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【発明の名称】 チフルザミドの水田用粒剤
【発明者】 【氏名】松本 公平

【氏名】市場 常男

【要約】 【課題】チフルザミドを含有する速効性の農薬製剤を提供する。

【解決手段】チフルザミドを水中乳化性付与基剤に溶解した乳剤を、含水二酸化ケイ素を含む空粒剤に含浸させたことを特徴とする、チフルザミドの水中易乳化分散性水田用粒剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 チフルザミドを水中乳化性付与基剤に溶解した乳剤を、含水二酸化ケイ素を含む空粒剤に含浸させたことを特徴とする、チフルザミドの水中易乳化分散性水田用粒剤。
【請求項2】 水中乳化性付与基剤の比重が1.0以上である、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項3】 乳剤の比重が1.0以上である、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項4】 水中乳化性付与基剤が、チフルザミドが可溶性の極性溶剤、非極性溶剤及び乳化剤を含むことを特徴とする、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項5】 極性溶剤と非極性溶剤の割合が、1:1〜1:20の範囲である請求項4記載の水田用粒剤。
【請求項6】 粒剤全重量に占める極性溶剤、非極性溶剤及び乳化剤の割合が、それぞれ、1〜10%、10〜20%及び1〜10%の範囲である請求項4記載の水田用粒剤。
【請求項7】 極性溶剤が、N−メチル−2−ピロリドンであり、非極性溶剤が、1−フェニル−1−キシリルエタン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150、ソルベッソ#200、シクロヘキサン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、クメン、キシレン、メチルナフタレン、ベンジルエーテル、アジピン酸オクチル、ステアリン酸ブチル、ラウリル酸ブチル、大豆油、ヒマシ油、オリーブ油及びナタネ油からなる群から選択される1又はそれ以上の溶剤である、請求項4記載の水田用粒剤。
【請求項8】 極性溶剤がN−メチル−2−ピロリドン、非極性溶剤が1−フェニル−1−キシリルエタンである請求項4記載の水田用粒剤。
【請求項9】 乳化剤がPOAアリルフェニルエーテルサルフェートNH4である請求項4記載の水田用粒剤。
【請求項10】 乳剤の含量が、粒剤全重量の10〜40%である、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項11】 粒剤中の乳剤が、粒剤全重量に対して、1〜3%のチフルザミド、2〜4%のN−メチル−2−ピロリドン、10〜15%の1−フェニル−1−キシリルエタン、及び1〜3%のPOAアリルフェニルエーテルサルフェートNH4を含有する、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項12】 乳剤が、チフルザミドの極性溶剤溶液を乳化剤の存在下で非極性溶剤に乳化してなるものである、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項13】 含水二酸化ケイ素の含量が、粒剤全重量の10〜35%である、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項14】 空粒剤が、さらに崩壊・拡展剤をも含有する、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項15】 水面浮遊率が約2%以下である、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項16】 稲の紋枯病又はいもち病に対する農薬製剤である、請求項1記載の水田用粒剤。
【請求項17】 チフルザミドを極性溶剤に溶解し、得られた溶液に乳化剤及び非極性溶剤を添加して得られる乳剤を、含水二酸化ケイ素を含む空粒剤に含浸させることを特徴とするチフルザミドの水中易乳化分散性水田用粒剤の製造方法。
【請求項18】 請求項1〜16のいずれかに記載の水田用粒剤を散布することを特徴とする稲の紋枯病又はいもち病の防除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はチフルザミドを含有する水中易乳化分散性水田用粒剤に関する。
【0002】
【従来技術及び発明が解決すべき課題】チフルザミド(2',6'−ジブロモ−2−メチル−4'−トリフルオロメトキシ−4-トリフルオロメチル-1,3−チアゾール−5−カルボキシアニリド)は、稲の紋枯病やいもち病、特に、水稲の重要病害の1つである紋枯病に対して高い防除効果を有することが知られている。しかし、チフルザミドは、水難溶性であり(25℃における溶解度=1.5ppm)、効果の発現までに通常数週間を要するので、病害を発見し薬剤散布をしてから防除効果が現われるまでに被害が拡大する恐れがあった。また、予防的に用いる場合、病害発生が予測される時期の2〜3週間前には施用する必要があるが、その間に土壌への吸着、流亡、代謝分解等によって、十分な効果が発現しないという問題もあった。従って、できるだけ小量の薬剤で効率良く防除を行うためには、迅速に水中濃度を上昇させ得る製剤を病害発生時に施す必要があった。従来、チフルザミドのような難水溶性農薬有効成分を含有する農薬製剤として、例えば、1)農薬固形製剤(特公平6−39362)、2)改良された農業用粒剤及び細粒剤(特公平7−106961)、3)紋枯病防除組成物(特開平6−336402)、4)水中易分散乳化性固型農薬(特開平5−221803)、5)水中易溶出乳化性粉粒剤(特公平3−76281)、6)水田用農薬粒剤(特開平9−12406)等が開示されているが、これらの従来技術では上記の課題を解決することができなかった。すなわち、1)は低融点(0〜65℃)の農薬有効成分に関する製剤であって、チフルザミド(融点177〜178℃)は適用範囲外である。また、2)は畑地用粒剤であって、水田施用時の速効性とは無関係である。3)は水面浮遊型の製剤であり、水田への施用後における有効成分の水中への迅速な分散による水中濃度上昇効果は期待できない。4)はアルカリ性物質を用いて有効成分を容易に放出分離させる製剤であり、作業者の安全性や、環境への影響等で問題がある、5)は熱膨張岩石粉粒体に有効成分を含む液体を吸蔵させた製剤であるが、有効成分の水への速やかな溶解は期待できない。また、6)には非水溶性有機溶剤に難水溶性農薬活性物質を溶解した溶液を担体に担持させた粒剤が開示されているが、この粒剤は比重を1.0未満に調節した水面浮遊型製剤であるために、活性物質の水中濃度を迅速に上昇させるという目的には不適当である。このような状況下、水田への施用後、速やかにチフルザミドを水中に放出してその水中濃度を上昇させることによって、有効成分を速やかにしかも多量に植物体へ取り込ませ、その結果として迅速な効果を発現する速効性の農薬製剤の開発が強く望まれていた。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決し、チフルザミドを含有する速効性の水田用農薬製剤を提供するために鋭意、研究を重ねた結果、チフルザミドの乳剤を油脂に対して親和性の含水二酸化ケイ素を含有する担体に担持させることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、チフルザミドを水中乳化性付与基剤に溶解した乳剤を、含水二酸化ケイ素を含む空粒剤に含浸させたことを特徴とする、チフルザミドの水中易乳化分散性水田用粒剤を提供するものである。
【0004】本発明の水田用粒剤(以下、単に粒剤ということもある)の有効成分であるチフルザミドは、既知の化合物であり、例えば特公平4−15228号公報等の文献記載の方法に従って合成することができる。水田に施用後、迅速にチフルザミドを水中に分散させて水中濃度を高めるためには、チフルザミドを含有する乳剤が浮遊性でないこと、即ち、比重が1.0以上であることが好ましい。同様に、乳剤基剤である水中乳化性付与基剤の比重も1.0以上であることが好ましい。水中乳化性付与基剤は、基本的に、チフルザミドが可溶性の極性溶剤、非極性溶剤及び乳化剤を含み、さらに必要に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。基剤中の極性溶剤と非極性溶剤との割合は、重量比で、1:1〜1:20、好ましくは1:3〜1:15の範囲である。なお、粒剤全重量に対する極性溶剤、非極性溶剤及び乳化剤の割合は、それぞれ、1〜10%、好ましくは2〜5%;10〜20%、好ましくは12〜18%;及び1〜10%、好ましくは1〜5%の範囲である。
【0005】チフルザミドが可溶性の極性溶剤としては、既知の極性有機溶剤から適宜選択され、N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンシクロヘキサノン、メチルエチルケトン等が例示されるが、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。非極性溶剤としては、例えば、1−フェニル−1−キシリルエタン(商品名ハイゾールSAS−296、日本石油化学株式会社)、ソルベッソ#100(商品名エクソン化学株式会社)、ソルベッソ#150(同前)、ソルベッソ#200(同前)、シクロヘキサン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、クメン、キシレン、メチルナフタレン、ベンジルエーテル、アジピン酸オクチル、ステアリン酸ブチル、ラウリル酸ブチル、大豆油、ヒマシ油、オリーブ油及びナタネ油からなる群から選択される1又はそれ以上の溶剤が好ましく、特に好ましいのは、1−フェニル−1−キシリルエタン(ハイゾールSAS−296)である【0006】乳化剤は、農薬製剤に関する技術分野で通常用いられる乳化剤から任意に選択することができ、例えば、ソルポール3880H(POEスチリルフェニル+POEスチリルフェニルエーテルポリマー+アルキルアリルスルホネート;東邦化学工業)、ソルポール355L(POEスチリルフェニル+アルキルアリルスルホネート;東邦化学工業)、ニューカルゲンTG−74(POAアリルフェニルエーテルサルフェートNH4+アルキルベンゼンスルホン酸Na;竹本油脂)及びニューカルゲンP−150(POAアリルフェニルエーテルサルフェートNH4;竹本油脂)等を挙げることができるが、ニューカルゲンP−150が好ましい。水中乳化性付与基剤に含まれる極性溶剤、非極性溶剤及び乳化剤の配合比は、好ましくはチフルザミドが溶解すること、及び基剤の比重が1.0以上となることを条件として、選択した溶剤及び乳化剤に応じて適宜選択される。例えば、極性溶剤がN−メチル−2−ピロリドン、非極性溶剤が1−フェニル−1−キシリルエタン、乳化剤がニューカルゲンP-150である場合、これらの各成分の粒剤全重量中に占める好ましい割合は以下の通りである。チフルザミドの含量、1〜3%;N−メチル−2−ピロリドンの含量、2〜4%;1−フェニル−1−キシリルエタンの含量、10〜15%;ニューカルゲンP-150の含量、1〜3%。乳剤は、好ましくはチフルザミドの極性溶剤溶液が乳化剤の存在下で非極性溶剤に乳化してなるものであり、例えばチフルザミドを、室温で極性溶剤に溶解し、これに乳化剤、非極性溶剤を加えることにより得られる。極性溶剤がN−メチル−2−ピロリドンである場合、溶剤の使用量は重量比でチフルザミドの1〜3、好ましくは1.5倍〜2.5倍量である。
【0007】空粒剤は、含水二酸化ケイ素、鉱物質担体及び崩壊・拡展剤を適宜混合し、押し出し造粒法、転動造粒法、撹拌造粒法、流動層造粒法等の既知の方法で、好ましくは平均粒子径約0.8〜1.2mmの粒剤に造粒することにより、調製される空粒剤中の含水二酸化ケイ素の量が多い程、多量のチフルザミド含有乳剤を含浸させることができるが、粒剤の硬度、水中での崩壊性等を考慮して、粒剤中の含水二酸化ケイ素の量は、粒剤全重量の10〜35%、好ましくは15〜30%の範囲とするとよい。含水二酸化ケイ素は、ホワイトカーボンとも称し、カープレックス#80、カープレックス#80−D、カープレックス#1120(塩野義製薬)、トクシールN、トクシールP(徳山曹達)、アエロジルR972(日本アエロジル)等の市販品を使用できる。鉱物質担体としては、クレー(例:啓和微粉クレー;啓和炉材(株))、炭酸カルシウム、塩化カリウム、タルク、カオリン、珪藻土、石膏、ベントナイト(例、クニゲル VI;クニミネ工業)等を挙げることができ、これらを単独又は2種以上混合して使用する。崩壊・拡展剤としては、トキサノンGR−31A(三洋化成工業)及びニューカルゲン−TG33(竹本油脂)等のポリカルボン酸系界面活性剤、ニューカルゲン−TG250(竹本油脂)等のポリカルボン酸系及びナフタレンスルホン酸系界面活性剤の混合物、ボイズ530(花王)等のポリアクリル酸系界面活性剤、ソルポール5060(東邦化学工業)等のスルホネート型/燐酸塩を挙げることができる。
【0008】本発明の粒剤を調製するには、チフルザミドを含有する前記乳剤を、必要に応じて撹拌しながら、空粒剤に滴下して含浸させる。空粒剤に含有されている含水二酸化ケイ素は油脂に対する親和性が高いので、多量の乳剤を担持することができ、本発明の粒剤は、通常、乳剤が粒剤全重量の40%程度まで担持され得る。本発明の粒剤は、粒剤中の水中乳化性付与基剤又はそれを含有する乳剤の比重が1以上であるために、水面浮遊率は極めて低くなるように設計されている。よって水田に施用すると、チフルザミドを含有する微細なエマルジョン粒子として迅速に水中に分散され、水中濃度が上昇する。従って、本発明製剤は予防的に用いる場合は勿論のこと、病害の発生を認めてからでも十分な防除効果が期待できる。
【0009】以下に本発明の代表的な実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。各成分の含有率(%)は粒剤全重量に対する値を示す。
実施例1 チフルザミドを含有する粒剤(1)乳剤成 分 %(W/W)チフルザミド 2.0N−メチル−2−ピロリドン 3.0ニューカルゲン P−150 2.0ハイゾール SAS−296 13.0チフルザミドを室温でN−メチルピロリドンに溶解し、この溶液にニューカルゲンP−150及びSAS−296を撹拌下、注加して乳剤を得た。上記の乳剤の調製に用いた極性溶剤、非極性溶剤及び乳化剤の比重は以下の通りである。

以上のデータから算出した水中乳化性付与基剤の比重は、理論値:1.013である。
(2)空粒剤成 分 %(W/W)カープレックス#80 24.0トキサノン GR−31A 3.2ニューカルゲン TG−33 8.0クニゲル VI 12.0啓和微粉クレー 32.8上記の混合物を押し出し造粒法にて空粒剤(平均粒子径1.2mm)に調製した(3)チフルザミド粒剤上記(1)の乳剤20重量部を(2)で調製した空粒剤80重量部に撹拌下滴下し、含浸させ、2%粒剤を得た。この粒剤を水中に投入したとき、水中浮遊率は約2%以下であった。農薬有効成分の水面浮遊率は以下の方法で測定した。粒剤50mgを3度硬水1Lの入ったビーカーに添加した。2時間後、水面上に濾紙をそっと置くことによって、水面上に浮遊している有効成分を濾紙に吸着させた。約30秒後に濾紙を回収し、同紙からアセトニトリルで有効成分を抽出後、HPLCにて定量した。
【0010】試験例1 チフルザミドの溶出試験実施例1で調製した粒剤50mgを3度硬水1Lの入ったビーカーに添加し、2時間後にスパーテルで1分間に20回の速度で20回撹拌した後、ビーカーの中央部より2mlを採取し、定量用被検液とした。この被検液を以下の条件下、HPLCで定量した。対照として、以下の含量のチフルザミド、崩壊拡展剤及び担体成分を用いて押し出し造粒法で調製した粒剤を用いた。
HPLC測定条件カラム:YMCパック ODS-A, 4.6X150mm 測定波長:230nm移動相:アセトニトリル/水=65:35流速:1.5ml/min成 分 %(w/w)チフルザミド 2.0トキサノン GR−31A 1.0ニューカルゲン TG−33 1.5クニゲル VI 30.0啓和微粉クレー 65.5その結果、施用から2時間後のチフルザミドの水中濃度は、実施例1の粒剤の場合、2.1ppm、対照粒剤の場合1.3ppmであり、本発明粒剤は、チフルザミドを迅速にしかも、水溶解度(25℃;1.5ppm)以上に溶解させた。
【0011】試験例2 稲紋枯病に対する防除効果試験菌:イネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani PS−3)試験植物:イネ(日本晴)

方法育苗箱にて2葉期まで生育させた後、1/10,000 a ポット(直径約10 cm)に苗を移植し、さらに5日間湛水状態で育苗した。次いで、粒剤を上記の薬量で水面施用した。菌の接種を薬剤処理1日及び3日目に行った後、27±2℃の温室に移した。菌接種6日後に発病面積率を測定することにより、防除率(%)を計算した。結果を以下の表1に示す。
【表1】
表 1 イネ紋枯病防除効果 防除率(%) 薬 剤 処理1日後接種 処理3日後接種 実施例1の本発明粒剤 56.5 67.1 対照粒剤 24.9 58.6 n=3上記の結果は、本発明の粒剤の場合には、イネ紋枯病菌に対する効果が迅速に現れ、しかも防除効果が高いことを示している。
【出願人】 【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
【識別番号】591019726
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外2名)
【公開番号】 特開平11−43407
【公開日】 平成11年(1999)2月16日
【出願番号】 特願平9−204326