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【発明の名称】 繊維用抗菌剤及び抗菌防臭加工繊維製品
【発明者】 【氏名】指田 和幸

【氏名】吉川 公夫

【氏名】金原 康治

【要約】 【課題】繊維用抗菌剤及びこれを用いた抗菌防臭繊維製品を提供する。

【解決手段】モノ脂肪酸エステル純度が50重量%以上であるジグリセリンモノ脂肪酸エステルを有効成分とする繊維用抗菌剤及びこれを付与した抗菌防臭繊維製品である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 モノ脂肪酸エステル純度が50重量%以上であるジグリセリンモノ脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とする繊維用抗菌剤。
【請求項2】 ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が8から18の範囲であることを特徴とする請求項1記載の繊維用抗菌剤。
【請求項3】 ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを付与した天然繊維及び合成繊維よりなる群より選ばれた1種又は2種以上を少なくとも1部に使用した抗菌防臭加工繊維製品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌作用に優れたジグリセリンモノ脂肪酸エステルを有効成分とする繊維用抗菌剤及びこの抗菌剤を付与した抗菌防臭繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】衣料、寝具、布団、敷物、カーテン、壁布地、靴等は使用者の皮膚から排出される分泌物や皮膚の剥離物等が付着する。これらが細菌やカビ等の栄養源となるため、細菌等が繁殖するのに好適な培地となり、細菌の産生物によって不快臭を発生し、場合によっては皮膚病等の誘発原因ともなる。また、布団、敷物、カーテン、壁布地等は湿度の高い場所での保管あるいは使用するうちにカビが発生する事が多い。この場合、繊維の劣化、更には汚染等による品位の低下が起こる。更に、これらの他、ふきん、おしぼり、包帯等も細菌汚染を抑制し衛生的に保つことが望まれる。
【0003】従来これらの問題を解決する手段として、種々の殺菌剤を含む液を浸漬、塗布、噴霧等の方法で繊維製品に付着させることが行われている。しかし、これらの方法では、加熱、水洗、洗濯等の外的影響によって分解あるいは脱落し易いものが多く、効果の持続期間が短い。効力の持続期間を長くする方法として、例えば、殺菌性第4級アンモニウム塩の一部を有機シリコン化合物を介して繊維分子に結合させる方法、繊維に対する吸着性の強い高分子化合物を併用して殺菌剤を繊維表面に強く被覆付着させる方法、繊維構成物質の組成中に殺菌性金属化合物を結合させて抗菌性を持たせる方法等が行われている(引用文献 防菌防黴剤辞典第1版:日本防菌防黴学会)。
【0004】しかしこれらの方法は、使用する化合物の耐熱性が低く加工の際の加熱工程に耐えられなかったり、洗濯で簡単に脱離したり、素材繊維の特性を損なったり、安全性が不十分であったり、加工工程が繁雑で加工コストが高い、あるいは製品の廃棄、焼却の際に有害物質を生じる、といった諸々の欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の従来技術の問題点を克服し、皮膚刺激性のない繊維用抗菌剤を開発すべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、モノ脂肪酸エステル純度が50重量%以上であって、エステルを構成する脂肪酸の炭素数が8ないし18の範囲であるジグリセリンモノ脂肪酸エステルを含浸させた天然繊維及び/又は合成繊維より選ばれた1種又は2種以上を少なくとも1部に使用することによって達成されることを見出した。
【0007】以下、本発明の詳細について説明する。本発明に係わるモノ脂肪酸エステル純度が50重量%以上であるジグリセリンモノ脂肪酸エステルからなる繊維用抗菌剤は、繊維の抗菌加工に利用された例はこれまでになく、その適性については全く知られていなかった。
【0008】本発明品が含まれるポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品添加物として、使用食品、使用量に規制が設けられていない安全な化合物である。これら化合物の中で、グリセリンモノ脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、及びデカグリセリン脂肪酸エステルに抗菌性がある事は知られている(Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Nov. 1973, p.501〜506)。この文献では、これらポリグリセリン脂肪酸エステルの抗菌性評価をStreptococcus sp., Staphyrococcus aureus, Corynebacterium sp., Nocardiaasteroides, Micrococcus sp. の5種類のグラム陽性菌について最小発育阻止濃度(MIC)を測定したものであり、各菌でのMIC値は抗菌性を有する公知のグリセリン脂肪酸エステルに比べ大幅に小さいものであり、また、グラム陰性菌、酵母、真菌での抗菌性の効果の記述はない。
【0009】本発明に用いるジグリセリンモノ脂肪酸エステルの抗菌特性については知られておらず、しかも抗菌性についても、全く知られていなかった。本発明に用いるジグリセリンモノ脂肪酸エステルの抗菌特性については知られておらず、しかも抗真菌剤についても、全く知られていなかった。
【0010】本発明に用いるジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、モノ脂肪酸エステルを50重量%以上含むものである。本発明に用いられるジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、モノ脂肪酸エステルが50重量%未満では抗真菌性が劣る、又はない。
【0011】本発明に用いるジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、モノ脂肪酸エステルを50重量%以上含むものである。一般に、ジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とを無触媒又は触媒存在下180〜240℃で加熱混合して得られる。エステル化反応は、無差別分布に沿って進行し、反応生成物として未反応ジグリセリン、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルの他に、同ジエステル、同トリエステル、同テトラエステルが存在する。これらの存在比率は、ジグリセリンと脂肪酸の反応モル比により決定される。具体的に、ジグリセリンとパルミチン酸とを混合し未反応脂肪酸がなくなるまで反応した場合、反応生成物はほぼ次表のようになる。
【0012】
【表1】

【0013】ジグリセリンと脂肪酸の反応生成物は、反応モル比を変えてもモノエステル含量が50重量%を超えることがない。
【0014】本発明に用いられるモノ脂肪酸エステルを50重量%以上含有するジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、通常の反応生成物から未反応ジグリセリンを除去する方法(しかし、この方法ではモノ脂肪酸エステル含量は最大で55重量%にしかならない)、溶剤分別する方法、分子蒸留による方法等により得ることができる。これら未反応物除去法、溶剤分別法、分子蒸留法は公知の技術を採用できる。本発明に用いられるモノ脂肪酸エステルを50重量%以上含有するジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、脂肪酸炭素数が8から18が好ましい。脂肪酸炭素数が8より小さいジグリセリンモノエステルは、不快臭の発生、皮膚刺激性が強くなる。また、脂肪酸炭素数が18より大きいジグリセリンモノエステルは、抗菌性が劣るか、又はない。本発明に用いられるジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、常温に於いて液体又は半固体状の化合物であり、無色、無臭であり、また皮膚に対して刺激性が極めて弱いか、又はない。
【0015】尚、本発明に用いられるジグリセリン脂肪酸エステルは、他の周知の殺菌剤及び防腐剤、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、パラクロル−メタキシレノール、α−ブロムシンナムアルデヒド、チアベンダゾール、グリセリン脂肪酸エステル等を併用することもでき、これによって初期効果の増強、効果の持続性が期待される。
【0016】本発明の抗菌成分を繊維素材に付与する方法には、次に述べる様々な乳化液又は溶液に調製して用いる。即ち、上記化合物に、乳化剤、親水性溶剤及び水等を加えて加熱、混合、均一化すれば乳化液として調製される。また、有機溶剤に溶解すれば溶液として調製される。乳化液及び溶液は通常の調整方法により調製される。その他必要であれば、粘度調整剤、安定剤、着色料、香料等を加えても良い。
【0017】上記親水性溶剤としては、低級アルコール、アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等が用いられ、特に制限されるものではない。また、上記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、低級アルコール酢酸エステル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、特に制限されるものではない。尚、高温で処理する場合は、沸点の高い溶剤を選ぶのが好ましい。更に乳化剤についても同様に、使用にあたり制限はないが代表的なものとして、アルキル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0018】上記組成物により調製された乳剤又は溶液剤を繊維素材に付与する方法は、まず上記乳液の場合はこれを水で希釈して上記活性剤成分が0.1〜30重量%含まれる液を調製し、浸漬、塗布、噴霧等の手段により被加工対象の繊維製品に0.1〜5重量%程度付与されるように処理する。この場合、0.1重量%未満では抗菌効果が弱く、通常の使用条件下で使用される限り5重量%を超えて付与する必要はない。また、上記溶液の場合、水に希釈するかもしくはせずに浸漬、塗布、噴霧による方法で、本発明化合物を被処理繊維製品に上記重量付与するように処理する。
【0019】本発明のジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、木綿、絹、羊毛等の天然繊維、ポリアミド系、ポリエステル系、アクリル系等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維等に対して強い付着力を示す。例えば、アクリル系、ナイロン系の繊維については10回の洗濯後でも抗菌力を示す。木綿、絹、羊毛との混紡又は交織した繊維製品では、極めて強い親和性を示し、50回の洗濯後でも抗菌性が付与される。従って、加工繊維製品としては肌着、靴下、スポーツ衣料、寝具、カーテン、敷物、壁布地、ふきん、おしぼり、包帯、運動靴、鞄、紙、パルプ製品等広範囲に適用される。本発明の抗菌剤を用いて抗菌加工された繊維製品は、風合い、光沢、臭い、撥水性などの面で素材繊維本来の持ち味を損なう事はない。本発明の抗菌剤に使用される化合物は、食品添加物に指定されているものであり、従来から繊維製品の抗菌加工用として用いられている殺菌剤に比べ安全性が高いことが大きな特徴である。
【0020】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】(実施例1)表2に示す本発明品であるジグリセリンモノ脂肪酸エステル、及び比較例を用いて繊維製品の抗菌性評価を行った。抗菌性試験は、繊維製品衛生加工協議会の菌数測定法により無加工及び加工試料の生菌数を測定した。評価判定方法は、評価指数 log(B/C)>2を有効とした。但し、B:無加工試料の18時間培養後の生菌数、C:加工試料の18時間培養後の生菌数である。
【0022】
【表2】

【0023】上記本発明品及び比較品を各30重量部別々にとり、それぞれジオクチルスルホコハク酸ナトリウム10重量部、ジメチルスルホキシド20重量部、イソプロパノール20重量部及び水20部を加えて加温、混合して各有効成分濃度30重量%の乳化液を得た。綿布を各30重量%乳化剤の30倍希釈水溶液に浸漬し、綿布重量と等量の液が付着するように絞り、105℃の温風で10分間乾燥して試料布とした。洗濯試料布は、JIS L 1018(H法)で処理して作成した。抗菌試験は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用い、生菌数を測定した。結果を表3に示す。また、実施例及び比較例各々の30重量%乳化液を10倍希釈した水溶液を作成し綿布を浸漬し、綿布重量と等量の液が付着するように絞り、105℃の温風で10分間乾燥して試料布とし、上記と同様な抗菌試験を行い抗菌性を評価した。結果を表4に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】本発明の抗菌剤を使用した実施例では洗濯後も抗菌力は維持され、優れた抗菌繊維製品が得られる。
【0027】(実施例2)実施例1で作成した本発明品及び比較品の各30重量%乳化液を用い、それぞれ30倍希釈水溶液とし、ポリエステルの布地を浸漬して布地重量と等量の液を付着させ、以下実施例1と同様な方法で黄色ブドウ球菌について抗菌試験を実施し阻止円を測定した。測定結果を表5に示す。
【0028】
【表5】

【0029】実施例1と同様に、ポリエステル布地について良好な抗菌性の効果を認めた。
【0030】(実施例3)実施例1で作成した本発明品及び比較品の各30重量%乳化液を30倍希釈水溶液とし、靴下(アクリル、ポリエステル、ナイロン、毛の混紡)一足の片足分を浸漬し靴下重量と等量の液を付着させ風乾した。処理した靴下を未処理の片足分と1対にして各2足分ずつ用意し、それぞれ1日間着用後洗濯、乾燥を3回繰り返した後4回目の1日着用時の臭いを比較した。なお、靴は新品の運動靴を用い試験前からの着臭の影響を防いだ。結果を表6に示す。
【0031】
【表6】

【0032】
【発明の効果】本発明により、安全性、安定性、耐洗濯性に優れ、被加工製品本来の物性を損なうことのない抗菌防臭加工繊維製品を提供することができる。本発明に使用した抗菌剤の有効成分は、食品添加物であるポリグリセリン脂肪酸エステルであり、衛生的に安全である。
【出願人】 【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】箕浦 清
【公開番号】 特開平11−92306
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−269295