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【発明の名称】 無機系抗菌性組成物
【発明者】 【氏名】加藤 さやか

【要約】 【課題】合成樹脂へ混合時、および合成樹脂に混合後の熱、日光等への暴露時に変色が少なく、抗菌性能に優れた無機系抗菌性組成物を提供すること。

【解決手段】pHを5.0〜8.0に調整した無機層状鉱物であるハイドロタルサイト類を、抗菌性ゼオライトあるいは抗菌性ゼオライト調製時に添加してなる無機系抗菌性組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 抗菌性ゼオライトと、pHを5.0〜8.0に調整したハイドロタルサイト類を含有する無機系抗菌性組成物。
【請求項2】 抗菌性ゼオライトの調製時に、反応系内にハイドロタルサイト類を分散させ、pHを5.0〜8.0に調整して得られる請求項1記載の無機系抗菌性組成物。
【請求項3】 抗菌性ゼオライトと、予めpHを5.0〜8.0としたハイドロタルサイト類を混合して得られる請求項1記載の無機系抗菌性組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抗菌性金属イオン、特に銀イオンを担持したゼオライトを合成樹脂に添加したときの変色作用を抑制することを目的とする。本発明の組成物は、合成樹脂に添加した際に優れた抗菌性能を示す。また合成樹脂に混合、成形時、本組成物を含有する合成樹脂が熱、日光等に暴露された時に生じる変色が少ないため、広範囲に使用でき、かつ品質の優れたプラスチック製品が得られる。
【0002】
【従来の技術】銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等の金属イオンが抗菌性能をもつことは広く知られている。特に銀イオンの抗菌性能は数多い金属イオンの中でも突出しており、古くから硝酸銀溶液の形で消毒剤や抗菌剤として用いられてきた。しかし、銀イオンやその化合物は、光、熱、他物質と鋭敏に反応し、変色を呈する場合が多い。また合成樹脂に銀イオン化合物をそのままの形で混合する場合には分散性が悪く、成形品の使用に際しても溶解性、徐放性といった抗菌性能に直接かかわる点で力不足であった。
【0003】近年、このような欠点を改善するためにゼオライト、活性炭、リン酸カルシウム系化合物(ハイドロキシアパタイト)、リン酸ジルコニウム、シリカ等に抗菌性金属イオンをイオン交換または吸着させた抗菌性組成物が開発されている(特開昭60−181002号公報、特開昭49−61950号、特開平3−218765号公報、特開平3ー83906号公報、特開平5ー339509号公報)。これらの抗菌性組成物は、合成樹脂と混合したときの分散性、溶解性、徐放性、変色作用に改善が見られ、従来のものよりも広い範囲で使用されるようになった。しかし、抗菌成分を原因とする変色の問題は完全には解決されていない。バス用品、キッチン用品等に抗菌性の付与を目的としてこのような抗菌性組成物が使用される場面が増えているが、清潔感のイメージから消費者に好まれる白色の容器、器具等に変色が生じることは商品価値を著しく損なうものである。
【0004】変色の主な要因として、合成樹脂成型時の加熱による抗菌性金属イオンの酸化、あるいは金属イオンと樹脂中の組成物の反応が挙げられる。ゼオライトにイオン交換で担持された銀イオン等の、単独での酸化反応は起こりにくい。ゼオライトの三次元構造は900℃までの加熱にも耐えるため、樹脂成形時レベルの加熱では抗菌性金属イオンは遊離せず保護されるからである。しかし、樹脂中にハロゲン、イオウ化合物等が存在する場合は200℃程度の加熱で容易に反応し、変色を生じる。ハロゲン、イオウ化合物等との反応を抑制するための検討は現在盛んに行われており、担持体の焼成による安定化(特開平4−134009号公報)や無機微粒子や有機酸化物での表面処理による不活性化(特開平6−183728号公報、特公平3−80814号公報)、変色防止剤等の添加(特開平6−158551号公報)などが、ある程度の効果をあげている。しかし、焼成や表面処理は、抗菌性金属イオンの溶出を極度に抑制し抗菌力を低下させやすい。また変色防止剤等の添加物は、樹脂によっては劣化を引き起こすことがあり、課題が残されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような問題点から、本発明では抗菌性金属イオンと樹脂中の化合物との反応を抑制し、熱、日光等の影響下で合成樹脂を変色させる作用を少なくした抗菌性組成物を提供することを課題とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、抗菌性ゼオライトに予めpHを5.0〜8.0に調整したハイドロタルサイト類を混合することで、抗菌性金属イオンの変色作用が抑制できることを見出した。すなわち本発明は抗菌性ゼオライトと、pHを5.0〜8.0に調整したハイドロタルサイト類を含有する無機系抗菌性組成物である。
【0007】本発明の特徴は、アニオン交換性能をもつハイドロタルサイト類により、合成樹脂中のハロゲン等を捕捉して変色を抑制することである。現在までに、pHを制御していないハイドロタルサイト類を抗菌性組成物とともに合成樹脂に混合する方法は提案されてきたが(特開平4−145007号公報、特開平6−172103号公報)、完全な変色抑制には至っていない。本発明者は種々の検討を経て、ハイドロタルサイト類のpHを5.0〜8.0に調整し、抗菌性ゼオライトに混合することで、より効果的に合成樹脂の変色を抑制できることを見出した。pHを5.0〜8.0に調整する理由としては、ハイドロタルサイト類の本来のpHが10.0以上であるためである。このような高いpH雰囲気下では、合成樹脂の成形時あるいは製品として使用する際に、抗菌性金属イオンは酸化物となる可能性が高い。特に酸化銀は変色が顕著であり、抗菌性能が低いことはよく知られており、これを防止するためにpHを調整する。一方、ハイドロタルサイト類を予め抗菌性ゼオライトに混合しておくとなぜ変色抑制効果が上がるのか、その理由は明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。合成樹脂中の変色の原因となる化合物が、抗菌性金属イオンと接触しなければ変色を抑制することができる。つまり、抗菌性金属イオンのできるだけ近くにハイドロタルサイト類を存在させ、変色を誘発する化合物を金属イオン周辺から除去すればよい。予め、ハイドロタルサイト類と抗菌性ゼオライトを混合しておけば、個々に合成樹脂に添加した場合よりも、より近くに存在しあうことができる。よって、より効果的に合成樹脂の変色が防止できると考えている。以下に本発明について詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の組成物に用いるハイドロタルサイト類は天然、合成品共に有効である。工業的に安定に合成されており、アニオン交換性を利用した胃酸成分の捕捉を目的とした医薬品としても用いられてきた合成品がより適当である。合成品では酸化マグネシウムと酸化アルミニウムのモル比、比表面積等によって分類される。一般には以下の構造式で示される。
Mg6 Al2 (OH)16CO3 ・4H2 O層状の二次元構造をもち、表面荷電がプラス、塩基性の物質である。アニオン交換反応は構造中の炭酸イオンCO3 - と系外のアニオンとの間で生じる。アニオン交換容量はおよそ4meq /g である。このとき特徴的なことは放出されるCO3 - が完全に中性であることで、腐食性の問題を起こす恐れはない。また合成ハイドロタルサイト類は、約300℃まで上記の構造が崩壊しないので、ほとんどの合成樹脂の成型時の加熱に耐える。これらの性質は、pHを本来の10.0付近から5.0〜8.0に調整した場合にも保たれる。
【0009】本発明に用いるハイドロタルサイト類の形状は粉末がよい。粒子径に制限はないが、用途により例えば薄膜フィルムや繊維等に用いる場合は5μm以下が好ましい。また、汎用のプラスチック製品に用いる場合は数μm〜10μmでよい。ただし、抗菌性ゼオライトとの分散性を考慮すると、ハイドロタルサイト類とゼオライトの粒子径との差は大きくない方が好ましい。
【0010】本発明に用いるゼオライトは合成品、天然品のいずれでも使用できる。一般にゼオライトはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の結晶性アルミノケイ酸塩として知られている。三次元の結晶構造を持ち、数〜十数Åの微細な細孔径を内部に有する。天然のゼオライトにはモルデナイト、チャバサイト、クリノプチロライト、エリオナイト等が挙げられ、合成品ではA型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等が挙げられる。合成品の一般式を以下に示す。
A型ゼオライトxM1/2 O・Al2 3 ・2SiO2 ・4.5H2 OX型ゼオライトxM1/2 O・Al2 3 ・2.5SiO2 ・6H2 OY型ゼオライトxM1/2 O・Al2 3 ・4.8SiO2 ・8.9H2 OMがイオン交換可能な金属イオンを示す。一般に、1価または2価の金属イオンである。上記のゼオライトの三次元構造は900℃までは崩壊しない。よって合成樹脂の成形時の加熱に充分耐えうる。またこれら天然、合成ゼオライトのイオン交換容量は2.6〜7meq/g であり、銀イオン等を充分担持することができる。
【0011】本発明に用いるゼオライトの形状は粉体が好ましい。その粒径はハイドロタルサイト類と同様に選択すればよい。
【0012】以下に本発明の無機系抗菌性組成物の製造方法について説明する。まず、ゼオライトをイオンを除去した水を用いて懸濁液とする。このゼオライト水懸濁液は、pHを5.0〜8.0に調整しておくことが望ましい。pHが5.0未満の酸性溶液では、ゼオライトおよびハイドロタルサイト類は容易に溶解するため、抗菌性金属イオンが担持できなくなる。また、pHが8.0を超えた場合は金属酸化物が析出し、抗菌力が低下し、合成樹脂に変色を起こしやすくなるためである。このとき、ゼオライトのpHを調整しても、次第に元のpHに近づくようになる。これはゼオライトの緩衝作用が働くためである。pH5.0〜8.0を維持するようなるまで、酸を補給しながら浸漬する。使用する酸は、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、蟻酸等の有機酸のいずれを用いても構わない。続いて抗菌性金属イオン水溶液をゼオライトに添加する。添加方法は、バッチ式、カラム法等任意に選択できる。使用する抗菌性金属化合物は水溶性であればいずれの化合物を用いてもよく、例えば硝酸銀、酢酸銀、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅等を用いることができる。抗菌性金属イオン水溶液は銀、亜鉛、銅化合物等を単独で溶解したものを用いてもよいし、2つ以上のイオンを連続で添加、あるいは混合溶液として添加しても構わない。また、ゼオライトを抗菌性金属イオン水溶液に直接浸漬してもよい。この場合もpHを5.0〜8.0に調整してイオン交換を行い、金属酸化物の析出を抑制した方がより好ましい。抗菌性金属イオン担持量は、水溶液の濃度によって調節できるので、期待する性能に合わせて選択すればよい。調製系内の濃度として銀イオン3〜60mM、亜鉛イオン2〜300mM、銅イオン2〜200mM程度が好ましい。濃度が高すぎると担持反応は効率的に進まず、ゼオライト表面に金属酸化物および水酸化物が沈着し、抗菌力が低下するからである。上記濃度で調製すると、銀イオン含量0.5〜5%、亜鉛イオン含量0.1〜15%、銅イオン含量0.1〜8%の抗菌性組成物を得られる。抗菌性金属イオン添加後は、3〜24時間の熟成を行う。このとき、イオン交換反応を効率的に行うため温度を30〜70℃に保つことが望ましい。熟成後は懸濁液よりゼオライトを分離し、常法に従って洗浄、乾燥、粉砕を行い抗菌性ゼオライトを得る。乾燥は常圧105℃〜120℃あるいは減圧下等、任意に選択できる。
【0013】ハイドロタルサイト類の添加は、抗菌性ゼオライトの調製過程あるいは、調製終了後に行うことが好ましい。いずれの方法を取るにせよ、ハイドロタルサイト類は、pHを5.0〜8.0に調整することが望ましい。前述のとおり、合成ゼオライトと同様に、合成ハイドロタルサイト類はアルカリ性を呈するからである。ハイドロタルサイト類の添加は、金属イオン担持時の系内に加える方法が工程の簡略化が計れるので好ましい。上記の抗菌性ゼオライトの調製段階のどの時点でハイドロタルサイト類を添加しても構わないが、調製系にハイドロタルサイト類を添加した後に、調製系のpHを5.0〜8.0に調整しておく。調製終了後の抗菌性ゼオライトにハイドロタルサイト類を添加する場合は、予めハイドロタルサイト類のpHを調整しておくとよい。pH調整後、ハイドロタルサイト類を常法に従って乾燥、粉砕する。抗菌性ゼオライトとの混合は一般に知られた方法、例えばドライブレンド等で行えばよい。ハイドロタルサイト類の添加量はいずれの方法でも原料ゼオライト重量の5〜45重量%程度が好ましい。5重量%未満では変色の抑制作用が小さく、また45重量%を超える場合は合成樹脂の物性を低下させる場合がある。この範囲内で変色の抑制の度合い、コスト、合成樹脂の物性等から判断し、添加量を任意に決定する。
【0014】本発明について、以下の実施例でより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】
【実施例】
(実施例1)粉末A型ゼオライト(シルトンB、水沢化学(株)製)90gと 粉末合成ハイドロタルサイト(HTD−4C、協和化学工業(株)製)10gを200mlのイオン交換水に懸濁した。懸濁液に1Mの硝酸水溶液を90ml添加し、懸濁液のpHを5.0〜8.0に調整した。懸濁液の温度を50℃に保って0.1Mの硝酸銀水溶液を46ml添加した。24時間の熟成後、ろ過し、500mlのイオン交換水で洗浄、ろ過した。固形物を常圧、110℃で16時間放置し、粉砕して本発明の無機系抗菌性組成物100gを得た。
【0016】(実施例2)粉末合成ハイドロタルサイト10gを50mlのイオン交換水に懸濁した。1Mの硝酸水溶液を30ml添加し、懸濁液のpHを5.0〜8.0に調整した。これをろ過し、110℃で16時間放置して10gの固形物を得た。これに、実施例1から粉末合成ハイドロタルサイトを除いて調製して得られた固形物90gを混合して、本発明の無機系抗菌性組成物を100g得た。
【0017】(比較例1)実施例1から粉末合成ハイドロタルサイト類を除いて調製し、90gの固形物を得た。
【0018】(比較例2)比較例1で得られた抗菌性ゼオライト90gに、pH調整を行わなかったハイドロタルサイト(懸濁液としてのpHが10.5)を10g混合して、100gの固形物を得た。
【0019】上記の方法で得られた無機系抗菌性組成物を、抗菌性能および耐候性能について評価した。
【0020】(抗菌性樹脂シートの調製)ポリプロピレン樹脂(住友化学社製:AW−630V)に実施例1、2、および比較例1、2、の抗菌性組成物を各々0.5%、1.0%の割合で添加、混合した。次いで230℃に調整した電熱プレスシート成型器(37t、2段プレス式、関西ロール(株))を用いてシート化した。120×120×1mm(厚さ)の抗菌性ポリプロピレン樹脂シートを得た。
【0021】(抗菌性能の評価)18時間培養した供試菌、Escherichia coli(大腸菌)およびStaphylococcusaureus (黄色ブドウ球菌)を、1/500のニュートリエントブロース培地を加えた滅菌精製水で2.0×105 〜1.0×106 (個/ml)に調製した。上記抗菌性組成物を混合した抗菌性樹脂シートを5cm平方に切り取り、滅菌シャーレに入れ、シート上に0.5mlの菌液を接種し、4.5cm平方の被覆フィルム(ポリエチレン製、ストマッカー80形用袋を切断したもの)を被せてシャーレをシールし、35℃で保存した。また無機系抗菌性組成物を添加しなかったシート(以下ブランクシートと略称する)を同様に処理した。シートは24時間後にSCDLP(ソイビーンカゼインダイジュストレシチンポリソルベート)培地9.5mlで洗い出して1ml中の生菌数を寒天平板培養法で測定した。この試験方法は1995年度版銀系無機抗菌剤研究会抗菌加工製品の効力試験法Iに準ずる。
【0022】抗菌性能の評価結果を表1に示した。試料は102 以下となった。本発明の無機系抗菌性組成物は抗菌性ゼオライト(比較例1)との効力の差は認められず、充分な抗菌力をもつことが確認できた。
【0023】
【表1】

【0024】(耐候性能の評価)無機系抗菌性組成物を添加したポリプロピレン樹脂シートを、紫外線に24、48、168時間暴露した後、変色の状況を目視で確認して評価した。
【0025】耐候性能の評価結果を表2に示した。表に示したように、抗菌性ゼオライト(比較例1)を0.5%添加したシートでは、24時間の紫外線暴露 で変色が生じ始め、紫外線の暴露時間が長くなるにつれて強い変色が見られるようになった。比較例2を添加したシートは、比較例1に比べると変色が少ないが、実施例1、2より変色が強かった。本発明の無機系抗菌性組成物、特に実施例1では、添加量を1%に増やしたシートでも168時間の紫外線暴露で変色はわずかであった。
【0026】
【表2】

【0027】
【発明の効果】本発明の、pHを5.0〜8.0に調整したハイドロタルサイト類と抗菌性ゼオライトを含有してなる無機系抗菌性組成物は、合成樹脂に添加した場合、成形加工による着色および紫外線による変色が抑制された。また抗菌性能が高く有用な合成樹脂成型品を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000192844
【氏名又は名称】神東塗料株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月24日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−92314
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−278271