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【発明の名称】 ワイピングテープ
【発明者】 【氏名】山越 正和

【氏名】清村 悦央

【氏名】高橋 幸志

【要約】 【課題】磁気ディスクや磁気テープ等の電子機器部品等の表面汚れを拭き取るために好適に使用され、拭き取り後の清浄効果に優れ、発塵性の少ないワイピングテープを提供する。このワイピングテープは、より多くの極細繊維単繊維が被処理面に接することにより、被処理面に対して極細繊維が効果的に密着し、汚れや油膜を素早く拭き取ることが可能である。

【解決手段】このワイピングテープは、単繊維繊度1デニール以下の極細繊維からなるマルチフィラメント糸条をタテ糸またはヨコ糸の少なくとも一方に用いてなる織物であって、その極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条であり、タテ糸とヨコ糸の総繊度の比率が2〜10倍で、極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条の方の総繊度を大きくし、極細繊維の浮き構造とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 単繊維繊度が1デニール以下の極細繊維からなるマルチフィラメント糸条をタテ糸またはヨコ糸の少なくとも一方に用いてなる織物であって、該該マルチフィラメント糸条は扁平比が5〜30%の扁平構造を有し、該タテ糸と該ヨコ糸の総繊度の比率が1.5〜10倍であることを特徴とするワイピングテープ。
【請求項2】 前記タテ糸または該ヨコ糸の少なくとも一方に制電性繊維を含むマルチフィラメント糸条を配してなることを特徴とする請求項1記載のワイピングテープ。
【請求項3】 前記ヨコ糸が極細繊維からなる扁平構造を有するマルチフィラメント糸条であり、該タテ糸が制電性繊維を含むマルチフィラメント糸条であることを特徴とする請求項1また2記載のワイピングテープ。
【請求項4】 前記ヨコ糸の方の総繊度が、該タテ糸の総繊度より大きいことを特徴とする請求項3記載のワイピングテープ。
【請求項5】 前記織組織構造が、極細繊維からなる扁平構造を有するマルチフィラメント糸条の浮き構造であり、浮き糸の織物表面に占める割合が70%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワイピングテープ。
【請求項6】 前記タテ糸と該ヨコ糸の数の単位面積当たりの比率が、1:20以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のワイピングテープ。
【請求項7】 前記ヨコ糸の方の数が該タテ糸の数より多いことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のワイピングテープ。
【請求項8】 前記タテ糸が単繊維繊度0.5〜5.0デニールの生糸で、100℃の熱水中における収縮率が10%以下の合成繊維からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のワイピングテープ。
【請求項9】 前記ワイピングテープが、厚さ0.1〜0.7mm、幅3〜1,800mmのテープ状に両エッジをヒートカットされて形成されており、かつ該ワイピングテープ長手方向の引張り強度が40〜70kg/5cm、伸度が20〜50%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のワイピングテープ。
【請求項10】 JIS B9923 6.2(1.1)による該ワイピングテープの発塵量を5μm以上のパーティクルが20個/ft3 ・100cm2以下にし、該ワイピングテープを樹脂フィルムの袋内に密封パックしてなる請求項1〜9のいずれかに記載のワイピングテープ。
【請求項11】 前記ワイピングテープが巻芯にロール状に巻上げられている請求項1〜10のいずれかに記載のワイピングテープ。
【請求項12】 回転駆動ローラ系で引張り移動させながら電子機器部品の汚れ拭取り用に使用される請求項1〜11のいずれかに記載のワイピングテープ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、好適にはハードディスク(磁気ディスク)や磁気テープ等の電子機器部品等の表面の汚れの拭取り用に使用されるワイピングテープに関し、さらに詳しくは、回転駆動ローラ系で引張り移動させながら電子機器部品等の汚れ拭き取るために好ましく使用されるワイピングテープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ハードディスクや磁気テープ等の電子機器部品では、それらの表面にできる油膜や塵などの汚れの有無が性能に重大な影響を及ぼすため、これら部品の製造工程には汚れの拭取り工程が設けられて、製品の清浄処理が行なわれるようになっている。
【0003】従来、このような拭取り工程の拭取り手段としては、例えば実開平1−160959号公報等に提案されているような極細繊維使いの布帛をスリットしたワイピングテープが使用されている。この極細繊維使い布帛からなるワイピングテープは、通常繊度の繊維からなるワイピングテープに比べて被処理面への拭き残しが少ないため、より高い拭き取り性能を発揮することができるものであった。
【0004】しかしながら、最近のハードディスク等の電子機器部品は、その性能の一層の向上を図るために、拭き取り後の清浄度をさらに高度にすることが要求されるようになっている。そのため、例え極細繊維使いの布帛であっても、従来のワイピングテープでは、上記最近の要求に対して十分に対応することが難しくなってきている。
【0005】また、特開平2−139449号公報では、ポリエステルとポリアミドの分割繊維からなる捲縮加工糸により構成された織編物の比容積を限定したワイピングクロスが提案されている。しかしながら、これは拭取性能を水と油の吸収速度と量で数値化したものであり、現実に使用される電子情報機器の製造工程でのワイピング材としては十分な拭取性能が得られ難い。すなわち、一定方向で、テープ形状でのワイピングクロスまたは対象物の機械的移動による拭取の場合には、拭き残しが避けられないのである。
【0006】さらに、0.5デニール以下の極細繊維からなる布帛に立毛を付与したワイピングクロスが特開平4−263648号公報で提案されているが、発塵があるためクリーンルーム等での実用には適さない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、拭き取り後の清浄度をこれまで以上に向上することができるワイピングテープを提供することにあり、特に、より多くの極細繊維単繊維が被処理面に接することにより、被処理面に対して極細繊維が効果的に密着し、汚れや油膜を素早く拭き取ることが可能なワイピングテープを提供することにある。本発明の他の目的は、静電気の発生を押さえ、クリーン度が要求される産業界での使用に適した絶縁破壊のない高度な拭取性を有する、発塵量の少ないワイピングテープを提供することにある。
【0008】本発明のさらに他の目的は、電子機器の製造工程など一定方向での拭取性が要求される用途での拭き残しのないワイピングテープを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のワイピングテープは、単繊維繊度が1デニール以下の極細繊維からなるマルチフィラメント糸条をタテ糸またはヨコ糸の少なくとも一方に用いてなる織物であって、該マルチフィラメント糸条は扁平比が5〜30%の扁平構造を有し、該タテ糸と該ヨコ糸の総繊度の比率が1.5〜10倍であることを特徴とするワイピングテープである。
【0010】本発明のワイピングテープはまた、以下の好ましい実施態様を含んでいる。
【0011】(1)前記タテ糸または該ヨコ糸の少なくとも一方に制電性繊維を含むマルチフィラメント糸条を配してなること。
【0012】(2)前記ヨコ糸が極細繊維からなる扁平構造を有するマルチフィラメント糸条で、該タテ糸が制電性繊維を含むマルチフィラメント糸条であること。
【0013】(3)前記ヨコ糸の方の総繊度が、該タテ糸の総繊度より大きいこと。
【0014】(4)前記織組織構造が、極細繊維からなる扁平構造を有するマルチフィラメント糸条の浮き構造であり、浮き糸の織物表面に占める割合が70%以上であること。
【0015】(5)前記タテ糸と該ヨコ糸の数の単位面積当たりの比率が、1:20以上であること。
【0016】(6)前記ヨコ糸の方の数が該タテ糸の数より多いこと。
【0017】(7)前記タテ糸が単繊維繊度0.5〜5.0デニールの生糸で、100℃の熱水中における収縮率が10%以下の合成繊維からなること。
【0018】(8)前記ワイピングテープが、厚さ0.1〜0.7mm、幅3〜1,800mmのテープ状に両エッジをヒートカットされて形成されており、かつそのテープ長手方向の引張り強度が40〜70kg/5cm、伸度が20〜50%であること。
【0019】(9)JIS B9923 6.2(1.1)による前記テープの発塵量を5μm以上のパーティクルが20個/ft3 ・100cm2 以下であり、そしてそのテープを樹脂フィルムの袋内に密封パックしてなること。
【0020】(10)前記テープが巻芯にロール状に巻上げられていること。
【0021】(11)回転駆動ローラ系で引張り移動させながら電子機器部品の汚れ拭取り用に使用されこと。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明のワイピングテープを構成するタテ糸または/およびヨコ糸には、単繊維繊度1デニール以下の極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条が用いられる。
【0023】本発明で用いられる極細繊維からなるマルチフィラメント糸条は、例えば2種の異なるポリマーからなる海島型複合繊維の海成分を溶解または分解除去することによって得ることができ、また、2種の異なるポリマーからなる分割型複合繊維の各成分を剥離分割せしめることによって得ることができる。
【0024】本発明において、極細繊維からなるマルチフィラメント糸条を製造するために使用されるポリマーは、特に限定されるものではなく、通常の方法で製糸可能なものであればいずれのポリマーであっても使用することができる。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、およびポリオレフィンなどを例示することができ、なかでもポリエステルが特に好ましく用いられる。
【0025】本発明において極細繊維は、単繊維繊度が1デニール以下、好ましくは0.5デニール以下、より好ましくは0.2デニール以下の繊維であり、特に好ましくは単繊維繊度が0.05〜0.1デニールの極細繊維が用いられる。
【0026】単繊維繊度が小さいほど繊維の表面積は大きくなり、糸条や織物における小さな空隙も多くなる。その小さな空隙に微小な粒子が捕獲されて、優れた拭取性を発現されるのである。そして、単繊維繊度が小さいことによって、ワイピングテープが被対象物に接したとき、繊維が座屈しやすく、汚れ成分を捕獲しやすくなる。この座屈性はポリエステルよりもポリアミドの方が曲げ剛性の点では有利である。
【0027】本発明の極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条は、ワイピングテープにおける該糸条のカバーファクターを大ならしめ、該糸条としてけん縮糸または/および異収縮混繊糸が好ましく用いられる。
【0028】この扁平糸を用いることによって、得られる織物は、より多くの極細繊維の単繊維が被処理面に接することができ、被処理面に対して極細繊維が効果的に密着し、汚れや油膜を素早く拭き取ることが可能な織物となる。
【0029】本発明のワイピングテープでは、極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸をタテ糸または/およびヨコ糸に使いて構成されるが、この極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条は、好適にはヨコ糸に用いられる。
【0030】本発明のワイピングテープにおいては、極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条の他に、他のマルチフィラメント糸条をタテ糸または/およびヨコ糸に、好ましくはタテ糸に配することができる。使用されるマルチフィラメント糸条は、前記極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条との総繊度の比率を1.5〜10倍、好ましくは3〜7倍とすることを除いて任意であり、例えば、単繊維繊度が1デニール以上の通常のマルチフィラメント糸条を用いることができる。具体的には、単繊維繊度が好ましくは0.5〜5デニールの範囲にある、総繊度が好ましくは20〜60デニールのマルチフィラメント糸条を用いることができる。
【0031】本発明において、このマルチフィラメント糸条を作るために用いられるポリマーは特に限定されるものではなく、前記極細繊維からなるマルチフィラメント糸条に使用されるポリマーと同じ、通常の方法で製糸可能なものであればいずれのポリマーであっても適用することができる。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、およびポリオレフィンなどを例示することができ、中でもポリアミドやポリエステルが特に好ましく用いられる。
【0032】また、このマルチフィラメント糸条は、制電性繊維を含むことが好ましい。制電性繊維としては、例えば、ポリアルキレンエーテルセグメントを含有するブロックポリエーテルアミドまたはグラフトポリエーテルアミド(変性ポリアミド)をポリアミドまたはポリエステルと混合紡糸して、変性ポリアミドをポリアミドまたはポリエステル中に繊維軸方向に細長い分散粒子として混在させたフィラメント、カーボンブラックや炭素繊維等の導電性物質を含有せしめた重合体からなるフィラメント、特に芯鞘型複合繊維の芯成分に導電性物質を含有せしめた重合体からなるフィラメント、金属フィラメント等が挙げられる。
【0033】本発明のワイピングテープの特徴のひとつは、タテ糸とヨコ糸の総繊度の比が1.5〜10倍で、好適には極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条の総繊度の方を大きくすることである。これによって、織物の表面が実質的に極細繊維で覆われた織物となる。
【0034】本発明においては、さらに、タテ糸とヨコ糸構成するマルチフィラメント糸条の単位面積当たりのフィラメント数の比率を、好ましくは1:20以上とすること、より好ましくは、タテ糸を形成するフィラメント数1に対してヨコ糸を20以上、より好ましくは30以上、さらには50以上とすることにより、本発明の効果をさらに助長することができる。この比率が小さくなると、ヨコ糸による表面カバー率が小さく、一定方向の拭取性作業では拭き残しがでることがある。ここに、単位面積当たりのフィラメント数はタテ糸またはヨコ糸の織密度(本/インチ)で表される。
【0035】本発明のワイピングテープ織物においては、好ましくは一定方向、すなわちテープの長さ方向への移動による拭取性能向上のため、極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条を少なくともタテ糸またはヨコ糸の一方に用いるが、ヨコ糸を極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条とし、他の糸条をタテ糸にすることが好ましい。このようにすることにより、ヨコ糸に用いたマルチフィラメント糸条が織物表面に多く浮き、タテ糸を織物表面にできるだけ出さないようにすることができる。
【0036】かかるタテ糸には、前述の単繊維繊度0.5〜5デニールのマルチフィラメント糸条が好ましく用いられる。このタテ糸は、織物の形態安定化に役立ち、織物のタテ方向の伸びを抑制するため、寸法変化の少ない生糸が好ましい。さらに生機から製品に仕上げるまでの熱履歴を受けた場合の寸法変化の少ない糸で、100℃の熱水処理における収縮率が10%以下の糸条が好ましく、さらには6%以下の糸条が好ましい。この収縮率が大きすぎると、拭取作業時にかかる張力でワイピングテープが変形し、十分な拭取性能を示さない傾向となる。この寸法安定化の手段として、別に仕上げ工程での熱処理固定を併用することもできる。
【0037】また本発明のワイピングテープの他の特徴は、ヨコ糸として好ましく用いられる極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条が、扁平比5〜30%、好ましくは扁平比10〜25%の扁平構造を有することである。扁平比が5%を下回る場合には、タテ糸がヨコ糸を押し上げる形になり、タテ糸が表面に浮き出るため、拭き残しが多くなる。また扁平比が30%を上回る場合には、極細繊維の単繊維が被処理面に密着しないため、十分な拭取性能が得られないことになる。
【0038】ここで扁平構造とは、極細繊維のマルチフィラメント糸条からなる浮き糸が扁平であることを言い、扁平比は織物表面において極細繊維の非拘束点の最大長径部の幅と厚みの比で表すことができ、具体的には織物表面および織物断面を倍率100倍の顕微鏡写真観察によって求めることができる。さらに詳しくは、撮った写真から最大長径部の厚みおよび幅のそれぞれ10ケ所を実測し、その平均値で求めた値で求めることができる。扁平比Fは、下記の式で求められる。
【0039】扁平比F(%)=(a/b)×100a:非拘束点の最大長径部の厚みb:非拘束点の最大長径部の幅扁平比を上記の範囲にすることによって、より多くの極細繊維単繊維が被処理面に接することを可能ならしめる。
【0040】本発明の極細繊維からなるマルチフィラメント糸条を扁平構造とする方法としては、特に限定されるものではなく、糸条の状態であるいは織物の状態で、熱ローラー、プレス、カレンダーなどをかける方法が挙げられ、カレンダー加工が好ましく用いられる。本発明では、極細繊維が融着を起こさない範囲で扁平化処理することが好ましい。
【0041】本発明のワイピングクロスは、かかる極細繊維からなるマルチフィラメント糸条のもつ扁平構造により、被処理面に対して極細繊維が効果的に密着し、汚れや油膜を素早く拭き取ることが可能である。
【0042】本発明のワイピングクロスの織組織は、平織り、綾織り、朱子織り等いずれでもよいが、ヨコ糸の浮き構造および扁平構造をより効果的にするため、朱子織りのように一方の糸条が織物表面をカバーする組織が好ましく、浮き糸が単位面積当たりに占めるヨコ糸比率は70%以上が良い。より好ましくは75%以上の範囲である。70%を下回る場合にはタテ糸が浮き出るため、拭取性能が不十分になる。
【0043】本発明の特に好ましい実施態様として、極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条が主に織物表面をカバーし、制電性繊維等の他の糸条が織物内部に存在する構造とすることができる。
【0044】本発明ではこのように構成したことで、ワイピングテープを構成する織物の表面が、主に極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条で覆われることで、表面の油膜などの汚れをマルチフィラメント糸条内部の無数の空隙に毛細管現象により吸い入れる作用を有するため、被処理表面に汚れを残さないように拭き取ることができると共に、ワイピングテープ表面側にも汚れを残さないようにすることができる。また、ワイピングテープ表面が扁平であるため効率よく被処理面の汚れを拭き取ることができる。さらにまた、一方に制電性繊維を配することで、静電気の発生を押さえ発塵量を少なくすることができる。
【0045】本発明のワイピングテープは、厚さ0.1〜0.7mmの織物を、幅3〜1,800mmのテープ状に両エッジをヒートカットすることによって製造することができる。そして、ワイピングテープ長手方向の引張り強度が40〜70kg/5cm、伸度が20〜50%であることが好ましい。
【0046】このように両エッジがカットされたテープは、そのエッジ部分から繊維が切断端末が発塵しやすいという問題があるが、上記のようにエッジがヒートカットされていることにより繊維の切断端末が相互に融着し、発塵を制御することができる。さらに極細繊維からなるマルチフィラメント捲縮糸が毛羽立ちのない長繊維であるため、マルチフィラメント自身が自己発塵することがなく、無塵性に優れたワイピングテープとすることができる。
【0047】本発明のワイピングテープは、さらにテープ長手方向の伸度が20〜50%であることにより、拭取り時に適度の伸びを発生して摩擦力を逃がすようにするため極細繊維の単糸切れを発生せず、新たな発塵の原因になることがないので、清浄度を一層向上することができる。しかも、ワイピングテープ厚さを0.1〜0.7mm、長手方向の引張り強度を40〜70kg/5cmにしているため、上記伸びによる極細繊維の単糸切れも発生せず、優れた清浄度の拭き取りを可能にする。
【0048】図1(A)、(B)は、それぞれ本発明の実施形態からなるワイピングテープを示すものである。
【0049】図1(A)に示すワイピングクロスは、極細繊維からなる扁平構造のマルチフィラメント糸条の織物を幅狭にヒートカットによりスリットしたワイピングテープ1であって、巻芯2にロール状の巻上げ体10として巻き上げられている。また、図1(B)に示すワイピングクロスは、同じ織物を幅広にヒートカットによりスリットしたワイピングテープ1であって、同じく巻芯2にロール状の巻上げ体10として巻き上げられている。
【0050】これらワイピングテープ1は、必ずしも図示のようにロール状に巻き上げる必要はないが、ロール状に巻き上げると、例えば40〜50mにも及ぶ長いテープであっても極めてコンパクトに収納することができる。また、ロール状に巻き上げておけば、図4のような方法で使用するとき、磁気テープなどの樹脂フィルム表面の拭取り操作を容易にすることができる。
【0051】図4に示す拭取り操作では、拭取り操作前の樹脂フィルム5が巻き上げられた巻上げ体30を巻戻機6にセットし、この巻上げ体30から樹脂フィルム5を引き出しながら巻取機7に連続的に巻き上げる一方、この上方の巻戻し機8にワイピングテープ1の巻上げ体10をセットし、この巻上げ体10からワイピングテープ1を引き出しながら巻取機9に巻き上げるようにしている。ワイピングテープ1と樹脂フィルム5とは互いに反対方向に走行しており、そのワイピングテープ1の上面から圧着ロール4を押し下げて樹脂フィルム5に圧着させると、ワイピングテープ1が樹脂フィルム5の表面に所定の摩擦力で相対移動しながら拭取り作用を行うようになっている。
【0052】また、図5(A)、(B)は、ロール状に巻き上げたワイピングテープをハードディスク表面の拭取り操作に利用する場合を示す。
【0053】この拭取り操作工程では、回転軸にセットしたハードディスク15の上方の巻戻し機8にワイピングテープ1の巻上げ体10をセットし、この巻上げ体10からワイピングテープ1をハードディスク15の半径方向上面を横切らせるように巻取機9に巻き上げている。そしてそのワイピングテープ1の上面から圧着ロール14を押し下げてハードディスク15の半径方向上面に圧着させると、ワイピングテープ1がハードディスク15の表面に所定の摩擦力で相対移動しながら拭取り作用を行なうようになっている。
【0054】また、ワイピングテープ1が、多数の極細繊維からなるマルチフィラメント糸条の扁平構造によって、図6(A)、(B)に示すような原理による拭取り性能を奏する。
【0055】この拭取り性能は、単繊維繊度が1デニールよりも太い繊維による場合には十分な効果が得られなくなってしまう。
【0056】図6(A)に示すように、多数の超極細繊維fが集束された扁平構造のマルチフィラメント糸条Fは、その内部に無数の隙間Gを形成している。このマルチフィラメント糸条Fの織物から形成されたワイピングテープ1によって被処理表面を拭き取ると、拭き取られた油膜や汚れDが毛細管現象によってマルチフィラメント糸条F内部の隙間Gへと移動し、そこにトラップされた状態になる。したがって、被処理表面に汚れを残すことなく拭き取ることができ、かつワイピングテープ1の表面にも油膜や汚れDを残さないので、繰り返し拭き取りすることが可能になる。
【0057】さらに上記ワイピングテープ1は、極細繊維のマルチフィラメント糸条が毛羽立ちのない長繊維であるため自己発塵することがなく、実質的に無塵性の特性を有している。
【0058】本発明のワイピングテープ1は、上記極細繊維からなるマルチフィラメント糸条を用いて製織された厚さ0.1〜0.7mm、好ましくは0.2〜0.5mmの織物が、幅3〜1800mmでテープ状にスリットされて形成されており、かつテープ物性として、テープ長手方向の引張り強度が40〜70kg/5cm、伸度が20〜50%であるようにしてある。
【0059】このようにテープ長手方向に20〜50%の伸度(破断伸度)を有するため、拭き取り時の摩擦力により伸びを発生することによって、極細繊維の単糸が切断を招くようなことがないので、新たに発塵を起こすことがない。このテープ長手方向の伸度が小さすぎると、極細繊維が単糸切れを起こしやすくなり、また大きすぎると伸びが大きくなりすぎ、良好な拭取りを行なうことができなくなる。また、本発明において、テープの厚さを0.1〜0.7mm、長手方向の引張り強度を40〜70kg/5cmにするのは、上記摩擦力に対して極細繊維に単糸切れが発生しないようにするためである。
【0060】したがって、本発明のワイピングテープは、上記のようなテープ特性を備えることによって、一層清浄度の高い拭取り操作を可能にすることができる。
【0061】上記ワイピングテープにおいて、特にクリーンルームで生産が行われるハードディスク製造工程における拭取り工程に使用するものについては、図2及び図3に示すように、実質的無塵状態に処理したのち樹脂フィルム袋3の中に密封パックするようにするとよい。
【0062】ここでワイピングテープが実質的無塵状態であるとは、JIS B99236.2(1.1)の規定に準じて測定した発塵量が、5μm以上のパーティクルが20個/ft3・100cm2 以下、さらに好ましくは5個/ft3・100cm2以下になっていることである。このように実質的無塵状態にしたワイピングテープ1を、図2および図3のように樹脂フィルム袋3内に密封パックし、これをハードディスク製造工程の置かれたクリーンルームで開封して拭取り工程に使用するようにすれば、超無塵状態にするハードディスク製造工程等に対しても容易に適用することができるようになる。
【0063】ワイピングテープを上記のように実質的無塵状態に方法としては、特に限定されるものではないが、好ましくは洗濯機で純水を使用し完全洗浄するとよく、その洗浄後、クリーンルーム内において上記ワイピングテープを樹脂フィルム袋内に収納シールするとよい。
【0064】本発明のワイピングテープは、各種装置等の清掃に用いられるが、特に磁気ディスクや磁気テープ等の電子機器部品等の表面の汚れの拭取り用に好適に使用される。
【0065】
【実施例】(実施例1)タテ糸に、50デニール、40フィラメントのナイロン長繊維(単繊維繊度:1.25d)を用い、ヨコ糸に、仮ヨリ加工された100/2デニール、18フィラメントのポリエステル/ポリアミド海島型複合繊維糸(海成分溶出後の単糸繊度:0.06d)を用いて、タテ密度:130本/インチ、ヨコ密度:130本/インチの8枚サテンを製織し生機とした。得られた生機をアルカリの存在下で熱処理し、海成分を完全に除去し、ヨコ糸を極細糸に分解した。さらに130℃の熱水で処理することにより、糸の収縮による高密度化と洗浄を同時に実施した。次に、この織物を160℃で40秒間乾熱処理し仕上げ加工した後、60℃のカレンダーM/C(ユリロール株式会社製)を用い、5kg/cm2 の条件で扁平処理を行なった。
【0066】得られた織物は、タテ密度:150本/インチ、すなわち、1インチ間のフィラメント数は、150×40=6,000本であり、ヨコ密度:146本/インチ、すなわち、146×18×70×2=367,920本/インチであった。タテ糸とヨコ糸のフィラメント数の比率は約60であった。また、タテ糸総繊度は50×150=7,500Dであり、ヨコ糸総繊度は(100×0.9)×2×146=26,28Dで、タテ糸に対するヨコ糸の繊度比率は3.50であった。得られた織物の表面および断面をSONY製のビデオ・マイクロ・スコープを使って倍率100倍で撮った写真を実測したところ、非結束部の最大長径部の厚みは2mmであり、幅は20mmで扁平比は10%であった。またヨコ糸が占める割合は90%であった。
【0067】さらに織物をタテ方向に70mm幅のテープ形状にカットし、ワイピングテープとした。得られたテープ(引張強度:61kg/5cm、伸度26%)は、ヨコ糸の浮き構造でタテ糸は見えないものであった。拭取性を評価した結果、拭き残しが全くなく、拭取性は5級でタテ筋がなく、優れた性能が確認された。
【0068】なお、拭取性は次のようにして評価した。シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を注射針で約5mgガラス板上に落とし、直径45mm、重さ1Kgfの円柱状荷重の一端面に固定した試料(ワイピングクロス)をガラス板上に乗せ1m/minの速度で移動し、シリコーンを拭き取る。次に、乾式複写機用トナー(SF−76T:シャープ株式会社製)をガラス板上に振りかけ、そのトナーを圧縮空気(1Kgf/m2 )で吹き飛ばす。ガラス板表面にセロテープ(積水化学工業株式会社製、登録商標)を張り付けてガラス板上の残留トナーを剥ぎ取り、セロテープに付着したトナーの程度を判定する。トナーが全く付着しないもの(ガラス板のシリコーンを完全に拭き取ったもの)を5級、トナーが極めて多量に残るものを1級として5段階で肉眼判定した。さらに、残存するトナーの付着状態をタテ筋の有無でも評価した。このタテ筋の有無が実際のハードディスク製造工程での研磨剤の除去を目的とした拭取性の拭き残し有無と一致した。
【0069】また完全に拭き取るのに要するテープの量は僅か1.5mmであった。この評価方法としては、前記試験後のテープに付着したシリコーンの幅を測定することを採用した。その結果、該幅は1.5mmであった。さらに、この結果は実際のハードディスク製造工程での研磨剤の除去を目的とした拭取工程に要するテープ使用量に一致した。従って、このテープの優れた拭き取り効率が確認された。
【0070】(実施例2)タテ糸に、50デニール、40フィラメントのナイロン長繊維(単繊維繊度:1.25d)を用い、ヨコ糸に仮ヨリ加工された100/2デニール、18フィラメントのポリエステル/ポリアミド海島型複合繊維糸(海成分溶出後の単糸繊度:0.06d)を用いて、タテ密度:130本/インチ、ヨコ密度:130本/インチの5枚サテンを製織し生機とした。得られた生機をアルカリの存在下で熱処理し、海成分を完全に除去し、ヨコ糸を極細糸に分解した。さらに130℃の熱水で処理することにより、糸の収縮による高密度化と洗浄を同時に実施した。次に、この織物を160℃で40秒間乾熱処理することで仕上げ加工した後、実施例1と同様の装置を用いて、室温、10kg/cm2 の条件で扁平処理を行なった。
【0071】得られた織物は、タテ密度:150本/インチ、すなわち、1インチ間のフィラメント数は、150×40=6,000本であり、ヨコ密度:146本/インチ、すなわち、146×18×70×2=367,920本/インチであった。タテ糸とヨコ糸のフィラメント数の比率は約60であった。また、タテ糸総繊度は50×150=7,500Dであり、ヨコ糸総繊度は(100×0.9)×2×146=26,28Dで、タテ糸に対するヨコ糸の繊度比率は3.50であった。得られた織物の表面および断面をSONY製のビデオ・マイクロ・スコープを使って倍率100倍で撮った写真を実測したところ、非結束部の最大長径部の厚みは3mmであり、幅は15mmで扁平比は20%であった。また、ヨコ糸が占める割合は85%であった。
【0072】さらに織物をタテ方向に70mm幅のテープ形状にカットし、ワイピングテープとした。得られたテープ(引張強度:60kg/5cm、伸度24%)は、ヨコ糸の浮き構造でタテ糸は見えないものであった。拭取性を評価した結果、拭き残しが全くなく、拭取性は5級でタテ筋がなく、優れた性能が確認された。また、拭き取りに要したテープ量は1.6mmであり、優れた拭き取り効率が確認された。
【0073】(比較例1)タテ糸に、50デニール、40フィラメントのナイロン長繊維(単繊維繊度:1.25d)を用い、ヨコ糸に、仮ヨリ加工された70デニール、72フィラメントのポリエステル繊維糸(単繊維繊度:0.97d)を用いて、タテ密度:130本/インチ、ヨコ密度:130本/インチの8枚サテンを製織し生機とした。この生機を扁平処理を行わないことを除いて実施例1と同様の加工条件で処理した。得られた織物は、タテ密度:150本/インチ、すなわち1インチ間のフィラメント数は、150×40=6,000本であり、ヨコ密度:146本/インチ、すなわち146×72=10,512本/インチであった。タテ糸とヨコ糸のフィラメント数の比率は約1.8であった。扁平比は50%で、ヨコ糸が占める割合は55%であった。
【0074】得られた織物のヨコ糸は、捲縮による浮き構造ではあるが、織物のタテ糸が見えタテ糸による溝が目立ち、拭取性の評価結果も拭き残しが多く、拭取性は2級でタテ筋が認められ、十分な性能が得られなかった。これは、ヨコ糸のフィラメント数が少ないこと、拭取時に繊維が座屈しにくく、広がりに欠けることが原因と考えられる。
【0075】
【発明の効果】本発明によれば、タテ糸とヨコ糸の総繊度比や本数比によって、極細繊維からなる扁平なマルチフィラメント糸条の浮き構造でかつ扁平構造により、片面が極細繊維で多く覆われている織物で構成されており、また、その極細繊維マルチフィラメント糸条に基づく優れた拭取り性と長繊維としたことによって、一定方向の拭取り性が一段と優れたワイピングテープが得られる。特に、クリーンルームで使用され、人間の手作業ではなく、機械的に拭き取る電子情報機器類の製造工程でのワイピンク材として高い信頼性を有するワイピングテープが得られる。さらに、より多くの極細繊維単繊維が被処理面に接することにより、被処理面に対して極細繊維が効果的に密着し、汚れや油膜を素早く拭き取ることが可能である。
【0076】また、制電性繊維からなる糸条を他の一方に用いることにより、静電気の発生を押さえることができ、発塵量を少なくすることができる。
【0077】さらに、両エッジがヒートされていることに基づく低塵性を有し、その上に、さらにテープ長手方向の伸度を20〜50%にしたことによって、拭取り時に適度の伸びを発生して極細繊維に単糸切れを発生させず、新たな発塵による清浄度の低下を招くことがなく、かつテープ厚さを0.1〜0.7mm、長手方向の引張り強度を40〜70kg/5cmにしたので、同じく極細繊維の単糸切れを発生せず、清浄度の一層高い拭き取り操作が可能になる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月27日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−276399
【公開日】 平成11年(1999)10月12日
【出願番号】 特願平10−82292