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【発明の名称】 処理装置
【発明者】 【氏名】野 崎 正

【氏名】佐 伯 忍

【要約】 【課題】

【解決手段】処理槽1内の食品等に万辺なく超音波を作用させるよう、槽1の側壁1a外面に複数基の超音波振動子2を、該振動子2のホーン3の先端をその外周側からの溶込み溶接によって接合する形で分散配備して堅牢且つ処理作業の行いやすい処理装置を構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内圧を維持できる処理槽の側壁外面に、複数基の超音波振動子を、該振動子の超音波放射面を冶金的な接合手段によって接合して分散配備したことを特徴とする処理装置。
【請求項2】 前記冶金的な接合手段が、前記超音波放射面の少なくとも外縁側の環状領域に溶込み部を形成した溶込み溶接である請求項1に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抽出,調理,熟成,殺菌,合成,分解などのために薬草,食品,化学品などの被処理物を煮炊きし、あるいは液媒に浸潰して経時させるような云わば液相変成処理を高能率にないしは高品質レベルで行うための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上記液相変成処理は、薬草のような固形物を液浸状態で加熱しないしは経時させてエキス分を抽出し、あるいはシチューのような液状物を煮込むために数10〜100℃、更には100℃を超える高温で煮炊きするものである。
【0003】しかして、元より能率,品質に関する経験的な知見の豊富な分野ではあるが、昨今においても、コスト低減と付加価値の向上に主眼をおいた処理時間短縮,収率向上,品質展開の要請が途絶えることがない。しかしながら、加熱温度スケジュール,液媒組成その他の検討の余地は殆ど残されておらず、所望の成果が得にくい状況にあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記状況の打開を図るべく、本願の発明者らは、上記液相変成処理への超音波エネルギーの導入を指向した。即ち、超音波の導入によってキャビテーション作用などに由来する拡散の促進,細胞膜の破壊,分子会合頻度の増大といった諸効果を利用しようとするものである。しかるに、超音波洗浄を温度条件を変えて行う程度の装置は存在するが、槽の内圧を維持して、100℃を超える温度で長時間に亘って煮炊きを行なうこともある液相変成処理への超音波エネルギーの導入に関しては、撹拌が容易でないことも多い被処理物に対して、万辺なく、且つ、処理作業あるいは内圧の維持に支障をもたらさずに超音波を照射する方案、又、高温下での耐振性に優れた振動子取付け方案等に関して何ら知見もなく、好適に実用できるような堅牢な装置が提供されていなかった。本発明の課題はかかる装置の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべくなされた本発明装置は、内圧を維持できる処理槽の側壁外面に、複数基の超音波振動子を、該振動子の超音波放射面を冶金的な接合手段によって接合して分散配備したことを特徴とするものある。ここで、超音波振動子とは、振動素子であるトランスデューサーと共振体ないしは振動伝達子であるコーン又はホーンとを結合させた超音波印加手段を指すものとする。トランスデューサーは電気振動を機械振動に変換する素子であり、代表的なものとして圧電体を交番電界で振動させる電歪式と、強磁性体を交番磁界で振動させる磁歪式とを例示できる。コーン又はホーンは金属棒などから成り、その一端(駆動端)に結合させたトランスデューサーから入力された機械振動を他端(作用端)に伝えて該作用端の端面(超音波放射面)から超音波を出力する役目をする。なお、コーンの振動伝播方向の断面形状を振動振巾変換のために異形化したホーンもコーンの一種であるが、等断面のコーンもホーンと通称されることが多いので、以下、両者を包括して「ホーン」と呼ぶこととする。
【0006】上記本発明装置にあっては、■複数基の超音波振動子を処理槽の側壁外面に分散配備したので、槽内に向かって多方位から超音波が照射されることとなって、撹拌されにくい被処理物に対しても万辺なく超音波を作用させることができ、更には、空地として残された槽の底面に加熱手段を係合させ、あるいは、蓋体に調圧弁を取付けたり冷却手段の導入路を設ける等の造作も行いやすく、■上記振動子を、その超音波放射面を処理槽側壁の外面側に接合する形で配設したので、振動子が被処理物に接触することがなく、したがって、耐食性,被処理物の汚染等に係る装置材質の問題は処理槽の内面についてのみ考慮すればよく、又、被処理物の出し入れや槽内の洗浄といった作業に支障をもたらさず、更には、槽内圧を確保するための気密性の問題も蓋体との取合の考慮のみで済み、■処理槽外面への振動子放射面の接合を溶接などの冶金的接合手段により行なって、金属結合により一体化された形としたので、超音波が効率よく伝達されるとともに、接合状態が高温・長時間の処理作業の間に劣化し、あるいは、大振巾の超音波振動(振動子の放射面は振動の腹の部分に概ね一致し、振巾が特に大きい)によって接合が破壊されるといった問題も生じない。即ち、前記液相変成処理への超音波エネルギーの導入に好適な処理装置を提供できて、前記本発明の課題が解決されるものである。
【0007】因に、超音波振動子のホーンの先端部分を槽内に貫入させる配設形態では、振動子を、ホーンの振動の節の部分に設けたフランジをシールパッキングを介して槽壁に固定する等の形で取付けざるをえず、この結果、1/4波長の奇数倍の長さ(10〜数10mm程度)に亘ってホーンの先端部を接液させる形態を余儀なくされる。即ち、ホーンが槽内に突出するか、ないしは、ホーンの先端を槽壁内面と面一化させるべくホーンを後退させた形で取付けるとホーン先端部の周囲に袋状のスペースが生じることになる。このため、前記本発明装置の利点の■が得られないばかりでなく、槽内に超音波の死角が生じたり、処理スペースが減殺されるといった不利が加わる。更には、シールパッキングなどによる上記造作が、100℃を超える高温度の被処理物に直に接する状態でのシール手段として耐久性等に難点を有することは周知の通りである。上記諸問題は本発明装置のように複数の振動子を配備した形態において特に重要であることは云う迄もない。
【0008】次いで、振動子放射面の処理槽外面への接合について云えば、これを従来のように接着剤により行なったのでは処理槽の側壁が曲面の場合、超音波の伝達効率を損なわないような接合ができないか、又は、放射面に摺合わせ態様の曲面加工を要することになる。側壁が平面の場合でも、接着剤の接着力では、接合の当初から、あるいは高温・長時間の処理作業により接着が劣化した段階で、前記大振巾の超音波振動によって接着が破壊する。これに対して、本発明装置に採用した冶金的な接合手段によれば、前記■の利点に加えて、曲面状の処理槽外面への接合も、接合面の隙間を溶着金属で埋めて溶接する等の手法により堅牢且つ超音波の伝達効率に優れた接合が行なえる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明装置の処理槽は、100℃を超える温度での変成処理も行なえるよう、内圧の維持できる構造とする。そのための造作は常法によればよく、たとえば、処理槽としては円筒形のものが耐圧性を確保しやすく、又、製作も容易である。又、蓋体の気密化は耐熱ゴム製のパンキング材によって行なえばよく(高温の被処理物に直に接しない部位であるため多くの場合耐久する)、必要に応じて銅パッキング構造等を採用すればよい。その他、圧力調整弁,圧力計,温度計等を装備し、必要に応じて槽外からの加圧や減圧、更には冷却が行なえるようにすることもできる。槽の材質としては多くの場合ステンレス鋼が適するが、用途に応じてチタン,ハステロイ,ガラス,セラミックスなどの高耐食材料を用いる。又、槽の内面に高耐食材料によるめっきないしはライニングを施した仕様も有用である。槽の肉厚は、当然ながら所定の耐圧性が得られるように選定する。上記構成により、本発明装置は、減圧下で行う変成処理にも有用となるものである。又、常圧下で行う処理にも当然利用できる。
【0010】本発明装置により、加熱形式の処理を行う際の加熱手段は任意であるが、処理槽の壁に近接して誘導コイルを配し、該コイルに交流を通電することによって器壁を流れる渦電流を生じさせて器壁を内部加熱する誘導加熱が、処理槽回りの所要スペースが小さくて済み、又、処理槽回りに熱気を生じることなく高能率で加熱が行なえることから特に好適である。この場合、器壁が発熱源となるので、処理槽の底壁を誘導加熱するのが槽内温度分布の点で好ましい。
【0011】又、マイクロ波を槽内に導入して被処理物に吸収させ、被処理物の分子を振動させて内部加熱するマイクロ波加熱も同様に好適である。この場合、導波管との係合を加熱槽の吃水線より上方又は蓋体で行なうのが水じまいなどの点で好ましい。マイクロ波加熱によれば、被処理物自体が発熱源となるので槽内の温度分布は本質的に優れたものとなる。
【0012】本発明装置における超音波振動子の配備基数及び配置形態は、処理の仕様,装置の寸法・形状等に応じて適宜設定されればよいが、被処理物に均等に超音波を作用させるためには、3基以上の振動子の配備が望ましい。配備数が多いほど超音波の作用は均等化されるが、この指向は8基程度迄で十分達成される。6基配備の例を図1,図2に示す。図において、1は処理槽,1aは処理槽の側壁、1bは底壁、2は超音波振動子、3,4は夫々該振動子を構成するホーン及び振動素子(トランスデューサー)、3aはホーンの超音波放射面、5は誘導加熱用の誘導コイル、11は処理槽の蓋、12は圧力調整弁である。
【0013】振動子は、図2に示したように周方向に1列に配置してもよく、又、槽の寸法・形状等に応じて図3に示したような千鳥状に、あるいは、図4に示したような複数列状に行ってもよい。これらの場合には好適配備数が6〜16となる。
【0014】複数基配備した超音波振動子2の駆動は常法によって行えばよく、たとえば、各振動子2の共振周波数のばらつきをカバーする変動巾で周波数を時系列的に変動させた出力を発振器から適用して、各振動子2を順繰りに重点駆動させることにより、各振動子2の作用が均等化される。
【0015】本発明装置にあっては、前述のように、超音波振動子を、その超音波放射面を処理槽の外面に冶金的に接合させる形で配設する。冶金的な接合手段としては、溶接,液相拡散接合,ろう接,摩擦圧接を例示できるが、実施しやすく、又、堅牢且つ超音波伝達性に優れた接合部を形成できるという点で、溶接が最適である。 但し、超音波の伝達路を確保するために、振動子の超音波放射面がなるべく大きい面積率を以て溶接されていることが望ましい。しかして、図5,図6に夫々正断面図及び平面図を例示したような、放射面3aの外縁側に開先6を設けた溶込み溶接を行うことによって上記面積率を十分大きくすることができる。たとえば、図5,図6に示した開先奥行きLを振動子のホーン3の直径Dの1/4にとった場合、ホーン3の直径内の接合面積率は3/4、即ち、75%であり、加えて溶着金属7のはみ出しによって溶接部の外径が10%以上増すことにより、本来の放射面々積と同等の接合面積が確保される。超音波放射面全域に亘る溶込み溶接を行なっても無論差支えないが上述のように放射面の外縁側の環状領域の溶込み溶接で十分であることから、手数が大巾に増大する全域溶込み溶接を行なうメリットは少ない。
【0016】上記溶込み溶接方式によれば曲面状の処理槽1の外面1aに曲面加工していない超音波放射面3aを突合わせて、放射面の外縁側に生じる隙間を溶着金属7で埋めた形の接合部を形成できる。しかして、該接合部を構成する両側の母材(処理槽1及びホーン3)及び溶着金属7は同系統の材質のものであるため、上記接合部は堅牢であるばかりでなく、連続体と同様に超音波を伝達することができる。液相拡散接合等、溶接以外の冶金的な接合手段も利用可能であるが、処理槽外面が平面状(たとえば6角筒形の処理槽など)の場合には平面状の超音波放射面を難なく接合できるが、処理槽外面が曲面状の場合には放射面を摺合わせ態様の曲面状に加工するなどの別途処置が必要となる。なお、本発明装置においては、超音波振動子からの超音波出力が処理槽の器壁を介して被処理物に放射されることになるので、器壁の肉厚が無視できない場合には、振動子のホーンの長さを、所定の共振長さ(1/2波長の整数倍)から器壁肉厚分を差引いた長さとするのがよい。
【0017】
【発明の効果】本発明装置は、上述のように、被処理物の煮炊きなどを行う変成処理に超音波エネルギーの導入を図るべく、100℃を超える温度で長時間の煮炊きを行なっても耐久し、しかも処理作業に支障をもたらさずに超音波エネルギーを効率よく適用できる処理装置を提供したものである。
【0018】上記処理装置により、薬草からのエキス分の抽出、あるいは食品の調理,加工などの液相変成処理において、能率,品質等に亘る新たな技術展開が可能となった。即ち、上記処理業務におけるコスト低減,付加価値向上指向を強力に支援できることになる。
【出願人】 【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助 (外1名)
【公開番号】 特開平11−75722
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平9−254072