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【発明の名称】 生分解性使い捨て手袋
【発明者】 【氏名】石川 雅博

【要約】 【課題】生分解性が改善され、さらには吸湿性があり、手に馴染みが良く、静電気による塵の付着が少ない生分解性使い捨て手袋を提供すること。

【解決手段】脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対してポリカプロラクトン1〜200重量部を配合してなるポリエステル樹脂組成物をTダイ成形して得られた厚さ40μmのフィルムを2枚重ね合わせ、手袋形状にヒートシールし、周縁部を切断して得られた生分解性使い捨て手袋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対してポリカプロラクトン1〜200重量部を配合してなるポリエステル樹脂組成物を成形して得られたフィルムからなる生分解性使い捨て手袋。
【請求項2】 脂肪族ポリエステル樹脂がコハク酸及び/又はアジピン酸をジカルボン酸成分とするポリエステル樹脂である請求項1記載の生分解性使い捨て手袋。
【請求項3】 脂肪族ポリエステル樹脂が1,4−ブタンジオールをジオール成分とするポリエステル樹脂である請求項1又は2に記載の生分解性使い捨て手袋。
【請求項4】 脂肪族ポリエステル樹脂がポリエステル樹脂を脂肪族ジイソシアネート化合物で高分子量化したものである請求項2又は3に記載の生分解性使い捨て手袋。
【請求項5】 フィルムを二重に重ね、重ねたフィルムを手袋の形状に接着すると共に切断して得られる請求項1記載の生分解性使い捨て手袋。
【請求項6】 接着がヒートシールにより行われる請求項5記載の生分解性使い捨て手袋。
【請求項7】 園芸用、食品加工・取り扱い用、医療機器取り扱い用、クリーンルーム内作業用に使用される請求項1〜6のいずれかに記載の生分解性使い捨て手袋。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は生分解性を有するポリエステル樹脂組成物のフィルムを使用した生分解性使い捨て手袋に関する。更に詳しくは、比較的生分解性の高くない脂肪族ポリエステル樹脂やウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル樹脂を含みながら、これら自体よりも生分解性にも優れたポリエステル樹脂組成物のフィルムから得られた生分解性使い捨て手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、使い捨て手袋としてはポリオレフィン等のプラスチック製のものが使用されている。このようなプラスチックは、安定性、耐久性のあることが特徴であり、使い捨て手袋以外でも、包装材、建築資材、自動車、その他様々な分野に使用され、大量消費されている。それらの使用後の廃棄処分方法としては、焼却処分や、埋め立て処分が挙げられるが、ポリオレフィンや塩化ビニール等の難分解性の樹脂は、焼却の際には高発熱量による焼却炉の損傷や、有害性廃ガスの発生が問題となり、一方、埋め立て処分の場合は、環境中にいつまでも残留することによる環境汚染が問題になっている。
【0003】そこで、天然素材系のバイオセルロースや澱粉主体のプラスチック、低置換度セルロース系エステル、微生物の合成するポリエステル、脂肪族のポリエステル樹脂等が生分解性のあるプラスチックとしてその用途等が検討されている。これらの内、加工性、コスト、機械特性、耐水性等の点で比較的バランスがとれていて、様々な用途に使いやすい樹脂として、化学合成で得られる脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0004】脂肪族ポリエステル樹脂は、α,ω−2官能脂肪族アルコールと、α,ω−2官能脂肪族カルボン酸の重縮合で得られるポリエステル樹脂で代表されるが、一般的に融点が低く、従来のポリオレフィンの代替としては使用できるものではない。ところが、ある種のポリエステル樹脂は融点が100℃以上で、熱可塑性を有することが知られており、合成検討が行われてきた。すなわち、コハク酸と1,4−ブタンジオールから得られるポリエステル樹脂、コハク酸とエチレングリコールから得られるポリエステル樹脂、シュウ酸とネオペンチルグリコールから得られるポリエステル樹脂、シュウ酸と1,4−ブタンジオールから得られるポリエステル樹脂、シュウ酸とエチレングリコールから得られるポリエステル樹脂等がそれらに相当する。このうち、シュウ酸から得られるポリエステル樹脂は特に熱安定性が悪く、高分子量に至らないが、コハク酸から得られるポリエステル樹脂は熱安定性が比較的良好であり、合成の工夫が行われてきた。しかし、これらコハク酸系の脂肪族ポリエステル樹脂であっても、一般的な装置を用いて重縮合する場合、高分子量にするのは難しく、実用的な機械強度を有する樹脂は得られにくい。
【0005】そこで、ポリエステル樹脂の分子末端水酸基をポリイソシアネート等を用いてウレタン結合により高分子量化することが行われている。ここで用いるポリイソシアネートは芳香族系よりも脂肪族系の方が生分解性に優れた性質を示すことから、ヘキサメチレンジイソシアネート等がしばしば用いられる。このようにして、低分子量の脂肪族ポリエステル樹脂を高分子量化し、機械特性を確保して、射出成形、ブロー成形、繊維化、フィルム化等の加工に対応させているのが現状である。
【0006】ところが、これら脂肪族ポリエステル樹脂であっても結晶性が高かったり、前記のようにウレタン結合を樹脂分子内に導入した場合、微生物による生分解性が通常低下する。このことは、樹脂の非晶部分から生分解が進み、結晶部分は分解しにくく、残りやすいことが知られていること、またポリオールとして生分解性に優れるポリカプロラクトンポリオールを用いても、ポリイソシアネートにヘキサメチレンジイソシアネートを用いたカプロラクトン系のポリウレタンの生分解性は、JIS K6950で規定されている活性汚泥中での分解試験で評価すると、殆ど分解が認められないという結果になることからも明かである。このような傾向は、比較的低密度のウレタン結合含有樹脂においても認められることから、本来生分解性のあるポリエステル樹脂も高分子量化のために含まれることとなる数重量%程度の少量のウレタン結合の存在により、生分解性が低下する原因になっていることが多い。事実、数平均分子量10,000程度のコハク酸系のポリエステル樹脂の分子末端水酸基をポリイソシアネートを用いて4〜5個つないで数平均分子量40,000〜50,000に高分子量化したポリエステル樹脂をJIS K6950で規定されている活性汚泥中での分解試験で評価すると、難分解性という評価結果になる。したがって、これらの樹脂を使用しても生分解性の良好な使い捨て手袋は得られない。また、使い捨て手袋としては、上記生分解性の他に吸湿性が要望されたり、静電気による塵の付着が少ないものが要望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、生分解性の改善された樹脂製使い捨て手袋を提供することである。さらには吸湿性があり、静電気による塵の付着が少ない生分解性使い捨て手袋を提供することである。
【0008】
【問題点を解決するための手段】単一の樹脂では、それを効率よく分解する菌が存在する環境で生分解性を示すが、より分解性の良好な樹脂を配合・混練することにより、混練した樹脂を分解する菌が環境中に存在する確率が上がること、更に一旦分解が始まると、表面積が広がり、表面が親水性になり、菌が生育しやすくなる環境ができること等の理由により、単一の樹脂の場合より、分解性が向上する場合もある。本発明者等は、それ自体では比較的生分解性の高くない脂肪族ポリエステル樹脂やウレタン結合を含み生分解性が低くなったポリエステル樹脂に対し、より生分解性が高いポリカプロラクトンを配合し、混練することにより、生分解性が著しく向上することを見い出した。すなわち、混練樹脂組成物を構成する生分解性の低いポリエステル樹脂の単独での分解率と含有比率、生分解性の高いポリカプロラクトン単独での分解率と含有比率から期待される分解率よりも高分解率が得られることを見い出した。またポリカプロラクトンは融点が60℃と低いので、これを混練することで樹脂組成物全体の融点が低くなることが通常考えられるが、実用上問題ない融点低下の範囲に納まる比較的少量のポリカプロラクトンの配合・添加により、それ自体では比較的生分解性の高くない脂肪族ポリエステル樹脂やウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル樹脂の生分解性を著しく改善出来ることを見い出した。そして、このような混練樹脂組成物からフィルムを得て、フィルムを重ね合わせてヒートシールすると共に不要部分を切断することにより生分解性が著しく改善され、また吸湿性があるので手に馴染みやすく、塵が付きにくい使い捨て手袋が得られること、該使い捨て手袋が園芸用、食品加工・取り扱い用、医療機器取り扱い用、クリーンルーム内作業用等に適することを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち本発明の第1は、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対してポリカプロラクトン1〜200重量部を配合してなるポリエステル樹脂組成物を成形して得られたフィルムからなる生分解性使い捨て手袋を提供する。本発明の第2は、脂肪族ポリエステル樹脂がコハク酸及び/又はアジピン酸をジカルボン酸成分とするポリエステル樹脂である本発明の第1に記載の生分解性使い捨て手袋を提供する。本発明の第3は、脂肪族ポリエステル樹脂が1,4−ブタンジオールをジオール成分とするポリエステル樹脂である本発明の第1又は2に記載の生分解性使い捨て手袋を提供する。本発明の第4は、脂肪族ポリエステル樹脂がポリエステル樹脂を脂肪族ジイソシアネート化合物で高分子量化したものである本発明の第2又は3に記載の生分解性使い捨て手袋を提供する。本発明の第5は、フィルムを二重に重ね、重ねたフィルムを手袋の形状に接着すると共に切断して得られる本発明の第1に記載の生分解性使い捨て手袋を提供する。本発明の第6は、接着がヒートシールにより行われる本発明の第5に記載の生分解性使い捨て手袋を提供する。本発明の第7は、園芸用、食品加工・取り扱い用、医療機器取り扱い用、クリーンルーム内作業用に使用される本発明の第1〜6のいずれかに記載の生分解性使い捨て手袋を提供する。
【0010】以下、本発明について詳細に説明する。本発明で使用する脂肪族ポリエステル樹脂としては特に限定されるものではないが、融点が100℃以上で、熱可塑性を有するもの、比較的生分解性の高くないものが好ましく、前記コハク酸と1,4−ブタンジオールから得られるポリエステル樹脂、コハク酸とエチレングリコールから得られるポリエステル樹脂、シュウ酸とネオペンチルグリコールから得られるポリエステル樹脂、シュウ酸と1,4−ブタンジオールから得られるポリエステル樹脂、シュウ酸とエチレングリコールから得られるポリエステル樹脂等が例示できるが、特に好ましくはコハク酸と1,4−ブタンジオールから得られるポリエステル樹脂である。
【0011】本発明で使用するウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル樹脂は、前記脂肪族ポリエステル樹脂を、好ましくは脂肪族ジイソシアネート化合物により高分子量化したものである。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル{OCN-(CH24-CH(-NCO)(-COOCH3)}、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示されるが、中でもヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。またウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル樹脂の好ましい数平均分子量としては、20,000以上、更に好ましくは40,000以上の範囲である。ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル樹脂としては、昭和高分子(株)製ビオノーレ(#1000シリーズ、3000シリーズ等)が知られている。本発明ではウレタン結合を含まない脂肪族ポリエステル樹脂もウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル樹脂も共に脂肪族ポリエステル樹脂という。
【0012】本発明で使用するポリカプロラクトンは、例えばアルコールなどの活性水素を開始剤として、これにε−カプロラクトンを常法の開環重合により重合して得られるものである。前記開始剤の官能数は、特に制限はなく、2官能や3官能のものが好ましく使用できる。ポリカプロラクトンの分子量は、低分子量から高分子量まで使用できるが、低分子量のポリカプロラクトンを使用した場合は、混練樹脂の耐熱性や機械強度の低下が大きくなるので添加量が制限されるが、樹脂組成物の溶融粘度が低下し、成形性が向上する等のメリットが現れる。しかし高分子量のポリカプロラクトンを使用する方が配合率を多くすることができ、耐熱性、機械特性、生分解性をいずれも高くバランスさせることが可能であり、より好ましい。具体的には数平均分子量で1,000〜200,000、更には5,000〜100,000のポリカプロラクトンが好ましく使用できる。なお、200,000よりも高い数平均分子量を有するものも問題なく使用可能であるが、このような分子量の非常に高いポリカプロラクトンを得るのは難しく、現実的ではない。また、使用するポリカプロラクトンは、ε−カプロラクトンの単独重合体以外に、バレロラクトンや、グリコリド、ラクチドなどのコモノマー構成単位を、例えば20モル%以下含まれる共重合体も使用可能である。
【0013】脂肪族ポリエステル樹脂とポリカプロラクトンの配合割合は、双方の分子量、要求される生分解性にもよるが、前者100重量部に対し後者が1〜200重量部、更に好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは20から40重量部の範囲である。
【0014】脂肪族ポリエステル樹脂とポリカプロラクトンを混練する場合は、両者に相溶性の有ることが混練して得られる樹脂組成物の機械特性の面から好ましいが、両者の相溶性が無い場合は、例えば、被混練樹脂成分とポリカプロラクトン成分の共重合体等の相溶化剤、例えば両者の中間の極性を有する樹脂等の添加も好ましく使用できる。
【0015】本発明の生分解性使い捨て手袋は、フィルムに柔軟性や与えたり、腰を強くするため、引裂強度を向上するため、あるいは接着強度向上のために、必要により他の生分解性樹脂を配合することができる。他の生分解性樹脂としては、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸或いはこれらのヒドロキシカルボン酸と前記脂肪族ジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の炭素数2〜10の脂肪族ジオールとからなる脂肪族ポリエステル、生分解性セルロースエステル、ポリペプチド、ポリビニルアルコール、澱粉、セルロース、カラギーナン、キチン・キトサン質、天然直鎖状ポリエステル系樹脂、又はこれらの混合物を添加できる。これらの他の生分解性樹脂は前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対してポリカプロラクトン1〜200重量部を配合してなるポリエステル樹脂組成物100重量部に対して1〜100重量部添加することができる。
【0016】また本発明において生分解性ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、樹脂成分の生分解性を阻害しない限り、種々の樹脂添加剤を配合することができる。樹脂添加剤としては可塑剤、熱安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、核剤、光分解剤、生分解促進剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、難燃剤、流滴剤、抗菌剤、防臭剤、充填材、着色剤又はこれらの混合物が挙げられる。
【0017】可塑剤としては、脂肪族二塩基酸エステル、フタル酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、ポリエステル系可塑剤、脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤、又はこれらの混合物が例示される。具体的には、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等のフタル酸エステル、アジピン酸−ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル、アゼライン酸−ジ−2−エチルヘキシル(DOZ)等のアゼライン酸エステル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸トリブチル等のヒドロキシ多価カルボン酸エステル、ポリプロピレングリコールアジピン酸エステル等のポリエステル系可塑剤であり、これらは一種または二種以上の混合物で用いられる。これら可塑剤の添加量としては、用途によって異なるが、一般には前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対してポリカプロラクトン1〜200重量部を配合してなるポリエステル樹脂組成物100重量部に対して、5〜15重量部の範囲が好ましい。
【0018】熱安定剤としては、脂肪族カルボン酸塩がある。脂肪族カルボン酸としては、特に脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸等の天然に存在するものが好ましい。塩としては、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、鉛、銀、銅等の塩が挙げられる。これらは、一種または二種以上の混合物として用いることができる。添加量としては、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対してポリカプロラクトン1〜200重量部を配合してなるポリエステル樹脂組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲である。
【0019】滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤として一般に用いられるものが使用可能である。たとえば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリクリセロール、金属石鹸、変性シリコーンまたはこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂等が挙げられる。滑剤を選択する場合には、ラクトン樹脂やその他の生分解性樹脂の融点に応じて、その融点以下の滑剤を選択する必要がある。例えば、脂肪族ポリエステル樹脂の融点を考慮して、脂肪酸アミドとしては160℃以下の脂肪酸アミドが選ばれる。配合量は、前記脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対してポリカプロラクトン1〜200重量部を配合してなるポリエステル樹脂組成物100重量部に対して、滑剤を0.05〜5重量部を添加する。5重量部を越えると物性も低下する。環境汚染を防止する観点から、安全性が高く、且つFDA(米国食品医薬品局)に登録されているエチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドが好ましい。
【0020】光分解促進剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノンとその誘導体;アセトフェノン、α,α−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノンとその誘導体;キノン類;チオキサントン類;フタロシアニンなどの光励起材、アナターゼ型酸化チタン、エチレン−ー酸化炭素共重合体、芳香族ケトンと金属塩との増感剤などが例示される。これらの光分解促進剤は、1種又は2種以上併用できる。
【0021】生分解促進剤には、例えば、オキソ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、などの炭素数2〜6程度のオキソ酸)、飽和ジカルボン酸(例えば、修酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、などの炭素数2〜6程度の低級飽和ジカルボン酸など)などの有機酸;これらの有機酸と炭素数1〜4程度のアルコールとの低級アルキルエステルが含まれる。好ましい生分解促進剤には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの炭素数2〜6程度の有機酸、及び椰子殻活性炭等が含まれる。これらの生分解促進剤は1種又は2種以上併用できる。
【0022】充填材としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、珪酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン、石綿、陶土(焼成)、ガラス繊維等の無機充填剤を添加することができる。これらの添加量はポリカプロラクトンと脂肪族ポリエステル樹脂の合計100重量部に対して、5〜100重量部である。
【0023】ポリカプロラクトンと脂肪族ポリエステル樹脂と必要に応じて添加される樹脂添加剤の混練方法は、一般的な方法が好ましく使用でき、具体的にはペレットや粉体、固体の細片等をヘンシェルミキサーやリボンミキサーで乾式混合し、単軸や2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの公知の溶融混合機に供給して溶融混練することができる。また、液状のポリカプロラクトンを添加する場合でも、同様の方法で混練することができる。
【0024】上記の組成物は、フィルムに成形される。成形方法としては、Tダイ押出し、Tダイキャスト、ブロー、インフレーション、カレンダー等の各種成形方法が使用できる。フィルムの厚さとしては10〜100μm、好ましくは20〜50μm、特に好ましくは30〜40μmである。
【0025】フィルムの少なくとも一方の表面には、エンボス加工等の模様を施すことが可能である。外面にエンボス加工を施すと、手袋を着用して物を取り扱う際の滑り止め効果や、手袋あるいはフィルムを重ねたときに一枚ずつ取り出しやすく、また内面にエンボス加工を施すと、手袋をはめる際に着用しやすく作業中もフィルムと皮膚が密着しないので使用感が良い。従って、内外にエンボスを施すことが可能であり、目的に応じて内外のエンボスの大きさを変えることができる。エンボスはフィルムの接着性を考えて、接着部分には施さないようにすることができる。エンボスはフィルム製造時に、適当な粗度を有するチルロールとプレッシャーロールとの間にフィルムを通すことにより施される。エンボスの種類は亀甲、格子、絹目、ダイヤ、玉虫、麻目、梨地、しぶき等何でもよい。エンボス深さは2〜300μmである。フィルムの一部には、通気等のために1μm〜10mmの多数の孔をあけることもできる。
【0026】手袋の形状、サイズは種々のものを作ることができる。手袋の形状は5本指のものでも、親指と他の4本に分かれたミトン型のものでもよいし、指部分のない一つの袋状のものでもよい。フィルムは所定の大きさ、形状に裁断される。裁断されたフィルムは手袋が型抜きできる大きさであれば特に制限されず、長方形でも、予め概略の手袋の形状に裁断しておてもよい。フィルムを二重に重ね合わせるには、裁断された一枚のフィルムを二重に折り畳んでもよいし、裁断されたフィルムを二枚重ね合わせてもよい。重ね合わせたフィルムは手袋の形状に接着される。接着部分は差し入れ口を除く、手の外周縁部である。接着には接着剤を使用してもよいが、好ましくはヒートシールにより行われる。ヒートシール温度は樹脂組成物の融点以上であり、250℃以下である。ヒートシールの幅は1mm以下、好ましくは0.7mm以下、更に好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0.2mm以下である。ヒートシールの幅を狭くすることができれば、邪魔な部分が少ないので、細かな作業を行う上で便利である。重ねたフィルムは接着に続いて手袋の形状に切断され、フィルムの余分な部分が除かれる。切断はヒートシール後にエッジ付き型で行ってもよいが、ヒートシール時に同時に切断することが好ましい。裁断された一枚のフィルムを二重に折り畳んで手袋形状に接着する場合には、折り曲げ部は接着は不要であり、裁断も不要である。差し入れ口を接着した場合には、切断時又は使用時に切り取るようにすることができる。また、フィルムは長方形の手袋が複数つながって得られるように、長いフィルムを裏表二枚重ねて溶着し、不要な部分がないので、溶着のみにより長方形の手袋が得られ、手袋一つづつがミシン目で切り取り使用できるようにしてもよい。この場合、指の間にもミシン目を入れて使用時にミシン目を開いて各指を独立させることもできる。このような方法では、全体として長方形の手袋が帯状につながった形状になるので保管、取り出し等が容易である。生分解性使い捨て手袋は、必要であれば、表裏の2枚のフィルム間に吸湿シート層(例えば不織布)を挟み込むことができる。吸湿シート層の材質は本発明で使用する前記脂肪族ポリエステルとカプロラクトンの組成物を使用することもできるし、前記他の生分解性樹脂を使用することもできる。
【0027】本発明で提供される生分解性使い捨て手袋は、下記JIS K6950で規定する都市下水汚泥中での4週間培養後の分解率が20%、好ましくは30%を上回る。また本発明で提供される生分解性使い捨て手袋は、従来のポリオレフィン製使い捨て手袋の代替として広範な用途に使用することができる。特に環境に放置されやすい物品用途、吸湿性の要求される用途、塵の付きにくい用途等に用いることが好ましい。吸湿性があることによって手に馴染みやすく、手が蒸れにくく、手荒れを起こしにくく、汗により手袋内部で滑りにくく、外表面は塵が付きにくいので、精密機械・電気、半導体、薬品・物質の取り扱い、製造等の産業用、医療用、園芸用、食品加工・取り扱い用、家事用、その他ホテル、宴会場、結婚式場、塗装現場、実験室等において利用することができる。
【0028】サンプルの生分解性評価方法はJIS K6950に準じた活性汚泥を使用する方法や、土壌中の埋設、海水中や河川中への浸漬、コンポストでの評価など種々あるが、以下の実施例では、一般フィールドでの分解性と相関関係があるとされるJIS K6950に準じて行った。
【0029】
【実施例】以下に実施例を挙げて詳細に説明するが、これらによって本発明を限定するものではない。
【0030】(実施例1)コハク酸(Mw=118)35.4重量部と1,4−ブタンジオール(Mw=90)29.1重量部とテトライソプロピルチタネート0.02重量部を攪拌機、分流管、ガス導入管、減圧用管を備えたフラスコに入れ、窒素雰囲気常圧下、200℃で2時間、引き続いて徐々に減圧にしながら、0.5mmHg以下に到達した後、200℃で5時間攪拌し、水及び過剰の1,4−ブタンジオールを系内から留出除去し、ポリエステル樹脂を合成した。次に、窒素雰囲気常圧下、200℃でヘキサメチレンジイソシアネート(Mw=168)を0.8重量部添加して、分子量を上げたポリエステル樹脂(A)を合成した。ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量はGPCによる標準スチレン換算で約44,000、重量平均分子量は約185,000であった。ポリエステル樹脂(A)とポリカプロラクトンとの混練およびフィルムサンプルの成形は、以下の方法で行った。ポリエステル樹脂(A)を100重量部と、ポリカプロラクトン「PCLH7」(ダイセル化学工業製,数平均分子量70,000)11.1重量部をラボプラストミルに供給して150℃、30rpmで混練し、トルクが安定した後、更に10分間加熱混練した。得られた樹脂組成物をTダイ押出し成形し、エンボス加工を施して厚さ40μmのフィルムを作製した。300×250mmのフィルムを2枚重ね合わせ、所定の手形にヒートシールし、外周部分を切断して、生分解性使い捨て手袋を得た。クリーンルーム内でシリコンウェハーの取り扱いに該手袋を使用したが、従来のポリオレフィン製の手袋に比較して手袋からシリコンウェハーへの塵の移行が少なかった。
【0031】(実施例2)コハク酸ジメチル(Mw=146)43.8重量部、1,4−ブタンジオール29.1重量部、テトライソプロピルチタネート0.02重量部を攪拌機、分流管、ガス導入管、減圧用管を備えたフラスコに入れ、窒素雰囲気常圧下、190℃で2時間、引き続いて徐々に減圧にしながら、1〜0.5mmHgで200℃に昇温して8時間攪拌し、更に0.5〜0.1mmHgで210〜220℃に昇温して5時間攪拌し、メタノール及び過剰の1,4−ブタンジオールを系内から留出除去し、ポリエステル樹脂(B)を合成した。ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は約38,000、重量平均分子量は約75,000であった。ポリエステル樹脂(B)を100重量部と、ポリカプロラクトン「PCLH1P」(ダイセル化学工業製,数平均分子量10,000)11.1重量部を使用して実施例1と同様にしてフィルムを得た後、生分解性使い捨て手袋を作成した。手袋は、園芸用に使用した後、土中に埋めて容易に生分解することができた。
【0032】(比較例1)ポリエステル樹脂(A)のみのフィルム(厚さ40μm)から、実施例1と同様にして手袋を作成した。
【0033】(比較例2)ポリエステル樹脂(B)のみのフィルム(厚さ40μm)から、実施例1と同様にして手袋を作成した。
【0034】(比較例3)ポリカプロラクトンPCLH7(ダイセル化学工業製)のみのフィルム(厚さ40μm)から、実施例1と同様にして手袋を作成した。
【0035】(比較例4)超低密度エチレン−α−オレフィン共重合体、長鎖分岐型低密度ポリエチレン、短鎖分岐型低密度ポリエチレンからなるフィルム(厚さ30μm)を使用して手袋を作成した。
【0036】上記で得られたフィルムに付き、機械特性、耐熱性、生分解性等の評価を行った。
【0037】
【表1】

【0038】機械特性:機械強度、破断時伸び測定は、サンプルは3号ダンベルを使用し、JIS 7112に準じて行った。
耐熱性 :樹脂片(30×30×1mm)を2枚重ねて、オーブン中で加熱し、融着状況を観察し、融着が生じる最低温度を求めた。
生分解性:JIS K6950に準じて、活性汚泥中での酸素消費量から生分解性を求めた。結果は4週間培養後の分解率で示した。
この結果、実施例1及び2では生分解率は、36%と40であり、ポリエステル樹脂(A)、(B)およびポリカプロラクトンの混合比率から期待される生分解率(実施例1では10%、実施例2では22%)よりも、それぞれ約260%と100%改善されていることが分かった。これはポリエステル樹脂(A)、(B)はポリカプロラクトンにより、誘引分解したものと考えることができる。これに対して従来からのポリエチレン製使い捨て手袋は生分解性が無い。以上のことから、本発明のポリカプロラクトンを混練した樹脂組成物のフィルムから得られた使い捨て手袋では、フィルム製造時に被混練脂肪族ポリエステル樹脂の融点低下等物性の低下を殆ど伴うことなく、混練による生分解性の改善効果が明らかである。また、本組成物を使用したフィルムは吸湿性があるので、ポリエチレン製に比較して手袋に付着した塵埃が落ちにくいし、皮膚が汗ばみにくい。
【0039】
【発明の効果】本発明により、生分解性が良く、吸湿性を有する使い捨て手袋が容易に得られ、家庭、病院、学校、研究室、塗装等の作業現場、製造・加工工場、食品取り扱い場等で各種の用途に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000002901
【氏名又は名称】ダイセル化学工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 良和
【公開番号】 特開平11−335913
【公開日】 平成11年(1999)12月7日
【出願番号】 特願平10−165932