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【発明の名称】 形態保持具
【発明者】 【氏名】金尾 修一

【氏名】片倉 剛志

【要約】 【課題】保管性、可搬性に優れ、複雑な3次元形状にも対応でき、かつ一度使用状態におかれたならば、長期に渡りその形状を保持できる気体封入式の形態保持具を得ること。

【解決手段】ガスバリア層(A層)とヒートシール層(B層)を含む複合フィルムからなる成形体に気体を封入してなる形態保持具。A層が酢酸ビニル重合体けん化物系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びポリアクリロニトリル系樹脂の群から選択された少なくとも1種の樹脂、中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物からなることが好適であり、またA層が金属蒸着層を有することも好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガスバリア層(A層)とヒートシール層(B層)を含む複合フィルムからなる成形体に気体を封入してなる形態保持具。
【請求項2】 A層が酢酸ビニル重合体けん化物系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びポリアクリロニトリル系樹脂の群から選択された少なくとも1種の樹脂からなる請求項1記載の形態保持具。
【請求項3】 A層がエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物からなる請求項1記載の形態保持具。
【請求項4】 A層が金属蒸着層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の形態保持具。
【請求項5】 強化層(C層)を積層した複合フィルムからなる請求項1〜4のいずれかに記載の形態保持具。
【請求項6】 封入される気体が窒素ガスを50容量%以上含む請求項1〜5のいずれかに記載の形態保持具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、靴、衣類、手袋などの内部に設置し、その形態を保持するための用具(以下形態保持具という)に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、衣類等を店頭に展示、あるいは保管する場合には、展示効果を高め、顧客にアピールするため、また、しわ・折れなどを防ぎ、製品の形状・品質を保持するために樹脂又は金属の形態保持具(ハンガー、マネキンなど)を使用している。また、靴(特にロングブーツ)においても同様の目的に樹脂又は金属から作られた形態保持具、または紙を丸めたものなどが使用されている。
【0003】しかしながら、ハンガーなどは本質的に人体の形状と異なるため、部分的なしわ、たるみ等の変形の原因となる。マネキンは、形態保持の面からは最も優れたものであるが、他に比べ生産が著しく難しく高コストである上、重量があり可搬性に劣り、しかも硬いものであるため、やはり、余り複雑な形状のものの形態保持に用いることはできない。
【0004】さらにこれらの事情は靴においてはより顕著であり、出し入れの困難さも含め、本質的に複雑な形状をもつ靴類の形態保持には向いていない。また更に、紙を丸めたものでは耐久性に劣るため、時間経過又は僅かな外力により変形し、しかも一度変形すると折れ癖が付くため形態を保持できず、保管の目的には不向きである。しかも、これらの材料はすべて、不使用時も形状を保持するため、不使用時の保管という点でも非常に不便である。
【0005】これらの欠点を解消した材料として、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂のフィルムからなる袋に、気体を封入したタイプの形態保持具が一部実用化されている。しかし、従来のものは、内部気体の保持能力が低く、短時間のうちに内部圧力が低下して形状を保持できなくなり、特に剛性を高めるため内部圧力を高めようとすると圧力の低下速度はより早くなり、短時間で内部気体が抜け、形状を保てなくなる。そのため、このような形態保持具はごく一部の分野を除き、事実上使用できなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上記の課題を解決し、保管性、可搬性に優れ、複雑な3次元形状にも対応でき、かつ一度使用状態におかれたならば、長期に渡りその形態を保持できるばかりでなく、より高い内部圧力を付与することが可能であり、より高剛性を要求される分野にまで対応可能な気体封入式の形態保持具を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、ガスバリア層(A層)とヒートシール層(B層)を含む複合フィルムからなる成形体に気体を封入してなる形態保持具により達成される。このとき、A層が酢酸ビニル重合体けん化物系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂及びポリアクリロニトリル系樹脂の群から選択された少なくとも1種の樹脂、中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物からなることが好適であり、またA層が金属蒸着層を有することも好適である。さらに、強化層(C層)を積層した複合フィルムからなることも好適である。また封入される気体が窒素ガスを50容量%以上含むことが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明の形態保持具用フィルムのガスバリア層(A層)をなす材料としては特に限定されるものではなく、酢酸ビニル重合体けん化物系樹脂(以下PVOHと略すことがある)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下PVDCと略すことがある)及びポリアクリロニトリル系樹脂(以下PANと略すことがある)などが挙げられる。またその他にA層を構成し得るフィルムとしては、金属蒸着プラスチックフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルムなどの各種ガスバリアフィルムも挙げられる。
【0009】これらの中でも、特に使用中あるいは保管時に著しい変形が加わった場合でも性能低下が小さく、より安定して形態を保持できることなどから、PVOH、PVDC及びPANを用いることが好ましく、更に耐光性に優れること及び燃焼時に有毒ガスを発生せず、安全性に優れることから、PVOHを用いることがより好ましく、加えて耐湿性、成形性に優れることからエチレンを共重合したPVOH、すなわちエチレン−ビニルエステル共重合体けん化物(以下EVOHと略すことがある)を用いることが最も好ましい。なおこれらの層は、単独で使用する以外に、必要に応じ2種もしくはそれ以上のガスバリア層を同時に設けて使用することもできる。
【0010】さらに、PVOHとしては、気体の保持性能の面から、けん化度70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。また、PVOH中のエチレン含量は、0〜60モル%の範囲で用いられるが成形性と内部気体の保持能力のバランスの面から15〜55モル%がより好ましく、20〜50モル%が特に好ましい。更に、かかるPVOH層は気体保持性能、強度、耐湿性などの諸性能がより向上されることから2軸延伸されていることが特に好ましい。
【0011】本発明において、ヒートシール層(B層)としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン及び/又はプロピレンモノマーと酢酸ビニル、アクリル酸メチルその他のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチルその他のメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレンの内の1種または2種以上のコモノマーとの共重合体(ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体を含む)が挙げられる。
【0012】このとき、酢酸ビニルをコモノマーとして使用する場合には、その完全又は部分けん化物も含まれる。また、共重合体を用いる場合には、コモノマー成分の共重合比率が高いとブロッキング性が出てくるため、その共重合比率は合計して50重量%未満が好ましく、40重量%未満がより好ましく、25重量%以下が最適である。
【0013】B層として用いられる樹脂の具体例としては、HDPE、LDPE、V−LDPE、U−LDPE、L−LDPE、プロピレンのホモ又はコポリマー、EVA、EMA、EEA、EMMA、EAA、EMAA、SBS、SBES、SEPS、SEEPS、接着性ポリエチレン、EMAAをナトリウムや亜鉛などの金属イオンにより部分的に中和したもの(アイオノマー)、EVAけん化物などが例示される。ヒートシール層に用いる樹脂の融点は、ガスバリア層に用いた樹脂よりも低いことが望ましい。
【0014】ガスバリア層(A層)及びヒートシール層(B層)の厚みは、いずれも特に限定されるものではないが、A層については形態保持性と取り扱う際の保管性、可搬性のバランスから3〜50μmが好ましく、10〜30μmが最も推奨される。またB層については、成形体の耐圧強度と、取り扱う際の柔軟性、保管性、可搬性のバランスから5〜100μmが好ましく、10〜80μmが最も推奨される。
【0015】更に、本発明においては、複合フイルム内に、強化層(C層)を設けることがより好ましい。C層を別に設けることで、保管時に屈曲などの外力が加わった場合の形態保持具の耐久性をより高めることができる。C層は複合フイルムのどこに設けてもかまわないが、摩擦などに対する抵抗性を付与できることから最外層として設けるのが好ましい。また、より耐久性の向上を図るため、複数のC層を設けることもできる。かかるC層として特に好適な材料としては2軸延伸ポリアミドフィルム及び2軸延伸ポリエステルフィルム及び2軸延伸ポリプロピレンフィルムを例示できるが、耐屈曲性に優れている点で2軸延伸ポリアミドフィルムを用いることが最も好ましい。
【0016】本発明の成形体は、その一部に吸排気弁を設けると、収納及び気体圧入の際の利便性が向上しより好ましい。かかる弁自体は公知であり、例えば特開昭49−68923号公報に記載の吸排気弁を例示することができる。
【0017】本発明において内部に充填するガスとしては、常温で気体であれば特に制限はないが、形態保持期間をより長くするためには窒素ガスを50容量%以上含んでいるものが好ましく、70容量%以上含んでいるものが更に好ましく、90容量%以上含んでいるものが特に好ましい。
【0018】更に、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ、成形体に着色、印刷または金属蒸着などを施すことも商品イメージを高めることができ好ましい。
【0019】本発明の形態保持具は各種の方法によって製造することが可能である。例えば、あらかじめ、ガスバリア層(A層)、ヒートシール層(B層)、必要に応じ強化層(C層)を独立にフイルム化した後、ラミネートし、必要な形に裁断、ヒートシールしたのち、ガスを充填して形態保持具とする方法、又は強化層(C層)を基材とし、その上に溶液コート、溶融押出コート、蒸着などの方法でガスバリア層(A層)を作成し、更にヒートシール層(B層)を形成した後、必要な形に裁断、ヒートシールし、ガスを充填して形態保持具とする方法、さらには、より立体的な形状を得るために、前記ヒートシール前に、真空成形などの2次成形過程を加える方法、また、多層射出成形、ブロー成形などにより、一挙に形態保持具を成形する方法などを例示することができる。また、特に複雑な形状の靴・衣類などに用いる場合には、成形体を予め靴内部に挿入しておいてからガスを注入、保持具とする方法も好ましく用いられる。
【0020】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0021】実施例1EVOH(けん化度99.7%、エチレン共重合率44モル%)と無水マレイン酸変成ポリエチレン(三井石油化学工業製 ADMER(TM) VF500)を共押出製膜機を用い、EVOH層の厚み15μm、変性ポリエチレン層の厚み40μmの多層フィルムを得た。これをワイシャツの形状に合うように裁断した後に、ポリエチレンを内側にして2枚重ねし、ヒートシール部の幅1cmとなるように周囲をヒートシールした。更にこの中に各種の気体をそれぞれ内圧が所定の圧力になるように封入した(封入口も同様にヒートシールした)。これにワイシャツを着せた後、20℃の室内に放置し、衣類にしわが発生するまでの日数を調べ形態保持日数とした。なお、気体としてはN2ガスとCO2ガスをそれぞれ容量で100:0、60:40、40:60、0:100の比率で混ぜ合わせたものについて評価した。結果を表1に示す。
【0022】実施例2EVOHとして、けん化度99.8%、エチレン共重合率27モル%のものを用い、さらにヒートシール部の一部に特開昭49−68923号公報に記載の低密度ポリエチレンからなる吸排気弁を設けた他は実施例1と同様にして試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0023】実施例32軸延伸EVOHフィルム(エチレン含量32モル%けん化度99.9%、厚さ15μm)と膜厚40μmのLDPEフィルム(アイセロ化学社製 スズロン(TM) LS−201)をポリエステル系接着剤(武田薬品工業製 A−385/A−50)を用いて張り合わせ複合フィルムを得た。このフィルムを用いた他は実施例2と同様にして試験・評価を行った。さらに保持具の表面を粒度400の研磨紙を用い一回のみ摩擦したもの及び、幅2cmで一度折り畳んだものについても同様にして試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0024】実施例4EVOHフィルムの外層にさらにポリエステル系接着剤(武田薬品工業製 A−385/A−50)を用いて2軸延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ製エンブレム(TM)ON−15、厚さ15μm)を強化層としてラミネートしたフィルムを用いた他は実施例3と同様にして試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0025】実施例52軸延伸EVOHフイルムに金属アルミニウムを真空蒸着したものを用いた他は実施例4と同様にして試験・評価を行った。結果を表1に示す。
【0026】実施例6EVOHフィルムの代わりにPVDCフィルム(旭化成製サランUB(TM)#158)を用いた他は実施例3と同様にして複合フィルムを作成した。このフィルムを用いた他は実施例1と同様にして試験・評価を行った。結果を表2に示す。
【0027】実施例7EVOHフィルムの代わりに酸化ケイ素透明蒸着2軸延伸ポリエステルフィルム(三菱化学製 テックバリア H)を用いた他は実施例4と同様にして試験・評価を行った。結果を表2に示す。
【0028】比較例1膜厚40μmのLDPEフィルム(アイセロ化学社製 スズロン(TM) LS−201)を単独で用いた他は実施例1と同様にして試験・評価を行った。結果を表2に示す。
【0029】比較例2膜厚50μmのPPフィルム(東京セロファン紙社製 トーセロOP(TM))を単独で用いた他は実施例1と同様にして試験・評価を行った。結果を表2に示す。
【0030】実施例8実施例1で用いた積層フィルムをブーツの形状に合うように裁断した後に、ポリエチレンを内側にして2枚重ねし、ヒートシール部の幅1cmとなるように周囲をヒートシールした。更にこの中に各種の気体をそれぞれ内圧が所定の圧力になるように封入した(封入口も同様にヒートシールした)。これをブーツ内部に挿入後、20℃の室内に放置し、ブーツの上部が折れ曲がるまでの日数を調べ形状保持日数とした。なお、気体としてはN2ガスとCO2ガスをそれぞれ100:0、60:40、40:60、0:100の比率で混ぜ合わせたものについて評価した。結果を表3に示す。
【0031】実施例9EVOHとして、けん化度99.8%、エチレン共重合率27モル%のものを用い、さらにヒートシール部の一部に特開昭49−68923号公報に記載の低密度ポリエチレンからなる吸排気弁を設けた他は実施例8と同様にして試験・評価を行った。結果を表3に示す。
【0032】実施例10実施例3で用いた複合フィルムを用いた他は実施例9と同様にして試験・評価を行った。さらに保持具の表面を粒度400の研磨紙を用い一回のみ摩擦したものについても同様にして試験・評価を行った。結果を表3に示す。
【0033】実施例11実施例4で用いた複合フィルムを用いた他は実施例10と同様にして試験・評価を行った。結果を表3に示す。
【0034】実施例12実施例5で用いた複合フィルムを用いた他は実施例10と同様にして試験・評価を行った。結果を表3に示す。
【0035】なお、実施例2〜5、7及び9〜12の場合には、吸排気弁を設けた例であるが、使用後は当該弁にストローを挿入し排気する事により、折り畳み収納し、更に、気体を注入することで再使用が可能であり、再利用性及び利便性において極めて優れていた。
【0036】比較例3膜厚40μmのLDPEフィルム(アイセロ化学社製 スズロン(TM) LS−201)を単独で用いた他は実施例8と同様にして試験・評価を行った。結果を表4に示す。
【0037】比較例4膜厚50μmのPPフィルム(東京セロファン紙社製 トーセロOP(TM))を単独で用いた他は実施例8と同様にして試験・評価を行った。結果を表4に示す。
【0038】実施例1〜7及び比較例1〜2を比較すれば、本発明の形態保持具が非常に長期に渡って衣類の形状を安定して保持できる事が、また実施例8〜12及び比較例3〜4を比較すれば同様に本発明が靴についても長期間その形態を安定して保持できることが分かる。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【発明の効果】本発明によれば保管性、可搬性に優れ、かつ使用時には長期に渡りその形状を安定して保持できるばかりでなく、外力による変形を受けてもその形状を回復する形態保持具を得ることができる。本発明を、靴、衣類などの展示あるいは保管などに用いるならば、長期に渡りメンテナンス無しに安定してその形状を保持する事ができ有用である。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成10年(1998)3月25日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−266992
【公開日】 平成11年(1999)10月5日
【出願番号】 特願平10−76871