| 【発明の名称】 |
編込みスライドファスナー |
| 【発明者】 |
【氏名】松田 義雄
【氏名】池口 祥人
【氏名】加藤 秀信
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| 【要約】 |
【課題】ファスナーエレメント列の編込みが容易であり、且つファスナーエレメント列を安定に且つ強固に取付けることができ、ファスナー面に対する上方への突き上げに対してもファスナーエレメント列に噛合割れが生じない経編の編込みスライドファスナーを提供する。
【解決手段】ファスナーテープ(T) の長手側縁部のファスナーエレメント取付部(EA)に、ファスナーテープの編成と同時に編込まれる連続状ファスナーエレメント列(ER)が2ウエール以上の固定用鎖編糸(F) により固定されている。前記各固定用鎖編糸(F) の各ニードルループが連続状ファスナーエレメント列(ER)の各エレメント脚部を上方から前記地組織側に押し付けると共に、各シンカーループ群が同連続状ファスナーエレメント列(ER)を載置するための地組織の一部を構成し、前記シンカーループ群の少なくとも一部のシンカーループには経挿入糸(G)を交絡して経挿入して編成する。そして、ファスナーエレメント取付部(EA)の全ての構成糸の熱収縮率をファスナーテープ主体部(TB)の構成糸のそれよりも高く設定し、編成終了後に各編成糸を熱収縮させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 経編の地組織よりなるファスナーテープ(T) の長手側縁部のファスナーエレメント取付部(EA)に、ファスナーテープ(T) の編成と同時に編込まれる連続状ファスナーエレメント列(ER)が固定用編糸(F) により固定されてなるスライドファスナーにおいて、前記ファスナーエレメント取付部(EA)の地組織が、少なくとも前記各固定用編糸(F) の一部及び他の編糸により構成されてなり、前記ファスナーエレメント取付部(EA)を構成する全ての編糸が、少なくともファスナーテープ主体部(TB)の地組織を構成する編糸よりも高い熱収縮性を有してなることを特徴とする編込みスライドファスナー。 【請求項2】 前記ファスナーエレメント取付部(EA)の構成糸の熱収縮率が前記ファスナーエレメント列(ER)を構成するモノフィラメントの熱収縮率よりも高く設定されてなる請求項1記載の編込みスライドファスナー。 【請求項3】 前記ファスナーエレメント取付部(EA)の構成糸にあって、前記経挿入糸(G) の熱収縮率が他のファスナーエレメント取付部(EA)の構成糸の熱収縮率よりも高く設定されてなる請求項1又は2のいずれかに記載の編込みスライドファスナー。 【請求項4】 前記ファスナーエレメント列(ER)は熱可塑性合成樹脂からなり、その構成素材であるモノフィラメントの熱収縮率が3〜18%であり、ファスナーテープの構成糸をなす前記経挿入糸(G) の乾熱収縮率が15〜40%、他のファスナーエレメント取付部(EA)の構成糸の乾熱収縮率が10〜30%、ファスナーテープ主体部(TB)の構成糸の乾熱収縮率が3〜10%である請求項1〜3のいずれかに記載の編込みスライドファスナー。 【請求項5】 前記ファスナーエレメント列(ER)がポリアミド系合成樹脂、ポリエステル系合成樹脂、又はポリブチレン系合成樹脂からなり、前記熱収縮率が乾熱収縮率又は沸水熱収縮率から選ばれ、前記ファスナーテープの熱収縮時に前記経挿入糸(G) 及び他のファスナーエレメント取付部(EA)の構成糸の収縮と前記ファスナーエレメント列(ER)を構成するモノフィラメントの収縮とにより、同モノフィラメントの脚部に各構成糸の糸食い込み溝が形成されに十分な収縮率である請求項4記載の編込みスライドファスナー。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の技術分野】本発明はファスナーテープを経編組織により構成すると共に連続状ファスナーエレメント列をファスナーテープの長手側縁部のエレメント取付部に同時に編込んで固定する編込みスライドファスナーに関し、更に詳しくはエレメント取付部の編組織を緻密に且つ連続状ファスナーエレメント列が強固に取り付けられ、同エレメント列のエレメント間のピッチの狂いがなく、エレメント間の噛合割れもなく、しかもファスナーテープのファスナーエレメント取付部における形態安定性が確保された編込みスライドファスナーに関する。 【0002】 【従来の技術】従来の、連続状ファスナーエレメント列をファスナーテープの編成と同時に編み込むタイプの編込みスライドファスナーとしては、例えば米国特許第3,864,946号明細書、特開平2−255104号公報に開示されているように、経編の地組織により構成されたファスナーテープの長手側縁部のエレメント取付部に、ファスナーテープの編成と同時にプラスチックモノフイラメントからなる連続状のファスナーエレメント列を複数本の固定用鎖編糸の編目内に編込んで取付固定した編込みスライドファスナーが知られている。しかるに、前者の明細書に開示された編込みスライドファスナーは、連続状ファスナーエレメント列の各エレメントを各固定用鎖編糸のシンカーループ単独でファスナーエレメントの脚部の上面に跨がって固定し、その取付部の地組織は同鎖編糸のニードルループと緯挿入糸にて構成しているため、鎖編目自体のもつ特有の伸縮性も加わって固定力が弱く、また後者の公報に開示された編込みスライドファスナーは、連続状ファスナーエレメント列の各エレメントを各固定用鎖編糸のファスナーエレメント列の取付部における地組織部分も固定用鎖編糸のシンカーループが薄手となり、特に図11に示す如くファスナー面に対して上方へ突き上げるような曲げ応力を受けたときに、ファスナーエレメント列の互いに噛合している噛合部分の浮上りにより噛合割れを起こしやすい点が問題となっていた。こうした課題を避けるために、固定用編糸を他の編成糸より太くすればファスナーエレメント列の固定が強固なものとなるが、通常の経編機の編針間隔が極めて狭く、また同間隔を広げようとすると編針の太さを細くせざるを得ない。そのため、編成糸の太さや同一の編針に絡ませる本数も自ずと制限されることになる。 【0003】こうした問題点を解消すべく開発された編込みスライドファスナーが、例えば特開平8−314号公報に開示されている。この公報に開示された編込みスライドファスナーによれば、ファスナーエレメント列の固定用鎖編糸によるテープ地組織側の一列のウエールを構成するニードルループ群に、更に別の鎖編糸を重複させて編成するものであって、ファスナーエレメント列の取付部における地組織の編目が重複して編成された前記鎖編により緻密となり、ファスナーエレメント列の固定を安定化させている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特開平8−314号公報に開示された編込みスライドファスナーにあっても、テープ地組織側とは反対側でファスナーエレメント列を上から押える編糸は、相変わらず固定用鎖編糸の単なるシンカーループのみであるため、ファスナーエレメント列の上下に配される編成組織がアンバランスとなり、ファスナーエレメント列の上側が貧弱な構成のものとなっており、この場合もファスナー面に対して上方へ突き上げるような曲げ応力を受けると、ファスナーエレメント列が噛合割れを起こしやすく、更には固定用鎖編の編目自体の安定化を図るため、同公報に開示されている如く別の鎖編糸を重複して編成することはトリコット編目も加えると1本の編み針に3本の編糸が絡まることとなり、編み針に無理が生じるという問題点があった。 【0005】そこで、本発明はかかる従来の問題点を解消して、ファスナーエレメント列の編込みが容易であり、且つ通常の経編機によってもファスナーテープにおけるファスナーエレメント列取付部に高密度な編組織が得られ、ファスナーエレメント列を寸法的に安定して強固に取付けることができると共に、ファスナー面に対する上方への突き上げに対しても適度な抵抗力を有し、スライドファスナーの使用中の折り曲げによってもファスナーエレメント列に噛合割れが生じない編込みスライドファスナーを提供することを目的としている。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明の主要な構成をなす経編の地組織よりなるファスナーテープの長手側縁部のファスナーエレメント取付部に、ファスナーテープの編成と同時に編込まれる連続状ファスナーエレメント列が2ウエール以上の固定用編糸により固定されてなるスライドファスナーにおいて、前記ファスナーエレメント取付部の地組織が、少なくとも前記各固定用編糸の一部及び他の編糸により構成されてなり、前記ファスナーエレメント取付部を構成する全ての編糸が、少なくともファスナーテープ本体の地組織を構成する編糸よりも高い熱収縮性を有してなることを特徴とする編込みスライドファスナーにより達成される。 【0007】すなわち、請求項1に係る発明にあって、ファスナーエレメント取付部の構成糸、ファスナーテープ主体部の構成糸及びファスナーエレメント列の各熱収縮率の関係を前述のように設定することにより、編成密度を通常の密度に設定した場合にも、編成後に加熱処理を施すと、ファスナーエレメント取付部の構成糸がファスナーテープ主体部の構成糸よりも大きく収縮して、ファスナーエレメント取付部が高密度となって緻密化し、上述の編組織に基づく織物様の風合に加えて形態がさらに安定化するとともに、ファスナーエレメント列が固定用鎖編糸により強固に緊締され、ファスナーストリンガーをテープ面方向に強く屈曲させたときにも噛合割れが発生せず、強力な噛合強度が確保される。 【0008】更に、上述の構成は完成されたストリンガーを真っ直ぐにする機能を有している。すなわち、通常、連続するファスナーエレメントを編み込む編込スライドファスナーにあっては、編成時には各編糸に所定の張力が掛けられ、各編糸は密に編み上げられるが、エレメント取付部ではエレメントにより密に編み込むことができず、エレメント列が外方に凸状に湾曲する全体が弓様に曲がった編み上がり製品となる。本発明にあって、このような形態の編み上がり製品に乾熱又は沸水処理を行うと、エレメント取付部の熱収縮量がファスナーテープ本体の熱収縮量より大きいため、ファスナーストリンガーの全体がほぼ直線的、又はエレメント列が若干内側に凹状に湾曲した形態となり、以降の完成されたスライドファスナーの縫製などの作業が極めてやりやすくなる。 【0009】請求項2の発明にあっては、上記構成に加えて前記ファスナーエレメント取付部の構成糸の全ての熱収縮率を前記ファスナーエレメント列の熱収縮率よりも高く設定する場合には、ファスナーストリンガーの形態を更に安定化するとともに、前記ファスナーエレメント取付部の構成糸、特に前記固定用編糸の収縮によりファスナーエレメント列の前記固定用編糸による緊締部が局部的に糸が食い込み凹溝を形成し、更にファスナーエレメントに対する緊締力を増すと同時にファスナーエレメント列の長手方向及び横方向の位置変動をなくす。 【0010】また請求項3のごとく、前記ファスナーエレメント列の噛合頭部寄りの最外縁部に前記固定用編糸を含むウエールごとの編組織と同一の編糸及び組織からなるウエールを編成する場合には、テープのファスナーエレメント取付部の外縁の組織がテープ主体側に引っ張られ、ファスナーエレメント列の緊締力を増加させるすると同時に同外縁の形態及び寸法もより安定化する。 【0011】そして、請求項4の発明は上記各発明にあって、前記ファスナーエレメント列は熱可塑性合成樹脂材料からなり、その構成素材であるモノフィラメントの熱収縮率が3〜18%であり、ファスナーテープの構成糸である前記経挿入糸の乾熱収縮率が15〜40%、他のファスナーエレメント取付部の構成糸の乾熱収縮率が10〜30%、ファスナーテープ主体部の地組織を構成する編糸の乾熱収縮率が3〜10%であることが望ましいが、それらの熱収縮率や他の物性などにより、例示した前記可塑性合成樹脂材料の他の材質をも採用することもできる。 【0012】前記モノフィラメントの熱収縮率が3%未満だと、エレメントが硬直に過ぎ、各エレメントの脚部表面に糸の食い込みによる凹溝が形成されにくく、エレメントのテープ幅方向の滑りが生じやすい。また、前記熱収縮率が18%以上だと、エレメント自体が柔らか過ぎて、噛合強度が低下して、テープ幅方向に横滑りしやすく、且つ噛合部に突き上げ力が作用したとき、容易に噛合が外れてしまい、製品の品質面で実用化に耐えないものとなる。 【0013】請求項5の発明は、前記ファスナーエレメント列はポリアミド系、ポリエステル系、ポリブチレン系、ポリプロピレン系などの熱可塑性合成樹脂材料を用いることができ、具体的にはナイロン6やナイロン66、延伸率の低いポリエステル、或いはポリブチレンテレフタレートが好ましい。そして、その構成素材であるモノフィラメントの前記熱収縮率を決めるに当たっては、その材質により乾熱下の熱収縮率を選択するか、或いは沸水中における収縮率を選択する。特に、その収縮により噛合強度と糸の食い込み溝の形成との両者を同時に満足する収縮率を選択することが肝要である。 【0014】 【発明の実施形態】以下、本発明の好ましい実施の形態を図示実施例に基づいて具体的に説明する。図1〜図4は本発明の第1実施例を示しており、図1は連続状ファスナーエレメント列の取付状態を模型的に示した編込みスライドファスナーの一部を裏側から見た斜視図、図2は同スライドファスナーの一部を表側から見た斜視図、図3は同スライドファスナーの一部を省略して示す全体的な経編組織図、図4は同スライドファスナーの各編糸ごとの経編組織図である。 【0015】なお、図1と図2にあっては理解をしやすくするため、ファスナーテープ主体部を省略し、ファスナーエレメント取付部を中心にして各編糸を緩めた状態を示しているが、実際には各編糸における編目及び交絡部分は緻密に引き締まったものとなっていることは理解できよう。また、各編糸の太さについて図面上では多様な太さのものを記載しているが、これは理解を助けるためであり、実際には編込みスライドファスナーとしての機能と編目の形成を考慮して、その太さは任意に選択し得るものである。これらのことは、以下に説明する図5〜図10に示した各実施例についても同様である。 【0016】この第1実施例による編込みスライドファスナーSは、図1〜図4からも理解できるように1列の針床をもった一般の経編機によって編成することができる。このことは、後述する各変形例及び他の実施例についても同様である。 【0017】本実施例におけるファスナーテープ主体部TBの地組織はポリエステル系合成繊維からなる編糸により構成され、図3及び図4に示す如く鎖編糸(A)は0−1/1−0の鎖編組織で、トリコット編糸(B)は1−0/1−2のトリコット編組織で、また3種の緯挿入糸(C)(D)(E)のそれぞれが0−0/2−2、3−3/0−0、4−4/0−0の同一編組織でファスナーテープTの幅方向にジグザグ状に挿入されて編成している。そして本実施例によれば、ファスナーテープ主体部TBの中間位置TB1では図3に示す如く鎖編糸(A)が省略され、同中間位置TB1に柔軟性をもたせて衣服等の被着物に対してなじみやすくし、スライドファスナーSの取付けを容易且つ確実にしている。勿論、前述の省略をせず、ファスナーテープ主体部TBの中間位置TB1をも他の部分と同様に鎖編糸(A)により編成してもよい。なお、ファスナーテープ主体部TBの地組織の構成糸としては、ポリエステル系合成繊維の他にもポリアミド系、ポリプロピレンなどからなる合成繊維糸を挙げることができる。 【0018】また本実施例では、ファスナーテープTの長手側縁部の4ウエールをファスナーエレメント取付部EAとし、ナイロン6又はナイロン66のモノフイラメントからなるコイル状のファスナーエレメント列ERの構成モノフィラメントを、1コースおきごとに同一コース内でテープ巾方向に往復動させて、同モノフィラメントを前記取付部EAに編み込みながら連続するファスナーエレメント列ERを形成する。このファスナーエレメント列ERは、ファスナーエレメント取付部EAにおいて同一の鎖編組織0−1/1−0をもって編成される2ウエールの固定用鎖編糸(F)によって、コイル状ファスナーエレメント列ERの形成と同時に1コースおきに前記ファスナーエレメント取付部EAに編み込まれて連続的に取付固定がなされる。なお、この場合の固定用鎖編糸(F)は、図1及び図2に示す如くそのニードルループをファスナーエレメント列ERの各エレメントEの脚部上側を跨がらせて長手方向に編成され、ウエール方向に連続する各ニードルループ群によりファスナーエレメント列を上側から地組織側に押え込んでファスナーエレメント取付部EAに固定している。このとき、シンカーループはファスナーエレメント列ERの各脚部の下側となってウエール方向に連続する各シンカーループ群を形成し、ファスナーエレメント列ERを載置するファスナーエレメント取付部EAの地組織の一部を構成する。 【0019】ここで、本実施例にあっては経挿入糸G1が1−0/0−1の編組織の下で前記固定用鎖編糸(F)の各シンカーループ群の全シンカーループに順次交絡しながら挿入され、ファスナーエレメント取付部EAの地組織中に編み込まれる。なお、第1実施例の場合、特に図1及び図3に示すように経挿入糸(G1,G2)は2ウエールW1,W2の固定用鎖編糸(F)だけでなく、それらの両側の各ウエールW3,W4の構成糸である鎖編糸(A′)に沿ってもそれぞれ経挿入糸(G3,G4)をジグザグ状に挿入している。このようにすれば、ファスナーエレメント取付部EAの地組織部分の全体が織物のような風合及び形態を備えるようになり、縦横方向において寸法的に安定されてファスナーエレメント列ERをより安定した状態で固定することができる。なお、このような経挿入糸(G1〜G4)はファスナーエレメント列ERの固定用鎖編糸(F)のみに挿入してもよく、或いはファスナーテープTの最外縁のウエールを含む3本のウエールW1,W2,W4を構成する各鎖編糸(A′),(F),(F)のそれぞれに挿入してもよい。従って、図示例は本実施例の一例を示しているに過ぎず、本実施例は様々な変形例をも包含することが理解されよう。 【0020】さて、以上の編組織にあって、本発明では前記ファスナーエレメント取付部EAを構成する全ての編糸が、少なくともファスナーテープ主体部TBを構成する編糸よりも高い熱収縮性を有していることが重要である。 【0021】すなわち、上記第1実施例にあっては、ファスナーエレメント取付部EAの構成糸である上記経挿入糸(G1)〜(G4)、固定用鎖編糸(F)、鎖編糸(A)及び緯挿入糸(C)(D)の全ての熱収縮率が、ファスナーテープ主体部TBの構成糸である鎖編糸(A)、トリコット編糸(B)及び緯挿入糸(E)の熱収縮率よりも高く設定されている。また、更に前記経挿入糸(G1)〜(G4)の熱収縮率を、他のファスナーエレメント取付部EAの構成糸である固定用鎖編糸F、鎖編糸A及び緯挿入糸(C)(D)の熱収縮率よりも高く設定することが望ましい。 【0022】これを具体的な数値で説明すると、前記ファスナーエレメント取付部EAの構成糸のうち、100〜150デニールの経挿入糸(G1)〜(G4)の乾熱収縮率は15〜40%の範囲であり、20〜30%であることが好ましく、前記固定用鎖編糸(F)、鎖編糸A及び緯挿入糸(C)(D)は100〜350デニールであって、その乾熱収縮率は10〜30%、好ましくは10〜15%であり、またファスナーテープ主体部TBの構成糸である鎖編糸(A)、トリコット編糸(B)及び緯挿入糸(E)は100〜300デニールであって、その乾熱収縮率は3〜10%の範囲であって、好ましくは5〜8%である。 【0023】ここで、前記収縮率は繊維又はフィラメントの材質とその延伸時における延伸倍率及びセット温度により決定される。一般に、高収縮糸は延伸倍率及びセット温度が低く、結晶化密度が低くなり、そのため強度的には弱く伸長度は大きい。一方、一般的に多用さている通常糸は延伸倍率が高く、緊張状態で且つ高温でセットされて結晶化度も高くなり、そのため強度的にも強く且つ収縮率も低くなる。 【0024】本発明にあっては、前記ファスナーエレメント取付部EAの構成糸の熱収縮率を前記ファスナーエレメント列ERの構成素材であるモノフィラメントの熱収縮率よりも高く設定することが望ましい。具体的には、0.4〜0.8mmφの前記ファスナーエレメント列ERの熱収縮率は3〜18%である。この収縮率には乾熱収縮率と沸水収縮率とがあり、それぞれ材質により異なる。例えば、本実施例では、ナイロン66モノフィラメントが使われており、その乾熱収縮率が7〜11%、沸水収縮率が4〜8%のものがエレメント硬度及び糸食い込み溝の形成上、特に好ましい。 【0025】一方、ポリエステルモノフィラメントでは、乾熱収縮率が16〜18%、沸水収縮率が6〜10%のものが特に好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートからなるモノフィラメントにあっては、乾熱収縮率が6〜14%、沸水収縮率が2〜5%であるが、沸水収縮率が3%未満では柔らか過ぎて噛合強度が低く、且つ糸の食い込みが大きすぎてエレメントの強度自体が低くなる。以上の観点から、前記熱収縮率は材質により適宜選択されるものの、その範囲は3〜18%であることが望ましい。 【0026】本発明の合成樹脂製ファスナーエレメントの編み込みスライドファスナーSにあって、ファスナーエレメント取付部EAの構成糸、ファスナーテープ主体部TBの構成糸及びファスナーエレメント列ERの各熱収縮率の関係を前述のように設定することにより、編成密度を通常の密度に設定した場合にも、編成後に加熱処理を施すと、ファスナーエレメント取付部EAの構成糸がファスナーテープ主体部TBの構成糸よりも大きく収縮するため、ファスナーエレメント取付部EAの編密度が高くなって緻密化され、上述のごとく編組織に基づく織物様の風合に加えて形態がさらに安定化するとともに、ファスナーエレメント列ERが固定用鎖編糸(F)により更に強固に緊締され、ファスナーストリンガーをテープ面方向に強く屈曲させたときにも噛合割れが発生せず、強力な噛合強度が確保される。 【0027】このとき、前記経挿入糸(G1)〜(G4)の熱収縮率を、他のファスナーエレメント取付部EAの構成糸である固定用鎖編糸(F)、鎖編糸(A)及び緯挿入糸(C)(D)の熱収縮率よりも高く設定するとともに、前記ファスナーエレメント取付部EAの構成糸の全ての熱収縮率を前記ファスナーエレメント列ERの熱収縮率よりも高く設定する場合には、ファスナーストリンガーの形態を更に安定化するとともに、前記固定用鎖編糸Fの収縮とファスナーエレメントEの構成素材であるモノフィラメントの収縮とが相まって、図5に示すようにファスナーエレメント列ERの脚部ELが前記固定用鎖編糸(F)により緊締され局部的に凹溝状に変形し、更に緊締力が増すと同時にファスナーエレメント列ERの長手方向及び横方向の位置変動がなくなる。 【0028】更に、一般的に編み上がり製品であるファスナーストリンガーは、ファスナーエレメント列Eが編み込まれるため、エレメント取付部EAの長さがテープ本体Tの長さよりも長く編成される結果、ファスナーストリンガー全体の形状はエレメント列Eが外側に突出する弓状に湾曲しているが、前記熱収縮処理により、エレメント取付部EAの収縮がテープ主体部TBのそれよりも大きいため、ほぼ直線的か、或いはエレメント列が内側に凹状に若干湾曲した形態となる。 【0029】図6は本発明の第2実施例を示しており、コイル状ファスナーエレメント列ERの取付状態を模型的に示したスライドファスナーの一部を裏側から見た斜視図である。この実施例では、経挿入糸(G1〜G8)を除く各編糸の編成組織は第1実施例の組織と同様であり、コイル状ファスナーエレメント列ERを固定する2ウエールW1,W2の各固定用鎖編糸(F)のシンカーループ群には2本の経挿入糸(G1,G5;G2,G6)が各シンカーループごとに互いに対称に交差しながら交絡して挿入されている。なお、図示例では経挿入糸(G1,G5;G2,G6)を2本の固定用鎖編糸(F)だけでなく、それらの両側の地組織の構成糸の一部をなす鎖編糸(A)の各ウエールW3,W4にもそれぞれ経挿入糸(G3,G7;G4,G8)を挿入しているが、この経挿入糸(G3,G7;G4,G8)は前記鎖編糸(A)のシンカーループ群に必ず挿入しなければならないものではなく、或いは2本の前記固定用鎖編糸(F)による鎖編組織と、最外縁部の鎖編糸(A)及び緯挿入糸(C),(D)による経編組織とのそれぞれに経挿入糸(G1,G5;G2,G6;G4,G8)を挿入するようにしてもよい。 【0030】図7は本発明の第3実施例を示し、コイル状ファスナーエレメント列ERの取付状態を模型的に示したスライドファスナーの一部を裏側から見た斜視図である。この実施例においても経挿入糸(G1,G2)の挿入形態を除くと、各編糸の編成組織は第1実施例のものと同様である。本実施例では、コイル状ファスナーエレメント列ERを固定する2ウエールW1,W2の固定用鎖編糸(F)により形成される2列のシンカーループ群にまたがって、2本の経挿入糸(G1,G2)がそれぞれ1つおきのシンカーループに図示の如く互いに対称的に交差しながらジグザグ状に交絡して経挿入されている。 【0031】図8は本発明の第4実施例を示す同様の斜視図であり、この実施例では上記第3実施例の構成に加えて、更に最外縁のウエールW3における鎖編糸(A)のシンカーループ群とこれに隣接する固定用鎖編糸(F)のシンカーループ群とにまたがって、2本の経挿入糸(G4,G5)がそれぞれの1つおきのシンカーループの間に図示の如く互いに対称的に交差しながらジグザグ状に交絡して経挿入されている。 【0032】図9は同じく本発明の第5実施例を示しており、2本の経挿入糸(G1,G2)を使用する点では上記第3実施例と類似しているが、この実施例では固定用鎖編糸(F)の2ウエールW1,W2の方向に形成される各シンカーループ群にまたがって、且つ全てのシンカーループ間を交差しながら互いに対称的にジグザグ状に交絡して経挿入されている。 【0033】図10は本発明の第6実施例を示しており、この実施例は2列の固定用鎖編糸(F)の各シンカーループ群にそれぞれ1本の経挿入糸(G1,G2)を挿入している点で上述した第1実施例と類似するところはあるが、この実施例では各経挿入糸(G1,G2)が各シンカーループ群の1つおきごとのシンカーループにそれぞれ順次交絡するようにしている。なお、同図では2ウエールW1,W2の各固定用鎖編糸(F)のシンカーループ群にそれぞれ経挿入糸(G)を挿入している例が示されているが、更に前記各固定用鎖編糸(F)に隣合う地組織の一部を構成する2本の鎖編糸(A)に、或いは最外縁のウエールW3における鎖編糸(A)に、同様に経挿入糸(F)を挿入するようにしてもよい。 【0034】図11は本発明の第7実施例を示しており、2列の固定用鎖編糸(F)の各シンカーループ群のそれぞれに2本の経挿入糸(G1,G5;G2;G6)が経挿入している点で上述した第2実施例と類似するが、この実施例では各2本の経挿入糸(G1,G5;G2;G6)は1列のシンカーループ群に形成される1つおきのシンカーループに互いに対称に交絡するようにしたものである。なお、この実施例では2ウエールW1,W2の各固定用鎖編糸(F)のシンカーループ群の他に、最外縁の鎖編糸(A)のシンカーループ群にも経挿入糸(G4,G8)が挿入されているが、例えば前記最外縁の鎖編糸(A)のシンカーループ群に挿入される経挿入糸(G)を除くこともでき、或いは最外縁とは反対側の固定用鎖編糸(F)に隣合う鎖編糸(A)のシンカーループ群にも経挿入糸(G3,G7)を挿入するようにしてもよい。 【0035】以上、第2実施例〜第7実施例にあっても、第1実施例と同様にファスナーエレメント取付部EAを構成する全ての編糸が、少なくともファスナーテープ主体部TBを構成する編糸よりも高い熱収縮性を有しており、またファスナーエレメント列ERの熱収縮率も他のテープ構成糸よりも低く設定している。そして、同時に経挿入糸(G1〜G8)の熱収縮率は他の編成糸の熱収縮率よりも高く設定されており、その結果、それらの構成により派生する機能も、編組織に基づく機能に加えて既述した第1実施例と同様の機能を発揮する。 【0036】以上、種々の実施例を挙げたが、これらの実施例に限定されないことは上述の説明からも明らかであろう。例えば、既述したように上記各実施例における地組織を構成する各編糸の太さは必要に応じて任意に選定できるが、上記経挿入糸(G)についても同様であり、特に上記各実施例においてファスナーエレメントの噛合頭部に最も近く配される鎖編糸(A)に挿入される経挿入糸(G)の太さを、その内側に配された固定用鎖編糸(F)に挿入される経挿入糸(G)の太さより太い編糸を使用することがある。この場合には、ファスナーエレメント取付部の端縁部が重厚なものとなり、ファスナー面に対する上方への折曲げや突き上げに対して、十分に耐えることができるようになり、ファスナーエレメントの噛合割れを極力抑えることができる。 【0037】また、ファスナーエレメント列ERの固定用鎖編糸(F)の編成組織以外のファスナーテープ主体部TBの地組織を構成する各編糸の編成組織も図示組織に限定されるものではなく、例えば上述の例では緯挿入糸は3種類の組織からな構成されるが、全ての緯挿入糸を同様の組織で挿入するようにもできる。 【0038】また、固定用鎖編糸(F)についても、上述の実施例では2ウエールとして示したが、ファスナーエレメント列の大きさに応じて3ウエールとする場合もあり、その場合には全ての固定用鎖編糸(F)に経挿入糸(G)が交絡して挿通される。また、上記連続状ファスナーエレメント列もコイル状に限らず、図11に示すようにファスナーテープ主体部TBの平面内にエレメントの左右脚部と連結部とがU字形に屈曲されて長手方向に沿って噛合部を挟んで上下交互に連続するジグザグ状に形成した、いわゆるジグザグ型のファスナーエレメント列であってもよい。 【0039】更にまた、本発明は連続状ファスナーエレメント列ERを構成するプラスチックモノフイラメントによる噛合部とその噛合部とは反対側の連結部との形成位置を反対にして被着物に取付け、完成後にファスナーエレメント取付部を折返して噛合部同士を噛合させる隠しスライドファスナーにも適用することができることは勿論である。 【0040】 【発明の効果】以上、詳しく説明したように本発明の編込みスライドファスナーは、特に少なくともファスナーエレメント取付部を構成する全ての編糸の熱収縮率を、テープ主体部を構成する編糸の熱収縮率よりも高く設定しているため、編成後に熱処理を行うことにより、ファスナーエレメント取付部を構成する全ての編糸がテープ主体部を構成する編糸に比較して大きく収縮し、ファスナーエレメント取付部の前記地組織上に編み込まれたファスナーエレメント列は、エレメント間のピッチの狂いを更に生じにくくさせ、特に固定糸によるファスナーエレメント列の緊締脚部に前記固定糸が食い込み、凹溝を形成するため、ファスナーエレメントの脚部の上下間に配される編糸のバランスがとりやすくなり且つその締結力が強固となり、更にはファスナー面に対して上方へ突き上げるような曲げ応力に対しても、より強い抵抗力が付与され、またファスナーエレメントの互いに噛合している噛合部分の浮上りによる噛合割れも発生せず、スライドファスナーとしての閉鎖機能が常に確保される。 【0041】更に本発明にあって、上記経挿入糸の熱収縮率を他の全ての編成糸のそれよりも高くすると同時に、ファスナーエレメント列の熱収縮率をテープを構成する編成糸のそれより低く設定する場合には、上記作用効果に加えて固定用編糸がファスナーエレメントの各脚部を凹溝状に変形させ、スライドファスナーのいかなる状況下における使用によってもファスナーエレメント間の位置変動がなく、より締結力が向上すると同時に、この種の編込スライドファスナーにあっては回避し得ない、ファスナーエレメントが外側に弧状に突出するファスナーストリンガーの湾曲形態も、熱処理後にはほぼ直線状、或いはファスナーエレメント列が内側に凹状に若干湾曲する形態となり、以降のファスナー製造工程の取り扱いが容易になるばかりでなく、後の縫製時における取扱いも極めて容易となって、自動縫製が可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006828 【氏名又は名称】ワイケイケイ株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)12月26日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】野口 武男 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−187909 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)7月13日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−359028 |
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