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【発明の名称】 卒塔婆及びその製造方法
【発明者】 【氏名】薮下 清史

【要約】 【課題】堅固で軽量安価であり、容易に廃棄したり再生使用したりすることができ、従来の木製に似た卒塔婆を提供することである。

【解決手段】発泡プラスチックからなる芯体12と、芯体12の表裏両面に配設されたシート状物14とで構成し、シート状物14の表面を、水墨による筆記が可能とすることである。あるいは、プラスチック中空成形体からなり、その表面を水墨による筆記が可能とすることである。あるいはまた、プラスチック中空成形体からなる芯体12に、長さ方向に分割された中空部(16)を設けることである。さらに、中空部(16)間を区切る分割仕切り部分(18)を、下方に凸の楔状とすることである。またさらに、発泡プラスチック又はプラスチック中空成形体の原料に生分解性プラスチックを用いることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 発泡プラスチックからなる芯体と、該芯体の表裏両面に配設されたシート状物とで構成され、該シート状物の表面が、水墨による筆記可能とされたことを特徴とする卒塔婆。
【請求項2】 プラスチック中空成形体からなり、その表面が水墨による筆記可能とされたことを特徴とする卒塔婆。
【請求項3】 プラスチック中空成形体からなる芯体を含んで構成され、該芯体の中空部が卒塔婆の長さ方向に分割されていることを特徴とする卒塔婆。
【請求項4】 前記中空部を区切る分割仕切り部分が、卒塔婆の下方に向けて凸の楔型に形成されたことを特徴とする前記請求項3に記載する卒塔婆。
【請求項5】 前記発泡プラスチック又は前記プラスチック中空成形体が生分解性プラスチックからなることを特徴とする前記請求項1〜請求項4に記載する卒塔婆。
【請求項6】 プラスチック中空成形体からなる芯体を含んで構成される卒塔婆において、該芯体の中空部が卒塔婆の長さ方向に分割されている長尺の卒塔婆をまず形成し、次いで、該長尺の卒塔婆の下部を、前記中空部の分割仕切り部分で切断することによって、短尺の卒塔婆を得ることを特徴とする卒塔婆の製造方法。
【請求項7】 前記分割仕切り部分が、卒塔婆の下方に向けて凸の楔型に形成されたことを特徴とする前記請求項6に記載する卒塔婆の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプラスチック製の卒塔婆に関し、より詳しくは、堅固で軽量安価であり、容易に廃棄したり再生したりできて、従来の木製卒塔婆に似た感触が得られる卒塔婆に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】卒塔婆は死者の供養等のため墓地に立てられるもので、上部を五輪塔を摸した尖った形とされ、表面には戒名等が書かれて用いられる。従来、卒塔婆は木製であり、幅が70〜80mm位の薄手の板が使われてきた。そして、一定期間、墓地に立てられた後は、焼却によって処分されることが多かった。
【0003】しかしながら、近年、自然環境保全の必要性が認識され、木材資源枯渇の危機が叫ばれるようになってくると、焼却は資源浪費であり、焼却時の発生ガスは大気を汚染するという指摘を受けるようになった。また、従来の木製卒塔婆では、外観上、柾目板が尊重されることで歩留りが悪いことや、五輪塔を摸した加工が必要なため製作コストが高くなるという問題があった。このため、木材に替わる新たな材料の開発が待たれている。
【0004】これに対し、厚紙や板紙の積層品を卒塔婆の芯体に用いようとする提案がある。紙はある程度再生可能であり、焼却しないで再資源化することができるので、比較的好ましい材料である。しかしながら、紙は本質的に親水性であるから、防水加工を行ったとしても、野外で使用する本用途においては耐久性に限界があり、形状が崩れたり破損したりする問題があった。
【0005】また、木材に替えてプラスチックを使用しようとする試みもある。プラスチックは強度や耐久性に優れ、リサイクル使用の可能性もあり加工コストも低い。しかしながら、木材に較べ、材料費が高いことと比重の大きいことが、その実施を妨げている。長年、木製の卒塔婆に慣れてきた人々にとっては、同じ形状でも重さの異なるプラスチック製卒塔婆は異質に感じられ、特に保守的な宗教的慣行ということもあって、なかなか受け入れられないのである。
【0006】そこで本発明者らは、上述した従来卒塔婆の問題点を鑑み、強度や耐久性に優れ、リサイクル使用が可能であり、製造コストも低く、木製に類似して軽量の卒塔婆について、鋭意研究を重ねた結果本発明に至ったのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る卒塔婆の要旨とするところは、発泡プラスチックからなる芯体と、芯体の表裏両面に配設されたシート状物とで構成され、シート状物の表面が、水墨による筆記可能とされたことにある。
【0008】あるいは、本発明に係る卒塔婆の別の要旨とするところは、プラスチック中空成形体からなり、その表面が水墨による筆記可能とされたことにある。
【0009】あるいは、本発明に係る卒塔婆の別の要旨とするところは、プラスチック中空成形体からなる芯体を含んで構成され、芯体の中空部が卒塔婆の長さ方向に分割されていることにある。
【0010】さらに、かかるかかる卒塔婆において、中空部を区切る分割仕切り部分が、卒塔婆の下方に向けて凸の楔型に形成されたことにある。
【0011】また、かかる卒塔婆において、発泡プラスチック又はプラスチック中空成形体が生分解性プラスチックからなることにある。
【0012】また、本発明に係る卒塔婆の製造方法の要旨とするところは、プラスチック中空成形体からなる芯体を含んで構成される卒塔婆において、芯体の中空部が卒塔婆の長さ方向に分割されている長尺の卒塔婆をまず形成し、次いで、長尺の卒塔婆の下部を、中空部の分割仕切り部分で切断することによって、短尺の卒塔婆を得ることにある。
【0013】さらに、かかる卒塔婆の製造方法において、分割仕切り部分が、卒塔婆の下方に向けて凸の楔型に形成されたことにある。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る卒塔婆の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0015】図1は、本発明の実施態様の一例を示すものであるが、卒塔婆10は、発泡プラスチックからなる芯体12と、その表裏両面に配設されたシート状物14、15とから構成されている。通常、卒塔婆10の幅は70〜80mmである。経木塔婆といわれる使用形態では、その厚さは1〜2mmであり長さは24〜60cmである。また、板塔婆といわれる使用形態では、その厚さは4〜6mmであり長さは45〜240cmである。
【0016】芯体12を形成する発泡プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル等々を用いることができる。用途上、木材に近い比重と比較的大きな強度が要請されるため、発泡倍率はあまり高くしない方がよく、1.3〜2倍とするのがよい。
【0017】シート状物14、15には紙やプラスチックシートが用いられる。比較的柔軟な発泡プラスチックからなる芯体12を挟んで、全体を高剛性の板状にするためには、伸度の小さな紙やプラスチックシートを用いるのがよい。シート状物14の表面は、水墨によって筆記できなければならない。紙はもともと水墨によって筆記可能であり本発明に適した好ましい材料である。木目調模様の紙を用いれば木製と類似した卒塔婆とすることができる。プラスチックシートには疎水性のものが多く水墨による筆記が難しい場合がある。疎水性のプラスチックシートに対しても、親水性塗料の塗布、放電加工による表面改質等々によって、水墨による筆記を可能とすることができる。
【0018】発泡プラスチックからなる芯体12の表裏両面にシート状物14、15を配設する方法は、予め卒塔婆の形状に加工された芯体12とシート状物14、15とを接着してもよいし、広い面積の芯体12とシート状物14、15とを接着してから、卒塔婆の形状に加工してもよい。卒塔婆形状への加工は打ち抜き加工等が適している。接着は溶剤型や熱溶融型の接着剤を用いて行われる。発泡プラスチック芯体やプラスチックシートの成形時に併せて接着するようにすれば、工程の短縮、加熱コストの低減が可能となる。
【0019】本例の卒塔婆10によれば、芯体12が低比重の発泡プラスチックで形成されているので、卒塔婆10全体の比重を木材と同じ位に軽くすることができ、従来、木製の卒塔婆を取り扱っていた人々も、違和感を感じないで使用することができるようになる。また、水墨による筆記が可能なので、従来のしきたりどおりに法名や忌日を記すことができる。さらに、工場での生産が可能となるので製造コストを低減することができ、プラスチック製であるので、再生使用することができる。
【0020】図2は請求項2に対応し、プラスチックの中空成形体からなる卒塔婆10の一例を示すものである。中空部16は、外部からは見えないように閉じた空間として卒塔婆10の内部に設けられている。このようにして製造される卒塔婆10は、全体の比重を木材と同じ位に軽くすることができ、中空部16が見えないので一枚板の外観を呈している。
【0021】本例においては、中空成形体の表面が自体が水墨による筆記可能とされ、シート状物14は配設されていない。多くの樹脂は疎水性であり、親水性塗料の塗布や放電加工等々による表面改質が必要である。しかしながら、ポリビニルアルコール樹脂やアクリルニトリル・スチレン樹脂のような比較的親水性の樹脂を用いて成形すれば、そのままで、水墨による筆記が可能になるので大変便利である。水墨による筆記が可能な特別のシート状物14を配設する必要がないので、材料費や工程費用を大幅に軽減することができる。成形用の樹脂を予め着色させておくことにより、木材と同様の色合いを有する卒塔婆10を簡便に製造することができる。
【0022】図3は請求項3に対応し、長さ方向に分割された中空部16が設けられた卒塔婆10の一例を示すものであり、図2に示される例と同様にシート状物は配設されてない。しかしながら、原料特性や成形工程からの制約等によって必要とされる時にはシート状物を配設することができる。本例の長尺の卒塔婆10によれば、図4に説明されるように、分割仕切り部分18上の切断位置20で切断することにより、短尺の卒塔婆11を製作することができる。短尺の卒塔婆11の下端は閉じられていて中空部16が見えず、長尺の卒塔婆10と同様に、従来の木製卒塔婆と類似した一枚板状の外観を呈することになる。
【0023】分割仕切り部分18の数やその間隔は特に限定されず、使用形態の種類やその需要量に応じて適切に設計される。例えば、長さ240cmの卒塔婆10全長にわたり、30cmピッチの中空部16を設ければ、適当な位置の分割仕切り部分18で切断することにより、長さ210cm、180cm、150cm、120cm、90cm、60cm等の短尺の卒塔婆11を任意に得ることができる。あるいは、15cmピッチの分割仕切り部18を設ければ、もっと多種類の短尺卒塔婆11を得ることができる。
【0024】上述したように、本発明においては、長尺の卒塔婆10から長さの異なる数種類の卒塔婆11を切り出すことができるが、これは、次のようなメリットがある。すなわち、1つは、成形金型費用を節約できることである。一般に、卒塔婆のような大型の成形物を得るには高額の金型投資が必要であり、卒塔婆の種類数に応じて金型を準備すれば、全体として膨大な投資が必要となってしまう。その結果、製造コストが高くなり、実用化が非常に難しくなるという問題が生じる。本発明の製造方法によれば、用意する金型は長尺卒塔婆10用の一種類だけで済むので、製造コストを低く押さえることができる。2つめのメリットは、在庫量を減少できることである。本発明によれば、長尺卒塔婆10用の一種類だけを在庫し、注文に応じて、各種の短尺卒塔婆11に切り出して出荷すればよいので、在庫スペースを狭くすることができ、運転資金を低減できる。
【0025】図4に示される分割仕切り部分18の形状を、卒塔婆10の下端形状に似せて楔状とし、その楔状形状に沿って切断すれば、下端の尖った短尺卒塔婆11を製作することができる。すなわち、図5に示されるように、楔状形状の分割仕切り部分18で切断すれば、土中に突き刺すのに便利な形状の短尺卒塔婆11を得ることができる。必ずしも全部の分割仕切り部分18を楔状とする必要はなく、切断が想定される分割仕切り部分18だけを楔状とすればよい。
【0026】一般にプラスチックは、粉砕したり、再溶融成形したり、分解分留したりして再利用できる原料である。しかしながら、やむをえず廃棄しなければなら場合もある。本発明に用いる発泡プラスチックや中空成形体の原料を生分解性プラスチックとすれば、用済み後の卒塔婆を土中に埋めることにより生分解させ無形にすることができる。これは霊が自然に帰ることにつながって仏教本来の思想に合致し、卒塔婆の特に好ましい廃棄方法となるものである。
【0027】その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、卒塔婆の形状、芯体やシート状物の形状や材質、中空部の形状等につき、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。
【0028】本発明の実施例を、以下に詳しく説明する。
【0029】実施例1図1に示されるのと同様の卒塔婆10を製作した。卒塔婆10の幅は80mm、長さは600mm、厚さは2mmであった。芯体12は、発泡倍率1.6倍、比重0.6の発泡ポリプロピレンからなり、発泡倍率は倍であった。またシート状物14には厚さ0.1mmの木目模様紙を用いた。芯体12とシート状物14、15との貼り合わせは、芯体12の製造工程に、ポリプロピレンがコーティングされたシート状物14、15を供給することによる、オンライン・熱ラミネーションによって行った。得られた積層体の見掛け比重は0.8であり、打ち抜き加工により所定形状の卒塔婆10を得ることができた。このようにして製作した卒塔婆10の外観や重さは従来の木製卒塔婆と同様であり、表面や裏面には水墨によって戒名や忌日を記すことができた。
【0030】実施例2図5(a)に示されるのと同様の、プラスチック中空成形体からなる卒塔婆10を製作した。卒塔婆10の幅は75mm、長さは1800mm、厚さは6mmであり、幅30mmの分割仕切り部分18で300mmピッチに区切られた6個の中空部16が設けられている。成形は射出成形法によった。成形原料樹脂はアクリルニトリル・スチレン樹脂であり、成形体の表面は水墨による筆記が可能である。また、原料樹脂に予め顔料を混入させることにより、木材に似た色の中空成形体を得ることができた。このようにして製作した卒塔婆10の外観や重さは従来の木製卒塔婆と同様であり、表面や裏面には水墨によって戒名や忌日を記すことができた。
【0031】本例の卒塔婆10を、図5(b)に示されるのと同様にして、下端から300mmの位置の楔状分割仕切り部分18で切断し、長さ1500mmの短尺卒塔婆11を得ることができた。また、下端から600mmの位置の分割仕切り部分18で切断し、長さ1200mmの短尺卒塔婆11を得ることができた。このようにして得られた短尺の卒塔婆11は、元の長尺卒塔婆10と同様に下端が尖っていて、従来の木製卒塔婆と類似していた。
【0032】
【発明の効果】本発明に係る卒塔婆によれば、プラスチック製なので低コストの大量生産が可能であり、耐久性に優れ、廃棄する時には焼却することなく再利用が可能である。また、発泡プラスチック又はプラスチック中空成形体を用いているので軽量であり、従来の木製と同様の感触を得ることができるし、原料コストを低減できる効果がある。また、卒塔婆の表面は水墨による筆記が可能なので、従来のしきたりどおりに戒名や忌日を記入することができる。
【0033】さらに、長さ方向に分割された中空部を卒塔婆内部に設ければ、その分割仕切り部分で切断することにより短尺の卒塔婆を製作することができる。その結果、1種類の長尺の卒塔婆だけを製造し在庫することにより、多種にわたる卒塔婆の注文に対応することができるので、成形金型投資負担の軽減、在庫保管スペースの縮小、運転資金の圧縮等々の効果を得ることができる。
【0034】さらに、上記の分割仕切り部分を楔状とし、その楔状に沿って切断し短尺の卒塔婆を製作すれば、下端が尖って土中に突き刺し易く作業性に優れ、従来の木製卒塔婆と類似した卒塔婆を得ることができるようになる。
【0035】さらにまた、発泡プラスチック又は中空成形体の原料を生分解性プラスチックとすれば、土中に廃棄することにより生分解されて無形となるので、霊が自然に帰ることにつながり、仏教本来の思想に合致した廃棄方法とすることができる。また、本廃棄方法によれば、焼却ガス等、環境汚染物を放出することがない。
【出願人】 【識別番号】598028383
【氏名又は名称】薮下 清史
【出願日】 平成10年(1998)3月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義 (外1名)
【公開番号】 特開平11−244131
【公開日】 平成11年(1999)9月14日
【出願番号】 特願平10−50229