トップ :: A 生活必需品 :: A23 食品または食料品;他のクラスに包含されないそれらの処理




【発明の名称】 干しいもの製造方法
【発明者】 【氏名】立花 孝全

【要約】 【課題】しなやかで品質の優れた干しいもを製造する。

【解決手段】水洗した原料いもを遠赤外線加熱30〜40℃、24時間処理し、剥皮、蒸し、薄切り又は型抜きしたのち、濃度30〜50%のシルク液に10秒〜5分間、浸漬の工程を経て遠赤外乾燥20〜25℃、5〜6時間処理により水分を40〜50%にし、ついで、室内乾燥ののち仕上げ遠赤外乾燥20〜25℃、5〜6時間で水分25%内外に処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水洗した原料いもを遠赤外線加熱30〜40℃、24時間処理し、剥皮、蒸し、薄切り又は型抜きしたのち、5〜15℃の増粘剤に10秒〜5分間、浸漬の工程を経て遠赤外乾燥20〜25℃、5〜6時間処理により水分を40〜50%にし、ついで、室内乾燥ののち仕上げ遠赤外乾燥20〜25℃、5〜6時間で水分25%内外に処理することを特徴とする干しいもの製造方法。
【請求項2】 増粘剤液としては、濃度30〜50%のシルク液または微小繊維状セルロース液である請求項1に記載の干しいもの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、しなやかで粘りのある干しいもを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】明治時代の干しいもの産地は静岡県が中心であったが、昭和初年からは茨城県に移り現今では、特にひたちなか市が全国シェアの約80%を占めるに至っている。昭和36年、茨城県は玉豊(たまゆたか)を奨励原料いもに指定している。年間の販売金額は50億〜60億円にものぼり、一大特産品となっている。間食用の蒸し切り干しいもは、通常、水洗し、約50分〜100分又はそれ以上時間をかけて蒸した後、火を消して30分放置する。蒸すと酸化酵素が失活するので、変色しない。これを熱いうちに皮をむき、冷えてからピアノ線を張ったわくを通して5〜6mmの厚さに切る。これを1日間陰干しにし、次に通風・日当たりのよい場所で、いもが弾性を帯び半透明・飴色になるまで乾燥する。これを箱又は俵に詰め、約15日間貯蔵するとその表面に白い粉ができる。収量は30%内外である。
【0003】干しいもに最適の品種は玉豊で、このいもの特性は灰色肉で、粘りがあり、蒸した時に皮が薄くてむきやすいことである。原料のさつまいもは11月から2月の間に干しいもに製造される。作り方は、さつまいもを洗って蒸し、皮をむいて細い糸か、薄いナイフで薄切り(6〜10mm)にする。これをスダレの上に並べ、約7日間天日に干せば出来上がる。天日干しの場合、雨水をさけ、気温は摂氏15度〜5度。西風で乾燥すれば最上質の干しいもができるとされてきた。糖質は可食部100g当り約74g以上であれば美味である。また、干しいもの表面に白く果糖が出ることもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の干しいも製造上解決されるべき点は、1.干しいもは、主に海洋性気候に恵まれた地域(静岡県の太平洋沿岸地帯、茨城県のひたちなか市・東海村を中心にした地帯など)でしか作れなかった。これは、■海沿い地帯のため昼夜の温度差が大きいこと、■零度以下に気温が下がらないこと、■海風と陸風が交互にふくこと、■11月〜2月にかけては乾燥をもたらす西風がふくこと、などの条件が満たされなければならなかったためである。
2.干しいもの原料として玉豊が最適であるとされてきた。これは、蒸したあと手で皮を剥きやすく、収量が多く、貯蔵しやすく、かつ病虫害に強いなどのためであった。
3.干しいもは薄切りのため、天日干しでしか製造されなかった。製造にあたって、火力、温風、除湿、低温の各乾燥方法を利用しても、しなやかで粘りのある干しいもはできなかった。
4.現今、販売されている干しいもは灰色であるため、見た目が悪く、食欲に訴えるところがすくない。いまだに昭和初期の原料選びから抜け出せないでいる。
5.天日干しにして製造するため、不衛生であった。
6.製造日数が約7日であるから、気象の変化に左右されやすかった。
7.製造中にカビが発生しやすく、干しいもが黒褐色に変わりがちであった。
【0005】この発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、遠赤外線による仕上げ乾燥とシルク液などの増粘剤に浸漬することによって、甘みと香りがあり、色調が失われず、色沢があり、しなやかな干しいもを製造する方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、水洗した原料いもを遠赤外線加熱30〜40℃、24時間処理し、剥皮、蒸し、薄切り又は型抜きしたのち、5〜15℃の増粘剤液に10秒〜5分間、浸漬の工程を経て遠赤外乾燥20〜25℃、5〜6時間処理により水分を40〜50%にし、ついで、室内乾燥ののち仕上げ遠赤外乾燥20〜25℃、5〜6時間で水分25%内外に処理することを特徴とする。増粘剤液としては、シルク液(絹たんぱく加水分解物)または微小繊維状セルロースの濃度30〜50%水溶液のものが好ましい。
【0007】上記解決すべき手段を採用する根拠を列記すると、次のとおりである。
1.海洋性気候に恵まれた地域を含むすべての地域で一年を通して、干しいもを製造できるようにするため、遠赤外線式乾燥技術を取り入れることである。
2.あらゆる品種のさつまいもを干しいもに出来るようにすることである。また、手で皮を剥かずに前処理することである。病虫害に強いさつまいもを収穫するには、オーガニック(有機栽培、有機農法)の手法を取り入れればよい。
3.しなやかで粘りけがあり、ミネラルバランスのとれた甘くて美味な干しいもを作るには、室内乾燥と遠赤外線による乾燥を交互に取り入れればよい。
4.有色(ビンク、紫、赤、オレンジ、黄、乳白、白など)さつまいもを原料として使えばよい。これら有色さつまいもには肉質の特性があり、薄切りと乾燥の過程で、砕けやすいという一大欠点があったが、これはシルク液を使用することによって、クリアー出来る。また、色つやも非常によい。
5.室内乾燥と遠赤外線乾燥を取り入れればよい。
6.室内で乾燥を行うため、雨水にかかることもなく、省力化できる。遠赤外線を利用して乾燥するため、最短で1日、最長で2日あれば製造は完了する。
7.干しいもを1日〜2日で作り上げるため、カビの発生も黒褐変もない。
有色いもそのままの色も出せるし、糖質も可食部100g当り74g以上を保つことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の製造方法の工程を示すと、a.収穫、水洗→b.遠赤外線加熱(24時間)→c.剥皮→d.蒸し(30〜60分)→e.薄切り・型抜き→f.増粘剤液に浸漬(10秒〜5分)→g.網目容器並べ→h.遠赤乾燥(6時間)→i.室内乾燥(12時間)→j.遠赤乾燥(6時間)→k.検品→l.包装→m.出荷となる。
【0009】上記工程ごとに概略を付記すると、a.収穫・水洗:原料のさつまいもの収穫は関東以北では10月初旬〜11月中旬、関東以南、四国、九州では6月〜10月とされている。原料は約半年間も貯蔵できるので、一年中干しいもは作れることになる。
b.遠赤外線加熱:収穫したさつまいもは、剥皮の1日〜10日前に約12時間(夏期)〜約24時間(冬期)遠赤外線によって加熱する。その温度は30℃〜40℃を保てばよい。加熱によって、原料のさつまいもの鮮度が保て、糖度が3〜4度上昇する。また、蒸したときに形くずれがみられない。
c.剥皮:剥皮は皮ひきによるのが最良である。さつまいもの肌には所々に細い根がついているため凹凸がある。また、皮を多少厚め(1〜3mm)に剥くことにより、平均的な色沢を得ることができる。
d.蒸し:分量相応の蒸し器に入れて約30〜60分蒸せばよい。この場合、さつまいもの中心部に蒸し不十分のところがないようにしなければならない。
e.薄きり:蒸したさつまいもを薄切り(6〜10mmの厚さに切る)又は型抜きする。
f.増粘剤液浸漬:薄切りにしたさつまいもを30分以内に、5〜15℃のシルク液または微小繊維状セルロース(濃度30〜50%)に10秒〜5分、好ましくは10秒〜2分間浸漬して表面をコーティングする。こうすることによって、今まで、干しいもには不適とされてきた粘りけの少ないさつまいもでも、割れたり、砕けたりすることなく薄切りの形をとどめる。これは、シルク液がタンパク質であるため粘着力をもっているからである。なお、増粘剤液浸漬が10秒以下の場合には表面コーティングが不十分で保型性に難点があり、5分以上(原料いもによっては2分以上)浸漬すると粘着力が大きくなって食味を低下させる。
g.網目容器並べ:シルク液に浸漬した薄切りさつまいもを網などの小さな穴のあいた容器に移して並べる。この場合、裏返しが容易にできる間隔を保つべきである。
h.遠赤乾燥:上記さつまいもの入った網目容器を遠赤外線ヒーターを用い、20〜25℃で約6時間乾燥する。遠赤外線乾燥機の中に棚をつくり、網目容器を数段重ねて入れると効率的である。
i.室内乾燥:次に、網目容器を遠赤外線乾燥機から取り出し、風通しのよい室内に約12時間放置し自然乾燥をする。こうすることによって、さつまいもに寒暖の差を感じさせ、深い甘みとおいしさを出させる。
j.仕上げ遠赤乾燥:薄切りさつまいもの水分が可食部100g当り約17〜20g(水分25%内外)になれば出来上がりである。遠赤外線による仕上げ乾燥によって、甘みと香りがあり、焼きいもの風味があり、色調が失われず、色沢があり、しなやかな干しいもが得られる。
【0010】干しいも製造上、原料いもの栽培としては、コンポスト(堆肥)と有機発酵肥料を使うことによって、多収穫が実現し、病虫害に強い原料さつまいもを得ることができる。また、得られたさつまいもの糖分が普通栽培物に比べると数パーセントも高いため、長期間貯蔵しても傷みがごく少なくなる。上記有機発酵肥料としては、例えば、米ぬか4、油粕1、魚粉1、骨粉1、籾殻・木炭・水その他計3の割合で混合し、発酵させた自給肥料であることが好ましい。
【0011】
【実施例】原料いもを水洗したのち遠赤外線式乾燥技術を取り入れるが、急激に乾燥させると表面が硬くなるため、遠赤加熱→剥皮→蒸し→薄切り→シルク液浸漬→網目容器並べ→遠赤乾燥→室内乾燥→仕上げ遠赤乾燥の段階を経て製品とする。すなわち、遠赤外加熱30〜40℃、24時間処理して水分60〜80%の原料いもを水分約50%にする。剥皮、蒸し(約40分)、6〜10mmに薄切りしたのち、シルク液(加悦総合振興有限会社製シルクパウダーを濃度30〜50%の水溶液に調整)に10℃で20秒間浸漬する。浸漬の工程を経て遠赤外乾燥20〜25℃、6時間処理により水分を40%にする。ついで、室内乾燥(12時間)ののち仕上げ遠赤外乾燥20〜25℃、6時間で水分25%内外に処理する。以後、検品、包装を経て出荷する。遠赤外線を利用して加熱したり乾燥したりしたため、品質(外観、色、形、甘味、香り)の優れた干しいもが得られ、衛生的であり、短日時に、何時でも、何処でも製造できる。また、シルク液に薄切りいもを浸漬することにより、特定品種ばかりでなくすべてのさつまいもを干しいもとすることが出来る。このようであるから、糖度が35%と上がり、食欲をそそる色彩あざやかであらゆる形状の干しいもを得ることができる。
【0012】
【発明の効果】上記のように、本発明は、遠赤外線を利用して加熱したり乾燥したりする。品質(外観、色、形、甘味)の優れた干しいもが得られ、衛生的であり、短日時に、何時でも、何処でも製造できる。また、シルク液に薄切りいもを浸漬することにより、特定品種ばかりでなくすべてのさつまいもを干しいもとすることができ、甘みと香りがあり、色調が失われず、色沢があり、しなやかな干しいもを製造することができる。
【出願人】 【識別番号】592036243
【氏名又は名称】タチバナペーパーウェアー株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 正幸
【公開番号】 特開平11−225667
【公開日】 平成11年(1999)8月24日
【出願番号】 特願平10−54163