| 【発明の名称】 |
超音波ドプラ診断装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】小笠原 洋一
【氏名】神田 良一
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| 【要約】 |
【課題】本発明の目的は、術者に作業負担を強いることなく、リアルタイムで血流の拍動性と定常性に関する情報を2次元的に表示することができる超音波ドプラ診断装置を提供することである。
【解決手段】本発明は、被検体に超音波パルスを送受波して得られたエコー信号を位相検波してドプラ信号を検出し、検出したドプラ信号からMTIフィルタ5Fによってクラッタ成分を除去して血流成分を抽出し、その血流成分に基づいて血流情報を表示する超音波ドプラ診断装置において、抽出された血流成分に基づいて血流の拍動性をフレーム毎に評価する拍動性評価回路10と、評価された拍動性パラメータに基づいて血流情報を表示するカラーモニタ9とを具備する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体に超音波パルスを送受波して得られたエコー信号を位相検波してドプラ信号を検出し、検出したドプラ信号からMTIフィルタによってクラッタ成分を除去して血流成分を抽出し、その血流成分に基づいて血流情報を表示する超音波ドプラ診断装置において、前記抽出された血流成分に基づいて血流の拍動性をフレーム毎に評価する拍動性評価手段と、評価された拍動性パラメータに基づいて血流情報を表示する手段とを具備したことを特徴とする超音波ドプラ診断装置。 【請求項2】 前記拍動性評価手段は、前記拍動性パラメータに含まれる血管の移動に起因する誤差成分を低減する手段を有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項3】 前記拍動性評価手段は、近隣する数フレーム間の血流情報を用いて演算することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項4】 前記拍動性評価手段は、近隣する数フレーム間で血流速度を減算する手段を有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項5】 前記拍動性評価手段は、近隣する数フレーム間で血流速度を減算し、その減算値を規格化する手段を有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項6】 前記拍動性評価手段は、近隣する数フレーム間で同ピクセル位置に血流が存在するか否かを判定する手段と、近隣する数フレーム間で同ピクセル位置に血流が存在するとき、近隣する数フレーム間で血流速度を減算する手段とを有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項7】 前記拍動性評価手段は、近隣する数フレーム間で血流速度を減算する手段と、その減算値をフレーム間で平均化する手段とを有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項8】 前記血流成分の自己相関係数をベクトル空間で平均化する手段を前記拍動性評価手段の前処理としてさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項9】 前記拍動性評価手段は、前記血流成分から求めた血流速度と分散との両方を用いて血流の最高速度を演算する手段と、近隣する数フレーム間の最高速度に基づいて拍動性を評価する手段とを有することを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項10】 前記拍動性パラメータと血流のパワー値とに基づいて色相を割り当てる手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の超音波ドプラ診断装置。 【請求項11】 前記色相割当手段は、血流のパワー値が小さいほど拍動性パラメータの固有色を淡くすることを備えることを特徴とする請求項10記載の超音波ドプラ診断装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、超音波のドプラ効果を利用して生体内の血流等の移動体の移動情報を得、その情報をカラーで表示する超音波ドプラ診断装置に関する。 【0002】 【従来の技術】超音波ドプラ診断装置は、無侵襲で生体内の血流速度等の血流情報を計測することができる極めて応用範囲の広い装置であり、血流計測においては、生体内の任意の設定点の血流速度を計測するいわゆる一ポイントドプラ(FFT) 法や、血流の状態を2次元的広がりをもってカラー表示し得るいわゆるCFM(Color FlowMapping)が主に用いられている。 【0003】FFTもCFMも原理的には等価であり、超音波が移動体により反射されるときに反射波の周波数が、その移動体の移動速度に比例して偏移するドプラ効果を利用したものである。このドプラ効果による偏移周波数を用いて、血流速度や分散やパワー等の各種血流情報を算出することができる。偏移周波数fdは、血流速度V、送信超音波の中心周波数f0 、超音波と血流のなす角度θ、生体内での超音波の伝搬速度cに対して次の関係にあるので、偏移周波数fdが分かれば血流速度Vを求めることができる。 【0004】 【数1】
【0005】以下、図8を用いて従来の超音波ドプラ診断装置の構成を説明する。超音波プローブ1は、電気信号を扱う装置本体側と、超音波に振幅変調や周波数変調をかけて内部情報を付与する被検体側との間を媒介するために、配列された複数の微小圧電素子を先端部分に有している。 【0006】超音波プローブ1から超音波を送信するために、パルス発生器2Aと送信回路2とが設けられる。パルス発生器2Aからは超音波の送信レート(毎秒送信回数)を決定するためのレートパルスが出力される。このレートパルスは、送信遅延回路とパルサとを有する送信回路2に送られ、まず送信遅延回路で超音波の指向性を決めるために必要な適当な遅延を受けて、パルサにトリガパルスとして与えられる。このトリガパルスに同期してパルサからプローブ1の圧電素子に個別に又は近隣グループ単位で高周波の信号パルスが印加される。 【0007】プローブ1の圧電素子は、この信号パルスを受けて振動し、これにより超音波が、この振動の中心周波数で被検体に送信される。この超音波は生体内を伝播し、その途中にある音響インピーダンスの不連続面で次々と反射する。この反射により生じたエコーはプローブ1に返ってきて、圧電素子を振動する。これにより、圧電素子からは微弱な電気信号が発生する。 【0008】この電気信号は、受信回路3に取り込まれる。受信回路3は、プリアンプ、受信遅延回路、加算器とから構成される。プローブ1からの電気信号はまずプリアンプで増幅され、受信遅延回路で適当な遅延を受けた後、加算器で加算される。これにより受信指向性を持った1つの受信信号が取得される。この受信信号は、Bモード処理系4とカラーフローマッピング処理系(CFM処理系)5とにそれぞれ送り込まれる。 【0009】Bモード処理系4は、検波回路と、対数増幅器と、アナログデジタルコンバータとから構成される。検波回路は、受信信号を検波して、反射成分(エコー信号)を取り出す。このエコー信号を対数増幅器で対数増幅して、さらにアナログデジタルコンバータでディジタル信号に変換してから出力する。 【0010】カラーフローマッピング処理系5は、ミキサ5Aと、発振器5Bと、π/2移相器5Cと、ローパスフィルタ(LPF)5Dと、アナログデジタルコンバータ(A/D−C)5Eと、MTIフィルタ5Fと、演算回路5Gとから構成される。なお、ミキサ5Aと、ローパスフィルタ5Dと、アナログデジタルコンバータ5Eと、MTIフィルタ5Fとは、実数成分と複素数成分とを並列に処理するために、それぞれ2系統設けられている。 【0011】ミキサ5Aとローパスフィルタ5Dとは、発振器5Bから出力される送信超音波の中心周波数で振動する基準信号と、π/2移相した基準信号を使って受信信号を直交位相検波して、血球や臓器壁等の移動体から周波数偏移を受けた成分(ドプラ信号)を取り出す。このドプラ信号はI信号とQ信号の2系統からなり、アナログデジタルコンバータ5Eで所定のサンプリング周波数に従って1本の走査線に対して例えば0.5mm間隔でサンプリングしてディジタル信号に変換して、MTIフィルタ5F内のバッファメモリに一旦格納される。 【0012】周知のように、CFMモードでは同一方向への送受信をN回(例えば16回)繰り返す。よって一枚の画像を再構成するのに必要なバッファメモリには、L*M*Nの三次元データが記憶されることになる。L、M、Nはそれぞれ走査線数、1走査線内の深さ方向へのピクセル数(サンプル点数)、同一走査線の送受信の繰り返し数(以下、データ数と称す)である。この三次元データにはI信号、Q信号共に格納されている。CFMモードでは、各ピクセルで独立に処理を行い、各ピクセル毎の血流情報を表示する。よって、基本的に以降の説明は、ある走査線、ある深さでの、データ番号方向へのデータ列を取り扱う。 【0013】同一場所をN回送受信して得られるN個のディジタルデータは、受信信号を位相検波後、送受信した順番に並べたものである。ドプラ信号には、血球のようにある程度の速度で移動する移動体からの反射信号と、実質臓器のように動きの非常に遅い物体からの反射信号(以下、クラッタと称す)が混在しており、しかも信号強度は後者が十分に大きい。 【0014】よって、このままでは、血流に対する情報をこのデータ列から抽出することはできない。この実質臓器と血球の移動速度の差を利用して、クラッタ成分を除去するために用いられているのがMTIフィルタ5Fである。 【0015】MTIフィルタ5Fは、線形のハイパスフィルタであり、FIR構成でもIIR構成でも良い。実質臓器のようにあまり動かない物体からのクラッタ成分は、送受信を繰り返しても受信エコーの基準信号に対する位相があまり変化しない。よって、上記N個のデータ列はあまり変化せず、DC付近の周波数しかもたない。それに対し、血球のようにある程度の速度で移動している物体からの反射信号は、送受信信号を繰り返すたびに、基準信号に対する位相が大きくわかるため、上記N個のディジタルデータ列の変化は速く、周波数も高い。よって、上記N個のディジタルデータ列に対するハイパスフィルタ処理により、クラッタ成分を除去して、血流成分を抽出することができる。 【0016】MTIフィルタ5Fにより、クラッタ成分を除去され、血球からの成分のみとなった信号は、演算回路5Gに送られ、血流に関する情報(血流情報)を推定する処理がなされる。その代表的な例は、自己相関処理といわれる処理で偏移周波数を実時間で計算し、この偏移周波数に基づいて血流の平均速度、速度分布の分散、血流からの反射信号のパワーが計算される。 【0017】このようにして計算された血流情報は、ディジタルスキャンコンバータ6に出力される。ディジタルスキャンコンバータ6はフレームメモリを有し、Bモード処理系4から入力する断層像データとCFM処理系5から入力する血流情報とを2次元画像としてフレームメモリに記憶し、カラー処理部7に出力する。カラー処理部7ではディジタルスキャンコンバータ6からの入力信号を、ルックアップテーブルに従ってRGB等の色信号に変換する。色信号はディジタルアナログコンバータ8を介してカラーモニタ9に表示される。 【0018】例えば、血流のパワー値を表示する場合、基調の色として赤系の色を与え、パワー値の大きさを輝度に割り当てる。つまり、パワー値が大きくなるにつれて徐々に明るい赤色に、逆に小さくなるにつれて徐々に暗い赤色になる。 【0019】 【発明が解決しようとする課題】前述した従来の超音波ドプラ診断装置におけるCFMは、通常、血流情報をBモード像(白黒断層像)に重ねてカラー表示する。血流情報の一つである血流の速度に関しては、プローブ1との相対的な速度(大きさ、方向)が計算されるので、例えば、プローブ1に近づく方向(順方向)と遠ざかる方向(逆方向)を異なる色(赤系、青系)で示し、速度の大きさに応じて輝度を変化させて表示する、あるいは速度の方向、大きさの両情報に対応して色自体を変えて表示する。 【0020】しかしながら、1本の血管であっても、血管に対する超音波ビームの照射角によっては、プローブ1に対する向きは順逆両方向が存在し、異なる方向を示す色を混在して表示する場合がある。また、臨床ニーズとして、例えば良悪性腫瘍鑑別や腫瘍の進行具合を判断するために、腫瘍を取り巻く血流が拍動流、定常流かを知りたいという要求がある。 【0021】この場合、現在用いられている血流の方向性表示における微妙な輝度変化、あるいは血管毎に速度の大きさが異なるために色とりどりに表示された現在の2次元カラー表示では、血流の拍動性、定常性を容易に評価できないことが多い。 【0022】そこで血流の拍動性、定常性の評価を支援するために、従来は、1ポイントドプラを当てて、得られたドプラパターンを観測することがなされている。但し、この方法では、一点しか確認することができないので、リアルタイムで2次元的な血流の拍動性、定常性を評価できない上に、その都度、1ポイントドプラを行わなければならず、術者の作業負担になっていた。 【0023】この問題を解決するために、血流の拍動性を評価する方法が提案されている(特開平3−191951号公報)。しかし、それには以下のような問題点がある。 【0024】1)血流の拍動性、定常性の評価を行うために、1心拍に要する時間のフレーム数を必要とするので、走査中に血管の移動による影響を受けやすい。そのため、評価が適切に実施できなくなり誤評価を与える可能性が高くなる。 【0025】2)拍動性評価を平均速度を用いて評価する場合、直交流では平均速度がほぼ零になるので、拍動性評価で適切な評価ができない。 3)S/Nの悪い血管では血流の平均流速がばらつくため拍動性を適切に評価できず、誤情報を与える可能性が高い。 【0026】本発明は上述した問題点を鑑みてなされたもので、術者に作業負担を強いることなく、リアルタイムで血流の拍動性と定常性に関する情報を2次元的に表示することができる超音波ドプラ診断装置を提供することを目的とする。 【0027】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決し目的を達成するため、本発明は、被検体に超音波パルスを送受波して得られたエコー信号を位相検波してドプラ信号を検出し、検出したドプラ信号からMTIフィルタによってクラッタ成分を除去して血流成分を抽出し、その血流成分に基づいて血流情報を表示する超音波ドプラ診断装置において、前記抽出された血流成分に基づいて血流の拍動性をフレーム毎に評価する拍動性評価手段と、評価された拍動性パラメータに基づいて血流情報を表示する手段とを具備する。 【0028】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明を実施形態により説明する。図1には本実施形態に係る超音波ドプラ診断装置の構成を示している。超音波プローブ1は、電気信号を扱う装置本体側と、超音波に振幅変調や周波数変調をかけて内部情報を付与する被検体側との間を媒介するために、配列された複数の微小圧電素子を先端部分に有している。 【0029】超音波プローブ1から超音波を送信するために、パルス発生器2Aと送信回路2とが設けられる。パルス発生器2Aからは超音波の送信レート(毎秒送信回数)を決定するためのレートパルスが出力される。このレートパルスは、送信遅延回路とパルサとを有する送信回路2に送られ、まず送信遅延回路で超音波の指向性を決めるために必要な適当な遅延を受けて、パルサにトリガパルスとして与えられる。このトリガパルスに同期してパルサからプローブ1の圧電素子に個別に又は近隣グループ単位で高周波の信号パルスが印加される。 【0030】プローブ1の圧電素子は、この信号パルスを受けて振動し、これにより超音波が、この振動の中心周波数で被検体に送信される。この超音波は生体内を伝播し、その途中にある音響インピーダンスの不連続面で次々と反射する。この反射により生じたエコーはプローブ1に返ってきて、圧電素子を振動する。これにより、圧電素子からは微弱な電気信号が発生する。 【0031】この電気信号は、受信回路3に取り込まれる。受信回路3は、プリアンプ、受信遅延回路、加算器とから構成される。プローブ1からの電気信号はまずプリアンプで増幅され、受信遅延回路で例えば送信時とは逆の適当な遅延を受けた後、加算器で加算される。これにより受信指向性を持った1つの受信信号が取得される。この受信信号は、Bモード処理系4とカラーフローマッピング処理系(CFM処理系)5とにそれぞれ送り込まれる。 【0032】Bモード処理系4は、検波回路と、対数増幅器と、アナログデジタルコンバータとから構成される。検波回路は、受信信号を検波して、反射成分(エコー信号)を取り出す。このエコー信号を対数増幅器で対数増幅して、さらにアナログデジタルコンバータでディジタル信号に変換してから出力する。 【0033】カラーフローマッピング処理系5は、ミキサ5Aと、発振器5Bと、π/2移相器5Cと、ローパスフィルタ(LPF)5Dと、アナログデジタルコンバータ(A/D−C)5Eと、MTIフィルタ5Fと、演算回路5Gとから構成される。なお、ミキサ5Aと、ローパスフィルタ5Dと、アナログデジタルコンバータ5Eと、MTIフィルタ5Fとは、プローブ1に近づく血流と遠ざかる血流とを識別するために、それぞれ2系統設けられている。 【0034】ミキサ5Aとローパスフィルタ5Dとは、発振器5Bから出力される送信超音波の中心周波数で振動する基準信号と、π/2移相した基準信号を使って受信信号を直交位相検波して、血球や臓器壁等の移動体から周波数偏移を受けた成分(ドプラ信号)を取り出す。このドプラ信号はI信号とQ信号の2系統からなり、アナログデジタルコンバータ5Eで所定のサンプリング周波数に従って1本の走査線に対して例えば0.5mm間隔でサンプリングしてディジタル信号に変換して、MTIフィルタ5F内のバッファメモリに一旦格納される。 【0035】周知のように、CFMモードでは同一方向への送受信をN回(例えば16回)繰り返す。よって一枚の画像を再構成するのに必要なバッファメモリには、L*M*Nの三次元データが記憶されることになる。L、M、Nはそれぞれ走査線数、1走査線内の深さ方向へのピクセル数(サンプル点数)、同一走査線の送受信の繰り返し数(以下、データ数と称す)である。この三次元データにはI信号、Q信号共に格納されている。CFMモードでは、各ピクセルで独立に処理を行い、各ピクセル毎の血流情報を表示する。よって、基本的に以降の説明は、ある走査線、ある深さでの、データ番号方向へのデータ列を取り扱う。 【0036】同一場所をN回送受信して得られるN個のディジタルデータは、受信信号を位相検波後、送受信した順番に並べたものである。ドプラ信号には、血球のようにある程度の速度で移動する移動体からの反射信号と、実質臓器のように動きの非常に遅い物体からの反射信号(以下、クラッタと称す)が混在しており、しかも信号強度は後者が十分に大きい。 【0037】よって、このままでは、血流に対する情報をこのデータ列から抽出することはできない。この実質臓器と血球の移動速度の差を利用して、クラッタ成分を除去するために用いられているのがMTIフィルタ5Fである。 【0038】MTIフィルタ5Fは、線形のハイパスフィルタであり、FIR構成でもIIR構成でも良い。実質臓器のようにあまり動かない物体からのクラッタ成分は、送受信を繰り返しても受信エコーの基準信号に対する位相があまり変化しない。よって、上記N個のデータ列はあまり変化せず、DC付近の周波数しかもたない。それに対し、血球のようにある程度の速度で移動している物体からの反射信号は、送受信信号を繰り返すたびに、基準信号に対する位相が大きくわかるため、上記N個のディジタルデータ列の変化は速く、周波数も高い。よって、上記N個のディジタルデータ列に対するハイパスフィルタ処理により、クラッタ成分を除去して、血流成分を抽出することができる。 【0039】MTIフィルタ5Fにより、クラッタ成分を除去され、血球からの成分のみとなった信号は、演算回路5Gに送られ、血流に関する情報(血流情報)を推定する処理がなされる。その代表的な例は、自己相関処理といわれる処理で偏移周波数を実時間で計算し、この偏移周波数に基づいて血流の平均速度、速度分布の分散、血流からの反射信号のパワーが計算される。 【0040】このようにして計算された血流情報は、ディジタルスキャンコンバータ6に出力される。ディジタルスキャンコンバータ6はフレームメモリを有し、Bモード処理系4から入力する断層像データとCFM処理系5から入力する血流情報とを2次元画像としてフレームメモリに記憶し、カラー処理部7に出力する。カラー処理部7ではディジタルスキャンコンバータ6からの入力信号を、ルックアップテーブルに従ってRGB等の色信号に変換する。色信号はディジタルアナログコンバータ8を介してカラーモニタ9に表示される。 【0041】例えば、血流のパワー値を表示する場合、基調の色として赤系の色を与え、パワー値の大きさを輝度に割り当てる。つまり、パワー値が大きくなるにつれて徐々に明るい赤色に、逆に小さくなるにつれて徐々に暗い赤色になる。 【0042】本実施形態で特徴的なのは、CFM処理系5の演算回路5Gから出力される血流の平均速度、速度分布の分散、血流からの反射信号のパワー等の血流情報に基づいて、血流の拍動性や定常性を評価して、拍動性パラメータを求めるための拍動性評価回路10を設けた点にある。 【0043】一般に、拍動流と定常流の平均速度の時間変化は図2のように示すことができ、拍動流は定常流に比べ、速度の時間変化量“ΔV”が大きい。そこで、時間方向すなわちフレーム間における血流の平均速度の差分値を計算することで血流の拍動性を評価することができる。 【0044】一方、フレーム間で拍動性パラメータを求めるためには、対象とするフレーム間においてピクセル単位で血流の描出位置が変化しないことが望ましいが、走査面が被験者の臓器の動きや術者のプローブ位置変化により血管が若干ずれることが考えられる。1ポイントドプラ法でドプラ波形を観察できるような太い血管であれば、数〜十数ピクセルに渡って血流が存在するので若干の位置ずれがあっても計測ポイントが血管内にかかっていれば拍動性が評価できるが、たかだか一、2ピクセル程にしか検出されないような細い血管については、血管の移動によりフレーム間で同ピクセル位置に血流の時間変化情報が得られないため拍動性の評価が困難となる。 【0045】そこで、如何にして血管の移動による影響を回避するかが重要となる。ここでは、以下の3点により血管の動きによる影響を低減する。第1に、血管の移動の影響が小さくなるような極短い時間、すなわち少ないフレーム数あるいはあまり隔たっていないフレーム間で拍動性の評価を行う。前記した拍動性評価法に基づき、血流速度を利用して、フレーム間減算を行い、速度の変化量を求める。ここで、出力される拍動性パラメータとしては速度の絶対的な変化量が有効と考えるので、変化量の絶対値を求める。あるピクセルにおける現在のフレームの血流速度をV0、相対的にi番目前のフレームの血流速度をViとすれば、拍動性パラメータを次の式により計算する。 【0046】 【数2】
【0047】この拍動性パラメータの値は、拍動流で大きく変化するので拍動性の指標となり、そのまま拍動性パラメータとして用いても良い。但し、このパラメータ値は絶対量であるために血流速度の大きさに依存する。すなわち、例え定常流であっても絶対的な速度が大きい場合、少しの揺らぎが生じてもパラメータ値は大きくなり、絶対的な速度が小さい拍動流におけるパラメータ値に比べ大きくなってしまうという問題が発生し得る。そこで新たに、前記パラメータを求める際に利用した2つの速度の平均値で除算し、規格化することによって前記不都合を回避する。すなわち、拍動性パラメータを次の式により求める方が好ましい。 【0048】 【数3】
【0049】なお、βは定数である。これにより、絶対的な速度の影響が除去され、拍動流の拍動性にのみ依存するパラメータ値となる。また、血管の動きによる影響を極力避けるためには、時間経過の最も短い近隣又は隣接する2又は数フレーム間で減算することで対応する(i=1の場合に相当)。但し、求められた拍動性パラメータは、最終的にフレーム毎に更新されて逐次、画面にカラー表示されるものとする。 【0050】第2に、比較するフレーム間で血流速度が観測されない場合、評価を行わない。すなわち、拍動性は示さないようにする。なぜならば前述したように、フレーム間で同ピクセル上に血流が存在しない場合の多くは極細い血管であり、このような先の細い血管内の血流の拍動性が評価されなくても、その幹となる太い血流にて拍動性が示されれば、血管構築の様子からその拍動性を容易に推測ができるからである。但し、当然のことながら、そのフレームで存在する血流は拍動性の評価は受けないもののパワー表示などにより画面に表示される。 【0051】第3に、拍動性パラメータを求める場合の入力となる血流平均速度を求める場合に自己相関係数の空間平均を行う。これにより拍動性評価に用いる血流平均速度の分布が空間的に広がるために、血管の移動をカバーできるようになり、細い血流に対しても拍動性の評価が実施できる。 【0052】ところで、図3(a)に示すような直交流では、MTIフィルタ通過後のスペクトラム分布は図3(b)のようにほぼDCを挟んで周波数すなわち速度分布が対称に広がっているので、CFM処理系5の演算器5Gで算出される平均速度はほぼ零となる。この場合、拍動性パラメータは適切に評価できない。そこで、速度の広がりも考慮し、平均速度の代わりに次の流速を適用する。 【0053】 【数4】
【0054】但し、αは定数であり、本変換式では最高流速を近似的に求めることになる。直交流は平均速度がほぼ零であったとしても、分散値が大きいために、上式を適用することで拍動性の評価を効果的に実施できる。 【0055】以上を考慮し、拍動性評価回路10を図4のように構成する。本回路は基本的に1フレーム周期分の遅延回路として機能するフレームメモリ10bと、減算器10dとを中心に構成される。CFM処理系5の演算回路5Gから入力してきた血流情報、すなわち平均速度と分散とに基づいて、前述した直交流対策のために最高速度演算器10aで最高速度が計算される。定数αは事前に検討され、最適と判断された値を用いる。 【0056】この最高速度V0と、フレームメモリ10bを経由した1フレーム前の最高速度V1とに基づいて、フレーム間で同ピクセル位置に血流が存在しているかが判定器10cにて判定される。存在しているのであれば、そのままV0とV1は判定器10cをスルーされ、その後の演算を行うかに関してON信号を与え、無ければOFF信号を与え、この信号をもとにOFFであれば最終的に処理値結果を零として出力する。 【0057】減算器10dでは、送られてきた最高速度V0からV1を減算し、その絶対値|V0−V1|と、V0とV1の値を規格化演算器10eに渡す。規格化演算器10eでは、あらかじめ与えられた定数βに従って、規格化のための演算を行い、その値を拍動性パラメータとしてディジタルスキャンコンバータ6に出力する。 【0058】本実施形態においては、血管の動きによる影響を極力回避するため、隣合うフレーム間での評価を行うとしてフレームメモリ10bを1つだけ設置したが、場合によってはフレームメモリ10bを多段に連結し、今のフレームのV0と、それより何フレーム前のV1とを用いて拍動性パラメータを求めるかを自由に選択できるようにしても良い。 【0059】ところで、血管の移動の影響を低減するための第3の手法に従い、CFM処理系5の演算回路5Gは、図5(a)の如く構成する。なお、図5(b)は従来の演算回路5Gの構成である。本回路にて、自己相関器5Gaから出力されるc0,c1は自己相関係数で、【0060】 【数5】
と定義される。ここで、Nはデータ数、SkはMTIフィルタ通過後の信号であり、*は複素共役数を意味する。本実施形態の拍動性評価回路10で利用する血流情報は、平均速度と分散を用いて計算される速度なので、平均速度演算器5Gcおよび分散演算器5Gdの前にそれぞれベクトル空間平均演算器5Ge,5Gfを設ける。但し、血流の存在を示すパワーについては空間平均を行わず空間分解能を損なわないようにする。これにより拍動性評価に用いる血流速度又は分散の分布が空間的に広がるために、血管の移動をカバーできるようになり、細い血流に対しても拍動性の評価が実施できる。 【0061】ディジタルスキャンコンバータ6はフレームメモリを有し、Bモード処理系4から入力する断層像データと、CFM処理系5から入力する血流情報と、拍動性評価回路10から入力する拍動性パラメータマップとを任意に組み合わせて2次元画像としてフレームメモリに記憶し、これらのデータをTVスキャン方式に合わせて直列信号に変換する。 【0062】カラー処理部7はディジタルスキャンコンバータ6からの血流に関するデータに対し、ルックアップテーブルを使って色情報を割り当て、RGB等の色信号に変換して、カラーモニタ9に表示する。 【0063】この表示法は、前述した血流の存在を示す血流情報と拍動性パラメータ値の大きさを変数として、それぞれの大きさに応じた色を与え、同時表示を行う。通常血流の描出に有利とされる血流パワーによって血流の存在領域を示す場合、図6(a)のように縦軸方向にパワー値の大きさを変数とし、横軸方向には拍動パラメータ値の大きさを変数とするカラーマップを用いる。例えばパワー値に対しては基調の色として赤系の色を与え、パワー値の大きさを輝度に割り当てる。つまり、パワー値が大きくなるにつれて徐々に明るい赤色に、逆に小さくなるにつれて徐々に暗い赤色になる。 【0064】一方、拍動性パラメータに対しては黄系の色を与え、パラメータ値が大きい、すなわち拍動性が高ければ、その値に応じて黄系の色を与える。これにより、基本的に血流のあるところは、赤系の色で表示されるが、拍動流であれば拍動性パラメータの大きさに応じて黄色を呈するので、拍動流、定常流の識別がリアルタイムで、2次元的に容易に識別できる。但し、S/Nの悪い血管では、ノイズによる影響が支配的になるので、例えば定常流であっても速度分布がフレーム間でばらつく。 【0065】そのため、前記拍動性評価回路10において拍動流、定常流を評価することは極めて困難となり、誤って拍動性を表示する場合が生じる。そこで、表示法としてはパワー値が低い場合には、血流の拍動性、定常性は評価しないようにカラーマップを図6(b)のように工夫する。すなわち、パワー値と拍動性パラメータ値との同時表示はするが、パワー値が低いほど拍動性を示す色になりにくくする。これは、血管の動きにより拍動性パラメータが適切に評価できないような細い血流、すなわちパワーの小さい血流に対しても効果的である。 【0066】これにより、拍動性、定常性の評価が困難な細い支流の血流では拍動性を示す色が表示されなくても血流の存在は示され、その本流となるより太い血流において拍動性、定常性が識別できるので、結局それにつながる細い血流の拍動性、定常性を術者は容易に推定できる。更に、パワーに関しては、フレーム相関をかけてS/Nを高め、血流描出能を向上させた像を用いて拍動性パラメータと同時表示させれば、より効果的である。また、心電同期をとり、拍動性が高くなる心収縮期にゲートをかけて、その時相のみの拍動性を評価し、他の時相での血管移動による不適切な評価が起こらないようにしても良い。 【0067】ここで、図7に示すように、拍動性パラメータの安定性をはかるため、拍動性評価回路10に拍動性パラメータのフレーム間平均を行う構成を追加するのが好ましい。規格化演算器10eで出力される拍動性パラメータに対し、1フレーム周期分の遅延回路として機能するフレームメモリ10fを設ける。1フレーム前に求められた拍動性パラメータと、最新の拍動性パラメータとを、平均演算器10gにより平均化する。拍動性パラメータが平均化されることで、血管の移動や他の変動要素による影響を抑え、変動の影響の少ない太い血管系では、より安定して拍動性が表示され、拍動性の有無が誤評価された場合でも平均化により打ち消す方向に働く。なお、パラメータ平均に用いるフレーム数は、2フレームに限定されるわけではなく、近隣する数フレームを用いても良い。この場合、フレームメモリは増設される。但し、フレーム数を増やすと血管の動きの影響を受けやすくなるので、あまり多くすべきではない。本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。 【0068】 【発明の効果】本発明によれば、血流描出能の高い血流のパワー情報に拍動性情報を2次元的にカラー表示することで、リアルタイムで2次元的に血流の存在に加え、血流の拍動性、定常性を識別することが容易になる。その結果、術者の負担が軽減でき、検査時間が短縮できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003078 【氏名又は名称】株式会社東芝
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)7月16日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−33023 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)2月9日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−191436 |
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