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【発明の名称】 介護用敷布
【発明者】 【氏名】坂爪 繁

【要約】 【課題】取扱い及び洗濯が容易であり、被介護者を臥床したまま容易に移動させることができる介護用敷布を提供する。

【解決手段】ベッド用マット又は布団の上面を覆う敷布の、身体を横たえる部分1aの両側に、それぞれ複数の開口2aを設ける。この開口の周囲には、補強布3を重ねて縫い合わせるものとし、この補強布は、開口部より中央部側に向かって幅が拡大する形状とする。この補強布の周囲及び開口の周囲はミシン等によって縫い合わせるとともに、開口の両脇から敷布の中央部に向かって放射状に縫合線を設ける。また、補強布には、敷布の布地より伸縮しにくい生地を用い、その織り糸の方向と敷布の布地の織り糸の方向とのなす角度がほぼ45°となるようにする。これにより、開口部を把持して被介護者を容易に移動させることができるとともに、敷布に過大な変形が生じたり、破損するのを防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベッド用マット又は布団の上面を覆う敷布であって、身体を横たえる部分の両側部に、それぞれ複数の開口が設けられ、該複数の開口の周囲に、補強布が重ねて縫い合わされていることを特徴とする介護用敷布。
【請求項2】 前記補強布は、前記開口より前記敷布の中央部側に向かって幅が拡大する形状であることを特徴とする請求項1に記載の介護用敷布。
【請求項3】 前記開口の両脇から前記敷布の中央部に向かって放射状に、前記補強布と該敷布とを重ねて縫い合わせる縫合線が設けられ、これらの縫合線の中央部側の端部と交叉するように、該敷布の長辺方向の縫合線が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の介護用敷布。
【請求項4】 前記補強布は、該敷布より伸縮性の小さい布地からなるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の介護用敷布。
【請求項5】 前記補強布は、縦横に通る織り糸の方向が、該敷布の織り糸の方向とほぼ45°の角度をなすものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の介護用敷布。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家庭や病院等で使用される介護用敷布に係り、特に介護者が病人又は高齢者等の被介護者を臥床のまま容易に移動させることを可能とする介護用敷布に関する。
【0002】
【従来の技術】重傷の患者、重度の身体障害者あるいは高齢者等、介護者の助けを必要とする者の移動には大きな労力が必要となり、介護者の負担は大きい。例えば、重傷の患者の入院中には、検査や治療のため患者をベッドからストレッチャーに移し替えて移動することが多く、患者に負担がかからないように、数人の看護婦で抱きかかえるようにして載せ替えたり、患者が臥している敷布ごと数人で持ち上げて移動している。このような介護には、介護者が十分に屈強な者であるか、又は熟練した者でないと、患者をうまく抱き抱えて移動させることは難しい。また、敷布を使用して移動する場合にも、敷布は掴みにくく、被介護者と介護する者との双方に不安が生じる。
【0003】このような問題を解決するための方法が、特開平6−125943号公報、特開平8−47513号公報又は特開平8−256879号公報等に開示されている。特開平6−125943号公報に開示される敷布は、上面と下面とに編み目構造の部材を用い、中間に合成繊維を介在させたネット状の構成とするものであり、この敷布に設けられた取手穴を利用して被介護者を載せた状態で移動する。
【0004】また、特開平8−47513号公報に記載される被介護者の移し替え具は、介護者が容易に把持することができるグリップを備えた板状部材であって、被介護者の下側に差し入れ、介護者が上記グリップを握って被介護者を移動させるものである。特開平8−256879号公報に開示される敷物は、しなやかな素材から成るシートの表面に滑り易い素材からなるシートを張り合せたものであり、ベッドや布団の上に敷いて使用し、被介護者をこの敷物上で滑らせて移動を容易にしようとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来から知られている技術では、次のような問題がある。特開平6−125943号公報に記載のネット状敷布は、布製の敷布に比べて厚さが大きく、洗浄に手間がかかり頻繁に洗濯することが難しくなる。また、使用しないときの収納に大きなスペースを占有するという問題もある。
【0006】また、特開平8−47513号公報に示される被介護者の移し替え具では、敷布のように常時用いるものではないため、被介護者の移動のたびに収納場所から持ち出して使用することになり、日常の介護用としては簡便さを欠く。特開平8−256879号公報に記載された滑り易い素材を用いた敷物では、障害の軽度な被介護者が自ら位置を移動するのを補助することにはなるものの、介護者が重症患者等の被介護者を移動させようとする場合には、多くの効果を期待することはできない。また、素材の特性により通気性が損なわれ、被介護者が不快感を覚えたり、皮膚炎を起こす原因となる場合もある。
【0007】本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、取扱い及び洗濯が容易であり、介護者により病人又は老人を臥床したまま容易に移動させることを可能とする介護用敷布を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、 ベッド用マット又は布団の上面を覆う敷布であって、 身体を横たえる部分の両側に、それぞれ複数の開口が設けられ、 該複数の開口の周囲に、補強布が重ねて縫い合わされている介護用敷布を提供するものである。
【0009】このような介護用敷布は、常時には従来の一般的な敷布と同様に使用できるとともに、被介護者を移動させるときには、介護者がこの敷布の側部に設けられた複数の開口を利用して容易に持ち上げ、被介護者を移動させることができる。また、この開口は、補強布によって周囲が補強されているため、敷布を持ち上げる際、被介護者の体重がかかっても開口及びその周辺の形状が著しく変化したり、開口から破れるのが防止される。また、補強布は敷布の一部に使用されているのみであり、洗濯や収納等の取扱も従来の敷布と同様に行うことが可能である。
【0010】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の介護用敷布において、 前記補強布を、前記開口より該敷布の中央部側に向かって幅が拡大する形状を有するものとする。
【0011】このような敷布では、開口を囲むとともに、この開口より敷布の中央部側で幅が拡大する形状の補強布が縫い合わされているので、この補強布を介して開口付近に作用する力が分散されて敷布の中央部に伝達される。つまり、敷布の中央部に被介護者を乗せたまま開口に指を通して敷布の側部を把持し、被介護者を持ち上げると、開口部から敷布の中央部に引張力が作用するが、補強布を介して開口の両側すなわち被介護者が寝ている方向に引張力が分散して伝達される。このため、敷布の変形が抑制されるとともに、被介護者は体の全体に分散して作用する力で引上げられ、苦痛を感じることなく移動できる。
【0012】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の介護用敷布において、 前記開口の両脇から該敷布の中央部に向かって放射状に、前記補強布と該敷布とを重ねて縫い合わせる縫合線が設けられ、 これらの縫合線の中央部側の端部と交叉するように、該敷布の長編方向の縫合線が設けられているものとする。
【0013】このような敷布では、開口の両脇から敷布の中央部に向かって放射状に補強布を縫い合わせる縫合線が設けられており、この縫合線の方向に敷布が伸長しにくくなる。このため、開口部を把持して持ち上げる力がこの方向に伝達され易くなり、補強布と敷布の生地とが一体となった部分で引張力の分散状態が良好となる。したがって、敷布上の被介護者の身体に平均的に力を作用させた状態で移動が可能となる。また、上記放射状の縫合線の中央部側の端部は、該敷布の長辺方向の縫合線と交叉することによって、放射状の縫合線の端部で応力の集中が生じるのを防止することができる。
【0014】請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の介護用敷布において、 前記補強布は、該敷布より伸縮性の小さい布地からなるものとする。
【0015】このような敷布では、補強布が敷布の生地よりも伸縮しにくいものであり、一体に縫い合わされた部分では、引張力は主に補強布に負担される。このため、補強布を適切に選択することによって敷布の生地への負担を軽減し、過度の変形や破損を防止することができる。上記敷布より伸縮量の小さい布地としては、弾性係数の大きい素材を用いたもの、織り糸が堅く撚られたもの、又は織り目が密なもの等が考えられるが、洗濯の容易性等の観点からできるだけ薄いものが望ましい。
【0016】請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の介護用敷布において、 前記補強布は、縦横に通る織り糸の方向が、該敷布の織り糸の方向とほぼ45°の角度をなすものとする。
【0017】一般に、縦糸と横糸とが直交するように織られた布地はそれぞれの織り糸の方向には変形しにくく、これと45°の角度をなす方向には伸縮し易い。上記敷布はこの性質を利用したものであり、開口部を把持して引上げる引張力は敷布の生地の横糸によって側縁とほぼ直角に伝達される。一方補強布は、その織り糸が上記敷布の横糸の方向とは45°の角度をなす方向に通っているので、この方向に引張力が伝達されやすくなっている。このため、開口部に作用する力は敷布の横糸と補強布の織り糸とに分散して伝達され、敷布の中央部では縦方向に広く分散した状態となる。したがって、被介護者は広く分布した力によって持ち上げられ、敷布に集中的に大きな引張力が作用して過度の変形が生じることや開口部から敷布が破損するのが防止される。また、被介護者に苦痛や不快感を与えることなく移動が可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は、本願に係る発明の一実施形態である介護用敷布を示す概略斜視図である。この介護用敷布1はベッド用のマット及び布団のいずれに使用しても上面を覆うのに十分な幅と長さとを有する矩形の布地2で主要部が構成されており、被介護者の身体を横たえる部分2bの側部に、長辺方向に所定の間隔をおいて複数の開口2aが設けられている。また、この布地2の開口2aの周囲には、図2に示すように、補強布3が重ねて縫いあわされている。
【0019】上記補強布3は、図2に示すように、この介護用敷布1の中央部に向かって幅が拡大する台形の布であり、布地2の開口2aと形状および大きさが一致する開口3aを有し、この開口3aの周辺および外周部はほつれ防止の処理が施されている。この補強布3は、布地2の一つの開口の周りに重ねられるものと、二つの開口の周囲に連続して重ね合わされるものとがあり、それぞれの開口3aが敷布の開口2aと位置が合致するように重ねて縫い合わされている。
【0020】これらを縫い合わせる縫合線は、ミシンによって形成されたものであり、補強布3の周縁および開口の周縁に沿って設けられたものの他、図3及び図4に示すように、開口2aの上下付近すなわちこの敷布1の長辺方向の両脇から中央部側に向かって放射状に応力分散用の縫合線4が設けられている。また、補強布の敷布の中央部側の縁付近には、敷布の側縁(長辺)とほぼ平行に複数の縫合線5が設けられ、これらが上記応力分散用の縫合線4と交叉している。
【0021】上記補強布3として用いられる布地は、敷布の主要部を構成する布地2とほぼ同程度の厚さを有するものであるが、織り糸は縦糸と横糸とが同じもので、堅く撚られたものが使用され、敷布の布地2より織り目が密となっている。そして、この織り目が、図3及び図4に示すように、敷布の側縁の方向すなわち布地2の織り糸の方向と45°の角度をなすように裁断されたものである。
【0022】この介護用敷布1は、一般に用いられるベッド用マットもしくは布団より幅が広く、マットもしくは布団の幅より外側部分又はマット等の側端部付近と対応する部分に上記補強布3が縫い合わされており、この補強布3が縫い合わされた部分は身体を横たえる部分1aを避けるように設けられている。したがって、被介護者にとっては、一般の敷布と全く同様に使用することができる。そして、介護者が被介護者の移動を行う際には、上記補強布3が縫い合わされた部分を引き出し、敷布1の両側から開口部を把持し、持ち上げて移動することができる。
【0023】なお、上記実施形態においては、一枚の補強布を敷布の主要部を構成する布地2の一方の面に縫い合わせる構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、2枚の補強布を布地2の表面と裏面とからはさみ込むように当て、これらを重ねて縫い合わせた構成とすることもできる。また、上記補強布としては、一般的な織布の他、不織布等を用いることもできる。さらに、本実施形態では、この補強布の形状を台形としたが、上記と同様の効果が得られる形状であればこれに限定されるものではなく、扇形、円形、半円形その他種々の形状の補強布が使用可能である。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の介護用敷布では、従来の敷布と同様に使用しながら、介護者がこの敷布の側部に設けられた複数の開口を利用して、臥床した被介護者を敷布と共に容易に移動させることができる。また、この介護用敷布の開口部は、補強布及び複数の縫合線によって補強されているため、敷布の開口付近の変形や破損が抑制されるとともに、開口部を把持して被介護者を持ち上げるときに、力が被介護者に分散して伝達され、快適な状態で移動させることができる。さらに、この介護用敷布は簡単な構成からなるため、洗濯や収納等の取扱が容易である。
【出願人】 【識別番号】396022963
【氏名又は名称】坂爪 繁
【出願日】 平成10年(1998)5月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清 (外1名)
【公開番号】 特開平11−318665
【公開日】 平成11年(1999)11月24日
【出願番号】 特願平10−142180