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【発明の名称】 未凍結の低温で流通販売できる米飯食品
【発明者】 【氏名】吉村 理恵子

【氏名】高見 幸司

【要約】 【課題】一般うるち米を使用した米飯食品における、低温温度帯での食感変化の抑制。低温で流通可能な米飯食品、特に未加熱で喫食可能な低温流通米飯の提供。

【解決手段】うるち米の精米の炊飯米を用いた未凍結の低温で流通販売できる米飯食品、特に15℃以下の低温で流通販売できる米飯食品。15℃以下の低温で流通販売できる米飯食品の好ましい態様はチルド流通米飯食品の態様である。米飯食品は未加熱で喫食できるものである。米飯食品の加水量を増加させることが最も効果が高く、上記炊飯米は水分含有量が58%以上、好ましくは60%以上または62%以上、最も好ましくは65%以上の炊飯米である。その際の米飯食品の種類としては、調味料を添加したものが低温保存時に食感変化が小さく、上記米飯食品は調味料を添加したもの、特に“すし”である。更に、添加物を使用することによって、耐老化を向上させることが可能であり、上記米飯食品は食品添加物、特に塩類を含有するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 うるち米の精米の炊飯米を用いた未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項2】 15℃以下の低温で流通販売できる米飯食品である請求項1の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項3】 チルド流通米飯食品である請求項2の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項4】 米飯食品が未加熱で喫食できるものである請求項2または3の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項5】 水分含有量が58%以上の炊飯米である請求項1ないし4のいずれかの未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項6】 水分含有量が60%以上の炊飯米である請求項5の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項7】 水分含有量が62%以上の炊飯米である請求項6の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項8】 水分含有量が65%以上の炊飯米である請求項7の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項9】 米飯食品が調味料を添加したものである請求項1ないし8のいずれかの未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項10】 米飯食品がすしである請求項9の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項11】 添加物を含有する炊飯米である請求項1ないし10のいずれかの未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項12】 食品添加物として塩類を含有する請求項11の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【請求項13】 上記塩類がCa塩である請求項12の未凍結の低温で流通販売できる米飯食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業の属する技術分野】本発明は、未凍結の低温で流通販売できる米飯食品に関する。より詳細には未凍結の低温下で保存しても硬くなりにくく、かつ粘りを維持した炊飯米を用いた米飯食品に関する。本発明において「低温」とは15℃以下、または「チルド」とは10℃以下で、各々凍結しない温度帯を意味する。
【0002】
【従来の技術】米を炊飯した米飯は、時間の経過と共に硬くなってゆく。この現象は米飯の老化と呼ばれ、その変化の度合いは低温の方が大きい。老化はデンプンの経時的な変化であり、水と熱により糊化したデンプンが、再結晶化するために起こるといわれている。米飯の老化を抑制する方法としては、酵素類(αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ等)、デンプン類(α化デンプン、加工デンプン等)、多糖類(ジュランガム、ヒアルロン酸等)、糖類(アンヒドロ糖、デキストリン、ブドウ糖、果糖、サイクロデキストリン)、糖アルコール類(トレハロース、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール等)、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド)の添加等のように添加物に代表される。これらは各々若干の効果を有するものの、これらの技術のみで米飯の老化を抑えることはできない。例えば、上記のいずれの技術を用いた場あるいは組み合わせた場合でも、通常の5℃で24時間保存した米飯は硬く、そのまま食するのは困難な状態となる。
【0003】上記の理由により、一旦低温下に保存されたご飯は電子レンジ等の加熱が必要となる。よって、一般に弁当惣菜店においては、そのまま喫食する場合も想定して米飯の老化が少ない15℃以上あるいは凍結して流通、販売されている。すなわち15℃以上で流通販売すれば米飯の老化は抑制されるわけであるが、本温度帯では細菌の繁殖が問題となり、静菌剤等の使用が必要となる。よって本来、より低温で保存可能な(低温で変化が少ない)おかず類へも静菌剤を使用せざるを得ない。一方、冷凍惣菜では、米飯の老化は少ないものの、特に野菜類等のおかず類の冷凍変性による食感変化が著しく、また本総菜では直ちに喫食しようとする場合、必ず電子レンジの加熱が必要である。また、他方では、特に米飯の食感が重要視され、かつ加熱解凍が難しい冷凍寿司では米飯の老化を抑えるために多量の糖類や食品用界面活性剤が添加されていることが多く、異味や異臭を感じる場合さえある。
【0004】うるち米とは遺伝的な性質が異なるもち米も難老化性が高いことが知られている。しかしながら、もち米には特有な臭いがあり、また、食感も粘りが強すぎることから前記の惣菜類には向かない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、一般うるち米を使用した米飯食品について、低温温度帯での食感変化の抑制を目的とする。すなわち、本発明は、低温で流通可能な米飯食品、特に未加熱で喫食可能な低温流通米飯の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、低温温度帯での食感変化を抑制することに関して、特に一般うるち米を使用した場合について鋭意研究し、米飯食品の加水量を増加させることが最も効果が高く、その際の米飯食品の種類としては、調味料を添加したものが低温保存時に食感変化が小さいことを明らかとした。更に、添加物を使用することによって、耐老化を向上させることが可能であり、添加物の中でも、塩類の添加効果が最も高く、その中でもCa塩の添加効果が高いことを明らかにした。これらの発見を基に本発明を完成させたものである。
【0007】本発明は、うるち米の精米の炊飯米を用いた未凍結の低温で流通販売できる米飯食品、特に15℃以下の低温で流通販売できる米飯食品を要旨としている。15℃以下の低温で流通販売できる米飯食品の好ましい態様はチルド流通米飯食品の態様である。米飯食品は未加熱で喫食できるものである。米飯食品の加水量を増加させることが最も効果が高く、上記炊飯米は水分含有量が58%以上、好ましくは60%以上または62%以上、最も好ましくは65%以上の炊飯米である。その際の米飯食品の種類としては、調味料を添加したものが低温保存時に食感変化が小さく、上記米飯食品は調味料を添加したもの、特に“すし”である。更に、添加物を使用することによって、耐老化を向上させることが可能であり、上記米飯食品は食品添加物、特に塩類を含有するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】水分量について試験を行った結果、生米に対し1.35倍から1.80倍までの加水量で炊飯した場合、米の品種や米飯製品の種類によって適当な加水量は若干異なるものの、5℃保存下で48時間まで品質保持が可能となった。何ら添加物を加えることなく、飯の水分量を58%から68%の範囲で抑制することで低温下に保存しても食感は保持される(ここでいう飯の水分量は135℃常圧定時乾燥法により測定した水分含有量であり、白飯の水分含有量を意味する。すなわち、多量の調味料を添加する米飯食品、例えば寿司ではここに示した水分含量よりも2〜4%程度低い値となる)。
【0009】すなわち、通常の市販電気炊飯器で炊飯した白飯を得た場合、一般的な加水量である1.20倍加水炊飯(水分含量58%)では、低温保存時に時間経過と共にすぐに硬くなって食用に適さなくなる。しかし、飯の水分含量を58%から60%、62%と増すことで品質維持期間は長くなる。例えばコシヒカリで調整したおにぎりは、水分量60%前後で、5℃保存下で24時間の品質維持可能であり、更に62%以上に増加させることで48時間の品質保持が可能となる。
【0010】また、低温温度帯では加水量を増やすことによって米飯の硬さや粘りなどをはじめとする保存中の品質変化の変動幅を抑制できることを確認している。すなわち、加水量が少ない場合は、飯の硬さの増加量はかなり大きく、かつ硬くなるスピードも大きく、短時間のうちに喫食が不可能となるが、加水を多くすることで硬さの増加量およびその変化のスピードを遅らせることができ、賞味期間を延長することが可能である。すなわち、目標とする品質維持期間によって加水量を決定することができる。短時間であれば、通常炊飯の加水量よりやや多め、比較的長い時間であればそれよりも加水を多くする。ただし、米飯製品によっては加水量を調節しなければならない。
【0011】上記の加水による食感の硬化抑制効果は加水量の増加によってデンプン分子の密度が低くなり、分子間の相互作用も生じにくく、そのため分子の再配列が起こりにくくなっているものと考えられる。
【0012】米飯食品の種類によっても、低温保存時の品質維持の難易は異なる。品質維持しやすいのは調味料を添加した形態のものであり、例えば、すしやおにぎりに代表される。これらの形態と比較して、白飯は品質維持が難しい。
【0013】本発明においては、前述の加水量を制御する、あるいは調味料を添加した食品形態にすることに加えて、食品用添加物を添加することにより、より耐老化性を高めることができる。ここでの食品添加物としては、酵素類、デンプン類、多糖類、糖類、糖アルコール類、乳化剤、塩類が挙げられる。具体的には、酵素は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼを0.01〜100U/米1gの添加が有効であり、これらは炊飯前、あるいは炊飯後に添加しても有効である。
【0014】デンプンとしてはアミロペクチン含有量の高いワキシーコーンスターチ、白玉粉、タピオカデンプンあるいは化工デンプン、およびこれらデンプン分解物が適しており、生米に対して0.5〜20%(W/W)添加が適している。その他の糖類ではジュランガム(対生米;(W/W)0.1〜5.0%)、ヒアルロン酸(同0.05〜0.8%)、アンヒドロ酸(同0.3〜3.0%)、デキストリン(同0.5〜20%)、サイクロデキストリン(同0.5〜20%)、オリゴ糖(同0.5〜20%)が良い。糖アルコールではトレハロース、ラクチトール、マルチトール、ソルビトールが有効であり、これらの添加量は対生米で0.1〜10%が適当である。乳化剤ではショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、リゾレシチン、ジグリセンリン脂肪酸エステルの添加が有効であり、好ましくはHLB12以上の乳化剤を生米に対し0.05〜1.0%(W/W)の添加が効果的である。
【0015】これらの添加物の中でも、特に塩類の添加効果が大きく、前述の調味料を添加した米飯食品の耐老化性が高い理由のひとつは、この塩類の添加効果と考えられる。すなわち、すし、おにぎりには通常、Na塩等が添加されており、この塩類の効果により、白飯よりも耐老化性が高いものと考えられる。これらの塩類は、食味に問題のない濃度での添加で十分な効果が得られる。このことはすし、おにぎりの例からもわかるように、調味を行う目的で、一般的な濃度で使用して効果は十分得られることからも明らかである。
【0016】また、塩の種類の中でも、特にCa塩が有効であり、その添加濃度は総重量に対しては0.05%以上、好ましくは加工後のいずれの添加によっても効果を得ることができる。例えば、洗米後の米浸水液に添加した場合、あるいは炊飯後の飯に固形物として添加した場合、いずれにおいても食感保持効果を得ることが可能である。
【0017】
【実施例】本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0018】低温保存時の食感の変化を以下の方法で測定した。市販の電気炊飯器を用いて所定の加水量にて炊飯した。これらを蒸らしたのち、所定の形態に成形し、トレーに移し、濾紙およびフィルム包装した後、5℃の冷凍庫にて保管した。24あるいは48時間後に1.20倍加水量で炊飯したコシヒカリを基準として米の専門のパネルによる官能評価を行った。
【0019】実施例1加水量の例コシヒカリ生米300gに対し、加水量を1.35、1.50、1.65、1.80倍まで変化させて炊飯した。炊飯後、白飯、おにぎり、すしを調整し、これを5℃で48時間保存した際の官能評価を行った。評価基準は、軟らかく粘りが強いものを◎、軟らかく粘りがあるものを〇、やや硬く粘りが少ないものを△、非常に硬く粘りがないものを×とした。
【0020】
【表1】

【0021】加水量(飯の水分含量)が増加するに従い、5℃での品質保持期間は延長することができた。すなわち、白飯は65%以上の水分量で24時間後もパネルに高く評価された。おにぎり、すしについては48時間後も加水量を増加させることで品質は保つことができた。また、白飯よりもおにぎりが、おにぎりよりもすしが飯は老化しにくく、加水量も大きく増加させなくとも品質保持期間は長かった。
【0022】実施例2加水量の例2コシヒカリ生米300gに対し、加水量を1.35、1.50、1.65、1.80倍まで変化させて炊飯した。炊飯米の炊飯直後、5℃の冷蔵庫で24時間保管したときの官能評価は表のようであった。ここでは粘りの変化について示す。加水量が少ない場合では、粘りの減少量(表中では変化量)がかなり大きいが、加水量を増加させることによって、保存後の粘りの減少量はある程度抑制することができた。すなわち、加水量を増加させることで米飯の老化速度を小さくすることができた。
【0023】
【表2】

【0024】
【発明の効果】一般うるち米を使用した米飯食品について、低温温度帯での食感変化を抑制することにより、低温保存中の食感劣化が少ない米飯を提供することができた。
【出願人】 【識別番号】000004189
【氏名又は名称】日本水産株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
【公開番号】 特開平11−75732
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平9−249511