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【発明の名称】 乳飲料
【発明者】 【氏名】尾坂 光亮

【氏名】葛城 俊哉

【要約】 【課題】ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加して耐熱芽胞菌の増殖を抑制した乳飲料に発生する沈殿固形分の生成を防止し、長期間保存安定性に優れた乳飲料を提供する。

【解決手段】乳成分として1.8%以上の乳脂肪分及び乳脂肪分の80%以上の乳蛋白を含有し、0.02%〜0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び0.03%〜0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有する乳飲料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 乳成分として1.8%以上の乳脂肪分及び乳脂肪分の80%以上の乳蛋白を含有し、0.02%〜0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び0.03%〜0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有する乳飲料。
【請求項2】 ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリンの重合度が2〜4であり、その構成脂肪酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれ、且つ、モノエステルの含量が50%以上であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。
【請求項3】 ポリグリセリン脂肪酸エステルがジグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項2に記載の乳飲料。
【請求項4】 ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれ、HLBが、3〜7であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の乳飲料。
【請求項5】 ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、0.05%〜0.3%であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の乳飲料。
【請求項6】 ショ糖脂肪酸エステルの含有量が、0.035%〜0.15%であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の乳飲料。
【請求項7】 乳飲料がミルクコーヒーであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の乳飲料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、1.8%以上の乳脂肪分を含有する乳飲料に関する。詳しくは、保存中の変敗や沈殿物の発生等を防止し、保存安定性に優れた乳飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】ミルクコーヒー、ミルク紅茶等の中性乳飲料は缶飲料等として、近年需要が増大している飲料である。これらの飲料は、製品化の過程で加熱殺菌、通常レトルト殺菌が施されるが、耐熱性の強い高温芽胞菌の一部は殺菌工程を経ても生存し、保存中或いは流通段階で飲料の変敗を引き起こすことがある。この対策として、特開平8−228676は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、特にグリセリンの重合度が2であるジグリセリン脂肪酸エステルを添加することを提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】乳飲料中では、乳成分由来の脂質、蛋白質や、コーヒー豆等に由来する多糖類、脂質、その他固形分等が乳化された状態で存在する。これらは乳飲料中の蛋白質の乳化力や、乳化剤、乳化安定剤等により乳化状態を保っている。乳成分含量が増加するに伴い、乳成分に吸着するジグリセリン脂肪酸エステルなどのポリグリセリン脂肪酸エステルの量が増加し、抗菌に寄与するポリグリセリン脂肪酸エステルが減少する。従って、乳成分の含量に応じてポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を増加させる必要がある。而して本発明者等の検討に依れば、ジグリセリン脂肪酸エステルなどのポリグリセリン脂肪酸エステルは添加量が増加すると、乳脂肪の乳化を妨げ、オイルオフの発生や、乳飲料成分の沈殿量の増加等を惹起し、乳飲料の品質を低下させた。本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、その目的は、高温芽胞菌による変敗や乳化状態不良による品質低下の惧れのない保存安定性に優れた乳飲料の提供にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の様な問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、乳成分含量の多い乳飲料に、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを添加することにより乳飲料の沈殿量が減少することを見出し、本発明に至った。即ち本発明の要旨は乳成分として1.8%以上の乳脂肪分及び乳脂肪分の80%以上の乳蛋白を含有し、0.02%〜0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び0.03%〜0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有する乳飲料に存する。
【0005】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本発明の対象とする乳飲料は、乳脂肪分含量が1.8%以上、且つ、乳蛋白含量が乳脂肪分含量の80%以上の範囲である。好ましくは、乳脂肪分が2.0%以上であり、乳蛋白含量が乳脂肪分含量の90%以上の範囲である。乳蛋白の含量が、当該範囲以下の場合、乳化が不安定となる。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り、「重量%」を意味する。
【0006】本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリンの重合度が2〜4であり、その構成脂肪酸はラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれる1種類以上であり、モノエステルの含量が50%以上であるようなポリグリセリン脂肪酸エステルである。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合度、エステル化度等の異なるエステルが混合した組成物であり、例えば、ジグリセリンエステルとはその平均重合度が2となるポリグリセリン脂肪酸エステル組成物を意味する。抗菌性の観点から、好ましくは、ジグリセリンパルミチン酸モノエステルを70%以上含むポリグリセリン脂肪酸エステルが好適である。飲料中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含量は、十分に変敗を防止し得る量であることが必要である。この量は、飲料中の乳脂肪分に応じて増加し、また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの種類、乳飲料の種類に依っても異なり、200ppm程度の量でも変敗の発生を見ない場合もあるが、通常、300〜400ppmの含有量では抗菌力は十分とはいえず、保存、流通の段階で変敗する惧れがある。従って、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は0.02%以上、好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.06%以上である。一方、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は多くとも0.3%以下である。含有量が多いと、コストが高くなるばかりでなく、飲料の風味を損ねるので好ましくない。
【0007】本発明に使用されるショ糖脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれる1種類以上、好ましくはパルミチン酸とステアリン酸の含量合計が80%以上であり、うちステアリン酸の含量が50%以上のものである。ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、3以上7以下、好ましくは4以上6以下であることが好ましい。飲料中のショ糖脂肪酸エステルの含量は、0.03%以上、好ましくは0.035%以上の範囲が好適である。当該範囲外では、沈殿を抑制する効果が低い。ショ糖脂肪酸エステルの含量は多くとも0.3%以下、好ましくは0.15%以下である。含有量が多いと、コストが高くなるばかりでなく、飲料の風味を損ねるので好ましくない。
【0008】本発明の乳飲料の調製法は特に限定されるものではない。例えば、ミルクコーヒーの場合、所定の乳脂肪分、乳蛋白となる量の乳成分、コーヒーエキス、甘味料、香料等の飲料成分と、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及び水を配合し、ホモジナイザー等により均質化し、レトルト殺菌により殺菌し、容器に充填する。以上の他、乳飲料に添加される各種成分を添加してもよく、また必要に応じ、他の食品用乳化剤、安定剤等を加えることもできる。本発明の対象となる乳飲料としては、ミルク入り、中性もしくは弱酸性飲料が挙げられる。特にミルクコーヒー、ミルク入り紅茶、なかでもミルクコーヒーにおいて顕著な効果がある。
【0009】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例においては、以下のポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを使用した。
ポリグリセリン脂肪酸エステル;
構成脂肪酸組成 パルミチン酸 100% モノエステル含量 70% 重合度 2 ショ糖脂肪酸エステル;
構成脂肪酸組成 ステアリン酸 70%、パルミチン酸 30% HLB 5【0010】参考例(ポリグリセリン脂肪酸エステルの抗菌試験)
コーヒーエキス3.7g、全脂粉乳1.8g、グラニュー糖8g、所定量のポリグリセリン脂肪酸エステル、重曹0.05gに水を混合して全量を100gとした後、バルブホモゲナイザーを用いて60℃にて20kgf/cm2 で均質化してミルクコーヒーを得た(乳脂肪分0.48%)。これに、クロストリジウム・サーモアセチカム(Clostridium thermaceticum)芽胞懸濁液(濃度1×105個/ml)を0.1ml接種し、ガラスチューブに各2ml×5本ずつ採り、火炎にて開口端を密封し、121℃で20分間加熱殺菌した。これを55℃で4週間保存した後、変敗の有無を判定した。判定は外観及び菌無接種区とのpHの差異により行った。結果を下記表−1に示した。
【0011】
【表1】

【0012】実施例1コーヒーエキス37g、全脂粉乳68g、グラニュー糖80g、重曹1.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.6g、ショ糖脂肪酸エステル0.4g、および水を混合し、全量を1000gとして、高圧ホモジナイザーを用いて60℃にて150kg/50kgの圧力で均質化後、30g試験管に各27gずつ分注した。この試験管をレトルト殺菌機で121℃、20分の条件で殺菌してミルクコーヒー(乳蛋白量1.7%、乳脂肪分1.8%)を得た。次に得られたミルクコーヒーを55℃で2週間、および4週間静置した後、静かに上澄みを除去した。沈殿を脱塩水で洗い、10000rpmで15分間遠心分離し、上澄みを捨てて、残った沈殿を凍結乾燥し、沈殿固形分量を測定した。結果を表−2に示した。
【0013】実施例2ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を0.2g、ショ糖脂肪酸エステルの添加量を0.4gとした以外は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを得、沈殿固形分量を測定した。結果を表−2に示した。
【0014】比較例1ショ糖脂肪酸エステルの添加量を0.25gとした以外は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを得、沈殿固形分量を測定した。結果を表−2に示した。表から明らかな様に、2週間後の沈殿固形分の量は、実施例1より少なかったが、4週間後には、実施例1より遙かに増大していた。
【0015】
【表2】

【0016】以上の実施例、比較例のミルクコーヒーは、4週間後の外観観察では変敗は認められなかった。
【0017】実施例3ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を1.5gとした以外は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを調製した。得られたミルクコーヒーを25℃とし、表−3の基準に従い官能評価を行った。6人のパネラーの採点の平均値をとり、小数点第一位を四捨五入した結果を表−4に示した。
【0018】
【表3】表−3 官能評価基準0:異味なし1:異味をわずかに感じる2:異味を感じる3:異味を強く感じる4:異味を不快な程に感じる【0019】実施例4ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を0.2g、ショ糖脂肪酸エステルの添加量を1.5gとした以外は、実施例3と同様にミルクコーヒーを調製して官能評価を行い、結果を表−4に示した。
実施例5ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を1.5g、ショ糖脂肪酸エステルの添加量を1.5gとした以外は、実施例3と同様にミルクコーヒーを調製して官能評価を行い、結果を表−4に示した。
【0020】比較例2ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を3.2gとした以外は、実施例3と同様にミルクコーヒーを調製して官能評価を行い、結果を表−4に示した。
【0021】比較例3ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を0.2g、ショ糖脂肪酸エステルの添加量を3.2gとした以外は、実施例3と同様にミルクコーヒーを調製して官能評価を行い、結果を表−4に示した。
【0022】
【表4】

【0023】
【発明の効果】本発明の飲料は、高い乳含量でも、沈殿が少なく、保存安定性に優れている。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成10年(1998)7月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 曉司
【公開番号】 特開平11−75684
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平10−191551