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【発明の名称】 植物の枯損防除及び活性化剤
【発明者】 【氏名】小湊 壌

【氏名】竹山 喜盛

【氏名】西見 智之

【要約】 【課題】植物の病害虫による枯損の予防或いは治療による防除及び衰弱した植物の活性化剤を提供する。

【解決手段】ニンニクの精油及びニンニク精油の構成成分である硫化アリル化合物が植物の病害虫による樹木及び花卉植物類の枯損を予防或いは治療すると共に、衰弱した樹木並びに花卉植物類の活性化に有効であることを見い出し、その製剤化に成功した。本製剤が有効な植物は森林、公園、街路、庭園、防風林、果樹園等の樹木のみならず、庭植えや鉢物等の花卉植物等広範囲に及び、植物のみならず、人畜及び自然環境にとっても全く無害であり、容易に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ニンニク精油及び/又はニンニク精油の構成成分である硫化アリル化合物を有効成分とすることを特徴とする植物の枯損防除及び活性化剤。
【請求項2】 植物が森林、公園、街路、庭園、防風林及び果樹園の樹木である請求項1の植物の枯損防除及び活性化剤。
【請求項3】 植物が花卉植物類である請求項1及び請求項2の植物の枯損防除及び活性化剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明はニンニク精油又は硫化アリル化合物類を有効成分とする、植物の病害虫による、樹木及び花卉植物類の枯損を予防或いは治療による防除及び衰弱した樹木及び花卉植物類の活性化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】森林資源は単に木材資源としてのみならず、貴重な自然生物の宝庫としての生態系を維持する上で極めて重要であると共に、水資源の確保や土地保全の観点からも大切な役割を果たしている。最近、地球温暖化の原因の一つとして注目されている炭酸ガス(CO2)の同化吸収においても、森林資源は重要な役目を行っている。しかし近年になって、樹木の枯損(立枯れ)現象が多発し、これらの原因として、大気汚染、酸性雨、気象害の影響や病害虫等があげられている。
【0003】樹木の枯損(立枯れ)で最も甚大な被害を被っているのはマツ属である。マツ属の樹木は日本の森林面積の10%を占める主要な資源であると共に、常緑針葉樹として庭園・公園樹、街路樹、防風林等に極めて重要な機能と景観を果たしている。
【0004】松枯れ病の被害が重視されている理由は、他の樹木病に類のない極めて急激な病状進行と共に、被害の伝播拡大が進行している事実である。一方、松枯れ病の原因究明は「まつくいむしによるマツ類の枯損防止に関する研究」や「マツ類材線虫の防除に関する研究」により明らかにされ、マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)が病原体であるマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylopilus)を媒介して伝播される伝染病である。
【0005】病原体の媒介昆虫としてはマツノマダラカミキリの他に、カラフトヒゲナガカミキリ(M. Saltuarius)、シラフヒゲナガカミキリ(M. niteus)、クロカミキリ(Spondylis burpretoides)等10余種のカミキリムシ科に確認されている。
【0006】すなわち温暖地では夏にマツノマダラカミキリの松材の後食(摂食)活動によりマツノザイセンチュウが侵入・感染して発病したマツは萎凋症状を示し、針葉の著しい赤褐変を伴い、秋には枯損する。寒冷地では越年して枯損することも明らかになっている。
【0007】松枯れ病の発病メカニズムが解明されるにつれて、被害防除方法も種々行われている。防除法としては病原体の伝播者であるマツノマダラカミキリの薬剤駆除法や天敵駆除法、誘引剤捕虫駆除法、被害枯死木ではマツノマダラカミキリが羽化脱出前までに伐採し、焼却処理、薬剤燻蒸処理法が行われている。
【0008】病原体であるマツノザイセンチュウの予防・防除法は殺線虫薬剤の松樹幹への注入法、土壌処理法等の他、恒久的防止対策としては病原体抵抗性種の選抜育成が行われている。
【0009】一般に病害虫の後食や穿孔害を受けやすい樹木は活力が衰退傾向にあるが、放置しておく以外に方法がない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしこれらの方法にも種々の問題があり、殺虫剤としてフェニトロチオン(MEP剤)、フェンチオン(MPP剤)の有機燐系薬剤やカーバリル剤(NAC)のカーバメイト系薬剤の空中又は地上散布は生物生態系の自然破壊や自然環境汚染が懸念されている。
【0011】天敵法は鳥類、昆虫、微生物などが見い出されているが、まだ利用に至っていない。
【0012】誘引剤捕虫駆除法はα−ピネンとエタノールの誘引活性と捕虫器などを併用して実施されているが、捕虫される前に線虫の80%が既に離脱しているため、被害防御には余り役立たない。
【0013】また枯死木の伐採処理法は効果的であるが、焼却処理・殺虫剤処理又は燻蒸処理を行う必要があり、労力的並びにコスト面で実施が困難である。その他抵抗性種の選抜育種は候補木をまだ選定中である。
【0014】したがって多様な防除努力にもかかわらず、今なお被害の拡大が続行している。
【0015】一方、他の樹木病害虫により、コナラやミズナラ等のナラ類の樹木の枯損被害が発生し、枯損被害が拡大している。これらの原因は穿孔虫類が樹木に穴をあけ、内部に侵入するために、樹木が侵入を阻止しようと樹脂を分泌することにより通水障害を起こして枯死することが知られており、現状では防除法が確立されていない。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は植物及び自然環境に対して悪影響が全くなく、しかも人畜に対しても安全であるニンニク精油又は硫化アリル化合物を病害虫である殺マツ材線虫及び抗樹木穿孔虫類の有効成分として使用し、効果的にマツノザイセンチュウ並びに穿孔虫を予防・防除し、樹木、果樹類や花卉植物類の枯損被害の防除及び活性化方法に関する薬剤を提供することにある。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明は殺マツ材線虫並びに抗穿孔虫類の有効成分として、ニンニク精油又はニンニク精油の構成成分である硫化アリル化合物を含有し、樹木、果樹類及び花卉植物類に施用することを特徴とする樹木等の枯損防除及び活力化剤に係わる発明である。
【0018】ニンニク精油の構成成分である硫化アリル化合物としてはジアリルモノスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジアリルトリスルフィド、ジアリルテトラスルフィド、アリルメチルモノスルフィド、アリルメチルジスルフィド、アリルトリスルフィド及びその他の微量のアリルスルフィド化合物を含む。これらの化合物より選ばれた成分を使用することによって、本発明の樹木等の枯損防除及び活力化剤として用いられる。
【0019】本発明のニンニク精油又は硫化アリル化合物の用いられる場合の溶剤はジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類、メチルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルアセトアミド等のアミド類、酢酸エチル等のエステル類及びジオキサン等のエーテル類並びに水より選ぶことができる。この際必要に応じて界面活性剤を使用し、乳化剤として効果的に用いることができる。
【0020】本発明品の樹木等への施用法としては、ニンニク精油又は硫化アリル化合物0.01〜100%をフスマ、米糠、ニンニク乾燥物、生薬である高麗人参、センキュウ、トウキ、ダイオウ等の乾燥物及び炭酸カルシウムより選ばれた1種又は2種以上の支持体に混和・吸着させ、樹木等の根元へ直接散布法など状況により適宜施用できるが、これに限定されるものではなく、液剤の場合は樹幹への注入方法も適用できる。
【0021】液剤の場合は乳剤又は溶液として用い、100〜300mlをプラスチック製容器に充填し、8〜7cmのノズルキャップを有する蓋を付け、樹木の樹幹に注入することにより施用する。
【0022】樹木の一日の水分蒸発量は10l以下と考えられており、ニンニク精油5gを50日間にわたって注入すれば100mgの精油が注入できるから、樹木の水分中の精油濃度は100mg/10lで10ppmとなり、有効濃度を約50日間維持できる。樹木はその間ニンニク精油成分その他のエキス成分の働きにより活性化される。
【0023】有効成分であるニンニク精油はニンニクを破砕して酵素を充分作用させた後、公知の方法で水蒸気蒸留法により精油を分離・精製して得られる。また精油の構成成分はニンニク精油を常法により分留・精製するか、又は合成法によって得られる。
【0024】本発明によってほとんど全ての樹種にその効果が認められるが、特に樹木としてはマツノザイセンチュウの被害を受けたクロマツ、アカマツ、リューキューマツ等のマツ属植物、穿孔虫によるコナラ、ナラ、ミズナラ、カシワ、ブナ、トイ、シナ、ハンノキ、イタヤ、モミ、ハリギリ、イチイガシ、エゴノキ、クリ、カラマツ、エゾマツ等の被害木、大気汚染その他の原因などによるシラビソ、トウヒ、イチョウ、ポプラ、ツバキ類、スギ類、ヒノキ類、カエデ類などの枯損樹木、果樹としてはモモ、ウメ類、カンキツ類、リンゴ、ブドウ、ナシ等に優れた効果が認められる。また花壇、庭園、鉢物等の花卉植物にも効果がある。
【0025】以下実験例により、その効果を説明する。
【0026】実験例110ppmのニンニク精油を界面活性剤(ツイーン80)の0.01%溶液に乳化させて調製し、これにマツノザイセンチュウの幼虫を1000頭/0.1cc注入し、25℃で24時間インキュベート後に観察した結果、生存率0%であった。一方、対照区(0.01%界面活性剤(ツイーン80)溶液のみを試験区と同様に注入)は高い生存率を示した。なおマツノザイセンチュウの致死判定は硬直して動かないものを致死例とした。以上により、マツノザイセンチュウによる松材の枯れ死を防除できる。
【0027】実験例2ジアリルモノサルファイド20%、ジアリルジサルファイド55%及びジアリルトリサルファイド25%の混合物5ppmに界面活性剤(ツイーン80)の0.02%溶液に乳化させて調製し、穿孔虫であるカシノナガキクイムシ10頭に接近させ、忌避試験を行ったところ、3時間後全例を忌避した。したがって樹木の穿孔虫被害を防除できる。
【0028】
【実施例】実施例1ニンニク精油10.0%、ガーリックフレーク(直径5mm以上のニンニク乾燥物)50%、センキュウ5%、トウキ5%、ダイオウ5%、炭酸カルシウム10%及び米糠15%を十分混合し、樹木の根元の土中へ投与するための薬剤を得た。
【0029】実施例2ガーリックフレークをニンニク精油に約24時間充分に浸漬させて引き上げた後、そのガーリックフレーク(ニンニク精油約15%含有)を40%と米糠30%、センキュウ5%、トウキ5%、ダイオウ5%及び炭酸カルシウム15%を混合して、薬剤を得た。この目的とするところは、ニンニク精油の流出を調節し、効力を持続させことにある。
【0030】実施例3ジアリルジサルファイド60%、ジアリルトリサルファイド30%及びジアリルテトラサルファイド10%の混合物5.0%、ジメチルスルフォキシド40%、乳化剤(ツイーン80)2.0%及び水48.0%を混和し、乳剤を得た。
【0031】実施例4ジアリルジサルファイド70%及びジアリルトリサルファイド30%の混合物10.0%、フスマ30%、ガーリックフレーク10%、トウキ5.0%及び炭酸カルシウム15.0%を混和し、薬剤を得た。
【0032】実施例5寿齢5年の庭木ゴールドクレスト ウイルマ(Gold Crest WILMA)に対して、対照区(無処理)と実施例2で得られた散布剤5g投与区及び20g投与区処理を実施し、3ケ月間活性化を観察した。その結果表1のとおり、本品20g区は良好な活性を示した。
【0033】
【表1】

【0034】実施例6実施例4で得られた薬剤を花卉植物であるナデシコ1株あたり5g及び15gを株の周囲に投与し、対照区(無処理)と比較した。その結果、表2のように本品は開花数を増加させ、開花期間を延長させ、花芽形成を有意に向上させた。
【0035】
【表2】

【0036】実施例715年生前後の樹勢の低下したクロマツを用いて、試験区及び対照区とし、試験区には実施例1で得られた薬剤を500g及び1000g根元周囲に投与し、対照区(無処理)と5ケ月間観察した結果、対照区は枯損し、試験区は健全であり、活力を増した。
【0037】
【発明の効果】本発明はニンニク精油及び硫化アリール化合物を含有する優れた植物の枯損防除及び活性化作用を有する薬剤を提供する。対象とする植物は森林、公園、街路、庭園、防風林、果樹園等の樹木のみならず、庭植えや鉢物等の花卉植物など広範囲の植物に及んでいる。
【0038】特にマツ材線虫及び樹木穿孔虫に対して優れた殺虫・忌避効果を示し、マツノザイセンチュウ防除により、松枯れ病防止に有用な効果が得られ、穿孔虫被害樹木の発生を防ぎ、樹木に活力を与える。
【0039】さらに本発明品は植物はもちろん、人畜及び自然環境にとっても全く無害でかつ安全であり、容易に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】391039830
【氏名又は名称】理研ヘルス株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月3日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−222410
【公開日】 平成11年(1999)8月17日
【出願番号】 特願平10−38038