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【発明の名称】 燻蒸速度制御装置
【発明者】 【氏名】清水 洋志

【氏名】島本 幸典

【氏名】有明 輝

【要約】 【課題】本発明は、燻蒸に用いる燻蒸ガスを発生させる燐化水素剤のガス発生の反応速度を自在にコントロールでき、燻蒸に効果的な燻蒸ガスの時間を設定することができる「燻蒸速度制御装置」を提供する。

【解決手段】課題を解決するために、水を蓄えた容器の内部にヒーターを備え、このヒーターは温度コントロール装置により動作の制御が行われる構成を持つ。この水面上に選択透過性をもつ例えば高分子系のシートを備え、このシートの上面に燐化水素剤を設置し、シートを透過してきた水蒸気の水分と反応させ、燻蒸ガスの発生速度を最適にコントロールすることで解決手段とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 開口面に薬剤(2) を保持する網目板(3) を設置した略皿状の加水分解用水槽(6) と、前記加水分解用水槽(6) 内の水(7) を加熱して水蒸気を発生させるヒーター(4) と、前記ヒーター(4) を意図する温度に保つ制御手段と、を備えた燻蒸速度制御装置において、前記網目板(3) 上面と前記薬剤(2) の間に気体のみが選択されて透過する選択透過性シート(1) を敷設したことを特徴とする燻蒸速度制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、文化財、美術工芸品や穀物、植物、木材等が黴や虫等により被害を受けないようにする燻蒸装置に関する。
【0002】
【従来の技術】貴重な文化財や美術工芸品等は、長期間にわたり変質することなく安全に保護されることが望ましいが、文化財等は、経年変化のみでなくそれを設置する環境によっても種々の害を受ける虞がある。つまり、文化財等を設置する環境によっては、害虫や黴等が生じ、これらにより文化財等が被害を受けることがある。したがって、このような害を防止する対策として、従来から文化財等を燻蒸用ガスを用いて燻蒸している。
【0003】また穀物や植物、木材やその他の食品および飼料などに害虫や黴が発生するのを防止するためにも燻蒸処理が行われており、成虫や幼虫、蛹、卵の全てに対して殺虫駆除の効果を奏している。これにより燻蒸処理の対象物の品質を保ったり、海外から国内に新種の害虫が侵入してわが国の農業や自然の生態系に重大な影響を与える様な事態に陥ることが回避できる。
【0004】この様な燻蒸処理を行うのに一般的には燐化水素剤をもちいて燐化水素を発生させて行われる。ここで用いられる燐化水素は、穀物、飼料、葉煙草など限られた燻蒸物に対して、密閉された場所に燐化アルミニューム剤や燐化マグネシウム剤等の含有製剤を置き、燻蒸場所においての空気中水分を吸収させ、あるいは保水性物質に吸収せしめて発生させて燻蒸剤として用いられている。この場合の反応式を以下に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】さらに他の燻蒸処理方法としては、その薬剤に臭化メチルが知られており、穀類、木材、青果物、花卉、土壌消毒等の場合においてもっぱら用いられていた。この臭化メチルは、沸点が4.5℃と低く低温でもガス化が可能であり、非爆発性であるので安全かつ安定な殺虫力が得られる優れた燻蒸剤である。
【0008】この臭化メチルが適用される使用域は広範囲に渡っており、多量に用いられてきた。しかし近年においてはオゾン層の破壊などの自然破壊の原因となることが問題視されはじめ、その生産量や使用に対して法的な規制、ひいては全面的な使用禁止といった事態となっている。
【0009】そこでこの臭化メチルに替わる燻蒸剤として、前記の燐化水素が近年において当業者の間で注目され大きな期待が寄せられている。この燐化水素剤の使用方法は一般に現状では、例えば穀物サイロに適用する場合において、サイロ内に穀物を搬入する際にその穀物の搬入速度に合わせて燐化アルミニュームの錠剤を一定速度で投入し、穀物中で分解せしめることで燐化水素を発生させて燻蒸処理の効果を期待している。しかしこの方法によっては確かに殺虫の効果は期待できるものの、分解完了後に発生する残さが穀物中に混入してしまうので米や麦などの穀類には使用できなかった。
【0010】また倉庫などの空間で燻蒸処理を行う場合には、その倉庫の床面に薬剤を置き大気中の水分により自然分解させることで、燐化水素を発生せしめて燻蒸処理を行っている。この方法による一回の燻蒸時間は夏期で概ね3日〜4日、冬期では4日〜7日間を要する作業であり、これは燐化アルミニューム、燐化マグネシウム剤の分解速度が温度・湿度に大きく影響をされるので長期間の燻蒸処理時間を要する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのような燻蒸方法では安定した燻蒸処理が行えず、また季節の変化や天候の変化、昼夜間の温度差などによりその効果や処理時間が大きく変動してしまうので非常に使いにくいものであった。また処理の対象となる物品やその燻蒸の対象となる空間に最適な条件の燐化水素の発生時間、発生特性の自在な制御はできなかった。
【0012】
【課題を解決するための手段】以上のような問題を解決するために、開口面に燐化水素剤を保持する網目板を設置した略皿状の加水分解用水槽と、前記加水分解用水槽内の水を加熱して水蒸気を発生させるヒーターと、前記ヒーターを意図した温度に保つ制御手段と、を備えた燻蒸速度制御装置において、前記網目板上面と燐化水素剤の間に気体のみが選択されて透過する選択透過性シートを敷設したことを特徴とする燻蒸速度制御装置を手段として用いる。
【0013】このようにすれば、選択透過性シートにより水蒸気のみが透過して水は透過しないので、燐化水素剤の予期せぬ過剰反応が無く安全である。また水蒸気の発生量がヒーターの電気的な制御で自在に設定できるので最適な燐化水素の発生量が得られる。さらに加水分解反応が進行したことによる燐化水素剤の体積減少が生じても網目板の隙間から下に落下して水中に没すること無く、選択透過性シートにて好ましく最後まで保持される。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明の燻蒸速度制御装置の実施の形態を示す図面であって、本発明の技術的内容を説明するための断面図である。図2は図1に示した本発明による燻蒸速度制御装置の構成を示す図である。
【0015】図1に示した実施の形態においては、その構成としてステンレス製の加水分解用水槽6の底部分に水7を加熱するためのヒーター4を備えており、また水7の水温を監視してその温度変化を温度コントロール装置9に伝達する温度センサー5も同時に設けられている。ヒーター4は温度コントロール装置9によってその動作を制御されていて、操作者の意図する温度に水7が保たれるようになっている。
【0016】ヒーター4を制御する温度コントロール装置9は、その制御手段の一例として例えばマイクロコンピューターを内蔵したり、あるいは外部のコンピューターと情報交換をするような構成を備え、温度センサー5からの信号や電気的特性の変化を情報として取り込み、予めプログラムされたアルゴリズムに従い情報処理を行う。この処理された情報に基づいてヒーター4への電力供給を間欠的に行ったり、あるいはアナログ的に連続制御を行って、水温を設定値に保つ。
【0017】ここで用いられる温度センサー5は簡単なものでは、例えばバイメタルスイッチでも良く、また高精度な制御を望む場合にはサーミスタや熱電対でも良い。さらに、これらの様々な温度センサー5からの電気的な特性変化などを温度センサー5の内部で、アナログ値からデジタル値に予め変換しておくことで、温度コントロール装置9との距離が離れる場合においても、外来ノイズの影響を最低限度におさえることができ、さらには光伝達方式にすれば外来ノイズの信号線経路からの飛び込みに対して非常に有効な対抗策となる。これらのノイズ対策は、本発明がノイズ環境の比較的悪い、例えば工場の側であったりするような場所で実施される場合において長時間の安定動作を実現する。
【0018】ヒーター4はその発熱体として一般的なニクロム線やセラミック発熱体が用いられている。これらの素子の外観は化学的な安定性を保つために、熱伝導率が良くさらに熱慣性の少ない材料や形状により覆われている(図示せず)。またこれらの電気的な発熱体の替わりにヒートパイプを用いたり、あるいは熱交換サイクルを備えた昇温/冷却装置を用いても良い。
【0019】これらの様々な温度制御手段によって、温められた水より発生する水蒸気の量も制御されることとなる。したがって、この水蒸気の発生量の制御によって薬剤(例えば燐化水素剤)が加水分解反応する割合を制御することができる。
【0020】薬剤(例えば燐化水素剤)に加水分解反応のための制御された水蒸気が充分に接触し、かつ液相である水7が触れないようにするために本発明においては選択透過性シート1を用いている。この選択透過性シート1を薬剤の下に敷いて保持することで、好ましく水蒸気のみが薬剤に触れることとなり、さらには反応が進んで薬剤の体積が小さくなっても網目板3の網目から下に落ちてしまうことがない。
【0021】具体的な一例としては図2に示すような位置関係で網目板3と薬剤2の間に選択透過性シート1を敷設することで、本発明の燻蒸速度制御という効果が発揮される。この選択透過性シート1は例えば通気性で非通水性のシリコン樹脂加工を施した紙や、あるいは高分子材料による通気性シートなどによっても容易に実現可能である。
【0022】なお、本発明の構成による燻蒸速度制御装置に循環ファンや循環用配管を組み合わせることでサイロ燻蒸や、倉庫燻蒸における屋外投薬燻蒸、製粉工場の循環投薬燻蒸に用いることができ、その場合においても十二分に本発明の効果を奏することができる。
【0023】以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0024】
【実施例】巾11cm×奥行150cm×高さ3cmの本体に約50ccの水をいれ、電気ヒーター(AC100V,50W)を温度調節器にて35℃乃至45℃に制御し、水温を35℃乃至45℃に常時保ち、水面上にセットされた金網及びシリコン樹脂紙上に1g/m3 ・2g/m3 ・3g/m3 の燐化マグネシウム、又、3g/m3 の燐化アルミニューム剤を乗せて、1m3 の燻蒸容器の中で分解した。
【0025】1m3 の容器内温度15℃、湿度85%の自然分解、及び大気温15℃の条件において、燐化マグネシウムの結果を表1に、燐化アルミニューム剤の結果を表2に示す。ただし燐化マグネシウムの結果は1g/m3 ・2g/m3 ・3g/m3 における各実験値の平均を表した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【発明の効果】選択透過性シートにより水蒸気のみが透過して水は透過しないので燐化水素剤の予期せぬ過剰反応が無く安全であり、さらに水蒸気の発生量を自在に制御できるので最適な燐化水素の発生量が得られる。また加水分解反応が進行したことによる燐化水素剤の体積減少が生じても、網目板の隙間から下に落下して水中に没すること無く、選択透過性シートにて好ましく最後まで保持される。
【0029】また燐化アルミニューム剤・燐化マグネシウム剤等の含有製剤を用いて燐化水素を得る場合にも、たとえ低温低湿の環境下であったとしても一定の短時間内に完全にかつ安全に分解促進せしめるので、燻蒸時間の短縮と良好な燻蒸効果が実現できる。
【出願人】 【識別番号】597098338
【氏名又は名称】清水 洋志
【識別番号】597098349
【氏名又は名称】島本 幸典
【識別番号】597098350
【氏名又は名称】有明 輝
【出願日】 平成9年(1997)7月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄 (外1名)
【公開番号】 特開平11−28043
【公開日】 平成11年(1999)2月2日
【出願番号】 特願平9−185487