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【発明の名称】 苦みや渋みの少ないカカオニブ
【発明者】 【氏名】松田 直樹

【氏名】越智 裕文

【氏名】長崎 宗則

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】製造行程中に1.2−3.5気圧、110−140℃で炭酸カリウムをカカオ豆重量比0.1−2.0%ふくむ溶液にてカカオ豆を加圧加熱処理したのち、焙焼することを特徴とするカカオニブの製造法【請求項2】炭酸カリウムをふくむ溶液でカカオ豆を加圧加熱処理したのち15mmHg以下に保つことを特徴とする、請求項1記載のカカオニブの製造法【請求項3】焙焼したカカオニブ破砕粒状物の粒径が1mm−7mmであることを特徴とする請求項1記載のカカオニブの製造法。
【請求項4】焙焼温度が、90−145℃であることを特徴とする、請求項3に記載のカカオニブ破砕粒状物。
【請求項5】請求項1記載のカカオニブの破砕粒状物の含有比率が、全重量比で30%を上回り、70%以下のチョコレート。
【請求項6】請求項1から請求項5のいずれかのカカオニブ破砕粒状物を含有することを特徴とする、焼成食品およびゼリー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は苦み、渋み等を低減したカカオニブおよびこれを配合した焼成食品およびゼリーに関する。なお、本発明においてチョコレートとは、法規上の制約を受けるものではなく、カカオ脂以外の他のハードバター或いは可塑性範囲の広い油脂を使用した一切のチョコレート類および油脂加工食品を包含するものである。また本願における焼成食品とはコーンフレークやビスケット、ケーキ、クッキー、あられなど、穀物類を加熱調理した食品、または、澱粉を主原料としてその他原料と混合後焼成することにより製造される食品を言う。
【0002】
【従来の技術】通常用いられるカカオ豆とはカカオの果実より取り出した種子(カカオ豆)を通常4〜7日間均一に醗酵させ、乾燥ののち出荷される。このカカオ豆より通常、チョコレートは以下のような工程を経て製造される。即ち、まず石片等の夾雑物を除去したカカオ豆を110〜170℃にてロースト(焙焼)する。このローストは、カカオ豆中に含まれるアミノ酸と還元糖により生じるアミノカルボニル反応でチョコレートの風味を増強させるという効果を有するのであるが、同時にカカオ豆の、外皮(セル)と胚乳(ニブ)および胚芽(ジャーム)等に分離し易くするためでもある。
【0003】カカオ豆には、各産地カカオ豆の特徴を生かして、例えばアフリカまたはブラジル産のようなベースになる豆(ベースビーンズ)とトリニダット、スリランカ、ベネズエラ或いはエクアドル産のような香りづけの豆(フレーバービーンズ)とがある。普通、このようなベースビーンズとフレーバービーンズとを適当に配合して使用する。
【0004】このようにしてローストしたカカオ豆を、粗砕して外皮(セル)と胚乳(ニブ)および胚芽(ジャーム)等に分離した後、カカオニブをグラインディングミル或いはロールミル等ですりつぶしてペースト状物とする。このペースト状物はカカオマスと呼称される。普通「ビターチョコレート」と称されているものは、このローストしたニブの微細粉砕物であり、セルやジャーム等はその苦みなどのため、使用されない。
【0005】カカオマスはチョコレート独特の苦みと香ばしさを与えるものではあるが、これのみでは苦みや渋みが強すぎるため、通常は砂糖、或いはさらにココアバター、粉乳等の副原料を適宜混合し、この混合物をさらにロールに掛けて粒子を細かくしてチョコレートを製造する。通常、カカオマスは25ミクロン以下となるように微粒子状態に磨砕する。
【0006】次いで、この微粒化したチョコレートをコンチェという機械で良く練り上げて風味を調整(コンチング)する。しかる後、チョコレートを冷却・成型して製品とする際に、チョコレートの結晶をつくるための品温操作、いわゆるテンパリング操作を行う。テンパリングを終えた液状のチョコレート生地を自由に型に流しこみ、クーリングトンネルの中を通して冷却した後、型から取り出し、包装して、さらにココアバターの結晶形を安定させるため、一定期間、一定温度で熟成するという工程を経て製造される。
【0007】一般に、チョコレートは上記のような工程を経て製造されるのであるが、従来、カカオニブは他の原料と共に均一に混合して、ロールにて25ミクロン以下の微粒子に磨砕されるのが普通である。これは、カカオニブを微粒子として、砂糖などの副原料と十分に混合することにより特有の苦みや渋み等をマスクすることができるからである。事実、副原料を多く含むミルクチョコレートなどでは、カカオマスの香りは残るものの、苦み、渋み等はほとんど感じられない。
【0008】しかしながら、混合するカカオニブの粒径が100ミクロンから1mm程度になると、ざらざらした食感になるとともに、副原料を配合してもカカオニブの粒子が直接舌に触れるため、苦み、渋み等をより感じるようになる。カカオニブの粒径が1mm以上になると、苦み、渋み等はさらに感じやすくなる。
【0009】いっぽう、配合するカカオニブの粒径が1mm以上になると、独特の好ましい歯ざわりがあるため、これを配合したチョコレートに関する特許が出願されている(特公昭44−12717、特開平7−143851)。しかしながら、特開平7−143851の記述にもあるとおり、チョコレート生地の30%を超える割合でカカオニブ破砕物を混合すれば苦み、渋み等が強くなりすぎて好ましくない。事実、チョコレート生地の30%を超える割合でカカオニブ破砕物を混合したチョコレートの実施例は、これまでいっさい報告されていない。
【0010】また、チョコレート以外でカカオニブ破砕物を配合した食品については過去、報告がない。これは、カカオニブ破砕物をチョコレートに配合すれば、カカオニブ破砕物の苦みはカカオマス由来の苦みと同化するものの、チョコレート以外に用いればカカオニブ破砕物の苦み等が突出して好ましくないからであると考えられる。
【0011】
【本発明が解決しようとする課題】本発明は、従来品に比べて苦み、渋み等を大幅に低減したカカオニブ破砕物を提供すると同時に、これをチョコレートに重量比で30%を超え70%までの量、添加して好ましい歯応えと香ばしさとを有するものの苦み、渋み等の少ない、これまでになかったチョコレート(以下カカオニブ高含有チョコレートという)を提供することを目的とするものである。また、その苦み、渋み等のため、カカオニブの破砕物が配合されることはなかったアイスクリーム、ゼリー、ヨーグルト、プリンや焼成食品にカカオニブの破砕物を配合した食品(以下、カカオニブ入り各種食品という)を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来はその苦み、渋み等のため実用的には重量比10−20%程度の添加量が限界であったカカオニブを、全量比30%を超え、70%程度までの量を添加してなお、通常のチョコレートと同レベルの苦みのチョコレートを製造する方法を研究する過程でカカオニブ破砕物の苦み、渋み等を大幅に低減する方法を鋭意研究のうえで開発し、これによってカカオニブ高含有チョコレートの製造を可能とした。また、本発明者らは、好ましくない苦み、渋みなどを伴わないカカオニブ入り各種食品を製造した。
【0013】カカオ豆は、その産地ごとに特徴があり、ベースビーンズとフレーバービーンズに分類されることは既に述べた。チョコレート製造の際はこれらを適宜配合して作るが、カカオニブ高含有チョコレート、およびカカオニブ入り各種食品に用いるニブは、雑味や酸味の少ないフレーバービーンズを用いるのが好ましい。エクアドル産の豆などが好適に用いられる。
【0014】ローストするカカオ豆の大きさについては通常はあまり注意がなされることはないが、3−5メッシュのカカオ豆を用いることがロースト、ならびにアルカリ処理の条件をそろえるうえで望ましい。
【0015】カカオ豆は単にローストするのみでは苦みや渋味が十分に除去できず、カカオニブ高含有チョコレート、およびカカオニブ入り各種食品を作ることはできない。ローストに先立ち、以下のようなアルカリ処理を加えることによって苦みや渋味を除去することができる。すなわちカカオ豆重量比0.1−2.0%の塩類を含む溶液に醗酵、乾燥処理のすんだカカオ豆を浸し、110℃−140℃、1.2−3.5気圧以下の加熱加圧状態で蒸気処理を行う。塩類としては炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩が好適に用いられるが、リン酸塩などでも可能である。溶液にはグルコースなどの糖類やアミノ酸を加えてもよい。反応条件はたとえば2.0気圧、125℃(品温109℃)で5分の処理でよい。
【0016】このようにアルカリ蒸気処理したのち、通常は常圧に戻すのであるがカカオニブ高含有チョコレート、およびカカオニブ入り各種食品を作る場合はカカオ豆を減圧下に置くことが望ましい。なぜならアルカリ蒸気処理によって発生した揮発性物質を除去できるからである。揮発性物質にはカカオニブの渋味、雑味の原因となっている物質が多く、この処理によってさらにカカオニブのもついやな風味を除去することができる。
【0017】ローストの条件はとくに規定するものではないが、通常カカオ豆のローストにおいて採用される温度よりは低くすることが望ましい。カカオニブの焦げにより苦みを発生させないためである。115−145℃が好適である。たとえば130℃で30分、熱風処理するとよい。
【0018】ローストしたニブの破砕方法はとくに制限するものではないが、凍結粉砕、もしくは低温、低速での破砕が望ましい。なぜならばカカオニブ破砕物はその風味のよさを味わうものであるから、風味や味の損失の少ない方法を選ぶのが望ましい。
【0019】以上のようにカカオ豆を処理することにより、苦みや渋みなどゆえに実用が好ましくなく、実施例がまったく報告されていなかったカカオニブ破砕物を重量比で30%を超え70%程度までの量、添加したこれまでにない歯応えと香ばしさとを有するチョコレート、あるいは焼成食品やゼリーにカカオニブの破砕物を配合した食品をこのたび、不快な苦みを生じさせずに製造することに成功した。これ以外にもアイスクリーム、チーズ、バター、ババロア、プリン、ヨーグルトや和菓子など、多くの用途に利用が可能である。なお、本法で調整されたカカオニブ破砕物はほとんど苦み、渋み等はないのでチョコレートに用いる場合、含有重量比を95%程度まで増やすことも可能である。その場合、必要に応じて糖衣がけなどの方法を用いてもよい。
【0020】
【実施例】(実施例1)カカオニブ破砕物の調製エクアドル産カカオ豆の異物を取り除いた後、メッシュを用いて3−5メッシュのカカオ豆を篩別する。これらのシェルをとりはずした後、重量比10%の5%グルコースと5%炭酸カリウムの水溶液に浸し、1.9気圧で5分間、125℃で加熱する。この処理により品温は109℃となった。これを減圧して1mmHgとする。品温は30℃となった。これを130℃で30分間熱風焼成した。焼成したニブを凍結粉砕し、6−8メッシュとした。このニブ破砕物を通常のニブ破砕物(後述の比較例1)と比較したところ、苦みや渋みの少ないニブが得られた。
【0021】(比較例1)カカオニブ破砕物の調製ガーナ産カカオ豆とブラジル産カカオ豆を等量混合し、異物を取り除いた後、160℃で10分間熱風焼成した。焼成したニブをグラインダーで粉砕し、6−8メッシュとした。
【0022】(実施例2)実施例1と比較例1のカカオニブ破砕物を表1の割合で配合したチョコレートを常法に従って製造し、味覚テストを行った。
【表1】

【0023】パネラー20人について味覚調査をおこなったところ、実施例1のカカオニブ破砕物を用いたチョコレートでは「苦い」と答えたのは2人だったのに対し、比較例1のカカオニブ破砕物を用いたチョコレートでは20人中20人が「苦い」と答えた。
【0024】(実施例3)実施例1にしたがって製造したカカオニブ破砕物を用い、表2に示すような配合で常法に従ってチョコレートを製造した。
【表2】

【0025】表2の配合で調製したチョコレートについて20人のパネラーで味覚テストを行ったところ、以下のような結果が得られた。
苦くて食するに耐えない 0人苦いものの、食するに耐える 2人通常のビターチョコと苦みは変わらない 16人苦みはほとんど感じられない 2人【0026】以上の結果より、カカオニブ破砕物を70%配合しても通常のチョコレートと苦みはほとんど変わらないことがわかった。
【0027】(実施例4)実施例1にしたがって調製したカカオニブ破砕物を用いて、表3の配合でハードビスケットを製造した。
【表3】

【0028】このようにして調製したハードビスケットで官能検査を20名のパネラーについて行ったところ、不快な苦み、渋みがあると答えた者はなく、15名以上が香ばしさと好ましい食感があると答えた。
【0029】(実施例5)実施例1にしたがって調製したカカオニブ破砕物を用いて表4の配合でゼリーを製造した。
【表4】

【0030】このようにして調製したゼリーで官能検査を20名のパネラーについて行ったところ、不快な苦み、渋みがあると答えた者はなく、15名以上が香ばしさと好ましい食感があると答えた。
【0031】
【発明の効果】本発明により、苦みや渋み等が伴うため食品への利用が制限されていたカカオニブ破砕物から苦み等を大幅に低減することに成功した。これにより、高含量にカカオニブ破砕物を含むものの不快な苦み、渋みなどを伴わないチョコレートを製造した。また、従来にないカカオニブ破砕物を含む焼成食品およびゼリーを製造した。
【出願人】 【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月13日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−318338
【公開日】 平成11年(1999)11月24日
【出願番号】 特願平10−150600