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【発明の名称】 顕微鏡のバランス支持機構
【発明者】 【氏名】中村 勝重

【氏名】土居 正雄

【氏名】中村 雅一

【要約】 【課題】顕微鏡の周囲におけるドクターの頭部の移動が制限されにくい顕微鏡のバランス支持機構を提供する。

【解決手段】支持リンク38の顕微鏡15を支持するチルト軸37が、横リンク35の両端部35aを上下に揺動させた場合の不動点Fよりも下方にあり、垂直軸Zを挟んだ縦リンク36の対向方向で、顕微鏡15及び支持リンク38の重心G1 と、横リンク35及び縦リンク36の重心G2 とがバランスするものである。縦リンク36の下端部36aに軸支した支持リンク38を介して顕微鏡15を支持したため、顕微鏡15の周囲に縦リンク36が存在せず十分な周囲スペースを確保することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スタンド装置の先端に垂直軸を中心にして回転自在に支持されるセンター部と、該センター部の上下に各々両端部よりも低い位置で軸支される互いに平行な一対の横リンクと、該各横リンクの上下で対応する端部同士に軸支される互いに平行な一対の縦リンクと、該縦リンクの下端部間に横リンクと平行な状態で軸支され且つチルト軸に顕微鏡が支持される支持リンクと、を備えたものであって、前記支持リンクの顕微鏡を支持するチルト軸が、横リンクの両端部を上下に揺動させた場合の不動点よりも下方にあり、垂直軸を挟んだ縦リンクの対向方向で、顕微鏡及び支持リンクの重心と、横リンク及び縦リンクの重心とがバランスすることを特徴とする顕微鏡のバランス支持機構。
【請求項2】 上下の横リンクがセンター部に対して長手方向に同調して同じ長さスライドする請求項1記載の顕微鏡のバランス支持機構。
【請求項3】 顕微鏡及び支持リンクの重心と横リンク及び縦リンクの重心とのアンバランス状態を検出するアンバランス検出器と、該アンバランス検出器からの信号により上下の横リンクをバランスする位置まで同調して同じ長さスライドさせるスライド機構と、が設けられている請求項2記載の顕微鏡のバランス支持機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は顕微鏡のバランス支持機構に関する。
【0002】
【従来の技術】手術用の顕微鏡はスタンド装置のアームにより空中支持されて使用される。この種の顕微鏡は平行リンク機構を介してアームの先端に支持され、該平行リンク機構を変形させることにより顕微鏡の角度を変更できるようになっている。具体的には平行リンク機構の片側に顕微鏡を支持し、平行リンク機構を変形させた場合の顕微鏡と平行リンクとの重心バランスをとる構造になっている(類似技術として、特開平6−269463号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の構造にあっては、顕微鏡を平行リンク機構の片側に支持した構造のため、顕微鏡の周囲にスペースを確保できず、顕微鏡の周囲におけるドクターの頭部の移動が制限される。
【0004】この発明はこのような従来の技術に着目してなされたものであり、顕微鏡の周囲におけるドクターの頭部の移動が制限されにくい顕微鏡のバランス支持機構を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、スタンド装置の先端に垂直軸を中心にして回転自在に支持されるセンター部と、該センター部の上下に各々両端部よりも低い位置で軸支される互いに平行な一対の横リンクと、該各横リンクの上下で対応する端部同士に軸支される互いに平行な一対の縦リンクと、該縦リンクの下端部間に横リンクと平行な状態で軸支され且つチルト軸に顕微鏡が支持される支持リンクと、を備えたものであって、前記支持リンクの顕微鏡を支持するチルト軸が、横リンクの両端部を上下に揺動させた場合の不動点よりも下方にあり、垂直軸を挟んだ縦リンクの対向方向で、顕微鏡及び支持リンクの重心と、横リンク及び縦リンクの重心とがバランスするものである。
【0006】請求項1記載の発明によれば、縦リンクの下端部に軸支した支持リンクを介して顕微鏡を支持したため、顕微鏡の周囲に縦リンクが存在せず十分な周囲スペースを確保することができる。この発明の構造では、横リンクを両端部よりも低い位置でセンター部に軸支しているため、縦リンクの下端部付近に位置する不動点は該下端部よりも下方に位置することになる。この不動点に顕微鏡及び支持リンクの重心を合致させても、この不動点に対して横リンク及び縦リンク側の重心が変化するためバランスはとれない。そのため、この発明では、顕微鏡及び支持リンクの重心を不動点よりも下方に位置させてバランスをとっている。このように不動点よりも下方の重心でバランスがとれるため、顕微鏡が縦リンクの下端部よりも十分に下方に位置することとなり、顕微鏡の周囲スペースを確保するうえで有利である。
【0007】請求項2記載の発明は、上下の横リンクがセンター部に対して長手方向に同調して同じ長さスライドするものである。
【0008】請求項2記載の発明によれば、上下の横リンクがセンター部に対して長手方向に同調して同じ長さだけスライドするようになっているため、顕微鏡に他の機器が付加されて重心が変動した場合に、横リンクをバランスがとれる方向へスライドさせることにより、バランス調整を行うことができる。
【0009】請求項3記載の発明は、顕微鏡及び支持リンクの重心と横リンク及び縦リンクの重心とのアンバランス状態を検出するアンバランス検出器と、該アンバランス検出器からの信号により上下の横リンクをバランスする位置まで同調して同じ長さスライドさせるスライド機構と、が設けられている。
【0010】請求項3記載の発明によれば、顕微鏡に他の機器が付加されて重心が変動した場合のバランス調整を、アンバランス検出器とスライド機構により自動的に行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】この発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】まず、基本的なメカニズムを図1〜図4に基づいて説明する。30は平行リンクを利用したスタンド装置で、回動支点Sが図示せぬ架台により支持されている。スタンド装置30は平行リンクを変形させることにより、先端リンク31を垂直及び水平方向にそれぞれ移動させることができる。先端リンク31は図示せぬサブリンク機構によりどの方向に移動させても常に垂直状態が維持される。
【0013】先端リンク31に本実施形態に係る支持機構32を介して顕微鏡15が支持されている。スタンド装置30の先端リンク31とは反対側の位置には移動自在なカウンタウェイトWが設けられている。
【0014】スタンド装置30の連結軸10付近の一方にはロックピン24が設けられ、他方には空洞部18が設けられ、該空洞部18の内部には上下に図示せぬスイッチが設けられている。ロックピン24を空洞部18内へ挿入することにより、スタンド装置30の状態(角度θ)を固定できる。また、空洞部18内のスイッチのどちらかがロックピン24に押されることにより、カウンタウェイトWの重量と、支持機構32+顕微鏡15の重量のどちらが重いか検出できる。従って、その重さのアンバランスを是正する方向にカウンタウェイトWを移動させることにより、両者のバランスをとることができる。
【0015】両者のバランスがとられた状態では、ロックピン24が上下のスイッチのいずれにも接しないため、ロックピン24を空洞部18から抜いて、スタンド装置30が使用可能状態となる。つまり、このようにいったんバランスがとられた状態になれば、先端リンク31に支持された顕微鏡15をどのような位置に移動させても、その位置でのバランスが保たれ、希望する位置に空中停止させることができる。
【0016】次に、顕微鏡15を支持する支持機構32について説明する。以下、説明の都合上、図2中Aが前側、Bが後側、それに直交する方向(紙面直角方向)を左右方向とする。
【0017】先端リンク31の下部には垂直軸Zを中心にして回転自在なセンター部33が設けられている。センター部33の上下には軸支部34が設けられており、該軸支部34にそれぞれ前後方向に沿う横リンク35が支持されている。この横リンク35は両端部35aが上側へ曲折しており、軸支部34の位置が両端部35aよりもdだけ低くなっている。
【0018】センター部33における上下の軸支部34は横リンク35を回動自在に支持するだけでなく、該横リンク35を長手方向に沿って上下同じ長さだけスライドさせることもできる。
【0019】そして、横リンク35の上下で対応する端部には、互いに平行な一対の縦リンク36が軸支されている。この縦リンク36の下端部36aは下方へ延長された状態となっており、該下端部36aに、チルト軸37を下辺にした上向きコ字形の支持リンク38が軸支されている。横リンク35が両端部35aよりもdだけ低い位置で軸支されているため、垂直軸Z上には下端部36aよりもdだけ低い位置に、横リンク35の両端部35aを上下に揺動させた場合の不動点Fが存在する。支持リンク38のチルト軸37はこの不動点Fよりもdだけ低い位置にある。つまり、下端部36aからチルト軸37の長さDの方が、下端部36aから不動点Fまでの長さdよりも大きい(D>d)。このチルト軸37には顕微鏡15が左右方向で回転自在に支持されている。
【0020】図2の状態では、顕微鏡15及び支持リンク38の重心G1 が、センター部33の垂直軸Z上に位置しているため、この垂直軸Zを中心に前後のバランスはとられている。そして、図3のように横リンク35の両端部35aをどちらかへ傾けると、軸支部34が両端部35aよりも下方に位置していることから、垂直軸Zから両端部35aまでの距離L1 、L2 が前後で相違する。そして、横リンク35及び縦リンク36の重心G2 も、垂直軸Zから一方側へL3 分だけ変動する。
【0021】それと同時に、顕微鏡15及び支持リンク38の重心G1 が、前記重心G2 とは反対側へ変動する。そして、両方の重心G1 、G2 がセンター部33を中心にしてつり合う。つまり、G1 ×L4 =G2 ×L3 となるため、傾いた状態のまま維持される。
【0022】また、図4に示すように、顕微鏡15のどちらか一方に付属機器15aが付加されて、支持リンク38側の重心G1 が変動した場合には、軸支部34において横リンク35がバランスをとる方向にスライドする。いったんバランスが合えば、図3のように傾けても前述の理由によりバランス状態は維持される。
【0023】この実施形態によれば、縦リンク36の下端部36aに軸支した支持リンク38を介して顕微鏡15を支持したため、顕微鏡15の周囲に縦リンク36が存在せず、顕微鏡15の周囲に十分なスペースを確保することができる。
【0024】次に、図5及び図6に基づいて、具体的に製品化された支持機構32の構造を説明する。尚、前記図1〜図4によるメカニズムの説明と共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】スタンド装置30の先端リンク31には、ベアリング(図示だけして符号省略)を介してフレーム状のセンター部33が垂直軸Zを中心にして回転自在に取付けられている。先端リンク31とセンター部33との間に電磁クラッチR1 が設けられており、垂直軸Zを中心にしたセンター部33の回転位置を任意にロックできるようになっている。
【0026】センター部33の上下位置にはアウタチューブ40、41にて覆われたシャフト42、43が各々貫通状態で設けられている。センター部33とアウタチューブ40、41との間、アウタチューブアウタチューブ40、41とシャフト42、43との間には、上下共それぞれベアリングが介在してある。アウタチューブ40、41の一端には横リンク35がそれぞれスライド自在に貫通しており、該横リンク35の下面に形成されたラックギア44が、シャフト42、43に形成されたピニオンギア45に螺合している。
【0027】上側のアウタチューブ40とセンター部33との間に電磁クラッチR2 が設けられており、該アウタチューブ40の回転位置をロックできるようになっている。また、アウタチューブ40の一端に形成された上向きのフランジ40aには、モータMが支持されている。シャフト42の一端に設けられているギア46と、モータMの回転軸のギア47との間にはタイミングベルト48が設けられている。上下の各シャフト42、43の他端にもギア49、50が設けられており、該ギア49、50同士間にタイミングベルト51が設けられている。前記モータM、シャフト42、43、ギア46、49、50、ラックギア44、ピニオンギア45、タイミングベルト48、51等により、本実施形態の「スライド機構」が形成されている。
【0028】下側のアウタチューブ41の一端には下向きフランジ41aが形成されており、そのフランジ41aに横長の開口52が形成され、該開口52の前後両側位置にスイッチ53が設けられている。センター部33の下端には前記開口52内へ突出自在なピン54が設けらている。開口52内へ突出させたピン54によりスイッチ53が押されてモータMが回転すると共に、押された方のスイッチ53によりモータMの回転方向が決まる。これらスイッチ53、ピン54等により、本実施形態の「アンバランス検出器」が形成されている。
【0029】横リンク35の両端部35aに軸支されているのが縦リンク36で、該縦リンク36の下端部36aに軸支されているのが支持リンク38である。支持リンク38のチルト軸37に顕微鏡15が回転自在に取付けられている。このチルト軸37は顕微鏡15の光学的取出部でもあり、図示せぬビデオカメラや側視鏡等の「付属機器」を任意に接続することができる。チルト軸37はギア55、56、57を介して電磁クラッチR3 に接続されており、チルト軸37を中心とした顕微鏡15の回転位置をロックできるようになっている。
【0030】顕微鏡15にはメインドクターが見る接眼部58と、アシスタントドクターが見る接眼部59があるが、いずれの場合も、顕微鏡15の周囲に縦リンク36が存在しないため、邪魔になるものがない。
【0031】また、チルト軸37のどちらか一方に付属機器(例えばビデオカメラ)を取付ける場合には、まずピン54を開口52内へ突出した状態にしておく。このようにしておけば、付属機器を取付けたことによりアンバランス状態になっても、ピン54が開口52の両端部に当接するためストッパとして機能し、横リンク35が大きく傾くことがない。
【0032】また、それと同時に、ピン54により開口52の両端に臨まされているスイッチ53の一方が押されるため、そのスイッチ53に応じた信号によりモータMが回転し、その回転力がタイミングベルト48、51を介して上下のシャフト42、43に同じように伝達されるため、ピニオンギア45とラックギア44との係合により、横リンク35が同調して同じ長さだけアンバランスを是正する方向へスライドする。
【0033】そして、バランスが合った状態になると、ピン54がスイッチ53の中立位置となり、どちらのスイッチ53も押されないのでモータMが停止する。モータMが停止してから、ピン54を開口52から抜き、横リンク35を希望する方向に傾けて使用することができる。横リンク35を傾けても、顕微鏡15及び支持リンク38の重心G1 と、横リンク35及び縦リンク36の重心G2 とはバランスする。
【0034】尚、以上の説明では、各部分の回転位置をロックする手段として、電磁ロックR1 〜R3 を例にしたが、これに代えてエアーロック(空気圧によるロック手段)を用いることができる。
【0035】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、縦リンクの下端部に軸支した支持リンクを介して顕微鏡を支持したため、顕微鏡の周囲に縦リンクが存在せず十分な周囲スペースを確保することができる。
【0036】請求項2記載の発明によれば、上下の横リンクがセンター部に対して長手方向に同調して同じ長さだけスライドするようになっているため、顕微鏡に他の機器が付加されて重心が変動した場合に、横リンクをバランスがとれる方向へスライドさせることにより、バランス調整を行うことができる。
【0037】請求項3記載の発明によれば、顕微鏡に他の機器が付加されて重心が変動した場合のバランス調整を、アンバランス検出器とスライド機構により自動的に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月11日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】高月 猛
【公開番号】 特開平11−28216
【公開日】 平成11年(1999)2月2日
【出願番号】 特願平9−186961