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【発明の名称】 揚げ物用衣素材とそれを利用した食品
【発明者】 【氏名】酒井 均

【要約】 【課題】砂糖や着色剤を添加しなくても食品に良好な食味、食感、着色を呈する揚げ物用衣素材およびそれを利用した食品を製造する。

【解決手段】揚げ物用衣素材主材料に、砂糖や着色剤のかわりにD−キシロースなどのペントースを添加することによって、砂糖を用いた場合の揚げ過ぎによる黒焦げや揚げ色にできる斑、砂糖の多めの添加により食感が悪くなることを防ぎ、良好な食味、食感、着色を呈する食品が得られ、しかも低カロリーの揚げ物用衣素材を製造し、商品価値の高い食品を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】衣素材主材料にペントースを添加したことを特徴とする揚げ物用衣素材。
【請求項2】前記ペントースは一般式【化1】

で表されるD−キシロ−スであることを特徴とする請求項1記載の揚げ物用衣素材。
【請求項3】前記D−キシロースの添加割合を小麦粉重量の0.2〜1.3%にしたことを特徴とする請求項1または2記載の揚げ物用衣素材。
【請求項4】請求項1、2または3記載の揚げ物用衣素材を用いたことを特徴とする食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、揚げ物用衣素材と、それを利用した食品に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、フライ、天ぷら、空揚げなど、小麦粉を原料にして高温の油で調理する食品において、調理後の色合いが商品の価値に非常に大きな影響を与えている。そのため、揚げ物用衣素材に砂糖や着色剤を添加することで色合いを良く見せることが行われている。しかし、砂糖を添加することで、パン粉が甘くなったり、揚げ過ぎにより黒焦げになる危険があったり、パン発酵の際に砂糖がイースト菌により消化されるので、パン発酵の具合により残留する砂糖の量に違いが生じ、揚げ色に斑が出来たりする。また、多めの添加により、加熱した時にキャンディー状になって食感を悪くしたり、調理後の時間経過につれ、砂糖が水分を吸って商品価値が落ちるなどの欠点があった。一方、着色剤を添加すると揚げ色は安定しているが、色合いが着色剤によって左右されることがあった。また、合成の着色剤は自然派食品、健康食志向にそぐわないなどの欠点があり、天然の着色剤は、それ自体は無害でも、添加に要する溶剤が有害であるという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の欠点を克服するためになされたものであり、砂糖や着色剤を使わなくても、良好な食味、食感が得られるとともに商品価値の高い揚げ色を呈することができ、しかも、健康食志向の要請に合うことは勿論、食品中のカロリーをも低くすることができる揚げ物用衣素材とそれを利用した食品を提供することを目的とする。
【0004】本発明者は上記目的を達成するために、多種多様の添加物について考察し、実験を積み重ねてきた結果、遂にその添加物として最適な物質を見出すに至ったものである。その物質とはペントース(五炭糖)である。ペントース(五炭糖)は自然界の動植物にごく一般的に存在する物質で、アミノ−カルボニル反応(褐変反応)がヘキソース(六炭糖)に比べ、10倍も速く、色つき(褐色)が良くなる。しかも人間は、ペントースを分解する消化酵素を持たず、消化吸収される割合が低いので摂取するカロリーが低いなどの長所がある。また、ペントースは、一般式C5105で表される五炭糖であり、D−キシロースのほか、D−リボースやL−アラビノース等も含まれる。
【0005】また、キシロースは揚げ色を良くするために衣素材主材料に添加しても砂糖の約10分の1の添加量ですみ、糖尿病患者にとっても良い等の長所がある。また、ペントースを添加した場合、砂糖を添加したときよりも食品のカロリーを低く抑えることができ、砂糖や着色剤を使用せずとも良好な揚げ色が得られる。衣素材とは、揚げ物の衣に用いるパン粉、天ぷら粉、空揚げ粉を指す。
【0006】そこで請求項1から2記載の発明のように、良好な食味、食感、着色を呈する商品価値の高い食品を製造するために、パン粉、天ぷら粉、空揚げ粉などの揚げ物用衣素材材料に、砂糖や着色剤を添加せず、ペントースやペントースの一種であるD−キシロースを添加することで解決した。揚げ物用衣素材としては、パン粉、天ぷら粉、空揚げ粉が含まれるが、これらの粉を使用する食品であれば、揚げ物に限定されない。例えば、パン粉はとんかつ、コロッケ、エビフライ、白身魚フライ、イカリング、カキフライ、牛カツなどの揚げ物のほか、ハンバーグやグラタンなどにも利用されるが、これらの食品を調理するための素材も含まれる。
【0007】また、衣素材主材料にD−キシロースなどのペントースを添加すると、その衣素材への添加量、衣素材を用いた食品の調理時間、調理温度などによって、調理された食品の色の付き具合は変化する。そこで、最適なD−キシロース添加割合について更に鋭意試験を重ねたところ、ついに、請求項3記載の発明のように、好適な食味、食感とともに最適な揚げ色を備えた食品が得られる、衣素材主材料のD−キシロース添加割合を明らかにすることができた。また、請求項4記載の発明によれば、ペントースやペントースの一種であるD−キシロースを添加した揚げ物用衣素材を用いて商品価値の高い食品を製造することができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明による揚げ物用衣素材を用いて調理した実施例について説明する。衣素材としては、D−キシロースを添加したパン粉、D−キシロースを添加した天ぷら粉、D−キシロースを添加した空揚げ粉などが挙げられるが、一例としてD−キシロースを添加したパン粉を衣素材の一つとして作製し、それを用いてとんかつを調理した。パン粉材料として小麦粉、イースト、食塩、ブドウ糖、ショートニング、大豆粉末、イーストフード、乳化剤、D−キシロースを用い、220℃、33分にて、オーブンで焼いて作ったパンからパン粉を作製した。この際、D−キシロースの添加割合を小麦粉重量の0%から2.0%までの7段階に変えた処方にて、7種類のD−キシロース入りパン粉を作製した。このようにして作製した衣素材であるそれら7種類のパン粉を用いて、調理温度、調理時間を変えながらとんかつを調理し、目視により調理されたとんかつの色つき具合を以下に示す3段階で評価した。
◎………商品価値として非常に価値が高い。
○………商品価値がある。
×………商品価値がない。
これにより、最適な揚げ色が得られるパン粉のD−キシロース含量、とんかつの調理温度及び調理時間を判定した。結果を表1から表5に示した。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0009】表1より140〜145℃において10〜15分、表2より150〜155℃において7〜15分調理することで、D−キシロース添加割合が0.5〜2.0%の範囲で商品価値のある揚げ色が得られた。このように、通常の調理温度より若干低く、多少時間が長くかかる条件においても良好な揚げ色が得られた。表3より、160〜165℃において、D−キシロース添加割合0.5〜2.0%、5〜10分間の調理、表4より175〜180℃において、D−キシロース添加割合0.06〜1.3%、5〜15分間の調理によって商品価値のある揚げ色が得られた。また、表5より、通常の調理温度より若干高い200〜205℃においても、D−キシロース添加割合が低い処方では長い調理時間で、D−キシロース添加割合が高い処方では短い調理時間で良好な揚げ色が得られた。
【0010】上に述べた範囲外の調理時間、D−キシロース添加割合でも揚げ色が良好なものが得られるが、揚げ色が良好であっても、調理時間の長短や、調理温度の高低によってとんかつの食味、食感が良くないこともある。そこで、揚げ色が良好なものが得られるD−キシロース添加割合、調理時間の範囲から、揚げすぎて硬くなったとんかつや、揚げ足りずに柔らかいままのとんかつとなった範囲を除き、良好な食味、食感をも得られるD−キシロース添加割合、調理時間の範囲を選定した。そこで、通常の調理条件は、揚げ油の温度が160〜165℃、170〜175℃または180〜185℃であることから、それぞれの調理温度で最適な調理時間及びD−キシロース添加割合を、表3と表4の結果より、表6に示した。
【表6】

【0011】以上より、パン粉の場合、ペントースの一つであるD−キシロースを0.06〜2.00%の含量で添加するのが、着色を呈するのに適当であるが、その範囲の中から商品として良好な食味、食感を得るためには、通常の調理温度、調理時間において、D−キシロース添加割合を0.2〜1.3%にすることが適当であった。
【0012】なお、以上に挙げたD−キシロース添加割合は、小麦粉重量に対する割合である。材料の配合時において、小麦粉重量が全体(小麦粉、イースト、食塩、ブドウ糖、ショートニング、大豆粉末、イーストフード、乳化剤、D−キシロース、水を含む)の60%である場合、パン粉に対するD−キシロース添加割合が、記載した数値の0.6倍となる。従って、D−キシロース添加割合を小麦粉重量の0.2〜1.3%にすると、D−キシロースを全体の0.12〜0.78%添加することになる。
【0013】実施例としてパン粉をとりあげたが、D−キシロースを天ぷら粉や空揚げ粉に添加しても、同様に良好な食味、食感、着色を呈する食品を得ることができ、同様に本発明を適用することができる。
【0014】
【発明の効果】揚げ物用衣素材主材料にD−キシロースなどのペントースを添加することによって、砂糖や着色剤を添加しなくても良好な食味、食感、着色を呈する食品が得られ、商品価値が大きく、食欲をそそる、健康にも良い食品を製造することができる。また、ペントースの添加量を調整することで、少ない添加量でも商品価値として良好な食味、食感、着色が得られ、食品中のカロリーを低く抑えることも可能である。
【出願人】 【識別番号】598031431
【氏名又は名称】酒井 均
【出願日】 平成10年(1998)3月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
【公開番号】 特開平11−262365
【公開日】 平成11年(1999)9月28日
【出願番号】 特願平10−65555