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【発明の名称】 害虫駆除用具およびそれを用いた害虫駆除方法
【発明者】 【氏名】樋口 俊男

【氏名】岡田 善行

【要約】 【課題】操作性に優れ、かつ、殺虫性に優れた害虫駆除用具を提供すること、およびそれを用いた害虫駆除方法を提供すること。

【解決手段】微生物を培養するための培地成分および害虫感染用菌の培養液を含有させた培養担体を重層し、培養することにより、二層構造の害虫駆除用具を得る。得られた害虫駆除用具は一層のようになっているが、容易に分離することができる。従って、樹木等への配置における作業性が大幅に改善される。特に、帯状の用具の場合、長さが従来の用具の半分程度で済むので、樹木等への配置作業が極めてスムーズに行える。さらに、二層構造にして培養することにより、培地成分の保持力が増し、湿度も上昇して、培養効率が上がり、分生子生産量も増加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 培地成分を含有する培養担体に害虫感染菌および/または該害虫感染菌の胞子を生育させた、二層構造の害虫駆除用具。
【請求項2】 前記培養担体が帯状の培養担体である、請求項1に記載の二層構造の害虫駆除用具。
【請求項3】 前記培養担体が織布または不織布である、請求項2に記載の二層構造の害虫駆除用具。
【請求項4】 前記二層構造が培養担体を二つ折りにして構成される、請求項2または3に記載の二層構造の害虫駆除用具。
【請求項5】 前記二層構造を形成する培養担体の少なくとも一端に取付手段を有する、請求項1ないし4いずれかの項に記載の二層構造の害虫駆除用具。
【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかの項に記載の二層構造の害虫駆除用具を害虫を駆除すべき樹木等に配置する、害虫駆除方法。
【請求項7】 前記二層構造の害虫駆除用具の少なくとも一部または全部を単層にして、害虫を駆除すべき樹木等に配置する、請求項6に記載の害虫駆除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、害虫駆除用具およびそれを用いた害虫駆除法に関する。特に、カミキリムシ類、コガネムシ類、あるいはコナジラミ類などの害虫に対して優れた殺虫効果を有する害虫駆除用具およびこの害虫駆除用具を用いる害虫駆除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種農作物や樹木に対して被害を与えるカミキリムシ類、コガネムシ類、コナジラミ類、ウンカ、ヨコバイ等の害虫には、例えば、ボーベリア・ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)等の天敵糸状菌が存在し、これらの天敵糸状 を用いた害虫駆除方法が種々提案されている。
【0003】例えば、特公昭63−403号公報にはフスマ培地で培養した害虫に感染し、活動を弱めるか死に至らしめる菌(以下、害虫感染菌又は単に感染菌という)を培地と共に直接樹木に散布する方法が開示されている。しかし、この方法では害虫感染菌が充分に培地成分を利用して生育できず、休眠細胞に近い状態となって期待する殺虫効果を発揮し得ない。さらに、この方法は、駆除方法が散布によるため、害虫感染菌が樹木に付着しないという欠点、および害虫感染菌が土壌に吸着され易く、また、樹木に付着した感染菌も雨、風等の自然条件下で洗い流され易いという欠点を有するため、殺虫効率が低かった。
【0004】このような散布による駆除方法の欠点を解決するために、特開昭63−258803号公報および特開昭63−190807号公報には、発泡体のような弾力性を有する担体に感染菌を培養し、この感染菌と害虫とを接触させる害虫駆除用具が開示され、殺虫効率を上げることが提案された。しかし、この害虫駆除用具は、上記散布法による欠点を克服するものの、感染菌の培養効率が悪く、害虫が感染菌に接触しても感染するには十分とは言えないこと、および樹木等の不定形状表面に配置した場合に充分に表面に密着せず、害虫と感染菌との接触が不十分であるという問題点が残っていた。
【0005】そこで、特公平7−108212号公報や特公平8−22810号公報に見られるように、比較的多孔性であって、見かけ表面積が大きい織布や不織布に親水性ポリマーを培地成分として添加して、微生物培養用基材として用いる害虫駆除用具が提案された。この方法により、効果的に培地成分を含有し、かつ菌の培養効率も高くなること、および、樹木の幹や枝等の表面に害虫駆除用具を密着させることが容易となり、上記問題点が解決された。しかし、例えば、密着の方法として巻き付けがあるが、仕立ての小さい柑きつ等の樹木の幹や枝に巻きつけるためには、樹木の下方にもぐり込み、手を伸して長いままの害虫駆除用具を両手でまわして巻きつけホッチキスで止める等の必要があり、特に山などの傾斜地では、大変な重労働が強いられることになる。従って、取り扱いが簡単で操作性が改善された害虫駆除用具が要望されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、操作性(作業の効率)が高められ、より害虫駆除効率に優れた害虫駆除用具およびそれを用いる害虫駆除方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、培地成分を有する培養担体に害虫感染菌および/または該害虫感染菌の胞子を生育させた二層構造の害虫駆除用具は、各層が菌糸等により密着されて、あたかも一層のようでありながら、簡単に単層に分離できること、及び二層構造とすることにより、従来の単層構造に比べて、感染菌の増殖効率が高まることを見出し、操作性と殺虫力に優れた本発明の害虫駆除用具を完成するに至った。本発明およびその効果をさらに詳しく説明する。
【0008】本発明は、培地成分を含有する培養担体に害虫感染菌および/または該害虫感染菌の胞子を生育させた、二層構造の害虫駆除用具に関する。好適な実施態様においては、前記培養担体が帯状の培養担体である。好適な実施態様においては、前記培養担体が織布または不織布である。
【0009】好適な実施態様においては、前記二層構造が培養担体を二つ折りにして構成される。さらに好適な実施態様においては、前記二層構造を形成する培養担体の少なくとも一端に取付手段を有する。
【0010】また、本発明は、上記の二層構造の害虫駆除用具を害虫を駆除すべき樹木等に配置する害虫駆除方法に関する。好適な実施態様においては、前記二層構造の害虫駆除用具の少なくとも一部または全部を単層にして、害虫を駆除すべき樹木等に配置する。
【0011】以上のような本発明の二層構造の害虫駆除用具は、(1) 二層にすることにより、コンパクトな大きさで持ち運びが簡単になる、特に、帯状構造の駆除用具の場合、折りたたんだ形で感染菌を培養できるので、従来の単層の害虫駆除用具の大きさの半分程度の長さとすることができる、【0012】(2) 二層構造の各層は菌糸層によって密着しているが簡単に分離するので、使用時の操作性が極めて向上する。例えば、帯状構造の用具を樹木等に巻きつける場合には、本発明の害虫駆除用具は従来の長さの半分程度の長さにできるので、片手で樹の枝や幹にひっかけて、反対の手でホッチキス止めができる、あるいは、テープを貼る要領で巻きつける等、従来の長いままの害虫駆除用具を両手でまわしてホッチキス止めする方法に比べて労働者への負担が大きく減少する等の極めて優れた効果が得られる、および、【0013】(3) 単位面積あたりの菌体量(分生子量)が、従来の単層構造の害虫駆除用具に比べて約2倍あるため、そのまま用いても、あるいは単層構造にして用いても、より害虫に接触感染し易くかつ効果も持続する、等のすぐれた効果が発揮され、従来の単層の害虫駆除用具にない極めて優れた特徴を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】まず、本発明の害虫駆除用具について、構造、使用方法、その効果等を説明する。
【0015】本発明の害虫駆除用具の形態は、二層構造であり、例えばシート状あるいは帯状として使用され得るが、これらの形状に限定されない。この二層構造は、独立した培養担体が重なった層であってもよい。同じ大きさの培養担体が重なったものでもよく、異なる大きさの培養担体が重なったものでもよい。同じ大きさの担体を用いる場合、ぴったり重なりあっていても良く、ずらして重ねてもよいが、50%以上の面積が接するようにすることが好ましい。接触面積が50%よりも小さくても良いが、その場合、培養における取り扱いが難しくなり、感染菌の増殖がやや不十分となることもある。
【0016】また、一枚の担体を折り曲げて平坦な二層にしたものでもよい。使用目的に応じて長辺同士が接するように折り曲げてもよいし、短辺同士が接するように折り曲げてもよい。後者の方が、全体の長さが短くなるので巻き付け等の操作においては好ましい。さらに、例えば、一枚の担体を波型に折り曲げて、内側部分同士が二層構造となるようにしてもよい(例えば、星型等の多角形状)。この形状は、長い帯状構造が必要な場合、特に有用であり、使用に際してテープを貼る要領で巻き付けできる。
【0017】本発明の二層構造の害虫駆除用具は、二層構造のまま感染菌を培養することにより、従来の用具に比べて単位面積あたり約2倍の菌体量(分生子量)を有する。従って、感染力が高められており、実施例4とその比較例5にも示されるように持続性も高いので、二層構造のままでも害虫駆除用具として用いられる。 本発明の二層構造の害虫駆除用具は、少なくとも一端に取付手段を有することが好ましい。この取付手段は、予め担体に付与しておくことが好ましい。
【0018】本発明において「取付手段」とは、釘うち、引っ掛け、吊り下げ、フック、粘着等樹木に器具を配置するために使用する手段をいうが、これらの例示に限定されない。
【0019】二層構造の害虫駆除用具を単層にして駆除に用いる場合には、予め、釘うち、引っ掛け、または粘着テープあるいはマジックテープ等が貼付できる程度に単層部分を残して培養担体を重層して培養するか、培養担体の少なくとも一端に引っ掛け用の孔、フックあるいは輪等を配設して、その部分に重ならないように、他方の培養担体を重ねて二層構造にして培養すれば、種々の利点が生じる。例えば、害虫駆除用具の単層部分を釘打ちして一端(単層部分)を固定し、菌糸により接着している他端を持って引っ張れば、二層構造が単層構造になりながら、枝等に巻かれていく。従って、長さが半分程度の器具を扱うことになるので、持ちやすく、操作性が格段に向上する。また、多角形状用具にしておけば、テープを巻くようにして巻けるので、大きい樹木等に巻くときに、非常に操作性に優れ、効率よくできる。また、紐あるいは針金等を挟んであるいは培養担体に固定し、端部からはみ出すようにして用具を作成しておけば、用具の固定が簡単になり、また、引っ張り等により容易に単層に分離できる。
【0020】単層として使用する場合、外側表面あるいは層を分離して得られる内側の表面のいずれかを内側にして樹木等との接着面となるようにすることができる。
【0021】害虫感染菌の生育は、培養担体の外側表面で盛んに多数行われ、有効成分である胞子や分生子は担体の外側表面に多数存在する。従って、外側表面が外側になるように配置するのが好ましい。この場合、内側にあたる分離された接着面の菌数が外側よりも少なくなる場合があるが、外側表面に害虫が接触することにより菌を感染させ駆除するものであるので、効果に影響しない。むしろ、本発明の用具は菌数(分生子量)が従来よりも多いので殺虫効果が大きくなりかつ持続する。カミキリムシが樹木を這い回って幹等の太い部分に集まる性質を考慮すれば、このような配置が一般的である。
【0022】また、カミキリムシは昼間は物陰等の暗部に集中するので、樹木と害虫駆除用具との間に暗空間を設け、その暗空間で害虫と感染菌との接触を意図する場合には、二層構造の外側表面が内側になるように、若干空間を作るようにしながら、樹木等に貼り付けまたは巻き付ければよい。これらの操作においても、二層構造のものは操作が簡単である。なお、二層構造部分を樹木等に固定し、単層構造にしながら巻きつけることも可能である。
【0023】なお、単層として使用する場合であっても、必ずしも二層構造全部を単層構造にして使用する必要もなく、一部に二層構造が残存する形で配置することができる。
【0024】二層構造にする利点は、上記のような殺虫効果および操作上の利点ばかりではない。二層とすることにより害虫防除用具の厚みが増すので、害虫防除用具自体の培地成分を含む培養液の保持力が増し、高湿度が維持できる。従って、非常に培養効率をあげることができ、従来に比べて菌体量(分生子量)を約2倍にすることができる。従って、親水性を向上させ、保水能を向上させるために、例えば、特公平7−108212号公報や特公平8−22810号公報に記載のように寒天等の親水性ポリマーを含有させることは、必ずしも必要ないという利点も生じる。
【0025】このように、二層構造とすることにより、各層が菌糸等により密着されて一層のようであるが、密着された層が簡単に分離できるということにより格段に樹木等への配置時の操作性が向上するのは予期せぬ効果である。さらに、感染菌量が増大するという効果も得られる。その結果、操作性が改善された、効果の持続する、改良された害虫駆除用具が提供される。
【0026】次に、本発明の害虫駆除用具の製造等について説明する。
【0027】(培養担体)本発明の害虫駆除用具に用いる培養担体としては、発泡体マトリックス、ペプタイドマトリックス、織布あるいは不織布などがあげられるが、これらに限定されない。これらは、用途に応じて、適宜使用され得る。織布あるいは不織布は、特に密着を必要とする場合に、好適である。
【0028】発泡体マトリックスの製造は特開昭63−258803号公報に詳細に記載されており、本願に援用する。また、ペプタイドマトリックスの製造方法は、特開昭63−190807号公報に記載されており、本願に援用する。
【0029】織布または不織布の材質については特に制限がなく、市販されているものが使用できる。培地成分の含浸性や保持性などの点から厚みは通常0.3mm以上、特に2〜10mm程度のものが好適に用いられる。坪量は20g/m2 以上、好ましくは200〜500g/m2 の範囲の織布や不織布が好適に用いられる。培地成分の含浸性や微生物の付着性、炭素源としての利用可能性、天然崩壊性等の点から、パルプ、レーヨン、ポリエステルなどの材料からなるものが特に好ましく、特にパルプ材質を用いることが好ましい。
【0030】(培地成分)上記培養担体に含有させる培地成分は同化が可能な炭素源と、無機あるいは有機の窒素源が好適に用いられる。必要に応じて無機塩類、ビタミン、金属塩等が添加される。炭素源としては、例えばグルコース、フラクトース、サッカロース、ラクトース、マルトース、グリセリン、デンプン、セルロース、糖蜜などが用いられる。無機の窒素源としては、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどが挙げられる。有機の窒素源としては、例えば肉エキス、魚肉抽出液、サナギ粉などの動物組織抽出液又は粉砕物、コーンスチープリカー、大豆油、麦芽エキス、大豆粉などの植物組織抽出物又は粉砕物、乾燥酵母、酵母エキス、ポリペプトンなどの微生物菌体又はその抽出物などの天然有機物が挙げられる。無機塩類としては、例えばリン酸二水素カリウムなどのリン酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0031】(害虫感染菌)培養担体の内部もしくは表面上に培養する害虫感染菌としては、ボーベリア・ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)、ボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)、ベルチシリウム・レカニ(Verticillium lecanii)、シネマチウム・ジョネシー(Synnematium jonesii)などの糸状菌が用いられ、これらの菌は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0032】本発明の害虫駆除用具はカミキリムシ類のほか、樹木苗畑や造林地以外にイチゴ、サツマイモ、ラッカセイなどの農作物にも被害を及ぼすコガネムシ類にも好適に使用することができる。糸状菌の如き感染菌はコガネムシ類の成虫に寄生すると、例え成虫自体を駆除しなくても、成虫が産卵した卵が孵化しなくなる。
【0033】さらに、上記害虫以外にも果樹に被害を及ぼすオンシツコナジラミやアブラムシ類、水稲のイネミズゾウムシ、ウンカ、ヨコバイ、各種線虫に対しても駆除効果を発揮するものである。この場合は、それぞれの害虫に殺虫性を有する糸状菌、線虫の天敵微生物である各種細菌、例えばパスツレラ・ペネトランスを用いればよい。
【0034】培養担体で培養された害虫感染菌は、害虫、特にカミキリムシ類やコガネムシ類などの害虫に対して優れた殺虫効果を有する生物殺虫剤として作用する。カミキリムシ類による農作物の被害は近年増加傾向にあり、特に、クワへの被害が大きく、広範囲にわたっている。カミキリムシはクワの樹皮下に産卵し、孵化幼虫は木質部に深く孔をあけて食害を及ぼし、時には60cm以上の食害孔を作り、寄生密度の高いクワ樹は生理機能を失い、枯死することがある。
【0035】このようなカミキリムシの駆除には化学殺虫剤が考えられるが、カミキリムシは穿孔性害虫であるために樹幹内の幼虫にまで殺虫剤が到達せず、効果的に駆除することができない。また、クワ葉はカイコの飼育に用いられるために、化学殺虫剤の使用はカイコに対して好ましくない影響を与え、また食用樹木に対しては人畜に害を与えるので使用し難いものである。
【0036】従って、天敵微生物を用いることが最も優れた方法と考えられ、本発明の害虫駆除用具が有用である。即ち、本発明の害虫駆除用具は、上記化学殺虫剤を用いず、カミキリムシの天敵微生物であるボーベリア・ブロンニアティの如き糸状菌を培養させて、接触によって害虫に菌体を寄生させる接触感染を用いる生物殺虫剤であるので、上記問題を生じないものである。さらに、害虫感染菌を発泡体、織布あるいは不織布内にて培養しているために、菌体の損失がなくかつ効果的に利用することができるので、極めて有用な害虫駆除用具である。
【0037】(害虫駆除用具の製造(微生物の培養))本発明の害虫駆除用具は、まず前記培地成分を含む溶液と、害虫感染菌を培養した培養液を折り重ねた前記発泡体マトリックス、ペプチドマトリックスあるいは織布または不織布に直接塗布する方法や浸漬などの方法によって含有させ、静置培養する。あるいは、培養液を含浸後に重層し、または所望の形に折り曲げもしくは折りたたんで静置培養してもよい。
【0038】静置培養に当たっては害虫感染菌が105 セル/mL以上、好ましくは107 セル/mL以上となるように希釈することが好ましく、培地成分の溶液と害虫感染菌の培養液との比率は、1000:1〜0.5:1、好ましくは、100:1〜2:1の範囲である。
【0039】また、培地成分の溶液は通常用いられる濃度より高濃度として用いることが培養効率の点からは好ましく、特に糖源は10g /L 以上、好ましくは20g /L以上、さらには50〜200g /L の範囲とするのが好ましい。
【0040】静置培養条件は約25℃、80%R.H.以上あるいは密閉容器内での高湿度条件で、3日以上、場合により1〜2週間程度培養する。このように培養することによって、織布または不織布の内部や表面状が菌子と胞子(分生子)で覆われる。このように培養して得られる害虫感染菌の生育量は不織布1cm2 当り、約108 セル以上、好適には約3×108 セル以上の分生子が生育する。
【0041】上記本発明の害虫駆除用具は、そのまま害虫駆除のために樹木等に配置してもよいが、乾燥することによって細胞の保管に有利になる。
【0042】乾燥は培養後、室温下で放置した場合でも1〜2日で乾燥できる。菌が死滅しないならば、例えば30〜35℃の温度下で送風して乾燥したり、真空乾燥することも可能である。
【0043】このように乾燥することによって、害虫感染用菌の生育を最盛期の状態で維持することができ、害虫発生時期まで保存して、使用時に吸水、賦活して使用することができる。また、乾燥物であれば特に無菌条件下にて保存する必要もなく、雑菌による汚染で害虫駆除効果が低下することは極めて低いものである。 また、本発明の害虫駆除用具には、害虫誘引色が付されていてもよく、害虫誘引色シートが付されていてもよい。例えば、特開平1−235532号公報に開示されているように、オンシツコナジラミには黄色あるいはレモン色、アブラムシ、ヨコバイ、ウンカには黄色の着色をするか、着色シートを貼付することもできる。
【0044】(害虫駆除方法)このようにして得られた害虫駆除用具は、主として農作物に対する害虫の駆除に用いられる。害虫駆除方法としては、この用具を適当な大きさに裁断したのち、クワなどの樹木に散布してもよいが、殺虫効果をさらに向上させるためには、樹木の幹や枝に配置することが好ましい。配置手段としては、巻き付け(例えば、紐やストリップ状にする)や、係止(例えば、ホッチキスなどによる)、吊り下げ(例えば、紐やストリップ状にする)などの任意の手段が選択できる。不織布は比較的厚みが薄く弾力性もないので、巻き付け手段を用いた場合は、樹木の凹凸面にも密着性がよい。本発明の害虫駆除用具は、培養後は菌糸層によって二層が密着しているが、容易に分離できる。従って、巻きつける場合には片手で樹の枝や幹にひっかけて、反対の手でホッチキス止めが可能となった。吊り下げる場合においても、接着点や折り目を上にして吊り下げることが可能となった。
【0045】
【発明の効果】本発明の害虫駆除用具は、微生物を培養するための培地成分および害虫感染用菌の培養液を含有させた培養担体を重層し、培養して得られたものである。培養後の害虫駆除用具は一層のようになっているが、容易に分離することができるので樹木等への配置における作業性が大幅に改善される。特に、帯状の用具の場合、長さが従来の用具の半分程度で済むので、樹木等への配置作業が極めてスムーズに行える。さらに、二層構造にしたことにより、培地成分の保持力が増し、湿度も上昇して、培養効率が上がり、分生子生産量も増加した。
【0046】こうして得られた害虫駆除用具は、従来の害虫駆除用具と比較しても殺虫効果に優れ、また、従来の化学殺虫剤と比較しても殺虫効果が劣ることはなく、人畜に対しても害を与えない点でも優れている。 害虫感染菌は培養担体の内部もしくは表面上に強固に担持されており、自然環境下で流出することがなく、この害虫駆除用具を害虫を駆除すべき樹木の幹や枝に配置することによって簡単にカミキリムシなどの害虫の駆除を行うことができる。
【0047】
【実施例】以下に本発明を実施例を示して、さらに具体的に説明するが、これらの実施例が本発明を限定するものではない。
【0048】(比較例1)サナギ粉40g/L の抽出液に20g/Lとなるようにグルコースを加えた培地にて5日間、糸状菌(ボーベリア・ブロンニアティNBL−85株)を振盪しながら25℃で前培養した。この前培養液1L と、グルコースを100g/L となるようにサナギ粉40g/L の抽出液に加えた培地4L との混合液を、デンプン系吸水剤(20g/m2 )を含むパルプ不織布(300g/m2 、5.0mm厚)に充分に含浸するように表面から流し込んだ。なお、培地および不織布の滅菌は、121℃、20分間行った。
【0049】これを減菌したステンレス製の網に載せ、ポリプロピレンの袋に入れて25℃で1週間静置培養した後、不織布を観察したところ、糸状菌の菌糸が不織布全面を覆って真っ白となっていた。このときの菌糸体を除く分生子数は不織布1cm2当り、2×108 セルであった。
【0050】(比較例2)デンプン系吸水剤を含まない以外は比較例1と同様にして培養を行った結果、1週間後の菌糸体を除く分生子数は不織布1cm2 当り、1.8×108 セルであった。
【0051】(実施例1)パルプ不織布(300g/m2 、5.0mm厚)を2枚重ねにしたこと以外は、比較例2と同様にして培養を行った結果、2枚は菌糸で密着したが、手で容易に分離でき、1週間後の菌糸体を除く分生子数は上方が不織布1cm2 当り、3.6×108 セルで、下方が不織布1cm2 当り、3.2×108 セルであり、平均すると、不織布1cm2 当りの分生子の生産量は3.4×108 セルであった。
【0052】(実施例2)実施例1と同じ不織布5×50cmを5×25cmとなるように2つ折りにし、同様にした数本を並べて実施例1と同様に1週間培養した。
【0053】培養後、袋から取り出し、室温下で1日送風乾燥した。送風後、2枚は菌糸で密着していたが、手で容易に分離でき、菌糸体を除く分生子数は、上方が不織布1cm2 当り、3.7×108 セルで、下方が3.3×108 セルであり、平均すると、不織布1cm2 当りの分生子の生産量は3.5×108 セルであった。
【0054】(比較例3)5×50cmの不織布をそのまま、培養したこと以外は実施例2と同様に培養と乾燥を行った。乾燥後の菌糸体を除く分生子数は、不織布1cm2 当り、1.9×108 セルであった。
【0055】(実施例3)実施例2と同様にして生産した培養乾燥物(本発明の二層の害虫駆除用具)100本を、カンキツ樹100本の主幹部から枝分かれする分岐部の1箇所に、それぞれ1本ずつ、二層をはがしながら枝掛けしていった。100本の処理をするのに、20分を要した。
【0056】(比較例4)比較例3と同様にして生産した培養乾燥物100本を実施例3と同様に二ツ折りにして枝掛けを試みたが、なじまずに開いて落下するものが多かった。そこで、1本ずつホッチキス止めを行った。100本ホッチキス止めをするのに120分を要した。
【0057】(実施例4)実施例3で実施したカンキツ園において、処理後20日後、40日後、および60日後にゴマタラカミキリをそれぞれ、10頭、10頭、および5頭を捕獲した。その時または、その後に感染死した頭数は、それぞれ10頭、8頭、および3頭であった。
【0058】すなわち、このカンキツ園における本発明の害虫駆除用具の剤の効力は20日、40日、および60日において、それぞれ100%、80%、および60%であった。
【0059】(比較例5)比較例4で実施したカンキツ園において、実施例4と同様の試験の結果、このカンキツ園における従来の害虫駆除用具の効力は20日、40日、および60日において、それぞれ100%、30%、および0%であった。
【0060】以上の結果は、本発明の二層構造の害虫駆除用具は、非常に操作性が高まっていること(実施例3と比較例4)および、菌数が約2倍に増加し(実施例1〜2と比較例1〜3)、その結果、効力が持続する(実施例4と比較例5)ことを明確に示している。
【出願人】 【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月28日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−42036
【公開日】 平成11年(1999)2月16日
【出願番号】 特願平9−201207