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【発明の名称】 テーブル兼用椅子
【発明者】 【氏名】伊藤 進

【氏名】酒井 徹

【氏名】藤本 和男

【氏名】正田 賢志

【要約】 【課題】摺動可能な背凭れがどこに位置していても回動可能とし、背凭れの回動動作の自由度を向上させる。

【解決手段】背凭れ2に2つのスライダ25,26を前後方向に摺動可能に備えたスライド機構30を設け、一方のスライダ25に支柱3を回動自在に取り付けると共に他方のスライダ26と支柱3とをこれらに対しそれぞれ回動自在にリンク4で連結し、尚かついずれか一方のスライダ例えばスライダ26に回動自在な係止部材5を備えてこの係止部材5で両スライダ25,26を連結して支柱3及びリンク4との間で固定連鎖を形成するようにし、支柱側スライダ25とリンク側スライダ26とを互いに自由に摺動させることによって背凭れ2を回動させると共に支柱側スライダ25とリンク側スライダ26とを係止部材5で連結して形成した固定連鎖で背凭れ2を水平状態に支持しながら背凭れ2を前後方向へ任意に摺動可能とするようにしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 背凭れの背面の甲板が起立した状態からほぼ水平となる位置まで回動可能に前記背凭れを支柱に取り付け、前記背凭れを起立状態からほぼ水平状態に回動させることによって前記背凭れの甲板をテーブルとしても使用可能としたテーブル兼用椅子において、前記背凭れに2つのスライダを前後方向に摺動可能に備えたスライド機構を設け、前記2つのスライダの一方に前記支柱を回動自在に取り付けると共に他方のスライダと前記支柱とをこれらに対しそれぞれ回動自在にリンクで連結し、尚かつ前記2つのスライダのいずれか一方に回動自在に取り付けられ他方のスライダに対し係合可能であり、前記他方のスライダに係合されて両スライダを連結したときに前記支柱及びリンクとの間で固定連鎖を形成する係止部材を備え、前記支柱側スライダと前記リンク側スライダとを前記係止部材で連結せずに互いに自由に摺動させることによって前記背凭れを回動させ、尚かつ前記支柱側スライダとリンク側スライダとを前記係止部材で連結して得られる前記固定連鎖で前記背凭れを水平状態に支持すると共に該背凭れを前後方向へ任意に摺動可能としたことを特徴とするテーブル兼用椅子。
【請求項2】 前記スライド機構は、直線状の長孔を備え前記背凭れに固着されるブラケットと、前記支柱の端部に取り付けられ前記ブラケットの長孔に移動可能に係合するピンを有する支柱側スライダと、前記ブラケットの長孔に移動可能に係合するピンを有するリンク側スライダとから成ることを特徴とする請求項1記載のテーブル兼用椅子。
【請求項3】 前記係止部材を伸縮可能とし、前記支柱側スライダと前記リンク側スライダとの距離を可変にして水平状態における前記背凭れの傾斜角を調整可能としたことを特徴とする請求項1または2記載のテーブル兼用椅子。
【請求項4】 前記係止部材を回動させるロック解除手段が前記背凭れの上部に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のテーブル兼用椅子。
【請求項5】 前記背凭れあるいは前記固定連鎖を構成するいずれかの部材側にガイド部材を、他方に前記ガイド部材に常時付勢されている付勢レバーを設け、かつ前記ガイド部材には前記付勢レバーを嵌合させてその位置で前記背凭れの移動を固定する凹部と前記付勢レバーがかかったときに前記背凭れを一方向に付勢して前記背凭れを通路幅を確保する位置まで移動させる分力を発生する傾斜部とを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のテーブル兼用椅子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に劇場やホール、会議場などで据え付けられて使用される椅子に関する。更に詳述すると、本発明は、背凭れを回動させてほぼ水平状態に倒すことでテーブルとして使用することができるテーブル兼用椅子の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】主に劇場やホール、会議場などで据え付けられて使用される椅子には、メモ台の代わりに可倒式とした背凭れを後席に座る者のためのテーブルとしても使用できるようにしたものがある。例えば実公平5−25496号には、支柱上の支点を中心として背凭れを回動させ背凭れの背面の甲板をテーブルとして用いるものが挙げられる。この椅子の場合、1つの支点を中心として背凭れを回動させているだけであるため、背凭れを水平に倒したときの位置が固定される。このため、テーブルとして使用する際の背凭れの位置が消防法上求められる必要な通路幅を確保できる位置に定められることから、後席から離れてしまいテーブルとして使い難いものである。
【0003】そこで、図21から図23に示すように、回動させた背凭れ102を前後方向へ摺動可能とし、テーブル未使用時には背凭れ102を前方へ移動させて椅子101の前の通路105の通路幅Lを確保しながらも、テーブル使用時にはテーブルを後ろへ移動させてテーブルとして使い易くするようにしたものが提案されている(実開平5−29462号)。この椅子101は、背凭れ102側にボールベアリングスライダ107を介して背凭れ102の甲板と平行に移動可能なヒンジブラケット108を設けると共に、このヒンジブラケット108に支柱103の上端の支点104とリンクアーム109の上端とがピン結合されている。また、リンクアーム109の下端側が支柱103のガイドプレート111,111の間のガイド溝112を上下動するスライドシャフト113に連結支持されている。そして、背凭れ102を起立状態にして椅子として使用するときには背凭れ102をフック(図示省略)でロックし、背凭れ102を水平状態にしてテーブルとして使用するときにはスライドシャフト113をガイドプレート111の上端の傾斜溝部110に嵌合させてロックし、背凭れ102を起立状態と水平状態との双方で固定される構造とされている。これらロックは、図21に示すように足踏み式ペダル106の操作により解除ができるように設けられている。
【0004】この椅子101は、背凭れ102を支柱上端の支点104を中心に回動させて水平にしたときに、ガイド溝112内のリンクアーム109の下端を引き上げてガイドプレート111の上端の傾斜溝部110で固定して支柱上端の支点104に支持されたヒンジブラケット108の傾きをほぼ水平に保つようにし、該水平ヒンジブラケット108上をボールベアリングスライダ107によって背凭れ102を前後方向に摺動可能とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述の椅子101によると、背凭れ102を水平にした時にリンクアーム109やガイドプレート111などのリンク機構やロック機構などが椅子の背面側に露出してしまう。このため、椅子としての美観を損ねたり、リンク等に付着するグリースなどでテーブル使用者の足下を汚してしまったり、さらにはリンク機構に指や持ち物を誤って挟んでしまう恐れがある。また、機構が複雑で部品点数が多くなるため、重量が嵩んだりコスト高となる問題を有している。更に、ロック解除用ペダル106が椅子101の前方を向いて設けられているため、必然的に椅子101の前方から背凭れ102の回動操作を行わなければならず、操作が煩わしい場合もある。
【0006】そこで本発明は、機構が簡単で部品点数も少なく、背凭れをテーブルとして使用するときには機構部分が椅子の背面側に露出しないテーブル兼用椅子を提供することを目的とする。また、本発明は、摺動可能な背凭れがどこに位置していても回動可能とし、背凭れの回動動作の自由度を向上させたテーブル兼用椅子を提供することを目的とする。さらに本発明は、前方以外からの回動操作を可能とし、しかも通路を確保し易いテーブル兼用椅子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため請求項1記載の発明は、背凭れの背面の甲板が起立した状態からほぼ水平となる位置まで回動可能に前記背凭れを支柱に取り付け、背凭れを起立状態からほぼ水平状態に回動させることによって背凭れの甲板をテーブルとしても使用可能としたテーブル兼用椅子において、背凭れに2つのスライダを前後方向に摺動可能に備えたスライド機構を設け、2つのスライダの一方に支柱を回動自在に取り付けると共に他方のスライダと支柱とをこれらに対しそれぞれ回動自在にリンクで連結し、尚かつ2つのスライダのいずれか一方に回動自在に取り付けられ他方のスライダに対し係合可能であり、他方のスライダに係合されて両スライダを連結したときに支柱及びリンクとの間で固定連鎖を形成する係止部材を備え、支柱側スライダとリンク側スライダとを係止部材で連結せずに互いに自由に摺動させることによって背凭れを回動させ、尚かつ支柱側スライダとリンク側スライダとを係止部材で連結して得られる固定連鎖で背凭れを水平状態に支持すると共に該背凭れを前後方向へ任意に摺動可能としている。
【0008】したがって、背凭れを起立状態から水平状態へと回動させると、リンクの回動に伴ってその端部のリンク側スライダが支柱側スライダへ向かって摺動し、リンク側スライダと支柱側スライダとの距離が縮まる。そして、リンク側スライダと支柱側スライダとが所定距離に接近したときこれらを係止部材が連結し、支柱とリンクと係止部材との間で固定連鎖が形成され、この固定連鎖に対して背凭れが水平状態に支持されると共に背凭れがスライド機構を介して前後方向へ任意に摺動可能に支持される。支柱側スライダとリンク側スライダとが係止部材で連結されてそれらの間が拘束されている間、背凭れは水平状態に保たれ、尚かつ自由に前後方向へ摺動可能である。また係止部材の係合を解除すれば、リンクと背凭れとが互いに独自に回動することが許容され、背凭れがどの位置にあってもその位置から回動可能な状態になる。
【0009】また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のテーブル兼用椅子において、スライド機構を、直線状の長孔を備え背凭れに固着されるブラケットと、支柱の端部に取り付けられブラケットの長孔に移動可能に係合するピンを有する支柱側スライダと、ブラケットの長孔に移動可能に係合するピンを有するリンク側スライダとから構成するようにしている。この場合、ブラケットの長孔とピンとの係合によって支柱側スライダとリンク側スライダとが共に摺動可能に保持されるので、背凭れの支持が確実であると共に支持機構としての剛性も得られる。
【0010】また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のテーブル兼用椅子において、係止部材を伸縮可能とし、支柱側スライダとリンク側スライダの距離を可変にして水平状態における背凭れの傾斜角を調整可能とするようにしている。この場合、背凭れは、係止部材を伸長させて支点間距離を大きくすれば後側に傾斜し、係止部材を縮めて支点間距離を小さくすれば前側に傾斜する。
【0011】また、請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のテーブル兼用椅子において、係止部材を回動させるロック解除手段が背凭れの上部に設けられるようにしている。この場合、ロック解除手段を上方へ引き上げると、係止部材によるロックが解除されて背凭れが回動可能となるとともにその引き上げ力がそのまま背凭れを回動させる力として利用される。
【0012】さらに、請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のテーブル兼用椅子において、背凭れあるいは固定連鎖を構成するいずれかの部材側にガイド部材を、他方にガイド部材に常時付勢されている付勢レバーを設け、かつガイド部材には付勢レバーを嵌合させてその位置で背凭れの移動を固定する凹部と付勢レバーがかかったときに背凭れを一方向に付勢して背凭れを通路幅を確保する位置まで移動させる分力を発生する傾斜部とを備えるようにしている。この場合、後ろの椅子に接近してテーブルとして使用される背凭れは、付勢レバーがガイド部材の凹部と係合することによってある程度以上の外力が加わらない限り前後方向へ移動できないため、テーブルとして利用し易いものとなる。またこの状態の背凭れに前方への力を加えると、付勢レバーと係合部材の凹部との係合が解かれて使用者によって押されるだけ前方へ移動する。そして、付勢レバーがガイド部材の傾斜部にさしかかると、付勢レバーが傾斜面に押し付けられて背凭れを前方へ付勢する分力が生じる。これにより背凭れは外力の付与なく前方へ自動的に移動する。また背凭れが前端まで移動しても、背凭れは引き続き前方へ付勢され続けるため、後方へ戻す外力が加わらない限り不用意に後方へ移動してしまうことがない。この前端位置にある背凭れに後方への力を加えると、これまでと反対の動きにより後方位置へ摺動する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて説明する。
【0014】図1から図18に本発明のテーブル兼用椅子の一実施形態を示す。まず、図1〜図4の全体外観図並びに図5〜図8の概略機構図に基づいて、本発明を概略的に説明する。このテーブル兼用椅子1は、背凭れ2に2つのスライダ25,26を前後方向に摺動可能に備えたスライド機構30を設け、一方のスライダ25に支柱3を回動自在に取り付けると共に他方のスライダ26と支柱3とをリンク4で連結し、支柱側スライダ25とリンク側スライダ26とを互いに自由に摺動させることによって背凭れ2を回動させるように設けられている。背凭れ2は、その背面の甲板2aがほぼ起立した状態(鉛直状態の他図示の如くやや後ろに傾いた状態までが含まれる)からほぼ水平状態となる範囲で任意に回動可能とされ、甲板2aをテーブルとして使用可能とされている。尚、本実施形態では、脚20の設置面21はほぼ水平であるが、場合によっては傾斜した設置面に据え付けられることもある。
【0015】背凭れ2は図12に示すようなある程度の厚みと剛性を備える板状の部材であることが好ましい。本実施形態では角に丸みを付した木製板を用いているが、材質、形状とも特に限定されるものではない。この背凭れ2の甲板2aは例えばラッカー仕上げとするなどしてテーブル面としての機能を備えさせ、また前面2bには、図9や図11に示すように、着座者の背の上半分を支えるクッション材などで構成されている上背凭れ部18が形成されている。
【0016】この背凭れ2には前面2bの左右両側にスライド機構30が取り付けられている。このスライド機構30は、本実施形態の場合、長孔6を形成したチャネル状のブラケット7と、支柱3の端部に取り付けられブラケット7の長孔6に移動可能に係合するピン3pを含む支柱側スライダ25と、支柱3に揺動可能に取り付けられたリンク4の先端に取り付けられブラケット7の長孔6に移動可能に係合するピン4pを含むリンク側スライダ26とから構成されている。
【0017】ブラケット7は図13に示すように断面が一方が長いチャネル状の断面コ形に形成され、図12のように左右対称の一対が対称位置に平行に設けられている。また長孔6はその長手方向が背凭れ2の甲板2aあるいは前面2bと平行となるようにブラケット7に設けられている。尚、長孔6は本実施形態の場合、背凭れ2の甲板2aの前面2b側にビス止めなどで固着された別部材のチャネル状のブラケット7によって形成されているが、場合によっては背凭れ2を構成する部材そのものに形成しても良い。支柱3やリンク4に設けられたピン3p,4pはこの長孔6を図12や図13のように外側から嵌入するようにして移動可能に係合している。さらにそれぞれのピン3p,4pには同軸上にローラ19,19がそれぞれ設けられてチャネル状のブラケット7の溝内を転動するように構成されている。また、ローラ19の代わりとして例えば長孔6の幅より大きい径のワッシャを内側からはめ込み、ピン3p,4pが長孔6から外れないようにしてもよい。換言すれば、支柱側ピン3pとリンク側ピン4pとは、各々ローラ19,19を含んでスライダ25,26を構成し、これら2つのスライダ25,26とブラケット7の長孔6とでスライド機構30が構成されている。尚、ブラケット7と支柱3のピン3pとは座金36などを介してブラケット7に対しぐらつかないようにして摺動可能に取り付けられている。
【0018】また2つのスライダ25,26のいずれか一方には、他方のスライダに係合可能で両スライダを連結して支柱3及びリンク4との間で固定連鎖を形成する係止部材5が備えられている。具体的には、リンク4のピン4pには、支柱のピン3pとリンク4のピン4pとを連結して両ピン間距離を一定にする係止部材5が揺動自在に同軸上に設けられている。この係止部材5は、支柱3のピン3pと係合したときに支柱3とリンク4との間で固定連鎖を形成して背凭れ2を水平状態に支持すると共にブラケット7の長孔6内を両ピン間距離を保持したまま摺動可能とし、固定連鎖に対して背凭れ2を前後方向へ任意に摺動可能としている。ここで、係止部材5を取り付けるのはリンク側ピン4pに限られず、支柱3のピン3pに揺動自在に取り付けてリンク4のピン4pに係合させて支柱3とリンク4とを連結するようにしても良い。尚、本明細書でいう前方とは着座者が向く方向のことであり、起立状態にあるときの背凭れ2の前方を向く面が前面2bである。
【0019】この係止部材5は例えば図10に示すように凹部を備えるように鈎状に形成されたフック5aを有する一対の板状の部材であり、フック5a側が常に支柱3の端部3aを向くようにしてリンク4の端部4aに回動自在に設けられている。この係止部材5は、先端のフック5aが支柱3のピン3pと係合することにより、リンク4を回動不能とし、支柱3とリンク4との間で固定連鎖を構成して背凭れ2を水平状態に支持可能とする。更にこの係止部材5は図示省略しているばねなどの付勢手段により図10で矢示する方向へ常時付勢され、ピン3pとの係合が容易に解除されないように設けられている。また、フック5aの先端には傾斜面5bが形成され、リンク側スライダ26の接近によって先端がピン3pに当接したときにその力を係止部材5をピン3pの下に潜らせる力に変換して自動的にロック可能な構造に設けられている。この係止部材5は、背凭れ3の左右両側のリンク側スライダ26にそれぞれ回動自在に取り付けられ、連結パイプ27で連結されている。したがって、左右の係止部材5,5は同期して回動する。また、この連結パイプ27の途中には、ロック解除手段10の操作ワイヤ10bによって操作される係止部材回動機構28が設けられている。この係止部材回動機構28は、図19に示すように、連結パイプ27に固着されたブラケット28aと、このブラケット28aに形成された長孔28bと、この長孔28b内に前後動可能に支持されているスライダ28cと、該スライダ28cに対し揺動自在に取り付けられているレバー28dと、このレバー28dの先端に取り付けられているローラ28e及びローラ28eが甲板2aから離れる方向(図上時計回転方向)に常時レバー28dを付勢するコイルばね(図示省略)とから構成されている。そして、スライダ28cをロック解除手段10の操作ワイヤ10bで引っ張ることによってレバー28dとローラ28eとを甲板2aから離れる図上時計回転方向へと更に付勢する。しかし、ローラ28eの上にはカバー29等が設けられているため、ローラ28eは移動できず、相対的にブラケット28a側を図上時計回転方向へと回転させる。即ち、ブラケット28aに固着された連結パイプ27を時計回転方向へ回転させてその両端の係止部材5,5のフック部分5aをピン3pから外れる方向へ回動させる。
【0020】支柱3は左右対称に固定して設けられた一対からなり、その上側の端部3aにおいて背凭れ2を回動自在に支持している。この支柱3は例えば脚20の設置面21に対し垂直に直立するように設けられるものでもよいが、本実施形態では図示するようにやや後傾するように設け、着座者の背の角度に合うようにしている。また支柱3の端部3aのピン3pは、図12に示すように内側へ向けて突出し、ブラケット7の長孔6に移動可能に係合している。この支柱3の中程に設けられる連結ピン3bには、リンク4の下端が回動可能に取り付けられ該連結ピン3bを中心としてリンク4が回動可能とされている。そして支柱3およびリンク4のそれぞれの上方の端部3a,4aは、背凭れ2側に設けられたブラケット7の長孔6に摺動可能に嵌入されているピン3p,4pにそれぞれ回動自在に取り付けられている。したがって図5に示す水平状態の背凭れ2は、長孔6の長さd1と、支柱側ピン3pおよびリンク側ピン4pの両支点間距離d2 との差(d1−d2)だけ前後方向へ摺動可能である。
【0021】また背凭れ2にはフックを備える係止部材8が図10に示すように設けられている。係止部材8は支点8aを中心として回動可能であり、図示しない付勢手段により矢示する向きへ付勢されている。またテーブル兼用椅子1の後側にはこの係止部材8のフックと係合するピン9が図11に示すように設けられている。そこで背凭れ2が回動し図2のような起立状態となると、上述の係止部材・フック8がピン9と係合し背凭れ2は動かないように起立状態にロックされる。
【0022】ロック解除手段10は水平状態あるいは起立状態にロックされた背凭れ2を回動可能とするための部材であり、図1に示すように起立状態にある背凭れ2の上部に設けられている。このロック解除手段10は、背凭れ2の上部に設けられている取っ手10aと、この取っ手10aの動きに応じて伸縮される操作ワイヤ10bとを備え、該ワイヤ10bの動きによってそれぞれの係止部材5,8を回動させるように設けられている。例えば、係止部材5については係止部材回動手段28のスライダ28cにワイヤ10bが連結され、係止部材8については支点8aを中心に揺動するフックの反対側にワイヤ10bが連結されている。したがって取っ手10aを引っ張ることによってワイヤ10bを介して係止部材5,8を同時に回動させることができる。
【0023】また図11などに符号22で示すダンパは、支柱3とリンク4との間でリンク4と連動して伸縮し、背凭れ2が復帰する際の勢いを減少させると共にテーブルにする際の動きを助長する働きをする。また符号23はクッション材などにより形成される下背凭れ部を、符号24は回動可能に設けられる座をそれぞれ示す。
【0024】さらに本実施形態のテーブル兼用椅子1においては、背凭れ2を水平状態にしてテーブルとして使う際に背凭れ2を前方へ付勢して摺動し易いものとし、椅子間の通路を確保し易くするようにしたアンチパニック機構が設けられている。本実施形態におけるこのアンチパニック機構はガイド部材11によって形成されており、このガイド部材11は図10、図12、図14、そして図15に示すように板状部材12とローラ13とレバー14とを備えている。
【0025】板状部材12は鋼板によって図示する台形状に形成され、背凭れ2の前面2bに固着される。本実施形態では対称に形成された一対の板状部材12,12が図12のように対称配置されている。この板状部材12の縁部には直線部12bとその両端に凹部12aと傾斜部12cとが滑らかに連続的に形成され、ローラ13を誘導するようにガイドしている。また、図15に示すように板状部材12はワッシャ15を挟んで背凭れ2の前面2bに取り付けられているため、縁部は背凭れ2から浮いた状態で固定されている。
【0026】ローラ13はレバー14の先端部に回転自在に設けられ、常に板状部材12の縁部と転がり接触をするように付勢されながら板状部材12の輪郭に沿って移動する。ローラ13の形状は特に限られることはないが、本実施形態では図15に示すように溝を有する段付き形状に形成され、この溝に板状部材12の縁部を位置させることによりローラ13が外れ難くなるようにしている。
【0027】レバー14は前後方向へ摺動する背凭れ2を案内する部材であり、例えば本実施形態では図14や図15に示すようにリンク4の端部4aの内側にコ形のフレーム16を介し、支点14aを中心として揺動自在に取り付けられている。またレバー14は付勢手段17によりローラ13を板状部材12に押し付ける方向へ付勢されている。付勢手段17は特に限定されないが、本実施形態では図示するように支点14aを中心に設けられたコイルばねが用いられている。
【0028】このガイド部材11は、図16から図18に示すように、まず後方へ摺動した水平状態の背凭れ2は先に図3で示したような状態となり、テーブルとして利用可能となる。このときのガイド部材11は、図16に示すようにローラ13が板状部材12の凹部12aに係合した状態であり、平衡を保つようにして背凭れ2が前方へ摺動し難くなるようにしている。そしてこの状態の背凭れ2にある程度以上の前方への力を加えると、ローラ13と凹部12aとの係合が解かれて背凭れ2が前方へ移動する。このときローラ13は図17に示すように板状部材12の直線部12bと接触しているので、背凭れ2は前方へも後方へも特に付勢されていない状態にある。そしてローラ13が傾斜部12cにさしかかる位置までさらに背凭れ2を前方へ移動させると、ローラ13が傾斜面に押し付けられるようになり背凭れ2を前方へ付勢する分力が生じはじめる。これにより背凭れ2は自動的に前方へ摺動しはじめ、背凭れ2が摺動するのに伴いローラ13が傾斜部12cに沿って転がり移動する。最後は図18のような状態で背凭れ2の摺動が止まるが、レバー14は引き続き傾斜部12cと接触して背凭れ2を前方へ付勢するようにしている。したがって図4に示す前方位置まで摺動した背凭れ2は、後方への力を加えない限り自動的に後方へ摺動してしまうようなことがない。なお前方位置にある背凭れ2に後方への力を加えると、これまでと反対の動きにより背凭れ2が後方位置へ摺動することはいうまでもない。
【0029】以上のように構成された椅子によると、係止部材5のフック5aが支柱3の端部3aのピン3pと係合しているときは、図5に示すように支柱3、リンク4および係止部材5の3部材により三角形の固定連鎖が形成されるため、背凭れ2はほぼ水平な状態に保持されるようにロックされ、その状態のままブラケット7の長孔6内を前後方向へ摺動可能となる。ここでフック5aと支柱側のピン3pとの係合を解除すると、背凭れ2はそのロックが解除されて図6に示すように後方へ回動可能となり、図7に示す起立状態まで回動する。このとき長孔6の端面6aが支柱3の端部3aに接触するようにして回動させれば、背凭れ2の重量を端部3aによって支えながらこの端部3aを中心として回動させることができる。また図7の起立状態まで回動した背凭れ2を再び前方へ回動させれば、図6の傾斜状態を経て図5の水平状態となることはいうまでもない。
【0030】ここまで述べたのは図5に示すように後方あるいはその近傍に位置している背凭れ2を回動させるときのものであるが、上述のような構成のものであれば背凭れ2が前方に位置していても回動動作が可能である。すなわち図8に示すように背凭れ2が前方に位置していても、この状態から後方へ回動させて起立状態とすることができる。この場合には支柱3の端部3aで背凭れ2を支えることができないため、例えば作業者が手で背凭れ2を支え持つようにしながら回動させればよい。
【0031】このように前後方向へ摺動可能な背凭れ2は、前方あるいは後方のどちらに位置していても後方へ回動させて起立状態とすることができる。またこれだけでなく、背凭れ2がこの間のいずれの位置にあっても回動させることができることはいうまでもない。
【0032】したがって、このテーブル兼用椅子1によれば、背凭れ2を前方へ回動させてテーブルとして使用可能であり、しかもこの背凭れ2は水平状態において前後方向へ摺動可能でるため必要に応じて位置を変えることができる。したがってテーブルとして使用するときには手前に引いて使い易い位置まで移動させることによりテーブルとしての機能を十分に果たせるようにし、使用しないときには奧に押して移動させ椅子間の通路を確保するようにすることができる。
【0033】また例えばテーブルとして使用し終えた背凭れ2を回動させて再び起立状態に戻すようなとき、本実施形態のテーブル兼用椅子1では背凭れ2が前方や後方の位置あるいはその間のいずれの位置に位置していても回動操作が可能であるため、煩わしさがなく回動作業を素早く行うことができる。これは逆の動作によって背を水平状態に回動させるときも同様であり、起立状態の背凭れ2を回動させながらいきなり図4のような前方位置まで移動させることも可能である。
【0034】さらに、背凭れ2の上部に取っ手10aを備えたロック解除手段10を設けたことにより、背凭れ2を起立状態から水平状態まで回動させるためにこの取っ手10aを上方に引き上げると、ロックが解除されると同時にその引き上げ力がそのまま背凭れ2を引き上げて回動させる力として利用される。
【0035】また本実施形態ではアンチパニック機構としてガイド部材11が設けられており、テーブルとして使用されているときの背凭れ2の平衡状態を保つようにして使い易くなるようにしている。背凭れ2は前方へのある程度の力によって押し出すことによって後は自動的に移動するので、例えば背凭れ2をテーブルとして使用していた者が椅子から立ち上がろうとしたときなどにスペースを確保する上で簡便である。さらに、前端へ移動した背凭れ2がその位置に留まり反動などで戻ってくることがないので、椅子の前後の通路が確実に確保される。
【0036】なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、スライド機構として事務用机の引き出し用スライドレール等として一般に利用されているリニアスライダ30やロッドの周りにベアリングと外筒とを配置する直動玉軸受(図示省略)等を利用することも可能である。この場合におけるリニアスライダ30は、図20に示すように、背凭れ2の甲板2aの前面2b側にビス止め等により固定された長尺なリップ溝形状のアウターレール31と、これにリテーナ及び鋼球(図示省略)を介して摺動可能に嵌合された2つのブラケット付きインナーレール(以下スライダと呼ぶ)32,33とで構成されている。前方のスライダ32には支柱3の端部がピン3pによって回動自在に連結されている。したがって、背凭れ2は支柱3に連結された前方のスライダ(支柱側スライダと呼ぶ)32とリンク4に連結された後方のスライダ(リンク側スライダと呼ぶ)33とで摺動自在に支持されている。また、前後のスライダ32,33のいずれか一方、本実施形態ではリンク側スライダ33に係止部材5が揺動自在に取り付けられている。この係止部材5は、他方のスライダ即ち支柱側スライダ32と係合することによって、前後のスライダ32,33を連結して支柱3及びリンク4との間で固定連鎖を形成する。係止部材5は、前述の実施形態と同様にその先端の凹部5aが支柱側スライダ32のピン3pと嵌合することによって両スライダ32,33を連結するもので、その構造やロック解除手段10による操作などは同じであるのでその詳細な説明は省略する。尚、アウターレール31の両端には、前後のスライダ32,33が脱落するのを防止するため、エンドストッパ34,35が設けられている。
【0037】また、本実施形態でのテーブル兼用椅子1では水平状態にあるときの背凭れ2の傾斜角θ(図9に表示)は例えば約2度に設定されているが、特にこれに限定されるものではない。傾斜角θは椅子固有の値となるように設定されてもよいし、使用者が自由に再設定可能となるようにされていても構わない。例えば本実施形態の係止部材5を伸縮可能とし長さを自由に変えられるものとすれば、支柱3の端部3aとリンク4の端部4aとの支点間距離を変化させて背凭れ2の傾斜角θを任意に変化させることができるようになる。また係止部材5でなく、例えばリンク4を伸縮可能としても傾斜角θを変化させることが可能である。
【0038】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように請求項1記載の発明のテーブル兼用椅子によると、支柱側スライダとリンク側スライダとが係止部材で連結されてそれらの間が拘束されている間には、背凭れは水平状態に保たれ尚かつ自由に前後方向へ摺動可能であり、また係止部材の係合が解除されれば、リンクと背凭れとが互いに独自に回動することが許容されて背凭れがどの位置にあってもその位置から回動可能な状態になるようにしているので、背凭れを引き出してテーブルとして使用する際にも回動させながら任意の位置に背凭れを直に移動させることができると共に任意の位置から背凭れを立てて椅子に換えることができる。したがって、椅子を切り換える際の操作の自由度が高くが使い易さものとなるし、通路を確保し易い。
【0039】しかも、このテーブル兼用椅子によると、機構が簡単で部品点数も少ないし、背凭れをテーブルとして使用するときに機構の大部分が椅子の背面側に露出しない。さらに本発明のテーブル兼用椅子によると、前方以外からの回動操作を可能とする。
【0040】さらに請求項2記載の発明のテーブル兼用椅子によると、ブラケットの長孔とピンとの係合によって支柱側スライダとリンク側スライダとが共に摺動可能に保持されるので、背凭れの支持が確実であると共に支持機構としての剛性も得られる上に、デザイン的にもロック解除機構やアンチパニック機構などを隠すことが可能となり好ましい。
【0041】さらに請求項3記載の発明のテーブル兼用椅子によると、係止部材を伸縮させることによって、支柱とリンクとの間の支点間距離を変化させて固定連鎖の傾きを調整できるので、背凭れを水平状態だけでなく必要に応じて前傾あるいは後傾させることができる。したがって、椅子の施工上の問題、例えば据付け時に基礎・床面の水準が狂っている場合などにテーブルとした際の傾きを調整することでその狂いを吸収したり、あいるはテーブル面の傾きを使用者の好みの角度に調整することができる。
【0042】また請求項4記載の発明のテーブル兼用椅子によると、背凭れの上部のロック解除手段を引き上げてブラケットの長孔内の支柱のピンとリンクのピンとの連結を解除すると共にその引き上げ力をそのまま背凭れを回動させる力として利用することができるので、テーブルへの切り替え作業が容易となる。また、ロック解除手段は椅子の前方からだけでなく、側方あるいは後方からも操作可能であるため、操作の際の煩わしさを少くすることができる。
【0043】さらに請求項5記載の発明のテーブル兼用椅子によると、背凭れが後ろの椅子に接近してテーブルとして使用される場合には、付勢レバーがガイド部材の凹部と係合することによってある程度以上の外力が加わらない限り前後方向へ移動できないため、テーブルとして利用し易いものとなる。またこの状態の背凭れに前方への力を加えると、付勢レバーと係合部材の凹部との係合が解かれて使用者によって押されるだけ前方へ移動するので、容易に椅子の前に通路を確保できる。しかも、付勢レバーがガイド部材の傾斜部にさしかかると、付勢レバーが傾斜面に押し付けられて背凭れを前方へ付勢する分力が生じるため、最後まで押さなくとも前端まで自動的に移動させ、所望の通路幅を確保し得る。また前端において背凭れは引き続き前方へ付勢され続けるため、後方へ戻す外力が加わらない限り不用意に後方へ移動してしまうことがない。このため、背凭れを前方へ押し出した際の反動などによって背凭れが後方へ戻ることが無く、通路の確保が確実にできる。
【出願人】 【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
【公開番号】 特開平11−75995
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平9−244463