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【発明の名称】 耐食鏡およびその製造方法
【発明者】 【氏名】林 健一

【要約】 【課題】従来の鏡に比べ、より優れた耐縁しけ性能を得ること。

【解決手段】ガラス板裏面に反射金属層を、その上に裏止め塗膜を積層形成した鏡において、前記ガラス板裏面周縁部から端面にかけて斜断した傾斜面を形成し、前記裏面に対する傾斜面の傾斜角度を5〜15°の範囲とし、かつ該傾斜面に露呈した反射金属層を覆うべく、裏止め塗膜周縁部から前記傾斜面にかけて縁塗り塗膜を形成し、前記露呈した反射金属層上の縁塗り塗膜Yの厚みを60μm 以上、但し縁塗り塗膜の最大膜厚部Xの膜厚を 170μm 以下とした耐食鏡、およびその製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ガラス板裏面に反射金属層を、その上に裏止め塗膜を積層形成した鏡において、前記ガラス板裏面周縁部から端面にかけて斜断した傾斜面を形成し、前記裏面に対する傾斜面の傾斜角度を5〜15°の範囲とし、かつ該傾斜面に露呈した反射金属層を覆うべく、裏止め塗膜周縁部から前記傾斜面にかけて縁塗り塗膜を形成し、前記露呈した反射金属層上の縁塗り塗膜Yの厚みを60μm 以上、但し縁塗り塗膜の最大膜厚部Xの膜厚を 170μm 以下としたことを特徴とする耐食鏡。
【請求項2】傾斜面の傾斜角度を7〜13°としたことを特徴とする請求項1記載の耐食鏡。
【請求項3】縁塗り塗膜Yの厚みを80μm以上としたことを特徴とする請求項1または2記載の耐食鏡。
【請求項4】ガラス板裏面に反射金属層を、その上に裏止め塗膜を積層形成した鏡の製造方法において、前記ガラス板裏面周縁部から端面にかけて斜断した傾斜面を湿式研磨により形成し、前記裏面に対する傾斜面の傾斜角度を5〜15°の範囲とし、かつ該傾斜面に露呈した反射金属層を覆うべく、裏止め塗膜周縁部から前記傾斜面にかけて縁塗り塗膜を塗装ローラーにより形成し、硬化させることにより前記露呈した反射金属層上の縁塗り塗膜Yの厚みが60μm 以上、かつ縁塗り塗膜の最大膜厚部Xの膜厚が 170μm 以下の塗膜を形成することを特徴とする耐食鏡の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス板片面裏面側の反射金属層の上に裏止め塗膜を施した鏡に関し、更に前記裏面周縁部の傾斜面に縁塗り塗膜を施した耐食鏡に関する。
【0002】
【従来技術および解決すべき課題】鏡は、縁塗り塗膜を施さない場合、通常の環境下においても、鏡の端面の反射金属層の露呈部が、大気中の水蒸気、その他の酸性ガス等の微量有害成分により腐食され、いわゆる縁しけが生ずる。それを防ぐためには、縁塗り塗膜を施すことが不可欠である。
【0003】しかし、特に、浴室や温泉浴場等の壁面に取付けられる鏡には、酸性あるいはアルカリ性のタイル洗剤などの薬品を含む液体が付着する恐れがあり、また温泉中の塩化物、硫化物、その他の有害成分により、前記縁塗り塗膜を通じて金属層が侵される。
【0004】本出願人の先の出願にかかる特開昭49−115115号には、ガラス板面に、鍍銀し、更に保護層を設けた鏡の裏面周縁を斜断し、該斜断面および鏡裏面にわたり耐食合成樹脂膜(フィルム)を熱溶着させた防食鏡を開示し、前記鏡裏面に対する傾斜角度を15°とし、耐食合成樹脂フィルムの膜厚を20μm とすることを例示した。
【0005】また、本出願人の先の出願にかかる特開昭48−95849 号には、鏡面裏面周縁を鏡面に対し30°以下で銀膜が露出するごとくした斜断面にシランカップリング剤塗布層を施し、該塗布層と鏡裏面にわたり耐食合成樹脂塗膜を形成した耐食鏡を開示し、前記鏡裏面に対する傾斜角度を15°とし、耐食合成樹脂塗膜の膜厚を73μm (出願人注:この場合、裏止め塗膜部を含めた最大の塗膜厚を示し、銀膜露出部からの膜厚は50μm 以下である)とすることを例示した。しかし、近年使用者の鏡の耐食性を更に改善することに関する要求が高まっており、従前の縁塗り技術では満足し得ないものとなっている。
【0006】本発明は、それら従来技術の不具合に鑑み、より耐縁しけ性を改善した耐食鏡を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガラス板裏面に反射金属層を、その上に裏止め塗膜を積層形成した鏡において、前記ガラス板裏面周縁部から端面にかけて斜断した傾斜面を形成し、前記裏面に対する傾斜面の傾斜角度(以下裏面取り角度という)を5〜15°の範囲とし、かつ該傾斜面に露呈した反射金属層を覆うべく、裏止め塗膜周縁部から前記傾斜面にかけて縁塗り塗膜を形成し、前記露呈反射金属層上の縁塗り塗膜Yの厚みを60μm 以上、但し縁塗り塗膜の最大膜厚部Xの膜厚を 170μm 以下とした耐食鏡である。
【0008】更に、前記傾斜面の傾斜角度を7〜13°とすること、加えて縁塗り塗膜Yの厚みを80μm 以上とするのが好ましい。
【0009】また本発明は、ガラス板裏面に反射金属層を、その上に裏止め塗膜を積層形成した鏡の製造方法において、前記ガラス板裏面周縁部から端面にかけて斜断した傾斜面を湿式研磨により形成し、前記裏面に対する傾斜面の傾斜角度を5〜15°の範囲とし、かつ該傾斜面に露呈した反射金属層を覆うべく、裏止め塗膜周縁部から前記傾斜面にかけて縁塗り塗膜を塗装ローラーにより形成し、硬化させることにより前記露呈した反射金属層上の縁塗り塗膜Yの厚みが60μm 以上、かつ縁塗り塗膜の最大膜厚部Xの膜厚が 170μm 以下の塗膜を形成する耐食鏡の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は鏡(耐食鏡)1の部分側断面図を示したもので、ガラス板2としては、ソーダ石灰系ガラスをはじめとするアルカリ・苦土石灰・珪酸系ガラス、アルミノ珪酸系ガラス、硼珪酸系ガラス等、各種成分組成のガラスが適用され、その厚みは1mm前後から十数mm程度まで多様であるが、室内、浴室(浴場)内に据付けられる鏡は5mm前後のものが多い。
【0011】ガラス板2すなわち鏡1の裏面側には、通常銀膜および該銀膜を保護する銅膜からなる反射金属膜(図示において銀+銅)3が施され、その厚みは 100nm前後である。なお、反射金属膜3は、反射映像を顕現するために、銀以外にアルミニウム、鉛その他の金属やそれら複合金属が採用でき、保護金属膜は、いわゆる低級鏡においては施さないケースもあるが、前記銀等の金属膜の腐食を抑制するうえで、銀等の金属膜上に施すもので、銅以外にクロム、ニッケルその他の金属やそれら複合金属が採用できる。
【0012】裏止め塗膜4は、前記反射金属膜3の鏡裏面側からの腐食を抑制するために、反射金属膜上に設ける塗膜で、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等各種耐食性樹脂に、酸化鉄、酸化亜鉛、鉛化合物その他の耐食顔料、および各種充填剤を混入した塗料からなる塗膜を設けるものである。
【0013】鏡1の裏面周縁部は、該裏面から端面にかけて、切削研磨し斜断して、傾斜面5を形成する。前記斜断の最大の目的は、鏡端面に露出した反射金属膜3a を保護被覆するうえで、被覆操作を容易にするためである。
【0014】前記傾斜面5の鏡裏面に対する傾斜角度、すなわち裏面取り角度αは、各製鏡、鏡加工企業とも、従来より面取り加工の容易さ等を勘案して20°程度としたものを実施している。縁塗り用塗料としては、ウレタン系、ポリエステル−ウレタン系、ポリエーテル−ウレタン系、エポキシ系、エポキシ−ウレタン系等が採用できる。縁塗り手段としては、塗装ローラーによる塗布が一般的であるが、それに限らない。縁塗り後は 150℃以下での加熱乾燥、または自然乾燥により塗膜形成する。
【0015】縁塗りは裏止め塗膜4の周縁部から傾斜面5にかけて数mmから10mm以下の幅で行い、縁塗り塗膜6を形成するもので、該縁塗り塗膜6は図示の如く裏止め塗膜上の位置X(以下最大部という)において最大膜厚を示す。従来、‘膜厚’とは前記最大部Xの膜厚をいうが、先述の傾斜面に露呈した反射金属層3a の上の縁塗り塗膜Y(以下肝要部という)の膜厚の厚いことが肝腎である。すなわち、裏止め塗膜に限らず樹脂硬化膜は、寡少とはいえ薄膜であるほど通気性が増大し、水蒸気や有害ガスが塗膜を介して反射金属膜に影響を及ぼし、縁しけを発生するので、厚膜である方がよく、肝要部Yの膜厚を最低60μm 以上、より好ましくは80μm 以上とするものである。他方最大部Xの膜厚を必要以上に厚膜とすると、縁塗り後の硬化における塗料中の溶剤の揮散に際して、気泡が残留したり塗膜表面の破れ泡が発生し、該部から水蒸気や有害ガスが侵入し、ひいては反射金属膜に影響を及ぼし易くなるばかりでなく、外観を阻害するので、 170μm 以下とする。
【0016】前記膜厚範囲を得るうえで、裏面取り角度αを20°とした場合は、塗装ローラーによる塗布によれば最大部Xの膜厚に対し、肝要部Yの膜厚は40%未満であり、肝要部Yが効果的に塗布されていないことが分かる。これに対し、例えば裏面取り角度を10°とした場合、最大部Xに対する肝要部Yの膜厚は90%程度に達し、良好に膜形成できる。
【0017】また前記裏面取り角度20°のケースにおいて、例えば肝要部Yの膜厚 100μm程度を得ようとすれば、最大部Xの膜厚は 300μm 以上を必要とし、それは、鏡のコバ面7への塗料の垂れを目立たさせ、また塗料の硬化における塗料中の溶剤の揮散に際して、気泡が残留したり塗膜表面の破れ泡が発生し、該部から水蒸気や有害ガスが侵入し、反射金属膜に影響を及ぼし易くなり、また外観を阻害することとなる。
【0018】すなわち、裏面取り角度αは5°ないし15°とするのがよく、15°を越えると最大部Xに対する肝要部Yの膜厚が60%未満となって、効率的な膜形成ができず、肝要部Yに充分な膜厚を得ようとすれば、最大部Xの膜厚も増大して気泡が残留したり塗膜表面の破れ泡が発生したりする。
【0019】裏面取り角度αを5°未満であると、湿式研削、研磨による斜断面形成に際して、該斜断面とコバ面7との角部8においてハマ欠けが生じ易くなる。好適には裏面取り角度αは7°〜13°の範囲とするのがよい。
【0020】
【実施例】
<<実施例1>>〔試料作製〕5mm厚のソーダ石灰系ガラス素板に常法により銀層、銅層からなる反射金属層( 100nm厚)を形成し、更にその上にアルキッド樹脂に耐食顔料、充填剤等を混入した裏止め塗料を膜付けし加熱(最大 150℃)、硬化させて裏止め塗膜(50μm 厚)を形成し、それをサイズ20cm×40cmに切断して多数の鏡試料を準備した。
【0021】試料裏面周縁部から端面にかけて湿式研削し、研磨仕上げ(レジン中に#500のダイヤモンド粒を埋入した‘レジンダイヤ’による)して、夫々裏面取り角度αを、5°、 7.5°、10°、12.5°----20°にした。
【0022】更にエポキシ系樹脂原液(樹脂分 100重量部に対し、カップリング剤1重量部、トルエンを主剤とするシンナー25重量部)に、エーテル系、エステル系、ケトン系等からなる混合溶媒、および皮膜形成剤、たれ防止剤等その他の添加剤を加え、樹脂原液63〜70wt%、混合溶媒35〜28wt%、その他添加剤2〜3wt%の範囲で縁塗り塗料を調製し、それを塗装ローラーにより5mm幅、各種膜厚で塗布した。膜厚は硬化後の最大部膜厚Xをベースとするもので、夫々 200μm 、 175μm、 150μm ---- 100μm とした。
【0023】〔外観観察および膜厚測定〕肝要部Yの膜厚は試料の一部を破断し、断面を鏡下観察し、測定した。ハマ欠けの有無については、鏡を面取り、研磨仕上げ後、縁塗りする前の試料について角部8をルーペにより観察し、鏡の品質上問題となるハマ欠け(直径2mm以上)が1カ所でも存在する場合を×、直径2mm未満ではあるがハマ欠けの存在が認められるものを△、明瞭なハマ欠けが観察されないものを○で評価した。
【0024】縁塗り塗膜形成後の試料について、該塗膜のコバ面への垂れが明瞭(5mm以上)で、外観上問題となるものを×、垂れが5mm未満、 1.8mm以上のものを△、垂れが 1.8mm未満で全く問題とならないものを○で評価した。
【0025】更に縁塗り塗膜をルーペにより観察し、気泡(内部気泡)において、直径 1.5mm以上の気泡が内在するものを×、直径 1.5mm未満、 0.5mm以上の気泡が内在するものを△、直径 0.5mm未満の気泡が内在し、または気泡の存在が認められないものを○に、表面破れ泡(ワキと称する)において、直径 1.5mm以上のワキが存在するものを×、直径 1.5mm未満のワキが存在するものを△、ワキの存在が認められないものを○として評価した。
【0026】〔耐縁しけ試験(1)−耐温水+耐塩酸浸漬試験〕試料を温水槽内の60℃の上水に10日間浸漬後、温水槽より取出し、更に塩酸槽内の30℃、1 vol%の塩酸溶液に3日間浸漬した。その後試料を取出し、水洗浄後、縁しけの発生状況を観察した。
【0027】縁しけは鏡端面から鏡中央部に向けての侵食深さ(長さ)により評価し、侵食値が2mm以上のものを×、2mm未満のものを△、侵食が認められないものを○として評価した。
【0028】〔耐縁しけ試験(2)−カビキラー原液浸漬試験〕20cm×40cm試料の下辺(短辺)より20cm高さにわたり、ジョンソン株式会社製、商品名‘カビキラー’(塩素分含有アルカリ性液)の原液に20℃下 120日間浸漬し、その後取出して縁しけの発生状況を観察した。縁しけは鏡端面からの鏡中央部に向けての侵食深さ(長さ)により評価し、侵食値が2mm以上のものを×、2mm未満、1mm以上のものを△、1mm以下ないし侵食が認められないものを○として評価した。
【0029】〔総合評価〕上記各測定、試験において、○のみの評価を○に、○に一部(1項目)△に評価されたものを○△に、△のみ、または一部○に評価されたものを△に、一部でも×に評価されたものを×に評価した。なお、○は良好、△は良好ではないが容認できる範囲、×は不可と判断される。各条件および結果を表1および表2に示す。
【0030】<<実施例2>>実施例1同様の製法、手段で鏡試料を作製した。但し縁塗り塗料としてウレタン系樹脂原液(樹脂分 100重量部に対し、カップリング剤1重量部、キシレン、トルエンを主剤とするシンナー25重量部)に、エーテル系、エステル系、ケトン系等からなる混合溶媒、および皮膜形成剤、たれ防止剤等その他の添加剤を加え、樹脂原液60〜65wt%、混合溶媒38〜33wt%、その他添加剤2〜3wt%の範囲で調製し、それを塗装ローラーにより実施例1同様に塗布した。
【0031】更に実施例1同様に外観観察および膜厚測定、耐縁しけ試験を行い、評価した。それら条件および結果を表3に示す。
【0032】〔結果〕縁塗り塗膜成分によって若干の相違はあるが、類似した結果を得た。裏面取り角度αが5°の鏡試料は、肝要部Yの膜厚が、最大部Xの膜厚に近似し、本発明の膜厚範囲において耐縁しけ性も極めて良好である。但しいずれも面取り研削時に、角部8に微細な欠けが生じ易い。また、傾斜面5の幅が長い分、縁塗り塗膜の幅も広くなり、塗料使用量も多くなる。
【0033】裏面取り角度αが 7.5〜12.5°の鏡試料は、肝要部Yの膜厚が、最大部Xの膜厚に対し80%付近、またはそれ以上と良好であり、研削時の角部の欠けもなく、本発明の範囲において耐縁しけ性も極めてよい。
【0034】裏面取り角度αが15°の鏡試料は、肝要部Yの膜厚が、最大部Xの膜厚に対し約60%以上と満足し得るものであり、本発明の範囲において耐縁しけ性もよい。本発明の裏面取り角度α、縁塗り塗膜の膜厚範囲XおよびYを外れるものは、概して外観、または耐縁しけ性において劣っており、本発明範囲において良好な結果を得たことが明瞭である。
【0035】なお、裏面取り角度17.5°以上のものは、一部総合評価において○△ないし△に評価されるものもあるが、肝要部Yの膜厚が、最大部Xの膜厚の50%前後、ないしそれ以下であり、縁塗り効率が悪いことをあらわす。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【発明の効果】本発明によれば、耐縁しけ性において良好な結果を示し、耐食鏡として過酷な環境条件下においても、長期に亘りしけ発生を抑制できるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月31日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
【公開番号】 特開平11−128041
【公開日】 平成11年(1999)5月18日
【出願番号】 特願平9−299796