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【発明の名称】 水浸構造物の防汚方法および防汚膜を有する水浸構造物
【発明者】 【氏名】久保田 伸彦

【氏名】綾部 統夫

【氏名】田中 瑞乃

【氏名】根目沢 礼和

【要約】 【課題】水浸構造物、特に、船舶および海洋構造物の防汚,防食を行い、水浸構造物の表面の経年変化を防止して長寿命化を図るとともに、防汚作業等のメンテナンス性を向上させ、かつ海洋の環境汚染を防止する。

【解決手段】水浸構造物の被防汚表面にTiO2 膜を形成しておくとともに、該TiO2 膜への光照射により光触媒反応を発生させ、光照射に基づいて生じる酸化力によって、被防汚表面の近傍に浮遊または遊泳する微生物等の殺菌,滅菌,繁殖防止を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水浸構造物(X)の防汚方法であって、被防汚表面(3)にTiO2 膜(T)を形成しておくとともに、該TiO2 膜への光照射により光触媒反応を発生させ、光照射に基づいて生じる酸化力によって被防汚表面の近傍に浮遊または遊泳する微生物等の殺菌,滅菌,繁殖防止を行うことを特徴とする水浸構造物の防汚方法。
【請求項2】 被防汚表面(3)が金属表面(31)とされるとともに、該金属表面へのTiO2 溶射によってTiO2 膜(T)を形成することを特徴とする請求項1記載の水浸構造物の防汚方法。
【請求項3】 被防汚表面(3)が非金属表面(32)とされ、該非金属表面へのTiO2 塗料の塗装によって塗装膜(4)を形成するとともに、該塗装膜の最外表面にTiO2 を露出させることを特徴とする請求項1記載の水浸構造物の防汚方法。
【請求項4】 被防汚表面(3)が金属表面(31)とされ、該金属表面へのTiO2 塗料の塗装によって塗装膜(4)を形成するとともに、該塗装膜の最外表面にTiO2 を露出させることを特徴とする請求項1記載の水浸構造物の防汚方法。
【請求項5】 被防汚表面(3)が金属表面(31)とされるとともに、該金属表面への塗装膜(4)の下にTiO2 層(T)が形成されること特徴とする請求項3記載の防汚膜を有する水浸構造物。
【請求項6】 TiO2 膜(T)を有する水浸構造物であって、TiO2 膜が少なくとも接水部分において、最外表面にTiO2 が露出するように形成されることを特徴とする防汚膜を有する水浸構造物。
【請求項7】 被防汚表面(3)が、船舶(1)の表面とされるとともに、少なくとも吃水線(L1)を含む船腹(11)および船底(12)の表面全体にTiO2 膜(T)が形成されること特徴とする請求項5記載の防汚膜を有する水浸構造物。
【請求項8】 被防汚表面(3)が、水門(2)の表面とされるとともに、少なくとも固定部(21)における吃水線(L2)を含む部分にTiO2 膜(T)が形成されることを特徴とする請求項5記載の防汚膜を有する水浸構造物。
【請求項9】 被防汚表面(3)が、水門(2)の表面とされるとともに、海中と大気中との間を移動する可動部(22)を含む部分にTiO2 膜(T)が形成されることを特徴とする請求項8記載の防汚膜を有する水浸構造物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水浸構造物の防汚方法および防汚膜を有する水浸構造物に係わり、特に、光触媒反応を利用して水浸構造物の防汚効果を高める技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】水浸構造物の防汚方法および防汚膜に関する技術として、例えば、有機スズを含む塗料を船体や海洋構造物に塗布して殺虫効果を高め、付着生物の防汚を行う技術がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、殺虫剤として使用される有機スズ等の重金属は、付着生物の防汚剤として有効であるものの生物体に対する毒性が強く、かつ自然分解し難い特性を有しているため、海洋に流出した場合には底泥に堆積してしまう。このため、底泥生物をはじめとする他の有益な生物への体内濃縮が進み、殺虫成分の生体へ及ぼす影響を考慮すると、防汚剤として適しているとはいえない。また、船舶には、タンカー等の大型船舶からスポーツ,レジャー船のような小型船舶まであり、海洋構造物にあっても、例えば、海域を水域と陸域に区画する水門、石油,ガス,鉱物資源等を採掘するために建設される海洋ターミナルなどがあり、そのいずれにあっても安全性の確保から防汚あるいは防食処理が必要とされる。このため、被防汚体にあっては、被防汚部の大小,形状にかかわらず防汚作業が行えること、またそのための作業設備の設置や撤去作業等が容易に行い得るものであることが望ましい。さらに、これらの作業はいずれの場合も大がかりなものになり易いため、低コストで行われ、かつ作業後のメンテナンスをなるべく必要としないことが望ましい。また、作業従事者にあっては、長期間、防汚剤雰囲気中に曝されることとなるため、人体に対する安全性を配慮しなけれならない。
【0004】本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成するものである。
■ 水浸構造物、特に、船舶および海洋構造物の防汚,防食を行うこと。
■ 水浸構造物の表面の経年変化を防止して長寿命化を図ること。
■ 防汚作業等のメンテナンス性を向上させること。
■ 海洋の環境汚染を防止すること。
【0005】
【課題を解決するための手段】水浸構造物の被防汚表面にTiO2 膜を形成しておくとともに、該TiO2 膜への光照射により光触媒反応を発生させ、光照射に基づいて生じる酸化力によって、被防汚表面の近傍に浮遊または遊泳する微生物等の殺菌,滅菌,繁殖防止を行う技術が採用される。被防汚表面が金属表面とされる場合には、特に良好な半導体特性を有するn型TiO2 粒子を溶射する等の技術によりn型TiO2 膜を形成することが望ましい。また、TiO2 塗料の塗装によって被防汚表面(金属表面,非金属表面)にTiO2 膜を形成する場合には、最外表面にTiO2 が露出するように形成される。この場合、塗装されたTiO2 塗料の上にTiO2 微粉末あるいはTiO2 粒等を吹き付けて担持させ、最外表面のTiO2 密度を高めることにより、被防汚表面の近傍に浮遊または遊泳する微生物等の殺菌,滅菌,繁殖防止が行われる技術が採用される。TiO2 膜の下側に、つまり被防汚表面にTiO2 が直接接触するようにTiO2 層を設けることにより、被防汚表面の防食効果を高めることが可能となる。水浸構造物において、TiO2 膜が少なくとも接水部分において、最外表面にTiO2 が露出するように形成される技術が採用される。被防汚表面が、船舶の表面とされる場合には、少なくとも吃水線を含む船腹および船底の表面全体にTiO2 膜が形成されることが望ましい。被防汚表面が、水門(2)の表面とされる場合には、少なくとも固定部における吃水線を含む部分にTiO2 膜が形成されることが望ましく、かつ、海中と大気中との間を移動する可動部を含む部分にTiO2 膜が形成されることが望ましい。なお、TiO2 膜への照射光源としては、主に太陽光が採用されるが、自然環境(天候不順)あるいは船舶の停泊予定域や海洋構造物の立地条件等によって、照射量が影響されないようにするために、紫外線照射灯等を海中あるいは吃水線付近に設置して、常に安定した光触媒反応の効果を得るようにすることが有効な技術である。
【0006】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る水浸構造物の防汚方法および防汚膜を有する水浸構造物の第1実施形態を示している。図中、符号Xは水浸構造物、TはTiO2 膜(TiO2 層)、1は船舶、L1は吃水線である。
【0007】該第1実施形態における水浸構造物Xは、タンカー等の船舶1である。前記TiO2 膜Tは、後述する防汚膜Mであって、吃水線L1 の近傍を含む部分にに形成されているが、積み荷の多少等により吃水線L1の位置が変わることを考慮して、上下方向に幅を持たせている。また、船腹11および船底12の表面全体にTiO2 層Tを形成することが望ましい。このように、船体にTiO2 膜Tを形成しておくことにより、特に船舶1の停泊時等において、太陽光または紫外線ランプ等による照射に基づいて、TiO2膜Tの部分に光触媒反応を発生させて、水生生物の繁殖防止作用等により、船体全体の防汚性を向上させることができる。
【0008】図2および図3は、本発明に係る水浸構造物の防汚方法および防汚膜を有する水浸構造物の第2実施形態を示している。該第2実施形態は、水浸構造物Xが水門2とされている。図中、符号21は固定部、21aはU字溝、22は可動部、23はネジ、24は駆動部(例えばモータ,ギアボックス)、Gは岸壁(陸地)、Uは海洋域、L2 は吃水線、Sは水路である。
【0009】前記固定部21においては、TiO2 膜Tが少なくとも吃水線L2 を含む部分に形成され、可動部22においては、その表面全体にTiO2 膜Tが形成され、ネジ23にあってもTiO2 膜Tが形成されることが望ましい。このようにTiO2 膜Tを形成しておくと、太陽光の照射により、TiO2 膜Tの部分に光触媒反応が生じ、その際の酸化力が、大気雰囲気部分および水浸雰囲気部分の双方に及ぶため、特に、最大満潮時の最高潮位L2'域をも生息範囲にする生物の付着領域を網羅し、後述する繁殖防止作用等により防汚することができるとともに、水門2の表面全体の防食効果をも向上させることができる。
【0010】次いで、TiO2 膜Tの具体的な形成状況について、図4ないし図6を参照して説明する。
【0011】図4の第1例は、被防汚表面3が金属表面31である場合を示しており、該金属表面31の上に、TiO2 を直接溶射する方法等によりTiO2 膜Tを形成したものである。該TiO2 膜Tは、n型TiO2 粒子により形成することが望ましい。n型TiO2 とすることにより、良好な半導体特性に基づく光触媒反応を十分に発揮させることができ、紫外線の照射解きの光触媒反応により、金属表面31の腐食電位の低下による防食効果を期待することができるとともに、最外層における強力な酸化力に基づき、被防汚表面3の近傍に浮遊あるいは遊泳する微生物等の殺菌,滅菌,繁殖防止を行って防食効果を高めることができる。
【0012】図5の第2例は、被防汚表面3がコンクリート等の非金属表面32の場合を示しており、該非金属表面32の上に塗装膜4を形成した後、その上に(または形成終了直前に)防汚膜Mを形成したものである。該防汚膜Mは、非金属表面32にTiO2 粒子を吹き付ける等の方法でTiO2 膜Tが形成され、最外表面に、TiO2 粒子を最も高い密度で担持されるように設定される。よって、防汚膜Mの最外表面にあっては、第1例と同様に、紫外線の照射により強力な酸化力を生じさせて防汚効果を高めることができる。
【0013】図6の第3例は、被防汚表面3が、コンクリート等の非金属表面32の上に鋼製ライナ等により金属表面31を配している場合に、その上に防汚膜Mを形成したものである。該防汚膜Mは、金属表面31の上に形成されるTiO2 膜Tと、該TiO2 膜Tの上に塗装により形成される塗装膜4と、該塗装膜4の上に形成されるTiO2 膜Tとの多層構造をなしており、金属表面31と最外表面にTiO2 膜Tが配されて、金属表面31の防食と最外表面の防汚との両方の機能を持たせるようにしている。なお、金属表面31と塗装膜4との間のTiO2 膜Tへの紫外線等の照射は、例えば塗装膜4を透明にすることにより、塗装膜4を光伝送路として紫外線等を伝送することにより行われ、これにより光触媒反応を生じさせるものである。
【0014】
【発明の効果】本発明に係る水浸構造物の防汚方法および防汚膜を有する水浸構造物によれば、以下の効果を奏する。
(1) 水浸構造物の被防汚表面にTiO2 膜を形成しておくことにより、太陽光の照射等により光触媒反応を発生させ、その際の酸化力に基づいて水生生物の付着や繁殖を妨げて、水浸構造物、特に、船舶および海洋構造物等の防汚を効果的に行うことができる。
(2) 金属表面等にTiO2 膜を形成することにより、光触媒反応時に被防汚表面の腐食電位を低下させて、金属表面の防食を行うことができる。
(3) 被防汚表面に光触媒反応を発生させて、水生生物の付着を妨げることにより、水浸構造物の表面の経年変化を防止して長寿命化を図ることができる。
(4) 主な紫外線照射光源として太陽光を利用し、TiO2 膜の光触媒反応を発生させることにより、特別な照射光源の設置が不要となり、防汚作業等の労力を低減し、かつメンテナンス性を向上させることができる。
(5) TiO2 の光触媒反応を利用した防汚方法であるために、従来技術と比較して有害物質を含有する防汚剤の使用を不要として、海洋環境汚染を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外1名)
【公開番号】 特開平11−92317
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−253934