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【発明の名称】 鋳造仏具
【発明者】 【氏名】渡辺 祐二

【要約】 【課題】受注後比較的単納期での納品が可能な識別標識付鋳造仏具の提供。

【解決手段】中空な鋳造仏具本体の底部9下面側に、当該鋳造仏具本体の中空部4へ連通した透孔5を具備する凹部1を設け、該凹部1の内部へ、表面に識別標識2を刻んだ刻印板3を、前記透孔5を封止し且つ載置する際の妨げとならない様に固着した鋳造仏具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳造仏具本体の底部(9)下面側に凹部(1)を設け、該凹部(1)の内部へ、表面に識別標識(2)を刻んだ刻印板(3)を、載置する際の妨げとならない様に固着した鋳造仏具。
【請求項2】 中空な鋳造仏具本体の底部(9)下面側に、当該鋳造仏具本体の中空部(4)へ連通した透孔(5)を具備する凹部(1)を設け、該凹部(1)の内部へ、表面に識別標識(2)を刻んだ刻印板(3)を、前記透孔(5)を封止し且つ載置する際の妨げとならない様に固着した鋳造仏具。
【請求項3】 中空な鋳造仏具本体の下開口部(6)に、下面側に凹部(1)を具備した封止板(7)を固着し、該凹部(1)の内部へ、表面に識別標識(2)を刻んだ刻印板(3)を、載置する際の妨げとならない様に固着した鋳造仏具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、出所識別標識が付された鋳造仏具、更に詳しくは、納期を短縮し得る識別標識の付し方が成された鋳造仏具に関する。
【0002】
【従来の技術】仏具には、各小売業者がデザインした完全なるオリジナル商品と、鋳造業者から複数の小売業者に配給されている既成商品が存在するが、オリジナル商品はもとより、既成商品にあってもそれぞれの小売業者のオリジナル性や差別性を高めるべく、出所小売業者を識別する為の識別標識(店名等)2が表示されているものが多い。そして、その表示態様も、高級感を高め、且つ手入れ等による消滅を防止する為に、図3の様に比較的目立たない底部の下面側に刻み込まれるのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来、この様に識別標識を付した仏具は、受注数量が予め推測できない為に、小売業者の発注から納品に至るまでに長期を要するという問題がある。即ち、例えば、表面に塗装が施された花瓶等の流通過程は、図9の如く小売業者から発注をうけた問屋の支持によって、鋳造業者が受注数量分の識別標識の刻印を行い、刻印が済んだ花瓶は、前記問屋を介して更に塗装業者へ送られ、その後、更に問屋を介して刻印・塗装を終えた製品が小売業者へ届けられるといった煩雑なものであった。又、刻印部分へ新たに塗装が施されることによって、識別標識の輪郭が不鮮明となり、識別性や高級感を損うという問題もあった。
【0004】本発明は、上記実情に鑑みて成されたものであって、受注後、比較的単納期での納品が可能な識別標識付鋳造仏具の提供を目的とする。尚、請求項1記載の鋳造仏具は、中空構造であるか否かを問わない。請求項2乃至請求項3記載の鋳造仏具にあっては、更に鋳造時における中子の支持位置の精度を高め、質の高い鋳造仏具を提供する事も目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためになされた鋳造仏具は、鋳造仏具本体の底部下面側に凹部を設け、該凹部の内部へ、表面に識別標識を刻んだ刻印板を、載置する際の妨げとならない様に固着したことを特徴とする。中空な鋳造仏具本体の底部下面側に、当該鋳造仏具本体の中空部へ連通した透孔を具備する凹部を設け、該凹部の内部へ、表面に識別標識を刻んだ刻印板を、前記透孔を封止し且つ載置する際の妨げとならない様に固着した鋳造仏具や、中空な鋳造仏具本体の下開口部に、下面側に凹部を具備した封止板を固着し、該凹部の内部へ、表面に識別標識を刻んだ刻印板を、載置する際の妨げとならない様に固着した鋳造仏具であっても良い。
【0006】鋳造仏具本体は、鋳造したままのものでも良いし、表面を切削加工したもの或いは付属部材を後付けしたものでも良く、その形態は、花瓶、香炉、蝋燭立て等特に限定するものではない。載置する際の妨げとならない様にする手段としては、固着後の刻印板の突出が原因でがたつき等が生じないような措置がほどこしてあれば良く、例えば、刻印板の厚みに比べて凹部を深くしたり、刻印板が突出しない高さの脚や糸底を設ける等すれば良い。刻印板の固着手段は特に限定するものでは無いが、接着剤を用いるのが最も低コストであろう。刻印板や封止板の形状も特に限定する必要性は無いが、刻印する際或いは固着する際の方向性を無視できる点、取り付け手段が豊富な点(螺合等)、打ち抜いた場合やプレスした際に不要な歪みが生じない点等で円形が最も好ましいと思われる。又、識別標識は、文字、図形又はそれらの組み合わせによって、小売業者等のイメージに合わせたものを用いれば良い。尚、底部とは、容器形状の鋳造物の底部分のみならず、例えば、仏像等の下面を構成する部分も含むものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明による鋳造仏具の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、鋳造仏具の一例としての真鍮を素材とした花瓶を示したものである。この花瓶は、上下端部及び中間部が膨出した有底筒状の回転体を呈し、図1(イ)の如く、底面に糸底状の隆起部8が設けられたものである。底面の隆起部8に囲まれた部分には、そこから更に陥没した凹部1が形成され、該凹部1には、小売業者等の識別標識2が刻設された刻印板(図4参照)3が接着剤にて固着されている。
【0008】当該花瓶の例にあっても、鋳造手段の違いによって底部9の態様が複数存在する。図7は、鋳造仏具本体たる花瓶本体10の周壁部11のみを鋳込んで成形し、前記凹部1が形成された封止板7を、別途打ち抜き成形やプレス成形を経て形成し、後に前記周壁部11の下開口部6へ封止板7を溶接等の手段を以て固着したものである。鋳造にあたっては、外型内に中子を浮かして設置し、当該中子の上下を、完成した花瓶本体10の上下開口部6,12に相当する箇所を通じてそれぞれ支持した上で、当該外型と中子との空隙に溶湯を鋳込むといった手法を採る。そして、その様に成形された鋳造物に対し、旋盤等による外面の切削を以て仕上げ成形を施し、更に、当該花瓶本体10の周壁部11への塗装工程と、前記封止板7を固着する工程を経て、図7に示す底部9の断面形状を持った花瓶本体10が完成する。この成形方法によれば、前記の如く中子の上下が支持されることによって、外型内部における中子の支持状態が安定し、成形された花瓶本体10の肉厚を正確に設定することができるが、花瓶の封止板7を後付けしなければならない煩雑さと、花瓶本体10における周壁部11と封止板7との接合部の見栄えの悪さが問題となる場合もある。尚、この例においては、封止板7をその表面が周壁部11の下端部から没した状態で固着することにより、当該封止板7の回りに糸底状の隆起部8が形成される。
【0009】図5は、孔が開いていない底板13を周壁部11と一体に鋳込んで成形したものであり、例えば、特開平7−80626号公報に開示されているように、外型内に、完成した花瓶本体10の上開口部12に相当する箇所のみを通じて支持された中子を、外型の内面より浮かして、吊り下げた状態で設置し、外型と中子との空隙に溶湯を鋳込むといった手法で成形するものである。そして、この様に成形された鋳造物に対し、旋盤等による外面の切削を以て仕上げ成形を施し、更に前記糸底状の隆起部8及び凹部1の穿設工程と、当該花瓶本体10の前記凹部1を除く領域への塗装工程を経て、図5に示す底部9の断面形状を持った花瓶本体10が完成する。この成形方法によれば、花瓶本体10の完成後に底部9へ封止板7を固着する工程等が省かれる反面、中子の設置状態によっては、外型内での底部9における中子の支持状態が不安定な為に、成形された花瓶本体10の肉厚の正確さに不安が残る場合もある。
【0010】図6は、中空部4へ連通する透孔5が形成された底板14を周壁部11と一体に鋳込んで成形したものであり、外型内に中子を浮かして設置し、当該中子の上下双方を、完成した花瓶本体10の上開口部12及び前記透孔5に相当する箇所を通じて支持した上で、当該外型と中子との空隙に溶湯を鋳込むといった手法で成形するものである。そして、先と同様に成形された鋳造物に対し、旋盤等による外面の切削を以て仕上げ成形を施し、更に前記糸底状の隆起部8及び凹部1の穿設工程と、当該花瓶本体10の前記凹部1を除く領域への塗装工程を経て、図6に示す底部9の断面形状を持った花瓶本体10が完成する。この成形方法によれば、花瓶本体10の完成後に封止板7を固着する工程等が省かれ、同時に、前記の如く中子の上下が支持されることによって、外型内部における中子の支持状態が安定し、成形された花瓶本体10の肉厚を正確に設定することができる。しかも、完成した花瓶本体10の透孔5は、前記刻印板3を固着することによって、強固に封止することができるので、当該製造法によって製造上の手間が増えることも無い。
【0011】真鍮製の仏具本体に対しては一般的に真鍮製の刻印板を用いるが、刻印板における識別標識の刻設態様としては、所定の形(この例においては円盤状)に打ち抜いた基板15の表面に、識別標識を構成する線の輪郭に沿った溝を刻み込んでも良いし、識別標識を構成する線の中央に沿った溝を刻みこんでも良い。鋳造仏具本体の凹部1へ固着した後の見栄えや、リサイクル性、及び固着する際の便宜上、基板15には塗装を施さない方が望ましい。又、当該刻印板3を固着する際には、刻印板3の厚みと凹部1の深さをほぼ等しく設定し、或いは、刻印板3の形状・サイズを凹部1の形状・サイズとほぼ等しく設定することが望ましく、そうすることによって、刻印板3とその周囲との視覚的一体性が高まって見栄えが良いのみならず、固着状態を維持する上でも都合が良いこととなる。
【0012】上記の如く構成された鋳造仏具であれば、小売業者へ納入されるまでの流通過程が簡素となり、例えば図8(イ)の如く問屋において塗装済み花瓶本体10の在庫を確保することができ、受注数量が決まった時点で鋳造業者から識別標識が刻設された刻印板3を納入し、それを花瓶本体10の凹部1へ接着するという作業を経るだけで小売業者へ速かに納品することができる。その他、塗装済み花瓶本体12を鋳造業者において在庫し、受注数量が決まった時点で当該鋳造業者において直ちに刻印板3を花瓶本体10に接着し、問屋を経て小売業者へ納品するといった図8(ロ)に示す流れもあるし、問屋を通すことなく小売業者と鋳造業者間で取引するなど、その流通態様は多様であるが、どの様な流通経路を採ったとしても、刻印板3を固着する作業を残すだけの態様で花瓶本体10の在庫を保持することができる点は、受注後における塗装業者など中間加工業者の介在を省き、納期を短縮する際の大きな助けとなる。尚、在庫として保持する商品は、複数の顧客(小売業者)共通の既成商品を原則とするので、当該鋳造仏具の流れが停滞するといったことも生じ難い。
【0013】識別標識を付すべく刻印板3を固着するという手段は、花瓶以外の鋳造仏具へも採用することができ、いかに大きな仏具であっても識別標識、即ち、識別標識を刻んだ刻印板3の大きさは一種類で足りる場合がほとんどであるから、塗装された物、塗装されていない物を問わず、主要な既成商品本体の在庫を刻印板3を付す作業を残すだけの態様で在庫しておき、更に主要顧客たる小売業者の刻印板3を所定数量在庫しておけば、納期を更に短縮することができる。又、前記従来の鋳造仏具と比較した刻印時における作業性にあっても、種々形態が異なる仏具本体に直接刻印を施す必要が無く、基板という定型物に刻設する作業であるからその作業も極めて容易となる。尚、上記の如く刻印板3の製造コストは、鋳造仏具本体と比べてごく安いので、在庫保持によるコストは、納期短縮による利益と比較して問題とはならず、在庫が不要となった場合であっても、識別標識を刻み込んだだけのものであれば異物が混入していないので、溶解再利用が容易に行える。
【0014】
【発明の効果】以上の如く本発明による鋳造仏具であれば、刻印された製品を在庫として大量に保持することは敬遠されるものの、複数の顧客に共通の既成商品や比較的安価な刻印板を在庫として保持することに対する抵抗感は比較的小さいことから、中間加工に要する期間や刻印に要する期間が削減されて受注後速やかに小売業者へ納品できることとなる。又、凹部の内部に刻印板を固着してあるので、視覚的に周囲との一体性が高まり、別部材を付着したという印象を受けにくい他、刻印部分へ新に塗装が施されることによって、識別標識の輪郭が不鮮明化することもなくなり、シャープな刻印によって、識別性や高級感を高めるという効果も期待できる。
【0015】又、請求項2及び請求項3記載の鋳造仏具は、鋳造時において中子の上下を外型の内部へ正確に、且つ確実に支持できる構造であるから、各部の肉厚が所定の肉厚に設定された精巧なものとなる。殊に請求項2記載の鋳造仏具は、前記の如く支持する際に用いた透孔を、刻印板の固着と同時に封止することができるので、請求項3のものに比べて製造工程が簡素となる。
【出願人】 【識別番号】591039986
【氏名又は名称】渡辺鋳造株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
【公開番号】 特開平11−128059
【公開日】 平成11年(1999)5月18日
【出願番号】 特願平9−294329