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【発明の名称】 マネキン関節機構
【発明者】 【氏名】山崎 信寿

【要約】 【課題】関節部の隙間やしわを防止し、屈曲及び伸展に伴う人体に近い自然な形状変化を再現することができるマネキン関節機構を提供する。

【解決手段】例えば膝関節30Bの場合、屈曲及び伸展に伴う人体の関節の外形に合わせて採取した多数の関節板33b,33cにより、上関節部である大腿部21側に取付けられる関節部30B1と、下関節部である下腿部22側に取付けられる関節部30B2と構成し、上下の関節板33b,33cを交互に重ね合わるとともに、これら上下の関節板33b,33cを屈曲及び伸展に伴う人体の回転軸に対応させて回動自在に連結し、それぞれの関節板33b,33cの曲面33b1,33c1により人体の関節部分の形状変化を表現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 多数の薄板を櫛状に並列させてなる第1の関節と、多数の薄板を櫛状に並列させてなる第2の関節とを備え、前記第1の関節の各薄板は、前記第2の関節の各薄板と隙間なく咬合わされているとともに、前記第1の関節と第2の関節との咬合い部分が回動自在に連結されていることを特徴とするマネキン関節機構。
【請求項2】 前記第1の関節及び第2の関節の各薄板は、回動により、人体の関節の屈曲に伴う関節部分の外形形状の変化を模擬してなることを特徴とする請求項1に記載のマネキン関節機構。
【請求項3】 前記第1の関節及び第2の関節の各薄板は、関節角度毎に伴って咬合わせ部分から現れる薄板端面形状を人体関節輪郭形状に合わせ、それを滑らかな包絡線で結んだ形状にすることにより、屈曲及び伸展運動時に現れる人体の関節部分の筋膨隆や腱の張り等の形状変化を模擬するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のマネキン関節機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として、■いす,ベット等の開発、衝突安全等の人間工学分野、■衣料展示等のアパレル分野、■患者看護教育等の医療分野において、代用とされるマネキンに関し、特に可動関節部分を人体に近づけたマネキン関節機構に関する。
【0002】
【従来の技術】人体の代用とされるマネキンは、人体に近い動きや姿勢をとらせるために開発されたものであり、その関節部分に、球関節やヒンジ関節等を用いている。
【0003】図23は、球関節を用いたダミーの一例を示すものである。同図に示すダミーは、頭部1、胴体部2、上腕部3、前腕部4、大腿部5、下腿部6、足部7の7部分から構成されている。また、胴体部2と上腕部3との間、上腕部3と前腕部4との間、胴体部2と大腿部5との間、大腿部5と下腿部6との間、下腿部6と足部7との間には、それぞれ球関節8a〜8eが設けられており、これらの球関節8a〜8eによって各部が人体に近い動きを行うようになっている。
【0004】ちなみに、このような球関節8a〜8eを用いて各部の姿勢を保持させる機構を用いたものとして、例えば特開平5−60358号公報に示されるマネキンの関節が知られている。これは、菊座保持構造の相対向する部材を付勢力に抗して離間するとともに、マネキン構成部材を所望の位置関係にし付勢力にまかせて相対向する部材の菊座同士を歯合することで、位置関係が強固に保持され、マネキン構成部材が所望の角度及び方向に開いた姿勢を保持するものである。
【0005】また、上記のヒンジ関節を用いたダミーの一例として、図24に示すものがある。同図に示すダミーは、頭部9、胸部10、腹部11、上腕部12、前腕部13、大腿部14、下腿部15、足部16の8部分から構成されている。また、各頭部9と胸部10との間、胸部10と腹部11との間、胸部10と上腕部12との間、上腕部12と前腕部13との間、腹部11と大腿部14との間、大腿部14と下腿部15との間、下腿部15と足部16との間には、それぞれヒンジ関節17a〜17gが設けられており、これらのヒンジ関節17a〜17gによって各部が人体に近い動きを行うようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の剛体によるダミーでは、球関節8a〜8e及びヒンジ関節17a〜17gによって各部が人体に近い動きを行うようになってはいるが、これら球関節8a〜8e及びヒンジ関節17a〜17g部分は各部を屈曲させたとき、これら球関節8a〜8e及びヒンジ関節17a〜17g部分に大きな隙間が生じてしまうという問題がある。さらに、人体の各部の間を単に、球関節8a〜8e及びヒンジ関節17a〜17gで連結しているだけであるので、関節の屈曲及び伸展する際の各関節角度において人体に近い自然な形状変化を再現することができないという問題があった。このため、例えば、大腿部14、下腿部15及び足部16にストッキングを装着して、屈曲及び伸展を繰り返すストッキング適合評価試験を行うような場合には、関節部の隙間等のより、ストッキングが噛み込んでしまい、試験が行うことができないという問題がある。また、隙間が生じないように、柔軟素材によりマネキンの表面を被覆したとしても、屈曲時に皮膚表面の伸縮量が約4〜6cm程度生じるため、この伸縮量を吸収することが困難であり、さらに、屈曲時及び伸展時にしわ、たるみが生じるという問題がある。
【0007】本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたもので、本発明は、屈曲及び伸展に伴う大伸縮による隙間やしわ、たるみの発生を防止することができるマネキン関節機構を提供することを目的とする。さらに、屈曲及び伸展に伴う人体に近い自然な形状変化を再現することができるマネキン関節機構を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するため、本発明の請求項1のマネキン関節機構は、多数の薄板を櫛状に並列させてなる第1の関節と、多数の薄板を櫛状に並列させてなる第2の関節とを備え、前記第1の関節の各薄板は、前記第2の関節の各薄板とを隙間なく咬合わされているとともに、前記第1の関節と第2の関節との咬合い部分が回動自在に連結されていることを特徴としている。前記櫛状とは、隣接する前記薄板が所定の間隔をあけて、前記薄板の片側が相互に固定されている状態であれば良い。このため、隣接する前記薄板を各々固定するようにしても良いし、また、一体成形により櫛状とするようにしても良い。ここで、前記薄板は、剛性が保持できる程度の厚みを有する必要がある。前記第1の関節の薄板の厚みは、第2の関節の各薄板間に隙間なく咬み合えば、一定でなくても良い。前記第2の関節の薄板の厚みも同様である。薄板の厚みは、約1〜6mm程度が望ましい。なお、前記第1の関節及び第2の関節の薄板は、各約6枚以上とするのが実用的である。また、前記薄板は、相互に摩擦抵抗が生じず、回動時に滑りが良いことが必要である。例えば、材質としては、発泡塩化ビニル等が軽量で、剛性があり且つ滑りが良いので望ましい。
【0009】かかる構成により、前記第1の関節及び前記第2の関節の多数の薄板とが隙間なく咬合わされていることにより、隙間が分散されるため、大きな隙間が生じることがない。
【0010】また、請求項2の発明は、前記第1の関節及び第2の関節の各薄板が、回動により、人体の関節の屈曲に伴う関節部分の外形形状の変化を模擬してなることを特徴としている。人体の関節部分は、屈曲及び伸展に応じて形状変化を伴う。そこで、人体の関節部分を屈曲面(いわゆる矢状面)に平行に切断した状態の多数の薄板を用いることで、第1の関節及び前記第2の関節を屈曲及び伸展に応じて回転させることにより、それぞれの関節板に人体の屈曲及び伸展に伴っておこる形状変化に応じた曲面を形成することができる。
【0011】さらに、請求項3の発明は、前記第1の関節及び第2の関節の各薄板は、関節角度毎に伴って咬合わせ部分から現れる薄板端面形状を人体関節輪郭形状に合わせ、それを滑らかな包絡線で結んだ形状にすることにより、屈曲及び伸展運動時に現れる人体の関節部分の筋膨隆や腱の張り等の形状変化を模擬するようにしたことを特徴とする。人体の関節部分の皮膚表面の輪郭は、屈曲及び進展運動に伴う筋膨隆や腱の張りの変化等により、関節角度毎に形状が変化する。そこで、前述の第1の関節及び第2の関節の薄板の咬み合わせ側の外形端面の輪郭が関節の屈曲或いは伸展によって、咬み合わせ部分から徐々に現れることを利用し、関節角度毎に、各薄板を、人体関節部の輪郭形状に合わせ、それを滑らかな包絡線形状とすることにより、形状変化を模擬することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明のマネキン関節機構の一実施の形態に係るマネキンを正面から見た状態を示す模式図、図2は、図1のマネキンを示す側面図である。
【0013】これらの図に示すマネキンの下肢部は、腰部20、大腿部21、下腿部22、足部23とから構成されている。また、これら腰部20と大腿部21との間、大腿部21と下腿部22との間、下腿部22と足部23との間は、股関節30A,膝関節30B,足関節30Cによって屈曲自在とされている。さらに、膝関節30Bは、関節部30B1(第1の関節)と関節部30B2(第2の関節)とからなり、足関節30Cは、関節部30C1(第1の関節)と関節部30C2(第2の関節)とからなる。なお、股関節30Aは、ここでは、単一の関節としている。
【0014】また、各股関節30A,膝関節30B,足関節30Cに設けられているアングル31aと31bとの間、アングル31cと31dとの間は、アルミパイプ32a及び32bによって連結されている。さらに、股関節30Aのアングル31aには、第2の関節としての多数の関節板33aが長ネジ31eによって櫛状に、所定の間隔を空けて、互いに対向して並列させて固定されている。
【0015】膝関節30Bのアングル31b及び31cには、第1の関節の薄板としての多数の関節板33b及び第2の関節の薄板としての多数の関節板33cが長ネジ31eによって櫛状に所定の間隔を空けて、互いに対向して並列固定されている。足関節30Cのアングル31d及び31eには、第1の関節の薄板としての多数の関節板33d及び第2の関節板の薄板としての多数の関節板33eが長ネジ31eによって櫛状に、所定の間隔を空けて、互いに対向して並列させて固定されている。
【0016】ところで、関節板33a〜33eは、薄板からなるが、剛性が保持できる程度の厚みを有する必要がある。前記第1の関節となる関節の関節板(薄板)33b、33dの厚みは、第2の関節となる関節の関節板(薄板)33c、33eに隙間なく咬み合えば、一定でなくても良い。前記第2の関節の関節板33c、33eの厚みも同様である。例えば、関節板33a〜33eは、約1〜6mm程度が望ましい。なお、関節板は、6枚以上とするのが実用的である。なお、これら多数の関節板33a〜33eは、発泡塩化ビニル板からなり、人体の関節部の屈曲に伴う関節の外形形状の変化を模擬したものであるが、その詳細については後述する。材質としては、発泡塩化ビニルを使用しているが、軽くて、剛性があり滑りがあるものであれば、他の材質であっても良い。
【0017】ここで、本実施の形態のマネキン関節機構を有するマネキンの下肢部の製造方法を、以下に説明する。
1)マネキン外形モデルを成形する。この工程では、モニターからの型取り行い、この型に石膏を流し込んで石膏マネキンを完成させ、この石膏マネキンからシリコンによって中空のマネキンの下肢部のプラスチックモデルを完成させる。ここで、モニターとしては、20代の標準体型に近い女性としている。なお、マネキン外形モデルは、プラスチックのような非弾性体だけではなく、弾性素材からなる弾性体により成形するようにしても良い。
2)完成したプラスチックモデルの腰部20と大腿部21との間、大腿部21と下腿部22との間、下腿部22と足部23との間である関節部分に相当する箇所を切断する。
【0018】3)第1の関節及び第2の関節である関節板33a〜33eを製作する。
4)アングル31a〜31eに、それぞれ対応する関節板33a〜33eを固定した後、第1の関節と第2の関節とを咬合わせて連結し、各股関節30A,膝関節30B,足関節30Cを完成させる。
5)2)で切断したそれぞれの箇所に、股関節30A,膝関節30B,足関節30Cをアルミパイプで連結し、プラスチックモデルの外形を保持させて、マネキンの下肢部を完成させる。なお、関節機構には、柔軟素材を被覆して使用しても良い。
6)マネキンの下肢部の腰部20の上端側を図示しない枠体に吊り下げる。
7)使用に際しては、マネキンの足部23を上下動させ、人体の屈曲状態を模擬する。
【0019】ところで、上記の股関節30Aにおける運動には、屈曲伸展、外転内転、外旋内旋の3自由度があるが、本実施の形態では、屈曲、伸展に着目し、股関節30Aを屈曲運動に適した構造としている。ここで、股関節30Aは、大腿骨頭中心に対応させて、図1及び図2のように、アルミパイプ32cにより回動自在に支持している。
【0020】また、膝関節30Bにおける運動には、屈曲伸展と回旋運動とがあるが、本実施の形態では、屈曲、伸展に着目し、膝関節30Bを屈曲運動に適した構造としている。すなわち、人体の大腿骨果を前額面に対し水平に貫いた位置に対応させて、図1及び図2のように、膝関節30Bを長ネジ32dにより回動自在に支持している。なお、膝関節30Bには、膝蓋骨に相当する楕円状板を取りつけるようにしても良い。特に、屈曲時に膝蓋骨が突出するが、楕円状板の使用により、人体の形状に近い形状変化を得ることができる。
【0021】さらに、足関節30Cにおける運動には、屈曲伸展と回旋運動とがあるが、本実施の形態では、屈曲、伸展に着目し、足関節30Cを屈曲運動に適した構造としている。また、足関節30Cにおける屈曲、伸展運動に関する回転軸は、腓骨外果に対応させ、図1及び図2のように、足関節30Cを長ネジ32eにより回動自在に支持している。なお、足関節部では、アキレス腱に相当する弾性体を取り付けるようにしても良い。弾性体は、伸縮性のある平ゴム、スパッツ用生地でも良い。さらに、表面の不連続性を補正するために、スポンジ及び発泡スチロール等で整形すると良い。
【0022】次に、各股関節30A,膝関節30B,足関節30Cにおける主構成部材の形状等について説明する。まず、図3乃至図5は、股関節30Aの主構成部材となる関節板を示す側面図である。但し、図3及び図4の関節板は、股関節30Aを外側から見た状態を示し、図5の関節板は、股関節30Aを内側から見た状態を示すものである。
【0023】これらの図に示す関節板33aは、例えば厚さが約3mm程度の発泡塩化ビニルからなり、合計24枚で構成されている。また、これら関節板33aは、それぞれ異なる曲面33a1で構成され、これらの関節板33aを重ね合わせることにより、股の輪郭形状が得られるようになっている。さらに、各関節板33aには、上記のアルミパイプ32cが挿通される挿通穴33a2と、上記の長ネジ31eが挿通される挿通穴33a3とが形成されている。関節の回転軸となるアルミパイプ32cを挿通する挿通穴33a2の位置決めは、関節の屈曲時及び伸展時の形状が実際の形状に最も近くなるような点を選択する。なお、以下の関節の挿通穴も同様にして位置決めする。
【0024】この股関節30Aにおける関節板33aは、上述した等身大のプラスチックモデル(下半身のみ)から採取したものである。なお、本実施の形態では、股関節30Aは、第2の関節に相当する関節板33aのみからなり、第1の関節に相当する関節板を省略しているが、第1の関節に相当する関節板を設けるようにしても良い。
【0025】その手順を図6により説明する。すなわち、1)プラスチックモデル20aの臀部20b、大腿上部21aに、3mmごとに幅0.5mmの黒いテープTで24箇所に印をつけ、矢状面にスライディングゲージを当てて輪郭形状を取得した。
2)例えば、図22に示すように、スライデイングゲージによって得られた輪郭形状をトレーシングペーパーに書き写した。図22は、膝関節の輪郭線を示す図であり、(a)は、伸展状態、(b)は、屈曲状態、(c)は(b)よりさらに屈曲させた状態、(d)は、(c)の包絡形状であるが、膝関節の伸展及び屈曲時の輪郭形状を示す図であるが、股関節部30Aについても、同様に伸展及び屈曲の輪郭形状を書き写すようにする。股関節30Aは、前述したように、第2の関節に相当する関節板33aのみからなり、第1の関節に相当する関節板が省略されている点が図22の膝関節と異なる。
3)股関節を30゜に屈曲させたプラスチックモデルについて、前記1)及び2)と同様の作業を行った。
4)関節中心と角度を合わせて2つの輪郭線を重ね合わせて、屈曲したときに第1の関節の輪郭線から新たに現れた第2の関節の輪郭線をその関節の直立位の輪郭線に滑らかに加えた。図22(b),(c)に示すように、30゜(膝関節の場合は、60゜)屈曲した状態を例にとると、関節角度毎に伴って咬合わせ部分から現れる関節板の端面形状に、実際の人体の形状を修正していくようにする。
5)角度変化を細かく設定する場合には、前記4)の作業を繰り返し、追加された輪郭線全体を滑らかな包絡線で結んで、図22(d)に示すように、関節板33aの包絡形状とする。
6)カーボン紙を用いてトレーシングペーパーから発泡塩化ビニル板に輸郭形状を写した。
【0026】そして、6)の工程を終えた後、発泡塩化ビニル板を輪郭線に沿って切取り、24枚の関節板33aを得たものである。よって、これらの関節板33aを3mm間隔で重ね合わせることにより、臀部20b及び大腿上部21aの輪郭をなす股関節30Aの主構成部材が得られる。本実施の形態では、関節板33aを上述のように、接触式により、その輪郭形状をとるようにしているが、例えば、レーザビームによる光切断方式等の非接触3次元データから求めるようにしても良い。なお、本実施の形態では、発泡塩化ビニル板を使用しているが、これに限定されず、加工し易く、軽くかつ剛性を有する材質であれば良い。
【0027】図7及び図8は、膝関節30Bのうち、関節部30B1側の主構成部材となる関節板を示す側面図である。但し、図7の関節板は、関節部30B1を外側から見たものであり、図8の関節板は、関節部30B1を内側から見たものである。
【0028】これらの図に示す関節板33bは、例えば厚さが約3mm程度の発泡塩化ビニルからなり、合計15枚で構成されている。また、これら関節板33bは、それぞれ異なる曲面33b1で構成され、これらの関節板33bを重ね合わせることにより、膝上部の輪郭形状が得られる。さらに、各関節板33bには、前記の長ネジ32eが挿通される挿通穴33b2と、前記の長ネジ31dが挿通される挿通穴33b3とが形成されている。
【0029】図9及び図10は、膝関節30Bのうち、関節部30B2側の主構成部材となる関節板を示す側面図である。但し、図9の関節板は、関節部30B2を外側から見たものであり、図10の関節板は、関節部30B2を内側から見たものである。
【0030】これらの図に示す関節板33cは、前記同様に、例えば厚さが約3mm程度の発泡塩化ビニルからなるが、合計14枚で構成されている。また、これら関節板33cは、それぞれ異なる曲面33c1で構成され、これらの関節板33cを重ね合わせることにより、膝下部の輪郭形状が得られる。さらに、各関節板33cには、前記の長ネジ32dが挿通される挿通穴33c2と、前記の長ネジ31eが挿通される挿通穴33c3とが形成されている。
【0031】ここで、これら膝関節30Bの各関節板33cは、図11及び図12に示すようにして採取したものである。なお、図11は、被験者の膝の外側を示す側面図であり、図12は、被験者の膝の内側を示す側面図である。
【0032】関節板33cの製作方法は、前述の図6と同様であるが、股関節を60゜に屈曲させたプラスチックモデルについても輪郭を採取する点が異なる。得られた関節板33b,33cを3mm間隔で重ね合わせることにより、膝の上部側及び下部側の輪郭をなす膝関節30Bの主構成部材が得られる。
【0033】図13乃至図16は、膝関節30Bの詳細を示すものであり、図13は、膝関節30Bを示す側面図、図14は、図13のA−A線に沿って切り欠いた断面図、図15は、図13の膝関節30Bを示す平面図、図16は、図13の膝関節30Bの屈曲状態を示す側面図である。
【0034】これらの図に示す膝関節30Bは、上述したように、図1及び図2の大腿部21側に取付けられる関節部30B1と、下腿部22側に取付けられる関節部30B2とを備えている。各関節部30B1,30B2には、アルミ製のアングル31b,31cが設けられている。各アングル31b,31cには、六角ネジ34によって支持プレート35が取付けられており、さらにこの支持プレート35によってφ15mmのアルミパイプ32a,32bが支持されている。
【0035】また、各アングル31b,31cには、発泡塩化ビニル板(15mm×15mm)からなるスペーサ36が設けられており、このスペーサ36によって、上述した各関節板33b,33cが平行状態を保つように支持されている。さらに、これら関節板33b,33cは、各アングル31b,31cに2本の長ネジ31eによって取付けられている。
【0036】また、各関節板33b,33cは、交互にかみ合わせた状態の多層構造とされるとともに、長ネジ32dによって回動自在に支持されている。ここで、図14及び図15では、各関節板33b,33cをそれぞれ9枚及び8枚とした場合について示しているが、これは説明の便宜上である。
【0037】すなわち、これら関節板33b,33cにあっては、上述したように、20代女性の標準体型に近い女性(モニター)に合わせた場合、各関節板33b,33cの枚数はそれぞれ15枚及び14枚とすることで人体の膝関節に近い輪郭形状を表現することができる。この場合、各関節板33b,33cを構成する発泡塩化ビニル板の厚みは、上述したように3mm程度である。
【0038】なお、ここでの発泡塩化ビニル板の厚さや枚数は、適宜変更可能であり、その厚さや枚数も任意に変更することができるが、特に、各関節板33b,33cの枚数を増やすことで、人体により近い関節の輪郭形状を表現することが可能となる。但し、発泡塩化ビニル板があまり薄いと必要な剛性が不足するので、約1〜6mm程度が実用上望ましい。
【0039】そして、図16に示すように、長ネジ32dを支点として、各関節部30B1,30B2を約60°回転させた状態では、各関節板33b,33cのそれぞれ異なる曲面33b1,33c1により、屈曲に伴う人体の形状変化をも表現することができる。
【0040】図17及び図18は、前記の足関節30Cのうち、関節部30c1側の主構成部材となる関節板33dを示す側面図である。但し、図17の関節板33dは、関節部30c1を外側から見たものであり、図18の関節板は、関節部30c1を内側から見たものである。
【0041】これらの図に示す関節板33dは、前記同様に、例えば厚さが約3mm程度の発泡塩化ビニルからなるが、合計7枚で構成されている。また、これら関節板33dは、それぞれ異なる曲面33d1で構成され、これらの関節板33dを重ね合わせることにより、足関節上部の輪郭形状が得られる。さらに、各関節板33dには、前記の長ネジ32eが挿通される挿通穴33d2と、前記の長ネジ31eが挿通される挿通穴33d3とが形成されている。
【0042】図19及び図20は、前記の足関節30Cのうち、関節部30c2側の主構成部材となる関節板33eを示す側面図である。但し、図19の関節板33eは、関節部30c2を外側から見たものであり、図20の関節板33eは、関節部30c2を内側から見たものである。
【0043】これらの図に示す関節板33eは、前記同様に、例えば厚さが約3mm程度の発泡塩化ビニルからなるが、合計6枚で構成されている。また、これら関節板33eは、それぞれ異なる曲面33e1で構成され、これらの関節板33eを重ね合わせることにより、足関節下部の輪郭形状が得られる。さらに、各関節板33eには、前記の長ネジ32eが挿通される挿通穴33e2と、前記の長ネジ31eが挿通される挿通穴33e3とが形成されている。
【0044】ここで、足関節30Cの各関節板33d,33eは、図6で説明したように、プラスチックモデルから採取されたものである。得られた関板33d,33eを3mm間隔で重ね合わせることにより、足関節30Cの輪郭をなす主構成部材が得られる。
【0045】次に、図21を用いて足関節30Cの組付け状態について説明する。すなわち、関節部30c1の関節板33dは、アングル31dに固定され、関節部30c2の関節板33eは、アングル31eに固定されている。また、これらの関節板33d,33eは、図14で説明した膝関節30Bのように、関節板33dと関節板33eとが交互に重ね合わされた状態で組付けられている。そして、各関節板33d,33eが、長ネジ32eによって連結されることで、足関節30Cの屈曲が可能となっている。
【0046】また、足関節30Cの後方に平ゴム33fを設けることで、人体のアキレス腱を表現している。さらに、符号33gはマグネットであり、このマグネット33gにより、足部を図示しない駆動部の載置台に対して吸着自在とすることができるようになっている。足部をマグネット33gで固定しているので、載置台を上下させることにより、下肢部の屈曲伸展状態とすることができる。
【0047】なお、本実施の形態では、長ネジ32eにより、多層の関節板を連結するようにしているが、一本の長ネジ32c,32d,32eで連結するのではなく、複数の連結ピン等の連結手段により、回転中心を変えて、多層の関節板を部分的に連結するようにしても良い。この場合、関節板はアングルにより取り付けられているので、関節板が相互に連結されていれば、関節板が外れてしまうことはない。
【0048】このように、本実施の形態では、例えば膝関節30Bの場合、屈曲及び伸展に伴う人体の関節の外形に合わせて採取した多数の関節板33b,33cにより、上関節部である大腿部21側に取付けられる関節部30B1と、下関節部である下腿部22側に取付けられる関節部30B2と構成し、上下の関節板33b,33cを交互に咬み合わせるとともに、これら上下の関節板33b,33cを屈曲及び伸展に伴う人体の回転軸に対応させて回動自在に連結したので、屈曲及び伸展に伴い、それぞれの状態に応じてそれぞれの関節板33b,33cの曲面33b1,33c1により人体の関節部分の形状変化を表現することができる。
【0049】特に、前述の図22で説明したように、関節中心と角度を合わせて、各関節角度毎に、輪郭線を重ね合わせて、屈曲したときに関節板33bの輪郭線から新たに現れた関節板33cの輪郭線をその関節の直立位の輪郭線より滑らかに追加していき、追加された輪郭線全体を滑らかな包絡線で結んたものを、関節板33b、33cの形状としている。
【0050】このように、各関節角度により、関節板33b、33cを、関節角度毎に伴って咬合わせ部分から現れる薄板端面形状を人体関節輪郭形状に合わせ、それを滑らかな包絡線で結んだ形状にすることにより、屈曲及び伸展運動時に現れる人体の関節部分の皮膚表面の筋膨隆や腱の張りの変化等の形状変化を非常に良く近似することができる。
【0051】なお、本実施の形態では、本発明の関節構造を、下肢部である、腰部20と大腿部21との間、大腿部21と下腿部22との間、下腿部22と足部23との間に設けた場合について説明したが、これらの例に限らず、頭部と胸部との間、胸部と骨盤部との間、胸部と上腕部との間、上腕部と前腕部との間、前腕部と手部との間にもそれぞれ用いることが可能である。
【0052】また、後述するように、本実施例では、本発明の関節構造を組込んだダミーを衣料であるストッキングの定量的評価に用いた場合について説明したが、この例に限らず、例えば、■いす,ベット等の開発、衝突安全等の人間工学分野、■衣料展示等のアパレル分野、■患者看護教育等の医療分野等、幅広く人体の代用として用いることができる。
【0053】
【実施例】次に、以上のような構成のマネキンの関節機構の使用例について説明する。本実施例では、マネキンの下肢部をストッキングの適合評価試験に用い、ストッキングの定量的評価に用いた場合について説明する。適合評価試験の手順は、次の通りである。
1)マネキンの下肢部にタイツをはかせて、人体の皮膚を表現する。なお、タイツは、静電防止加工のされている50デニール薄手タイプを使用した。タイツにより、表面の不連続性が補正される。
2)圧力計測を行うエアパックをマネキンの所定箇所に貼付ける。エアパックは、ポリプロピレンフィルム製の直径20mmの円形の衣服圧測定器((株)エイエムアイ製 AMI3037−10)を使用した。
3)マネキンを所定回屈伸させ、ストッキングによって受ける圧力をエアパックを介して計測する。実際には、足の約60゜の膝屈曲及び伸展の上下動100回行い、一定膝角度毎の圧力の計測を行った。ストッキングは、5種類について試験した。
【0054】以上のような試験を行った結果、5種類のストッキングの圧力分布の違いを定量的に評価することができた。また、実際の人体にエアパックを装着して試験した結果と比較しても、圧力の変化傾向が非常に近似した結果を得ることができた。このように、本発明のマネキン関節機構により、圧力が一定値に達する屈曲及び伸展による上下動の回数や各部の圧力分布、圧力変化によるストッキングの性能を定量的に評価できることが分かった。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のマネキン関節機構によれば、多数の薄板を櫛状に並列させてなる第1の関節と、多数の薄板を櫛状に並列させてなる第2の関節とを備え、前記第1の関節の各薄板は、前記第2の関節の各薄板とを隙間なく咬合わされているとともに、前記第1の関節と第2の関節との咬合い部分が回動自在に連結されているように構成したので、前記第1の関節及び前記第2の関節の多数の薄板とが隙間なく咬合わされていることにより、関節角度毎に生じる隙間を分散させることができる。
【0056】また、請求項2の発明は、前記第1の関節及び第2の関節の各薄板は、回動により、人体の関節の屈曲に伴う関節部分の外形形状の変化を模擬してなるように構成しているので、人体の関節部分を屈曲面に平行に切断した状態の多数の薄板を用いることで、第1の関節及び前記第2の関節を屈曲及び伸展に応じて回転させることにより、関節部の屈曲及び伸展の各関節角度に伴っておこる形状変化に近似した曲面を形成することができる。
【0057】さらに、請求項3記載の発明によれば、前記第1の関節及び第2の関節の各薄板は、関節角度毎に伴って咬合わせ部分から現れる薄板端面形状を人体関節輪郭形状に合わせ、それを滑らかな包絡線で結んだ形状にすることにより、屈曲及び伸展運動時に現れる人体の関節部分の筋膨隆や腱の張り等の形状変化を模擬するようにしたので、人体の関節部分の皮膚表面の屈曲及び進展運動に伴う筋膨隆や腱の張りの変化等による各関節角度の形状変化を従来に比較し、非常に良く近似させることができる。
【出願人】 【識別番号】598063650
【氏名又は名称】山崎 信寿
【出願日】 平成10年(1998)5月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石戸 元 (外3名)
【公開番号】 特開平11−318655
【公開日】 平成11年(1999)11月24日
【出願番号】 特願平10−133889