレース波形を使って、指定された区間(時間)内における平均流速値、最高流速値、最低流速値などを計測したり、これらからさらに様々な特徴量を算出して診断を支援するようなことも行われている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以下のような問題がある。まず、最高周波数のトレースに関して、信号(血流)とノイズとを弁別するための閾値を、血流信号の最高輝度値から予め設定したdBだけ下がった所に求めているが、ドプラ信号のS/Nによっては閾値が適切とならない場合がある。例えば、S/Nの良い場合にはドプラ波形の内側(低流速側)をトレースしてしまうし、S/Nの悪い場合にはノイズに引っかかって局所的に外側(高流速側)をトレースしてしまう。この様子を図15に示す。
【0014】また、閾値をノイズレベルから算出する場合、算出する領域に血流成分の信号が含まれた場合には、正確なトレースができない。特開平7−241291号公報においては、血流信号の存在確率の低い所を用いるとしているが、血流信号が領域に入ることを防ぐのは難しく、特に拍動性に富む波形では血流信号が当該領域に入り込むことが容易に予想される。臨床的にもこのような波形は極めて一般的である。
【0015】一方、重心周波数のトレースに関しては、ドプラスペクトラム上での重心周波数を自動的にトレースする場合に、超音波画像に含まれるノイズの影響によりS/Nが低いドプラ画像では正確に重心の位置を求めることは難しく、図16に示すように、特に低周波数(低速)側でエラーが生じやすい。
【0016】さらに、これらのトレース結果を用いて様々な特徴量を算出して診断を行う場合、この算出のためのパラメータとして必要なのは、平均流速値、最高流速値、最低流速値、さらにこの他に収縮期最大流速値、拡張末期流速値が必要となる場合があるが、収縮期最大流速値、拡張末期流速値に関しては従来では自動検出できない。
【0017】また、連続した複数心周期に対して独立に上述のようなパラメータを検出することができないため、特徴量も心周期に対応させることができない。本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたもので、超音波画像に含まれるノイズの影響を抑制して最大周波数や重心周波数のトレース精度を向上し得る超音波ドプラ診断装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成させるため、この発明に係る超音波ドプラ診断装置は、被検体内の運動流体を含む診断部位との間で超音波ビームを送受信する送受信手段と、この送受信手段により得られた受信信号から所望のレンジゲート位置の流体に起因したドプラ信号を抽出する抽出手段と、この抽出手段により抽出されたドプラ信号に基づいてドプラスペクトラムを演算するスペクトラム演算手段と、このドプラスペクトラムの時間変化を縦軸を周波数、横軸を時間、信号強度又はパワーを輝度として表すドプラ画像を前記ドプラスペクトラムから作成する手段と、前記ドプラ画像の中のノイズが支配的な特定領域の輝度平均に基づいて閾値を決定する手段と、前記ドプラ画像に対して輝度が前記閾値を越える周波数成分の中の最大周波数を時間ごとに検出する手段と、前記最大周波数の時間変化を表示する手段とを具備したことを特徴とする。
【0019】また、本発明に係る超音波ドプラ診断装置は、被検体内の運動流体を含む診断部位との間で超音波ビームを送受信する送受信手段と、この送受信手段により得られた受信信号から所望のレンジゲート位置の流体に起因したドプラ信号を抽出する抽出手段と、この抽出手段により抽出されたドプラ信号に基づいてドプラスペクトラムを演算するスペクトラム演算手段と、このドプラスペクトラムの時間変化を縦軸を周波数、横軸を時間、信号強度又はパワーを輝度として表すドプラ画像を前記ドプラスペクトラムから作成する手段と、前記ドプラ画像に対して血流信号存在領域を時間ごとに限定する手段と、前記血流信号存在領域の範囲内で重心周波数を時間ごとに計算する手段と、前記重心周波数の時間変化を表示する手段とを具備したことを特徴とする。
(作用)最大周波数を自動的にトレースする場合、血流成分の信号が存在する割合が低く、ノイズ成分を多く含む特定の領域の平均輝度から閾値を決めているので、高精度にノイズを除去して、最大周波数のトレースを高精度で行うことができる。
【0020】また、ドプラスペクトラム上で血流信号の存在領域を限定してから、重心周波数をトレースするので、ノイズの影響を抑えて、高精度に重心周波数のトレースを行うことができる。また、インデックスを簡便に求める求めることで、計測操作全体を簡便にすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明を好ましい実施形態により説明する。図1にこの実施形態に係る超音波ドプラ診断装置の構成を示している。この診断装置は血流情報として血流速度を計測するものである。
【0022】超音波振動子201は、電気信号を扱う側と、超音波に内部情報を付与する被検体側との間を媒介するために、配列された複数の微小圧電素子を先端部分に有している。この振動子201の形態としては、セクタ対応、リニア対応、コンベックス対応等の中から任意に選択される。
【0023】パルス発生回路210は、クロック回路、分周回路などを有しており、クロック回路で発生した図2に示す所定周波数のクロックパルス(a)を分周して、超音波繰り返し周波数に相当するレートパルス(b)を生成し、そのレートパルスbをパルサ202に供給する。
【0024】パルサ202は、パルス発生回路210から供給されたレートパルス(b)に同期して高電圧の駆動電圧パルスを生成し、その駆動電圧パルスにより超音波振動子201を励振する。この励振により、超音波振動子201は超音波パルスを生体(P)内に送波する。送波された超音波パルスの一部は、生体(P)内の血管壁(BW)及び血管内の血流(B)の主に赤血球で反射する。この超音波エコーは超音波振動子201により受信され、電圧信号としてのエコー信号(d)変換される。
【0025】このエコー信号(d)は、音響インピーダンスの差に関する情報の他に、ドプラ効果による周波数偏移に関する情報を有している。つまり、生体(P)内を流れている血流(血球)に超音波パルスが当たると、その流動する血流によって散乱され、周波数偏移を受ける。このため、超音波ビームの中心周波数fcがfdだけ変化し、受信周波数fは、(fc+fd)になる。このドプラ偏移周波数fdは、血流速度をv、超音波ビームと血管の成す角度をθ、音速をcとすると、およそ以下のように表される。
【0026】fd=(2・v・ cosθ・fc)/c従って、ドプラ偏移周波数fdを検出することにより、血流速度のビーム方向成分(v・ cosθ)を知ることができる。
【0027】受信側では、まず、前置増幅器203でエコー信号(d)を増幅し、その増幅信号をミキサ204で参照周波数(fc)と混合し、その混合信号(2・fc+fd)の高周波成分(2・fc)を次段のローパスフィルタ205で除去する。
【0028】そして、このドプラ偏移周波数fdを中心とする低周波分のみからなる信号(以下、“ドプラ信号”と称する)の一部分が、レンジゲート回路211からのサンプリングパルスに従ってサンプルホールド回路206でサンプルされ、ホールドされる。
【0029】レンジゲート回路211は、遅延時間を任意に設定できる回路で、超音波パルスが振動子201と、オペレータにより任意の深さに設定されたレンジゲート(サンプリングポイント、サンプリングボリュームともいう)との間の距離を超音波が往復伝搬するに等しい時間だけ、レートパルス(b)よりも遅延させたタイミングで、所定のパルス幅のサンプリングパルス(c)を発生する。このサンプリングパルス(c)により、血流(B)の速度の観測位置、すなわちサンプリング・ラスタ上の血流(B)に対して設定されたレンジゲートの位置で周波数偏移を受けたドプラ信号を抽出することができる。
【0030】バンドパスフィルタ207では、サンプルホールド回路206のサンプリングで生じた高周波成分や、血管などの固定反射信号及び比較的遅い生体内の動きによる比較的低周波のクラッタ成分を除去し、血流(B)のドプラ偏移周波数のみを抽出する。
【0031】この抽出信号が次段の周波数分析器208に送られ、高速フーリエ変換(FFT)などの周波数分析によってドプラ偏移周波数の周波数スペクトラムが演算される。この周波数スペクトラムは、表示器209に送られ、ここで縦軸を周波数、横軸を時間、信号強度又はパワーを輝度として図12に示したようなドプラ画像(ドプラスペクトラムの時間変化)として表示される。
【0032】この超音波ドプラ診断装置波、さらに、画像処理演算部301と、画像処理のためにフリーズしたドプラ画像を記憶するためのフリーズ用メモリ302と、操作パネル303とを特徴的に備えている。
【0033】画像処理演算部301は、コンピュータを有し、操作パネル303を介して入力されたフリーズ指令信号により、フリーズ用メモリ302からフリーズに係るドプラ画像のデータを読み込み、そしてこのドプラ画像に対して最大周波数トレースや重心周波数トレースを実施し、これらトレース結果を利用して様々な特徴的な速度を検出して、この検出結果を表示器209に供給する。
【0034】操作パネル303は、オペレータが任意に操作可能なトラックボールやキーボードを備えており、この操作パネル303の操作を介して前述したレンジゲートが所望の位置(深さ)に設定され、またフリーズ指令等が入力され得る。また、操作パネル303は表示器209に表示されたドプラスペクトラム上の演算位置(時間位置)信号を画像処理演算部301に出力する。なお、レンジゲート位置信号及び演算位置信号に対応して所定のマーカーが表示器209に表示される。
【0035】なお、レンジゲートの位置情報はレンジゲート回路211にも送られ、指定したレンジゲートの位置(深さ)に対応した走査線上に受信超音波ビームを絞ることができるようになっている。
【0036】次に、画像処理演算部301の処理について図3を参照して説明する。まず、ステップS11において、まず、画像処理演算部301は、フリーズが指令されたときに表示されているドプラ画像のデータを、最大周波数トレースや重心周波数トレース、またこれらトレース結果を利用した様々な特徴的な速度の検出の対象として、フリーズ用メモリ302から読み込む。
【0037】次に、ステップS12では、血流信号成分とノイズ成分とを弁別するための閾値を決定するために最適な閾値演算領域を選択する。この選択にあたっては、図4と図5に示すように、複数、個々では6つの閾値演算領域の候補(以下、“サンプル領域”と称する)が予め画像上に規定されている。このサンプル領域の中から、上述した最適な1つの閾値演算領域を選択するのは、輝度の平均値を領域ごとに演算し、この平均値の比較により行うのであり、具体的には平均値が最小のサンプル領域を閾値演算領域として選出する(図6参照)。上述したように、ドプラ画像の輝度は各周波数での信号強度又はパワーによって決められており、一般的には、ランダムに発生するノイズの信号強度又はパワーは、血流信号の信号強度又はパワーより小さくなる。従って、平均値が最小のサンプル領域とは、その領域内で血流信号成分の占める割合が最小で、しかもノイズ成分の占める割合が最大となる傾向にある。勿論、予めサンプル領域を規定せずに、オペレータが血流信号成分の割合が低く、理想的にはこの割合がゼロで、しかもノイズ成分の割合が高いと判断した領域を任意の大きさで、任意の形状に設定できるようにしてもよい。
【0038】閾値演算領域が決まると、次に、ステップS13において、図6に示すように、その領域内の輝度値の標準偏差値を演算し、この標準偏差値とステップS12で計算済みの輝度平均値とで、次のように閾値を演算する。
【0039】
閾値=領域内輝度平均値+領域内輝度標準偏差値×係数なお、この係数は、オペレータがトレース結果を検証して、その精度から判断して任意の値に変更可能とすることが好適である。
【0040】このように閾値が決まると、ステップS14において、最大周波数を時間軸に沿ってトレースする。このトレースの処理の流れを図7に示している。ステップS21では、時間軸上で時刻ごとに各画素の輝度値(信号強度又はパワー)をステップS13で出力された閾値に対して、周波数軸に沿って上方(高周波数側)から順番に比較していき、図8に示すように、ステップS22で最初に輝度値が閾値以上と判定された画素の位置(周波数)を、ステップS23において最大周波数値として検出する。また、時間軸上で時刻ごとに各画素の輝度値(信号強度又はパワー)をステップS13で出力された閾値に対して、周波数軸に沿って下方(低周波数側)から順番に比較していき、最初に輝度値が閾値以上と判定された画素の位置(周波数)を、最小周波数値として検出する。
【0041】このような処理をステップS24により時間軸方向に連続して繰り返すことにより、最大周波数と最小周波数を時間軸に沿ってトレースしていき、最終的に図13に示したような最大周波数(最高速度)の時間曲線と最小周波数(最低速度)の時間曲線を得る。
【0042】次に、図3の重心速度トレース処理(ステップS15)について説明する。この重心速度トレース処理の流れを、図9に示している。この処理でも、最大周波数トレース処理で求めた閾値を使って、画素の輝度を上方(高周波数側)から順番に当該閾値と比較し、最初に出現した閾値以上の輝度値を示す画素の位置を最大周波数として検出し(ステップS31)、また画素の輝度を、周波数軸に沿って下方(低周波数側)から順番に当該閾値と比較し、最初に出現した閾値以上の輝度値を示す画素の位置を最小周波数として検出する(ステップS32)。
【0043】このステップS31、S32により、図10に示すように、血流成分が存在する周波数帯域、つまり血流信号存在領域が限定され得る。ステップS33では、この血流信号存在領域に限定して、重心周波数を演算する。このような血流信号存在領域の限定と、その範囲内での重心周波数の演算との処理を、ステップS34を介して時刻ごとに繰り返し行い、重心周波数を時間軸に沿ってトレースしていき、最終的に図14に示したような重心周波数(重心速度)の時間曲線を得る。
【0044】従来のように、血流信号存在領域(血流成分が存在する周波数帯域)を限定せずに、周波数軸全域を対象として重心周波数を演算したとき、S/Nが悪いドプラ画像では、図16に示したように特に流速が低い領域でのトレース精度が悪化する。
【0045】この説明では、最大周波数および最小周波数のトレースの方法を用いて血流信号存在領域を周波数軸上で限定したが、図3のステップS13で求めた閾値を用いて、閾値以上の輝度を持つ画素群を抽出し、この抽出した画素群を対象にして重心周波数を演算してもよい。また、周波数軸方向に重み付けを行って重心を演算してもよい。
【0046】図3のステップS17においては、ドプラスペクトラム上の上記ステップS15で出力された最大周波数トレースまたはステップS16で出力された重心周波数トレース結果を用いて、図11に示すように指定範囲内に含まれる数心拍中の個々の心拍周期内での収縮期最高流速点(PSV)や拡張末期速度点(EDV)、また個々の心拍周期内での最低流速点(Vmin )を同定する。各点が満たす条件を以下に説明する。
【0047】収縮期最高流速点(PSV)について説明する。図11に示すように、最大周波数でトレースした時間曲線の全領域(ドプラ画像の時間幅)からその中の最も高い周波数に、所定の係数(例えば0.8)を乗算することにより、収縮期間を判定するためのPSV判定閾値とする。PSVは、最大周波数が当該PSV判定閾値を越える時間範囲以内で、最大周波数の時間曲線が凸部分の最大値(極大値)の位置を収縮期最高流速点(PSV)として同定する。
【0048】拡張末期速度点(EDV)は、PSVを同定するのに用いたPSV判定閾値を最大周波数が越える時間範囲内を対象に、その範囲の最も右(時間軸で過去)側の点から時間軸に沿って検索していき、最初に表れる凹部分の頂点(極小値)の点である。
【0049】なお、PSVを検索開始点としてEDVを検索していくような方法も可能である。しかし、このような方法では、PSV点付近の上下変動が大きいような場合、EDVをPSV付近で誤認識してしまうことが予想されるが、上述したように拡張期間を限定してから、時間軸上で過去の側から時間軸に沿って検索していくことにより、EDVを正確に同定することができる。最低流速点(Vmin )は2つのEDV点間のトレース曲線領域中で最小速度値点である。
【0050】次に、図3のステップS18では、ステップS17で同定された点の時刻やその血流速度(周波数)に基づいて、ドプラ波形の形状的特徴をインデックス値として数値化することができる。
【0051】図3のステップS19では、ステップS15で得られた最大周波数トレース結果と、ステップS16で得られた重心周波数トレース結果と、ステップS17で同定された点と、ステップS18で得られたインデックス値を図1の表示器209に出力し、ドプラ画像中に表示する。
【0052】上述では、画像信号処理部をソフトウェアを用いて構成するものと想定して説明したが、それぞれの機能を実現するように設計された回路により当該画像信号処理部をハードウェアで構成しても良い。その他、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、最大周波数を自動的にトレースする場合、血流成分の信号が存在する割合が低く、ノイズ成分を多く含む特定の領域の平均輝度から閾値を決めているので、高精度にノイズを除去して、最大周波数のトレースを高精度で行うことができる。
【0054】また、ドプラスペクトラム上で血流信号の存在領域を限定してから、重心周波数をトレースするので、ノイズの影響を抑えて、高精度に重心周波数のトレースを行うことができる。また、インデックスを簡便に求める求めることで、計測操作全体を簡便にすることができる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成9年(1997)7月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
【公開番号】 特開平11−33024
【公開日】 平成11年(1999)2月9日
【出願番号】 特願平9−194041