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【発明の名称】 磁気共鳴イメージング装置による画像形成方法
【発明者】 【氏名】滝口 賢治

【氏名】清水 博道

【要約】 【課題】被検体の外部から診断部位へ挿入した生検器具の先端部の位置を見失うことなく、目的の患部へ効率的に生検器具を誘導できるように、生検器具の長手方向を含む断面を撮像、表示する画像形成方法を提供する。

【解決手段】MRI装置を用いた画像形成方法において、被検体の外部から診断部位に向かって挿入した生検器具12を含む関心領域11について、この関心領域の体積の各軸方向に沿って順次傾斜磁場を印加して発生した三つのエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、これら投影信号の演算により、三つのエコーがそれぞれ発生した時間における生検器具先端部の三点の通過座標のうち少なくとも二点の位置及び速度を算出し、生検器具の進行方向ベクトルを求め、生検器具先端部を通り、進行方向ベクトルと平行な方向の断面23を決定し、MRI画像を撮影する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】被検体に静磁場を与える静磁場発生手段と、前記被検体に、直交する三軸方向の傾斜磁場をそれぞれ与える傾斜磁場発生手段と、前記被検体の診断部位に対して高周波信号を照射すると共に前記被検体の生体組織の核磁気共鳴により放出される高周波信号を受信するプローブと、前記プローブを駆動して前記高周波信号の照射および受信を行う高周波送受信部と、高周波送受信部の制御を所定のパルスシーケンスに従って行うと共に前記プローブで受信した高周波信号を用いて画像再構成演算を行う計算機と、前記計算機で生成された画像信号を入力して断層像として表示する表示器とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、前記被検体の外部から診断部位へ挿入した生検器具を含む関心領域について、画像を形成する方法であって、1)前記パルスシーケンスとして、高周波信号の照射による前記関心領域の選択励起と、それに続く一の傾斜磁場の印加と、それにより発生するエコー信号の計測とを直交する三軸について順次実行し、2)発生した三つのエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、これら投影信号の演算により、前記三つのエコーがそれぞれ発生した時間における前記生検器具先端部の三点の通過座標のうち少なくとも二点の位置及び速度を算出し、前記生検器具の進行方向ベクトルを求め、3)前記生検器具先端部を通り、前記進行方向ベクトルと平行な方向の断面を決定し、該断面について磁気共鳴イメージング画像を撮影、表示することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置による画像形成方法。
【請求項2】前記進行方向ベクトルから、前記生検器具先端部を通り、前記進行方向ベクトルと平行な方向の断面に対して任意の角度を有する方向の断面を決定し、複数の断面について磁気共鳴イメージング画像を撮影、表示することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置による画像形成方法。
【請求項3】(a)前記被検体の外部から診断部位へ挿入した前記生検器具を含む関心領域について、高周波信号の照射と傾斜磁場の印加を同時に行って前記関心領域を選択励起し、X軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場を印加して、エコーを発生させ、受信したエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、この投影信号の位相分布から、前記生検器具の先端部の時間tlにおけるX軸方向位置及びX軸方向速度成分を求める過程と、(b)前記関心領域について、高周波信号の照射と傾斜磁場の印加を同時に行って前記関心領域を選択励起し、Y軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場を印加して、エコーを発生させ、受信したエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、この投影信号の位相分布から、前記生検器具の先端部の時間t2におけるY軸方向位置及びY軸方向速度成分を求める過程と、(c)前記関心領域について、高周波信号の照射と傾斜磁場の印加を同時に行って前記関心領域を選択励起し、Z軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場を印加して、エコーを発生させ、受信したエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、この投影信号の位相分布から、前記生検器具の先端部の時間t3におけるZ軸方向位置及びZ軸方向速度成分を求める過程、の(a)乃至(c)の三つの過程を任意の順序で行い、続いて、得られた各軸方向の位置及び速度成分から、時間tl、t2、t3における三つの通過座標のうち少なくとも二点の位置座標及び前記生検器具先端部の平均速度を算出して、前記生検器具の進行方向ベクトルを求め、前記生検器具先端部を通り前記進行方向ベクトルに平行な断面を決定し、該断面について磁気共鳴イメージング画像を撮影、表示することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置による画像形成方法。
【請求項4】前記生検器具先端部の少なくとも二点の通過座標と、このときの生検器具先端部の平均速度を算出して、進行方向ベクトルを算出する過程と、前記生検器具先端部を通り、前記進行方向ベクトルと平行な方向の断面を決定し、該断面の磁気共鳴イメージング画像を撮影する過程を交互に繰り返すこと特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置による画像形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検体の生体組織に生起される核磁気共鳴現象を利用して診断像を得る磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)において、被検体の外部から診断部位に挿入した生検器具先端部の位置と進行方向を算出し、生検器具の長手方向を含む撮影断面の位置と方向を決定し、その断面を撮影し、画像再構成し、表示する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年MRI装置においても、単に被検体の診断部位の断層像を計測して画像診断を行うだけでなく、生検針やカテーテルなどの生検器具を診断部位に直接挿入して各種の治療をおこなうIVR(Interventional Radiology)手技が行われるようになってきた。このようなIVR手技では、撮影したMRI画像を用いて目的の患部を見つけ、この目的の患部に対して早く生検器具を挿入して処置を施す必要があるが、そのためには生検器具の先端部の位置を検出して患部へと誘導する必要がある。これに関し、先端に核磁気共鳴物質を内蔵する生検器具を用いて、これをEPI(エコープレナーイメージング)法などの高速撮影法により高時間分解能でモニタすることが試みられるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような手法では、MRI画像は、生検器具の動きとは無関係に、一定方向の断面を一定の時間間隔で撮影することしかできない。したがって最初は視野内に見えていた生検器具が次第に視野外にずれてしまい、生検器具を確実に追跡することができないという問題があった。
【0004】また、本出願人は、移動する生検器具の先端位置を実時間で検出する方法及びあらかじめ計測しておいた断面画像に先端位置を点描写する方法を提案した(特開平9-122096号)。
【0005】しかし、この方法においては、生検器具を確実に追跡することはできるものの、撮影断面は、生検器具の進行方向とは無関係であって、生検器具先端部の位置を点表示する一断面であるから、生検器具の長手方向を表示することができなかった。従って生検器具と目的の患部との2次元的、3次元的な位置関係が十分に把握できないという問題を生じた。
【0006】そこで本発明は、このような問題に対処し、生検器具先端部の位置を見失うことなく、生検器具の長手方向を撮影するための画像形成方法を提供することを目的とする。また本発明は、生検器具と目的の患部との2次元的、3次元的な位置関係の把握が容易であり、目的の患部へ効率的に生検器具を誘導できるようにする画像形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【問題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明による画像形成方法は、被検体に静磁場を与える静磁場発生手段と、被検体に傾斜磁場を与える傾斜磁場発生手段と、被検体の診断部位に対して高周波信号を照射すると共に被検体の生体組織の核磁気共鳴により放出される高周波信号を受信するプローブと、プローブを駆動して高周波信号の照射および受信を行う高周波送受信部と、高周波送受信部の制御を撮像時のパルスシーケンスに従って行うと共にプローブで受信した高周波信号を用いて画像再構成演算を行う計算機と、計算機で生成された画像信号を入力して断層像として表示する表示器とを備えたMRI装置において、1)被検体の外部から診断部位へ挿入した生検器具を含む関心領域について、高周波信号の照射による関心領域の選択励起と、それに続く一の傾斜磁場の印加と、それにより発生するエコー信号の計測とを直交する三軸について順次実行し、2)発生した三つのエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、この投影信号の演算により、三つのエコーがそれぞれ発生した時間における生検器具先端部の三点の通過座標のうち少なくとも二点の位置及び速度を算出し、生検器具の進行方向ベクトルを求め、3)生検器具先端部を通り、前記進行方向ベクトルと平行な方向の断面を決定し、この断面についてMRI画像を撮影し、表示する。
【0008】また本発明の画像形成方法は、生検器具先端部を通り、前記進行方向ベクトルと平行な方向の断面と、この平面と任意の角度を有する他の平面(たとえば、直交平面)を撮影する。生検器具の進行ベクトルからの断面の決定とこれらの撮影の過程を交互に繰り返すことにより、これら二つの撮影断面を表示器上に並べて表示することが可能となり、患部における生検器具の位置関係が、より一層把握しやすいものとなる。任意の角度を有する他の平面の決め方によっては、ステレオ画像等の形成も可能となる。
【0009】本発明の画像形成方法は、より具体的には、上記1)及び2)の工程で(a)被検体の外部から診断部位へ挿入した生検器具を含む関心領域について、高周波信号の照射と傾斜磁場の印加を同時に行って関心領域を選択励起し、X軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場を印加して、エコーを発生させ、受信したエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、この投影信号の位相分布から、生検器具の先端部の時間tlにおけるX軸方向位置及びX軸方向速度成分を求め、(b)関心領域について、高周波信号の照射と傾斜磁場の印加を同時に行って関心領域を選択励起し、Y軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場を印加して、エコーを発生させ、受信したエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、この投影信号の位相分布から、生検器具の先端部の時間t2におけるY軸方向位置及びY軸方向速度成分を求め、(c)関心領域について、高周波信号の照射と傾斜磁場の印加を同時に行って関心領域を選択励起し、Z軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場を印加して、エコーを発生させ、受信したエコーをフーリエ変換によって投影信号に変換し、この投影信号の位相分布から、生検器具の先端部の時間t3におけるZ軸方向位置及びZ軸方向速度成分を求める。ここで、(a)(b)(c)の順番は、任意に設定することができ、たとえば、(c)(b)(a)の順で行ってもかまわない。
【0010】(a)(b)(c)の各過程で得られた各軸方向の位置及び速度成分から、時間tl、t2、t3における三つの通過座標のうち少なくとも二点の位置座標及び生検器具先端部の平均速度を算出して、生検器具の進行方向ベクトルを求める。
【0011】尚、本発明において生検器具は非磁性物質からなり、少なくとも生検器具先端部には磁場空間中で高周波磁場によって核磁気共鳴を生じる物質が含有されていることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】図1は本発明の実施に用いるMRI装置を示すブロック図である。このMRI装置は、被検体の生体組織に生起される核磁気共鳴現象を利用して診断部位の断層像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生手段1と、傾斜磁場発生手段2と、傾斜磁場電源3と、プローブ4と、高周波送受信部5と、計算機6と、表示器7とを有している。
【0014】静磁場発生手段1は、テーブル8に寝載された被検体9の周りにその体軸方向と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体9を寝載するテーブル8の周りのある広がりをもった空間に配置され、例えば永久磁石又は磁界発生コイルからなる。
【0015】傾斜磁場発生手段2は被検体9にX、Y、Zの3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを与えるもので、テーブル8の周りのある広がりをもった空間に配置されている。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場発生手段2を駆動するものである。
【0016】プローブ4は、被検体9の診断部位に対して高周波磁場を照射すると共に、被検体9の生体組織のNMR現象により放出される高周波信号を受信するもので、内部に照射コイルと受信コイルを有している(照射コイルと受信コイルとは物理的に隔離されていてもよい)。高周波送受信部5は、前記プローブ4より被検体9に対して高周波信号の照射および受信を行うものである。
【0017】計算機6は、傾斜磁場電源3および高周波送受信部5の制御を撮像時のパルスシーケンスにしたがって行うと共に、プローブ4で受信した信号の画像再構成処理を行うものである。さらに表示器7は、計算機6で生成された画像信号を入力して断層像として表示するものである。
【0018】次にこのようなMRI装置を使用して実施する本発明の画像形成方法について説明する。この方法ではまず、被検体に挿入した生検器具の先端位置および進行方向ベクトルを検出し、次に生検器具の進行方向ベクトルから、生検器具の長手方向を視野に含むように撮影断面方向を決定し、これにより、移動する生検器具に追従して常に撮影視野内に生検器具が見える画像を得る。
【0019】図2において、被検体の外部から診断部位へ向けて挿入した生検器具12を含む関心領域を11とし、生検器具先端部が関心領域内を一定速度vで移動しているものとする。なお、生検器具12は非磁性物質から成り、かつその先端部には磁場空間中で高周波磁場の照射によってNMR現象を生じる物質、たとえば水素、炭素等を含む物質を含有している。
【0020】このような状態で、図3の時刻toにおいて高周波磁場31とZ軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場Gz32とを同時に印加して関心領域11を選択励起する。このとき生検器具12の先端部12aは図2の13の位置にある。次にX軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場33を時間Tだけ印加し、さらに傾斜磁場33の振幅の極性を反転させて時間2Tだけ印加し、再度振幅の極性を反転させて時間Tだけ印加する。このとき傾斜磁場33を印加してから2T時間後の時刻tlにおいてこの傾斜磁場の振幅の時間積分値が0となるので、エコー34が発生する。
【0021】このエコー34は図1に示すプローブ4により検出され、高周波送受信機6を介して計算機6に格納される。ここで時刻toからtlの間に、生検器具12の先端部は図2に示すように符号13の位置から14の位置に移動する。
【0022】続いて、時刻t2において高周波磁場35とZ軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場Gz36とを同時に印加して同じ関心領域を選択励起する。このとき生検器具12の先端部は14の位置より更に進んで15の位置にある。次にY軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場37を時間Tだけ印加し、さらに傾斜磁場37の振幅の極性を反転させて時間2Tだけ印加し、再度振幅の極性を反転させて時間Tだけ印加する。このとき傾斜磁場37を印加してから 2T時間後の時刻t3においてこの傾斜磁場の振幅の時間積分値が0となるので、エコー38が発生する。このエコー38は図1に示すプローブ4より検出され高周波送受信機5を介して計算機 6に格納される。ここで時刻t2からt3の間に、生検器具12の先端部が図2に示すように15の位置から16の位置に移動する。
【0023】時刻t4において高周波磁場39とZ軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場Gz40とを同時に印加して同じ関心領域を選択励起する。このとき生検器具12の先端部は16の位置より更に進んで17の位置にある。次にZ軸方向に磁場強度が変化する傾斜磁場41を時間Tだけ印加し、さらに傾斜磁場41の振幅の極性を反転させて時間2Tだけ印加し、再度振幅の極性を反転させて時間Tだけ印加する。このとき傾斜磁場41を印加してから2T時間後の時刻t5においてこの傾斜磁場の振幅の時間積分値が0となるので、エコー42が発生する。このエコー42も図1に示すプローブ4より高周波送受信機5を介して計算機6に格納される。ここで時刻t4からt5の間に、生検器具12の先端部が図2に示すように17の位置から18の位置に移動する。
【0024】次にこのように格納された3つのエコー34、38、42の演算により、生検器具12の先端部の位置座標と速度を求める。
【0025】まず、時刻toからtlの間に、生検器具12の先端部が13の位置から14の位置に移動する時、先端部に格納された物質の磁気スピンの位相はX軸方向の傾斜磁場を受けることによりX軸方向の速度に比例した大きさで回転する。そのX軸方向の速度vはγを磁気回転比とし、Gを傾斜磁場の振幅とし、θを位相の大きさとすると式(1)により表わされる。
【0026】
【数1】

この式によれば、生検器具12の先端部の移動は磁気スピンの位相変化に置き換えることが可能であり、計算機に格納されたエコー34、38、42の位相を調べることにより先端部の位置、さらには先端部の移動速度を検出することができる。
【0027】このため、計算機に格納されたエコー34をX軸方向に沿ってフーリエ変換し、その実部の値と虚部の値を用いて位相分布を求める。ここで、位相の大きさθは、式(2)によって表される。
【0028】
【数2】

X軸方向に沿ったフーリエ変換の結果は、X軸方向への投影を表わしており、図2の19に示すように位相が大きく変化しているところが速度vで移動する先端部に対応し、横軸がX軸方向の位置rxを表す。その位置における位相の大きさと式(1)から先端部のX軸方向速度vxが求められる。
【0029】同様に時刻t2からt3の間に、生検器具の先端部が15の位置から16の位置に移動する時、先端部に格納された物質の磁気スピンの位相はY軸方向の傾斜磁場を受けることによりY軸方向の速度に比例した大きさで回転する。計算機に格納されたエコー38をY軸方向に沿ってフーリエ変換し、その実部の値と虚部の値を用いて式(2)により位相分布を求める。またY軸方向に沿ったフーリエ変換の結果(Y軸方向の投影)から、図2の20に示すように先端部のY軸方向位置ryが求められ、その位置における位相の大きさと式(1)から先端部のY軸方向速度vyが求められる。
【0030】同様に時刻t4からt5の間に、生検器具の先端部が17の位置から18の位置に移動する時、先端部に格納された物質の磁気スピンの位相はZ軸方向の傾斜磁場を受けることによりZ軸方向の速度に比例した大きさで回転する。計算機に格納されたエコー42をZ軸方向に沿ってフーリエ変換し、その実部の値と虚部の値を用いて位相分布を求める。またZ軸方向に沿ったフーリエ変換の結果であるZ軸方向の投影から、図2の21に示すように先端部のZ軸方向位置rzが求められる。その位置における位相の大きさと式(1)から先端部のZ軸方向速度vzが求められる。
【0031】以上述べたように、図3のシーケンスを実行することによって得られた3つのエコーをそれぞれフーリエ変換することにより、一定速度で移動する生検器具先端部の時刻tlにおける位置と速度の各X軸方向成分(rx、vx)、時刻t3における位置と速度の各Y軸方向成分(ry、vy)、時刻t5における位置と速度の各Z軸方向成分(rz、vz)を得ることができる。ここで生検器具が一定速度で移動していると仮定すると、上述の時刻、位置、速度の関係から、時刻tl、t3、t5における位置の完全な情報、すなわちX、Y、Z軸方向全ての位置成分からなる位置座標を求めることができる。なお実際の適用において、t1とt3との間、t3とt5との間は数ms〜数十msと非常に短時間なので、この間、生検器具先端部は等速度直線運動で移動すると近似できる。
【0032】即ち、時刻tlにおいてはx1=rxyl=ry−vy(t3−tl)
zl=rz−vz(t5−tl)
となり、時刻t3においてはx3=rx+vx(t3−tl)
y3=ryz3=rz−vz(t5−t3)
となり、時刻t5においてはx5=rx+vx(t5−tl)
y5=ry+vy(t5−t3)
z5=rzとなる。以上の計算によって時刻tlにおける生検器具の先端部の位置座標(xl、yl、zl)、時刻t3における生検器具の先端部の位置座標(x3、y3、z3)、時刻t5における生検器具の先端部の位置座標(x5、y5、z5)が求められる。
【0033】これらの三点の座標のうち、いずれかの二点の位置座標からベクトル22が決まる。このベクトル22は生検器具12の進行方向を表すものであり、時刻t5における生検器具の位置とこの進行方向から、生検器具12先端を含み且つ時刻t5以降に生検器具が進行すると予測される領域を含む撮影断面(図4(a))を決定することができる。このような撮像断面は、ベクトル22を軸として360度の方向の断面が採り得るが、目的の患部との関係で生検器具が最も把握しやすいように適宜選択する。尚、生検器具が進行すると予測される領域は、時間にして数m秒〜数100m秒の範囲である。
【0034】撮影断面の位置と方向が決まると、公知の撮像法によりその断面を撮影する。撮像方法としては、SE法、GFE法等の従来の撮影方法、あるいはEPI法、FSE法等の高速撮影方法が採用できるが、生検器具の移動を実時間で追跡する場合には高速撮影方法を採用することが好ましい。撮像シーケンスの実行により計測した信号を、計算機6に格納し、再像再構成処理し、得られた画像を表示器7に表示する。この表示された画像は生検器具の長手方向に沿った画像であるので、その2次元的な把握が容易となり、且つ進行方向が表示されるので患部との関係も把握しやすい。
【0035】この場合、生検器具先端部の位置及び速度を決定するためのシーケンス(図3)は、100m秒程度の極めて短い時間で実行することができ、その後の計算機による演算時間を合せても数100m秒以内で断面を決定することができる。従って、撮像方法として数100m秒で撮像可能な高速撮像方法を採用し、上記断面決定と撮像及び表示とを交互に行うことにより、実時間で生検器具の動きをモニタすることができる。図5(a)は、このように生検器具先端部の位置と進行方向を算出し、撮影断面の位置と方向を決定する過程51と、断面を撮影し、画像再構成し、表示する過程52を交互に繰り返す場合を示すもので、これにより生検器具先端部の位置を確認しながら生検器具先端部を目標とする位置に誘導することが可能となる。
【0036】尚、図3のシーケンスの実行によって得られたデータは、生検器具を挿入しない状態で同様のシーケンスを実行して得られたデータとの差分をとって背景雑音を除去してもよい。これによって傾斜磁場印加中の生検器具先端部の移動によって引き起こされる位相変化を強調することができる。このように差分をとる方法は、撮影断面に血流などの磁気スピンの位相の回転を生じさせる要素を含み、生検器具先端部の識別が困難な場合に好適である。
【0037】次に本発明の第二の実施例を説明する。この実施例では、第一の実施例で求めた生検器具器具の進行方向を表す方向ベクトル以外に、それと直交する方向ベクトルを求め、それによって決まる断面についても撮影し画像再構成する。
【0038】即ち、この実施例でも、図3のパルスシーケンスを実行し、生検器具の進行方向を表す方向ベクトルを求めることは同じである。このように生検器具の進行方向を表す方向ベクトル22(及びそれを含む撮像断面23)を決定した後、図4(b)に示すように、生検器具先端を通り、生検器具の進行方向と直交する方向のベクトル24を決定する。ベクトル24はベクトル22との直交関係から求めることができる。この方向ベクトル24から、断面23と直交する撮像断面25を決定する。
【0039】ここで、断面25を決めるための生検器具先端の座標としては、時刻t5における座標(x5、y5、z5)を用いることもできるが、ベクトル22から決定される撮像断面23の撮像時刻と、ベクトル24から決定される撮像断面25の撮像時刻とのずれを考慮し、この時間差の間に生検器具先端が進むと予測される点の座標を用いることが好ましい。断面23と断面25の撮影時刻のずれは撮影条件によりあらかじめ分かっているので、断面25を撮影する位置は、既に算出した生検器具先端部の位置と速度から、断面25を計測する時刻に先端部が通過する位置を予測して決定する。このように予測した位置と24の方向ベクトルの情報を用いて断面25を撮影することにより、断面23内に見い出される生検器具12の先端位置を通り、断面23と同一時刻に撮影した画像と等価の画像を得ることができる。
【0040】このようにして撮像された角度の異なる断面25の画像は、図6に示すように、表示器7に同時に表示することにより生検器具の位置関係がより立体的に把握できるようになる。
【0041】この第二の実施例でも、第一の実施例と同様に、図5(b)に示すように、生検器具先端部の位置と進行方向を算出し、撮影断面の位置と方向(ベクトル)を決定する過程51と、決定された断面23を撮影し、画像再構成し、表示する過程52と、断面23と直交する断面25を撮影し、画像再構成し、表示する過程53を交互に繰り返す。これにより、関心領域における生検器具先端部の位置をより多角的視野から把握できるため、生検器具先端部を目標とする位置に効率的に誘導することが可能となる。
【0042】尚、上述した第二の実施例では、生検器具の進行方向のベクトルから決まる断面と直交する断面について撮像する場合を説明したが、第2の撮像断面としては直交する断面のみならず、任意の角度を持った断面としてもよい。例えば、生検器具の進行方向のベクトルから互いに所定の角度を持つ断面を決定し、この2つの断面について撮像し、表示するようにしてもよい。この場合、2つの断面の角度をステレオ視可能な角度(例えば5〜7度程度)に設定することにより、ステレオ画像を形成することが可能である。
【0043】また、生検器具先端部の通過座標を求める方法としては、上述した方法の他、生検器具そのものと被検体の生体組織との間の境界部分に生じる磁化率の差異によって引き起こされる位相変化を利用する方法(Radiology(May, 1990)の561から565ページに掲載の論文「Evaluation of the Susceptibility Effecton the Phase Images of a Simple Gradient Echo」)を採用することもできる。この場合、図3のシーケンスを実施して発生したエコーの位相投影図において、位相段差のある位置が生検器具先端部の位置を示すことになる。
【0044】
【発明の効果】本発明によるMRI装置による画像形成方法によれば、傾斜磁場印加中の生検器具先端部の移動によって引き起こされる位相変化の位置及び位相の大きさから、移動する生検器具の先端部の少なくとも2点の通過座標と速度を求めて、この二点を結ぶ進行方向ベクトルを求め、このベクトルから決定される少なくとも1の断面を撮像することにより、生検器具先端部の位置を見失うことなく、生検器具の長手方向を表示することができる。特に撮像断面として複数の断面を決定し、撮像、表示することにより、生検器具と目的の患部との2次元的、3次元的な位置関係が十分に把握できるようになり、目的の患部へ効率的に生検器具を誘導できるようになる。
【0045】更に生検器具の先端部を含む断面の決定過程と撮像過程とを交互に繰り返すことにより、実時間で先端部を追跡することができる。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成9年(1997)7月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】多田 公子 (外1名)
【公開番号】 特開平11−33011
【公開日】 平成11年(1999)2月9日
【出願番号】 特願平9−189594