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【発明の名称】 線虫病害防除剤
【発明者】 【氏名】小山 正興

【要約】 【課題】多くの野菜、花卉、芝草、果樹あるいは樹木等で報告されている、病害の原因となる植物寄生線虫に対して有効で、従来の農薬に比べ毒性が低く、環境あるいは作業者の健康への影響が少ない線虫病害防除剤を提供する。

【解決手段】コーヒー粕抽出液および/またはコーヒー粕発酵物を主成分とする資材と、植物寄生線虫防除剤(例えば、マリーゴールド植物体を主体とするもの)を含有する線虫病害防除剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コーヒー粕抽出液および/またはコーヒー粕発酵物を主成分とする資材と、植物寄生線虫防除剤を含有する線虫病害防除剤。
【請求項2】 植物寄生線虫防除剤がマリーゴールド植物体を主成分とする請求項1記載の線虫病害防除剤。
【請求項3】 請求項1または2記載の線虫病害防除剤を用いて植物寄生線虫による土壌病害を防除する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多くの野菜、花卉、芝草、果樹さらには樹木等で報告されている、土壌病害あるいは樹木の枯死の原因となる植物寄生性線虫に対して有効な線虫病害防除剤に関する。
【0002】
【従来の技術】各種線虫によって惹起される土壌病害は、多くの野菜、花卉、果樹あるいは芝草等で報告されており、これら植物の健全な成育を阻害する重要な病害として認識されている。なぜなら、野菜や花卉は圃場やハウスで周年栽培され、連作されるため、一度病害が発生すると大被害につながってしまうからである。果樹においても同様である。芝においては、特にゴルフ場などで、グリーンやフェアーウエイでの病害発生は、ゴルフ場の存在価値を失うものであり、キーパーはその維持管理に多大の努力を払っているのが現状である。
【0003】これらの土壌病害の代表的な例は、ジャガイモの地下部に寄生し、根の組織を壊死させ、しいては萎凋症状を発現させる、ジャガイモシスト線虫による害、芝、イネ科、マメ科、ユリ科、ナス科、アカザ科、アブラナ科、キク科、ウリ科等の作物、リンゴ、モモ、ナシ、ブドウ、カキ、パイナップル等の果樹及び芝等の植物の根に侵入し、ゴール(根コブ)を形成し、それによって根系全体が奇形となったり、岐根が生じたり、表皮がザラついたりして、品質や貯蔵性を著しく低下させるサツマイモネコブ線虫による害、ニンジン、トマト、キュウリ、ダイズ等の作物に寄生し、根の生長点付近に侵入して品質低下をきたすキタネコブ線虫による害、ニンジン、ゴボウ、ダイコン等の根菜類に多く寄生し、品質低下や、収量低下を引き起こすミナミネグサレ線虫による害、定植後2〜3年程度の若いお茶の苗に寄生して、成育を阻害するチャネグサレ線虫の害などが知られている。
【0004】これらの病害に対する防除手段としては、従来から土壌燻蒸剤による土壌消毒が不可欠とされてきた。しかし、これら毒性の高い燻蒸剤を使用することは、環境汚染を引き起こしたり、作業者の健康を害したり、さらには土壌中の有用微生物を死滅させ、結果的には病害菌の占有化が生じるなどの多くの問題点があり、中には、オゾン層破壊の原因物質と指摘され、使用期限が限定されている物質も存在する。
【0005】こういった状況において、農薬によらない線虫防除体系として、拮抗植物による防除が注目されている。その具体的な例はマリーゴールドとの輪作で、ダイコンの線虫病害対策に実績をあげている神奈川県三浦の例、あるいは同様にダイコン、ニンジンで実績をあげている北海道七飯町の例がある。しかし、拮抗植物との輪作は圃場をかなりの間遊ばせることにもなり、一般的には換金作物とは言えない拮抗植物を栽培する手間を嫌がり、特定の地域の特定の作物にしか普及していないのが実状である。
【0006】一方、これらの拮抗植物の残渣を土壌に投入することにより、線虫病害が抑制されるとの報告(Mohammad Akhtar. M.Mashkoor Alam. : Bioresource Technology, vol.41,pp81〜83,1992 )、あるいはクロラタリア、マリーゴールドの根、茎葉の乾燥粉末を施用した土壌では、キタネグサレ線虫の密度が減少するとの報告(湯原 巌:北日本病虫研報、NO.22,pp62,1971 )、さらには、マリーゴールドの水抽出液がマツノザイ線虫を殺すとの報告がある(大山浪雄:植物防疫、第29巻、pp30、1975)。
【0007】しかし、これらの方法は実際に農業資材として利用することを考慮した場合には問題がある。例えば、植物残渣を土壌に投入する場合には、拮抗植物を栽培した土地の周辺で使用する場合には問題とならないが、離れた場所で使用する場合は、輸送に経費がかかり実際には利用不可能である。また、水抽出液を使用する場合は、マリーゴールドの抽出残渣を処分する必要があり、このための費用、労力に関してもばかにならないし、輸送コストが莫大となり経済的にはとうてい引き合わない物となってしまう。従って、これらの方法は現在全く実用化されていないのが実状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その課題は、環境汚染が少なく、生態系に調和し、植物寄生線虫などによる土壌病害、森林の被害に対する防除効果の安定性、持続性および広域性に優れた線虫病害防除剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明者は、土壌病害の発生に関与する線虫の活性を抑制する方法について種々検討した結果、コーヒー粕発酵物あるいは、コーヒー粕の抽出液が線虫の活性抑制効果を有することを見出し先に出願した。また、マリーゴールド植物体を適当な水分含有量にしてからペレタイザーにかけてペレット状にすることで、輸送費を軽減し、効果を持続させる事を見出し、やはり先に出願を行った。さらに研究を進めるうちに、コーヒー粕を主成分とする資材とマリーゴールド植物体を主体とする植物寄生線虫防除剤とを併用すると単独で用いるよりも、少量で効果が発揮される事を見出し、本発明をなすに至った。
【0010】すなわち、本発明は下記の通りである。
1)コーヒー粕抽出液および/またはコーヒー粕発酵物を主成分とする資材と、植物寄生線虫防除剤を含有する線虫病害防除剤。
2)植物寄生線虫防除剤がマリーゴールド植物体を主成分とする上記1記載の線虫病害防除剤。
【0011】3)上記1または2記載の線虫病害防除剤を用いて植物寄生線虫による土壌病害を防除する方法。本発明によれば、多くの野菜、花卉、芝草、果樹および樹木で報告されている、各種の植物寄生性線虫に起因する土壌病害が、線虫活性抑制効果を有するコーヒー粕を主成分とする資材とマリーゴールド植物体を主成分とする植物寄生線虫防除剤とを併用することで、顕著に抑制される。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の線虫病害防除剤は、コーヒー粕抽出液および/またはコーヒー粕発酵物を主成分とする資材と、植物寄生線虫防除剤を含有するものであり、使用に際しては、あらかじめ、両者を適当量混合してから施用するのが好ましいが、施用時期を多少ずらして別々に施用しても何ら差し支えない。
【0013】コーヒー粕抽出液としては、コーヒー粕100部に対して50〜1000部の水(室温〜100℃)を加えてミキサーにかけた後、ろ過する等の方法で得られる抽出液が挙げられる。この際、抽出効率をあげるためエーテル、ケトン、アルコール等の有機溶剤を、使用する水に対して10%の範囲で使用する事は可能である。
【0014】さらには、該抽出液を使用するに際して、無機系のバーミキュライト、ゼオライト、珪藻土、炭カル、石灰岩、火山灰、赤土、活性けい酸、金属酸化物、多孔質鉱物、ソフトセラミックス及び有機系の腐植、動物質石灰などの多孔質担体に吸着・安定化させて使用することが可能である。この際、多孔質担体の使用量としては、抽出液100部に対して、500〜5000cm3を用いるのが好ましい。
【0015】コーヒー粕発酵物は、コーヒー粕を野積堆積法により発酵させて堆肥化したり、近畿大学環境科学研究所研究報告、第18号の「コーヒー粕の肥料化による研究」(133〜149頁)に報告されたように、堆肥化の前処理として鶏糞、もみがら、米糠を混合し、C/Nが10〜20となるように硫酸アンモニウムを添加して、発酵過程で生成された生育障害の原因となる有機酸を速やかに分解する、好気方法によって得られる。
【0016】本発明に言う、植物寄生線虫防除剤としては、例えば、植物寄生線虫類の密度抑制に有効な拮抗植物であって、線虫類の増殖を抑制する作用を持つ植物が挙げられる。具体的な例としては、マメ科植物のエビスグサ、クロタラリア、サイラトロ、ハブソウ、ラッカセイ、キク科植物のアフリカン・マリーゴールド、フレンチ・マリーゴールド、イネ科植物のギニアグラス、トウモロコシ、オカボ、ユリ科植物のアスパラガス、バラ科のイチゴ、ナス科のピーマン、アオイ科のワタ、ウリ科のスイカ等が挙げられる。なかでも、キク科植物のマリーゴールドが好ましい。
【0017】植物寄生線虫防除剤は、例えば、上記の植物体を乾燥後粉砕した粉末、該植物体を適当な水分含有量にしてからペレタイザーを用いて製造したペレット、そのペレットあるいは植物体の水抽出液を前記の多孔質担体に吸着・安定化させたものが挙げられる。当然のことながら、上記水抽出液の製造に際しては、コーヒー粕抽出物の製造に際して用いた有機溶剤を使用することが出来る。
【0018】本発明の線虫病害防除剤は、上記の主成分の他に本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。具体的には、たとえば、米糠、鶏糞、廃糖蜜、モミガラ、おから、麦芽エキス、高級脂肪酸、堆肥、動植物腐植、アミノ酸、ブドウ糖、キチンなどの有機物、あるいは硫安、尿素、塩化カリ、過燐酸石灰などの肥料成分、マンガン、亜鉛、コバルト、鉄、ヨード、珪素、苦土、ホウ素、フッ素、モリブデンなどに代表される微量ミネラルなどがあげられる。これらの成分はコーヒー粕抽出液または発酵体、あるいはマリーゴールド植物体を主成分とする資材とに混合して用いてもよいし、コーヒー粕あるいはマリーゴールドの堆肥を製造する工程で添加してもよい。さらにはマリーゴールドのペレットを成形する際に、マリーゴールド植物体の細断物によく混合した後成形する等の方法で用いることも出来る。
【0019】本発明の線虫病害防除剤を使用するに際して、効果の持続性あるいは有効成分の徐放性の点からは、堆肥、抽出液を多孔質体に吸着・安定化させたもの、乾燥粉末あるいはペレットなどの形態のものを用いるのが好ましい。また、線虫による被害が発生してしまい、その被害の程度をできるだけ最少にくい止めるためには、即効性が要求される点から、抽出液を用いるのが好ましい。更に、樹木の樹幹に注入して、病原体である線虫の感染を防ぐような場合には、当然の事ながら、抽出液を用いるのが有効である。
【0020】本発明に言う植物寄生性線虫とは、土壌に生息する土壌病害線虫および木材及び木材の組織に寄生し害を及ぼす線虫をさし、具体的には、サツマイモネコブ線ネコブ虫、ジャワネコブ線虫、アレナリアネコブ線虫、キタネコブ線虫、リンゴネコブ線虫等に代表されるネコブ線虫類、またキタネグサレ線虫、ミナミネグサレ線虫、ムギネグサレ線虫等に代表されるネグサレ線虫類、さらにダイズシスト線虫、ジャガイモシスト線虫、イネシスト線虫等に代表されるシスト線虫類、そしてミカンネモグリ線虫、イネネモグリ線虫等に代表されるネモグリ線虫類、ミカンネ線虫、ニセフクロウ線虫等に代表されるフクロウ線虫類、ピン線虫類、マツノザイ線虫等が挙げられる。
【0021】本発明の線虫病害防除剤を用いて、圃場での線虫に起因する土壌病害を抑制する方法としては、本発明の線虫病害防除剤を播種または定植前の土壌に混和したり、植物の苗根部または土壌に処理することにより防除することができる。具体的には、植物苗根部浸漬処理、植物苗根部粉衣処理、株元灌注処理、土壌混和処理などが挙げられる。
【0022】植物苗根部浸漬処理は、抽出液に植物根部を0.5時間〜24時間程度浸漬するのが好ましい。植物根部粉衣処理は植物根部に抽出液の吸着担体あるいはカプセルを粉衣することで実施できる。株元灌注処理は、植物苗根部を土壌に定植する時抽出液を株元に灌注することで実施出来る。その際の散布量の目安としては、粕抽出液として1g/m2 〜100g/m2 となる様に散布するのが好ましい。実際の散布に際しては、抽出原液をそのまま散布すると植物によっては成育に害を受ける物もあるので、水で100倍から5000倍に希釈して用いる必要がある。
【0023】土壌混和処理は、堆肥あるいはペレット、または、抽出液を多孔質担体に担持させたものを、播種前に土壌に混和しても、育苗開始時に発根用土に混合したり、定植前に定植用土壌に混和したり、あるいは全ての時期に処理することも効果を高めるためには好ましい。土壌混和に際しても、その混和量の目安は、堆肥、ペレットあるいは抽出液担持体として200g/m2 〜10000g/m2 が好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。実施例中に用いられる線虫活性抑制剤の調整方法および各測定値の測定方法は、下記の通りである。
【0025】1)マリーゴールドペレットの調整法:マリーゴールド植物体に付着した土を落とし、含水量30%程度まで風乾した。ペレタイザー((株)林鉄工所製;ペレット成型機52K−5GP型)を用いて、直径3mm、長さ3〜5mm程度のペレットを製造した。含水量は8%であった。
【0026】2)土壌中の病害線虫の測定(ベールマン法):植物根圏の土壌約100gを採取し、直径10cmのロートの端にゴム管をつないでピンチコックで止め、ロートに満たした水の中にティッシュペーパーに包んだ20gの土を静かに沈め、25℃の恒温室で24時間静置すると、土壌中の線虫は紙の目を通り遊出し、ゴム管内に沈降する。ピンチコックを開いてビーカーに集め、内容積3ccで、底部に罫線のある、円柱状の液ダマリを有するプレパラートに線虫を分離した液を入れ、倒立顕微鏡にて病害線虫の数を数える。
【0027】土壌よりの線虫分離は2回反復を行い、データーとしては2回の計数の合計、つまり40g土中の線虫数として表示した。
【0028】
【実施例1〜3及び比較例1〜5】キュウリの連作障害が問題になっている、静岡県沼津市の圃場を用いて評価実験を行った。評価の手順は次の如くである。
1)圃場に、油粕295g/m2 、発酵鶏糞458g/m2 、発酵牛糞4322g/m2 、くみあいジシアン有機入り化成;特806を34g/m2 、苦土石灰251g/m2 を施用し、キュウリの未床苗(夏すずみ)を144本定植した。
【0029】2)収穫終了後、株を抜き取り、整地した後、圃場のネコブセンチュウ数を測定した。
3)圃場を、2m×5m=10m2 毎に区切り、各区をアクリル板を用いて、深さ15cm、高さ20cmに囲った。
4)各区に1と同様にして、元肥を施用した後、表1に示す如くの割合にて、コーヒー粕堆肥((株)緑産製「肥効素ドライ」)を施用した。
【0030】5)施用後、1週間放置した後、圃場のネコブセンチュウを測定した後、キュウリの未床苗(夏すずみ)を各区に16本づつ定植した。
6)定植後、1ケ月後に苗の成育状態を観察し、ネコブ線虫数と枯死率を求めた。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【発明の効果】本発明における、コーヒー粕を主体とする資材と植物寄生線虫防除剤(例えば、マリゴールド植物体を主体とするもの)を併用することにより、それぞれを単独で用いる場合に比べ、より少量で、効果の高い、環境や作業者に及ぼす影響の極めて少ない、毒性の低い線虫病害防除剤が得られる。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月25日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−92323
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−260218