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【発明の名称】 衣料用インナーおよびそれからなる着衣
【発明者】 【氏名】外池 芳信

【氏名】今枝 直樹

【要約】 【課題】本発明は、熱、蒸気の放出性ならびに通気性に優れた衣料用インナーを提供せんとするものである。

【解決手段】本発明の衣料用インナーは、繊維状物からなる間隙を有する三次元立体成形体シートであって、該成形体シートの少なくとも表裏2面に布帛が積層されており、かつ、該成形体シートの該間隙が0.5〜20mmであることを特徴とするものである。また、本発明の着衣は、かかる衣料用インナーが、外衣の内部に取り付けられていることを特徴とするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】繊維状物からなる間隙を有する三次元立体成形体シートであって、該成形体シートの少なくとも表裏2面に布帛が積層されており、かつ、該成形体シートの該間隙が0.5〜20mmであることを特徴とする衣料用インナー。
【請求項2】該繊維状物の太さが、1〜500デニールである請求項1記載の衣料用インナー。
【請求項3】該繊維状物が、合成繊維である請求項1または2記載の衣料用インナー。
【請求項4】該布帛の少なくとも1面の布帛が、多数の開孔部を有しており、かつ、その1個の開孔部面積が0.01〜10cm2 である請求項1記載の衣料用インナー。
【請求項5】該三次元立体成形体シートが、多数の開孔部を有しており、かつ、その1個の開孔部面積が0.01〜10cm2 である請求項1記載の衣料用インナー。
【請求項6】請求項4または請求項5の衣料用インナーにおいて、該開孔部の位置が略一致しており、貫通孔を形成しているものであることを特徴とする衣料用インナー。
【請求項7】該三次元立体成形体シートが、該成形体シートの主体をなす繊維同士を接結糸で結合して構成されたものであり、かつ、該成形体シートの表裏に存在する布帛間の空間に占める該接結糸の体積は、その空間の50%以下である請求項1記載の衣料用インナー。
【請求項8】該三次元立体成形体シートが、編織物および不織布の少なくとも1種で構成されているものである請求項1記載の衣料用インナー。
【請求項9】該三次元立体成形体シートと該布帛が、縫製、接着剤および編織組織の少なくとも1種の手段により接合されているものである請求項1記載の衣料用インナー。
【請求項10】該衣料用インナーが、ベストの形状または袖付きの形状のいずれかの形状を有するものである請求項1〜9のいずれかに記載の衣料用インナー。
【請求項11】該衣料用インナーが、外衣の襟上部まである首部を有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の衣料用インナー。
【請求項12】該衣料用インナーが、ズボン下の形状を有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の衣料用インナー。
【請求項13】請求項1〜12のいずれかに記載の衣料用インナーが、外衣の内部に取り付けられて構成されていることを特徴とする着衣。
【請求項14】透水拡散能テストで表面積比が1以上である布帛を内側に取り付けたものである請求項1〜13のいずれかに記載の衣料用インナー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば熱、蒸気等の放出性ならびに通気性に優れた衣料用インナーおよびそれからなる着衣に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、特に夏場での屋内、屋外を問わず衣料を着用して作業を行う場合においては、発汗による強烈な蒸れによる不快感を経験してきた。このような場合には、古くから、体表面と下着の間にタオルを挟んで着用し、そのタオルを汗拭き代わりに利用してきたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、猛烈に体温が上昇すると体の全表面から汗と蒸気が想像以上に放出されるものである。このような状況に対しては、前記タオルの面積からして体全体を覆うことは困難であり、また、仮に覆うことができたとしても逆にタオルの保温効果で蒸れを助長してしまうことさえあった。
【0004】本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、熱、蒸気の放出性ならびに通気性に優れた衣料用インナーを提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の衣料用インナーは、繊維状物からなる間隙を有する三次元立体成形体シートであって、該成形体シートの少なくとも表裏2面に布帛が積層されており、かつ、該成形体シートの該間隙が0.5〜20mmであることを特徴とするものである。
【0006】また、本発明の着衣は、かかる衣料用インナーが、外衣の内部に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、ここで我々は、とりわけ上半身の表面全体から熱、蒸気の放出が効率よく実施が可能となる様鋭意研究を実施した結果、特定な繊維成形物を介在させてみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0008】本発明のかかる繊維成形物、すなわち繊維状物からなる間隙を有する三次元立体成形体シートは、たとえば、図1に示すごとき編み物組織からなるものが代表的なものであり、表裏布帛層となる編み組織1に対し、接結糸2が表裏の面に対し直角方向に存在する組織を有するものが好ましく使用される。かかる組織の代表的なものとしては、特にダブルラッセルが好ましく使用される。以下、本発明をかかる三次元立体成形体シートに代表させて説明する。
【0009】本発明では、この接結糸が表裏布帛面と直交する方向の長さの分で形成される間隙を通気層として活用することができるが、そのためにはできるだけ少ない糸で間隙を保持することが通気性向上の意味から好ましい。すなわち、接結糸の設計条件は、該立体成形体シートの通気性や柔軟性を左右するもので、例えば、接結糸の糸太さが太くなり過ぎると剛直になり、表裏面での折り返しが緩慢になり、直角性が維持できず間隙を形成するのに有効に利用されないという問題が生じる。逆に、細過ぎると、剛直性が不十分となり、それ自身間隙を形成できないとか、少しの外力に対しても簡単にヘタリを惹起してしまうという問題がある。また、糸素材についても絶えず架かる外力に対し抵抗力を持つような耐座屈性や耐折力のある素材が好ましく使用される。かかる接結糸は、丸型、三角型、四角型、十字型および中空型等各種の断面形状のものを使用することができ、特に限定されるものではない。
【0010】本発明において、該立体成形体シートの間隙(厚さ方向および平面方向の間隙を意味する)を確保するだけなら、接結糸の打ち込み密度を極端に多くすればその目的は達成できる。しかしながら、本発明においては、かかる接結糸は、間隙を形成するのに必要な自立力と適度な通気性を持った通気層の確保が要求されるものである。従って、むやみに接結糸を多くしたり、少な過ぎたりすることは有効でない。
【0011】また、本発明において、該立体成形体シートによる通気性は、体内より発生する熱や蒸気をインナー末端の方へ移動させ、外気に放出すること、さらには、そのことにより体表面の汗は乾きベトベト感がなくなり快適性を得るという効果を達成するものである。
【0012】本発明の該三次元立体成形体シートは、前記したように、該成形体シートの主体をなす繊維同士を接結糸で結合して構成されたものであり、かつ、該成形体シートの表裏に存在する布帛間の空間に占める該接結糸の体積を、その空間の好ましくは50%以下、さらに好ましくは0.5〜10%に制御したものが使用される。
【0013】かかる該三次元立体成形体シートは、本発明では、主として空隙率の大きい編み物を表裏2重構造とし、その表裏面を接結糸により適切な間隙を形成することにより通気層を確保し、かつ、図2の断面図で示すようにインナーとして襟上まである首部3を有することにより間隙を空気が腰下から首上に抜けるように構成することにより、今までにない大きな蒸れ防止効果を得たものである。ここで、接結糸の糸太さとしては、好ましくは1〜1000デニール、さらに好ましくは10〜500デニールである。
【0014】本発明の該三次元立体成形体シートを構成する表裏面の編み組織は、同一のものであっても、異なったものであっても、特に限定されない。かかる編み組織の中でも、好ましくはハニカム状のような開孔部を持った網状構造が好ましく、接結糸はこの網足の部分に垂直に編みこまれている形状のものが好ましく使用される。何故ならば、この開孔部が存在するという利点は、実際にインナーを着用すると理想的にはインナーは、体表面と、例えば防弾チョッキとの間に密着する筈であり、該防弾チョッキの通気性が全くない状況においてはインナーの表裏方向への通気性は遮断されることになり、開孔部の存在の価値がないように思えるが、現実には、インナーは捩れたり防弾チョッキ自身が凸凹して体表面との間に隙間ができたり、あるいは、人体自身その表面形状は三次元的に複雑な構造をしているため、実際的に衣服と密着させることはきわめて困難であり、従って空気の流れは、通気層として確保した間隙のみだけでなく表裏面からの空気の出入りを繰り返しながら、末端より放出するものも無視できないからである。
【0015】かかる三次元立体成形体シートにおける開孔部の形状は、ハニカム状でなくとも他の多角形、円形、楕円形等、別に制約されないし、また、開孔部の大きさや数についても、表裏同じであっても、異なっていても特に差し支えない。
【0016】なお、該三次元立体成形体シートにおける開孔部の1個当たりの面積については、好ましくは0.01〜10cm2 、さらに好ましくは0.05〜1cm2 である。かかる開孔部の面積が0.01cm2 以下では、隣の糸と接近するため編み組織によっては、開孔部の効果を明確に発現させにくく、また、10cm2 以上になると、開孔部分では、表裏布帛の間隙を維持するための接結糸が存在しないため、その開孔部分に衣服が入り込んでしまい通気層となる空間を占有し、通気性を阻害する傾向が顕著になり好ましくない。さらに、開孔部の位置関係については、表裏布帛面の間で対象の位置に存在していることが好ましいが、あえて対象の位置からズラした位置関係にしてもかまわない。かかる開孔部は、熱や蒸気、通気性が有効に移動、排出されるために設けられるものであるから、該三次元立体成形体シートの少なくとも厚さ方向に貫通しているものが好ましい。
【0017】本発明の該三次元立体成形体シートは、少なくとも表裏2面が布帛で積層されているものであって、かかる布帛は、少なくとも片面の布帛が多数の開孔部を有するものを使用することができる。ここでいう開孔部も、熱や蒸気、通気性が有効に移動、排出されるために設けられるものであるから、該三次元立体成形体シートの開孔部と一致した位置に存在させて、貫通孔を形成しているのが好ましい。また、かかる開孔部の1個の開孔部面積も、前記同様に0.01〜10cm2 であるものが好ましい。
【0018】また、かかる三次元立体成形体シートと該布帛は、縫製、接着剤および編織組織の少なくとも1種の手段により接合させて一体化させてもよく、かかる接合を一方の布帛のみとしてもよいし、両面の布帛と接合してもよい。
【0019】本発明の衣料用インナーが、有効にその性能を発揮する代表的なケースとして、例えば防弾チョッキ、防刃チョッキあるいは浮力体で覆われた救命胴衣等、熱や蒸気を外気に放出することを遮断する性質の高いものを外衣として着用して激しい運動を行った時がまさしくそのケースに相当する。このようなケースでは、体表面より発生する熱や蒸気で、体表面では極端に激しい蒸れ状態となり不快感はおろか体温上昇で倒れる者まで出る状況となる。従って、このような状況にしばしば対面することになる職業を持つ防衛庁陸上自衛隊、警察、あるいは民間においても警備保障会社等から改善の強い要求があった。
【0020】本発明の該三次元立体成形体シートおよび布帛を構成する繊維素材としては、合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリフェニルフェニレン繊維、ポリイミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリフロロビニリデン繊維、ポリテトラフロロエチレン繊維、ポリカーボネート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリパラフェニレンテレフタレート繊維、再生セルロース繊維等、天然繊維としては、羊毛、木綿、麻、絹等、無機繊維としては、ガラス繊維、各種セラミックス繊維、カーボン繊維等を使用することができる。これらの中でも、合成繊維が柔軟性や入手のしやすさ、加工性に優れているなどの点で好ましく使用される。これらの繊維は、単独またはこれらの混合、引き揃えの状態で使用してもかまわない。
【0021】本発明のインナーの特徴は、人体と外衣との境界面にある距離を有する間隙を確保し、この部分を通気層として利用するものである。
【0022】以上、該三次元立体成形体シートを編み物組織のものを代表させて説明したが、本発明の目的からは、かかる編み物に限定されるものではなく、織物や不織布で、さらにこれらに開孔部を設けたもので構成してもかまわないし、さらに布帛層が表裏2層だけでなく複数層であってもかまわない。
【0023】また、用途としては、防弾チョッキを外衣とする他に、防刃チョッキ、一般的な高温下での作業、例えば夏場の工事現場作業、体力消耗の激しいスポーツ用途、火源を使用する溶鉱炉等での作業等、あるいは、雨具を着用した場合のインナーとして等、人が激しく発汗する場面には、本発明の衣料用インナーは、有効に利用できる。
【0024】本発明の衣料用インナーは、ベストの形状または袖付きの形状のいずれかの形状で使用するのが好ましく、さらに、外衣の襟上部まである首部を有する形で使用することもできる。また、さらに該衣料用インナーを、ズボン下の形状を有する形として、着用することもできる。
【0025】本発明のかかる衣料用インナーは、外衣の内部に取り付けて着衣を構成するものであり、たとえば、チョッキ形や袖付形のインナーからなる着衣と、ズボン下の形状でズボンの内側に取り付けた着衣(ズボン)を着用すると、本発明の効果は、さらに助長される。さらに該外衣として、該衣料用インナーを外衣の襟上部まである首部を有するもの使用したものを取り付けたものを着用すると、通気層が腰下から首上に抜ける著しく通気性のよい、蒸れ感の全くない優れた着衣を提供することができる。
【0026】本発明で用いる透水、拡散能テストとは、次の方法にて測定したものである。
【0027】すなわち、ガラス板上に市販のインクを2倍に水で希釈したインク液を0.1CC滴下し、その上に各サンプルである編み地の裏(肌と接する非拡散面側)を下に、すなわちインク液に接する側にして乗せる。そして60秒間放置し、インク液を吸収させた後、今度は別のガラス板上に移動し、ここでも同様に裏面を下にして3分間放置する。
【0028】このようにして得られたサンプル編み地表裏面のインク液の拡散面積を測定し、その測定値と算出した面積比(表面の拡散面積/裏面の拡散面積)を示した。
【0029】拡散面積の大小はインク液の吸収状態を示すものであり、表面の拡散面積が大きく、かつ前記面積比が大きいものは滴下されたインク液を効率よく表面側に移動するいわゆる透水能力に優れていることを示すものである。また、表面側の拡散面積が大きいことは、大気との接触効率が良くなるので蒸散能も大きいと推定される。
【0030】
【実施例】以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
実施例1インナーとなる経編みダブルラッセル編み地を以下の条件にて作成した。表裏の編み地の糸には、ポリエステル糸150d/48f、接結糸には、ナイロン糸180d/1fを用いカールマイヤー社製タテ編みラッセル機にてコースの打ち込み密度22目/インチ、接結糸も同様密度であるが、長さを7mmとして作成した。この編み地を、乾熱180℃×30秒で展張セットしハニカム構造を発現させた。
【0031】その後、連続プレウェッター機にて油剤落としの精錬加工を行い製品となる編み地を得た。この編み地をオーバーロックミシンにて、縫い糸をポリエステル糸60番手、縫製方法をオーバーロックで仕立てた。
【0032】なお、縁部分はカバー地をポリエステル50番手の糸にて本縫いで行った。形態としては、チョッキ形であり、袖なし、下部丈はベルトラインより長く、上部首部分は、襟より端部が出るように仕立てた。
【0033】かかるインナーの効果を下記のような方法により評価した。まず、成人男子(体重60kg)に、実験室環境を30℃×65%RHに調整し、身に装着するものとしては、綿製のブリーフ、上半身には該インナーを直接身に付けた。その上からArmor technology corp.製model survivor X-1Tm3A+ の防弾チョッキを装着し、さらにその上から市販のポリエステル、綿混製襟付き作業衣を装着させた。
【0034】温湿度の評価機器としては、シンエイ社製温湿度検出センサーTRH−23をインナーと防弾チョッキとの間で腹部中央部に設置した。データは、0.2秒間隔にデジタル信号で検出し、RS232Cインターフェースを経由し、パソコンに取り込んだ。
【0035】温湿度の評価方法としては、実験者が上記衣服を着用したまま5分間静止経過後の温度T0 、湿度RH0 を基準値とした。実験者に一定の負荷を掛ける方法として、ミズノ社製自走式ジョギングエクササイザー28TT-8018 にて時速10kmの速度で15分間自走した。この瞬間の温度をT1 、湿度をRH1 とした。その後15分間静止経過後の温度をT2 、湿度をRH2 とし、下記算式により計算した。
【0036】[温度変化率]
T%=(T1 −T2 )/(T1 −T0 )×100[湿度変化率]
RH%=(RH1 −RH2 )/(RH1 −RH0 )×100評価の結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

さらに計測値では、表し難い着用することによる快適感については、従前の肌着に比較して汗が蒸散するためベトベト感がなく極めて心地良いものであった。
比較例1実施例1のインナーの代わりに、クラボウ社製K−TK8014、綿100%半袖U首シャツを着用した以外は実施例1と同様の着用構成、計測方法で実施した。
【0038】評価結果は、表1に示した。
【0039】なお、着用しての快適感については、発汗し始めの頃は汗も下着に吸収され、特に不快感を感じるものでなかったが、それもつかの間で約10分も経過すれば下着は既に汗で飽和状態になり、肌にベトベトと密着して肌は窒息状態となり極めて不快感の強いものであった。
【0040】
【発明の効果】本発明の衣料用インナーによれば、従来のものには全くなかった軽量で、蒸れ防止効果および通気効果の大きいものを提供することができるものである。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)11月6日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−241211
【公開日】 平成11年(1999)9月7日
【出願番号】 特願平10−315989