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【発明の名称】 種禽用単飼ケージ
【発明者】 【氏名】山本 忠博

【要約】 【課題】間口が広く、種禽の飼養管理が容易で、かつ家禽に与えるストレスの少ない、種雌禽飼育用並びに種雄禽飼育用の単飼ケージを提供することを目的とする。

【解決手段】■正面に開口部Aを有するケージBを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージにおいて、前記開口部Aに、押し戸式であり、かつ左開きの扉1を設け、種雌禽飼育用としたことを特徴とする種禽用単飼ケージを提供すると共に、■ケージを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージであって、前記ケージ前面上部より、ケージ上面前方側から後方側にかけて、ケージ前面側より見たときに略凹状となるようにケージを切り欠くと共に、ケージ上面の切り欠き部に摺動自在に部材を取付けてスライド式の扉とし、種雄禽飼育用としたことを特徴とする種禽用単飼ケージを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 正面に開口部を有するケージを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージにおいて、前記開口部に、押し戸式であり、かつ左開きの扉を設け、種雌禽飼育用としたことを特徴とする種禽用単飼ケージ。
【請求項2】 請求項1記載の種禽用単飼ケージにおいて、ケージの前端外面部に卵受けを設け、ケージの側面から見たときに、ケージの底面に背面側から正面側に向かってなだらかに下る緩やかな傾斜を付け、その端に卵受けを位置させてなる種禽用単飼ケージ。
【請求項3】 ケージを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージであって、前記ケージ前面上部より、ケージ上面前方側から後方側にかけて、ケージ前面側より見たときに略凹状となるようにケージを切り欠くと共に、ケージ上面の切り欠き部に摺動自在に部材を取付けてスライド式の扉とし、種雄禽飼育用としたことを特徴とする種禽用単飼ケージ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、種禽用単飼ケージに関し、詳しくは種禽の飼養管理が容易で、かつ家禽に与えるストレスの少ない、種雌禽飼育用並びに種雄禽飼育用の単飼ケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】種卵確保のための手段の一つとして、人工授精による方法がある。人工授精による方法とは、優れた形質を有する個体を種雄禽、種雌禽として選び、定期的に種雄禽より採精を行い、それを種雌禽に人工授精する方法である。この方法によれば、優れた形質、例えば肉質、産卵数を有する個体を沢山得られる点で、優れている。
【0003】従来、この人工授精用の種禽のケージ飼育に際しては、特別のケージといったものは特に使用されておらず、一般的な採卵養鶏用ケージが流用されてきたのが実情である。ここで採卵養鶏用ケージは、正面に開口部があり、この開口部に上下スライド式の扉が設置されたものである。この上下スライド式扉には、中2本の番線があるのが通常で、扉の開閉はこの2本の番線を掴んで上下に上げ下げすることにより行われている。
【0004】但し、種雄禽用単飼ケージとしては、種雌禽よりも体高のある種雌禽の特徴を考慮して、高さをゆったりとったケージが使用されてきた点が異なる。
【0005】通常の採卵養鶏の飼育の際には、一旦家禽、例えば若雌禽をケージに収容すると、人工授精は勿論のこと、体重測定等を行うこともなく、また、餌や水は、ケージの間から頭部を出して摂取するため、廃鶏オールアウト時或いは斃死時までケージから出すことはまずない。従って、ケージの開け閉めの頻度は極めて低く、家禽の出し入れに関する作業性は重視されない。それ故、ケージの扉の形状・構造等については、飼育上あまり重視されるものではなく、製作費の安価な上下スライド式扉について改良が試みられることは殆どなかった。
【0006】しかしながら、上記のような上下スライド式扉を有する採卵養鶏用ケージを種禽の飼育にそのまま用いると、以下のような問題点がある。
【0007】まず、種雌禽の場合、その飼育に際し、人工授精操作は勿論のこと、体重測定、ワクチネーション等の作業を定期的に行う必要があるため、通常の採卵養鶏の際よりも個体の出し入れを頻繁に行う。
【0008】しかしながら、従来の採卵養鶏用ケージの上下スライド式扉は、摺動部分が多いために、頻繁に開閉すると錆の原因となり、扉が動かなくなる可能性がある。このような上下スライド式扉を有するケージを人工授精用に用いると、個体の出し入れに支障を来たし、種雌禽にストレスを与えるばかりか、個体に骨折などの怪我を追わせるおそれすら充分にあった。また、扉の開閉がスムーズでないと、人工授精作業の効率が非常に悪い。
【0009】さらに、従来の上下スライド式扉をケージ前面に有する採卵養鶏用ケージは、開閉の際に中2本の番線を掴むために、この番線の間隔を片手で掴める程度以上に、間口を広くすることはできない。また、中2本の番線は、開閉の度に掴まれるために、扉の両サイド部分の開きが大きくなるおそれがある。このように、上下スライド式扉の場合には、扉部分の番線の間隔を一定以下とすることができず、一方、扉の両サイド部分の開きが大きくなると、中の種雌禽が脱走する可能性があるため、扉部分の開き(間口)を大きくすることについては、自ずと制限があった。褐色卵生産鶏の場合、白色レグホン種と比較して、体重が大きく、上記したような人工授精操作等の作業に特に支障を来していた。また、通常、ケージ前面には、給餌樋、給水装置等が設置されており、開口部が制限されているため、一層不都合があった。
【0010】一方、種雄禽の場合、採精を行う際などに、飼育者に捕獲されることに気づいたケージ内の種雄禽は、警告して飛び上がり騒ぐ。従来の飼育ケージのように正面に開口部を有する場合は、飼育者は該種雄禽をケージから出す際、屈む必要があるが、このように種雄禽が騒ぐと、正面からまともに攻撃を受けることになり、飼育者は捕獲に多大な労力を要することになる。種雄禽は、定期的に採精を行う必要があるが、このように捕獲に多大な労力を有するとなると、そのような操作もスムーズにいかず、計画的な人工授精の実施に支障を来していた。また、種雄禽は、精液採取の際に種雄禽全体を取り出さなければならないため、作業効率からみて、できるだけ間口が広い方が好ましいが、上記したように、従来の上下スライド式扉をケージ前面に有する採卵養鶏用ケージは、扉部分の開き(間口)を大きくすることについては、制限があり、その改善が求められていた。また、通常、ケージ前面には、給餌樋、給水装置等が設置されており、開口部が制限されているため、種雌禽の場合の場合と同様に、不都合があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の欠点を解消し、間口が広く、種禽の飼養管理が容易で、かつ家禽に与えるストレスの少ない、種雌禽飼育用並びに種雄禽飼育用の単飼ケージを提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため、できるだけ間口が広く、人工授精等の操作をスムーズに行うことができる、種禽用のケージについて鋭意検討を重ねた。その結果、種禽用のケージを、種雌禽飼育用と種雄禽飼育用とで別々とし、かつ出入口の形状をそれぞれの特性に合ったように工夫することにより、目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0013】すなわち、請求項1記載の本発明は、正面に開口部を有するケージを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージにおいて、前記開口部に、押し戸式であり、かつ左開きの扉を設け、種雌禽飼育用としたことを特徴とする種禽用単飼ケージを提供するものである。
【0014】また、請求項3記載の本発明は、ケージを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージであって、前記ケージ前面上部より、ケージ上面前方側から後方側にかけて、ケージ前面側より見たときに略凹状となるようにケージを切り欠くと共に、ケージ上面の切り欠き部に摺動自在に部材を取付けてスライド式の扉とし、種雄禽飼育用としたことを特徴とする種禽用単飼ケージを提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について説明する。請求項1と請求項3に記載した本発明の2種類の単飼ケージは、それぞれ種雌禽飼育用と種雄禽飼育用の単飼ケージであるが、いずれも鶏,アヒル,シチメンチョウ等の種禽を対象とするものである点で共通している。請求項1と請求項3に記載した本発明の2種類の単飼ケージは、特にそれぞれ種雌鶏飼育用と種雄鶏飼育用の単飼ケージとして有効に利用することができる。
【0016】まず、請求項1記載の本発明について詳述する。図1〜図3が、請求項1記載の本発明の種雌禽飼育用の単飼ケージについてのものであって、図1が斜視図であり、図2が正面図であり、図3が側面図である。
【0017】請求項1記載の本発明の種雌禽飼育用の単飼ケージは、全体が略直方体をなしたケージBを構成単位とするものであり、正面に開口部Aを有するケージBを1又は2以上設けたものである。図1,2には、そのようなケージBを4つ横に連設したものが示されているが、ケージBを1又は2以上設けたものであれば良く、これに限定されるものではない。例えば、1つのケージBの裏側に、これに対称となるように別のケージBを設けたものでも良いし、さらに、このような1対の形のものを横に2以上横に連設したものであっても良い。
【0018】請求項1記載の本発明の種禽用単飼ケージは、このような正面に開口部Aを有するケージBを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージにおいて、前記開口部Aに、押し戸式であり、かつ左開きの扉1を設け、種雌禽飼育用としたことを特徴とするものである。なお、図1,2中において、一番左側のケージには開口部のみを設け、前記扉1が省略されているものを示した。
【0019】ここで押し戸式であり、かつ左開きの扉とは、正面から見て左側を固定軸とした押し戸式の扉を指している。押し戸式の扉としては、飼育者が押すと開くような構造であれば、特に制限はないが、扉を閉めた状態で固定できるように、例えば、扉1に、ケージB本体の番線に係合しうるような部分を設けておくのが好ましい。図1,2には、扉1の右端に把手部2を設けたものが示されており、右端に設けられている把手部2を押して扉1を開け、これを閉めるときには、把手部2をケージBを構成している番線に係合させれば良い。
【0020】押し戸式の扉1のサイズ(大きさ)については、種雌禽をスムーズに出し入れでき、また、人工授精の際に、飼養者が手を入れて作業することができるような程度とする必要があるが、通常、採卵鶏の場合は、幅180〜200mm、高さ160〜200mmとするのが好ましい。
【0021】請求項1記載の本発明において押し戸式の扉を採用したのは、従来用いられてきたケージのスライド式扉と違って、摺動部分が少なく、摺動により錆の発生する確率が低いからである。スライド式扉の場合、上下スライド式であっても、或いは左右スライド式であっても、いずれでも摺動により錆が発生しやすい。左右スライド式の場合には、間口も広げにくい。また、手前側に開く開き戸とした場合には、餌樋などを設置するのが著しく困難となり、また、種雌禽が逃走するおそれも増えてしまう。
【0022】さらに、この押し戸式の扉1は、人工授精の操作等の観点から、左開きとする必要がある。種雌禽への精液注入の作業順序は、通常、■個体の両足(腿部)を左手で掴み、その右側が下になるように保持し、■その左手で腹部を圧迫して総排泄腔を反転させ、■予め右手に持った注射器を生殖腔に1〜2cm挿入し、■精液約0.05ml程度を注入する、といった手順で行う。この一連の操作は、雌雌禽の胴部以上はケージに入れたまま、左手で保持した両脚と下腹部をケージ外に出した状態で行われる。この際、請求項1記載の本発明の種禽用単飼ケージのように、押し戸式の扉1を左開きとしておけば、種雌禽の尾部をケージ開口部Aの右端の番線のいずれかに引っかけておくことができ、羽根に囲まれている総排泄腔を見えやすくすることができ、人工授精の操作がより容易となる。
【0023】請求項1記載の本発明の種禽用単飼ケージは、基本的には上記の如き構成を有するものであるが、通常は卵受け3を有しており、さらに餌樋、水樋等(図示していない)を有している。このため、図3に示したように、ケージBの前端外面部に卵受け3を有し、ケージBの側面から見たときに、ケージBの底面に背面側から正面側に向かってなだらかに下る緩やかな傾斜を付け、その端に卵受け3が位置する構造のものとしておくと良い。この場合、ケージBの底面と扉1のある正面との交わる部分Cに卵が通り抜けられる程度の隙間を設けておく。
【0024】即ち、請求項2に記載したように、請求項1記載の種禽用単飼ケージにおいて、ケージBの前端外面部に卵受け3を設け、ケージBの側面から見たときに、ケージBの底面に背面側から正面側に向かってなだらかに下る緩やかな傾斜を付け、その端に卵受け3を位置させておくと良い。このような構造のものとしておけば、ケージB内の種雌禽により産み落とされた卵は、緩やかにケージBの底面を背面側から正面側に向かって下り、最終的にケージBの前端外面部に設けられている卵受け3に入ることになる。
【0025】この卵受け3については、必要に応じてケージBの側面に設けることもできるが、ケージBを横に連設する通常の形態を考えると、扉1を設けた正面に設けることが望ましい。また、人工授精等の操作を行う際に、用具を置いておく台として用いることもできることからも、この卵受け3は、扉1を設けた正面に設置することが好ましい。
【0026】請求項1記載の本発明の種禽用単飼ケージは、文字通り単飼用なので、個々のケージBの大きさは、種雌禽1羽が適度に動くことができる程度に広く、かつ、飼育者が個体を捕獲でき、出し入れをスムーズに行うことができる程度に狭いものであれば良い。具体的には、個々のケージBは、通常、幅220〜250mm程度、奥行き390〜450mm程度、高さ420〜450mm程度のものとすれば良いが、これに限定されるものではない。
【0027】ケージBを構成する材料は、耐候性、耐衝撃性等を備えるものであれ良く、特に制限はないが、水洗、消毒等を行うことを考慮すると、金属製とすることが好ましい。また、部分的に異なる素材を用いることもでき、例えば扉1のみを樹脂素材とし、他の部分は金属性のものとすることもできる。さらに、ケージBには、錆止めのために塗装、メッキ等を施すこともできる。
【0028】請求項1記載の本発明の種禽用単飼ケージは、人工授精の操作を初めとする飼育管理の観点から、飼育者の飼養管理が容易となる高さとすることが好ましい。このため、適当なケージ架台などを用いて、床から900〜1100mm程度の高さに設置することが好ましい。
【0029】請求項1記載の本発明のケージを実際に用いて種雌禽を飼育する場合には、押し戸式の扉1の開閉に支障なければ、給餌樋、給水装置、集卵装置等の付属器具を付設することができる。
【0030】次に、請求項3記載の本発明について、図により説明する。図4〜図6が、請求項3記載の本発明の種雄禽飼育用の単飼ケージについてのものであって、図4が斜視図であり、図5が平面図であり、図6が正面図である。
【0031】請求項3記載の本発明は、ケージBを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージであって、前記ケージB前面上部より、ケージB上面前方側から後方側にかけて、ケージB前面側より見たときに略凹状となるようにケージを切り欠くと共に、ケージ上面の切り欠き部Dに摺動自在に部材を取付けてスライド式の扉4とし、種雄禽飼育用としたことを特徴とするものである。
【0032】請求項3記載の本発明の種雄禽飼育用の単飼ケージは、全体が略直方体をなしたケージBを構成単位とするものであり、そのようなケージBを1又は2以上設けたものである。図4,5,6には、そのようなケージBを2つ横に連設したものが示されているが、ケージBを1又は2以上設けたものであれば良く、これに限定されるものではない。例えば、1つのケージBの裏側に、これに対称となるように別のケージBを設けたものでも良いし、さらに、このような1対の形のものを横に2以上横に連設したものであっても良い。
【0033】請求項3記載の本発明の種禽用単飼ケージは、このようなケージBを1又は2以上設けた種禽用単飼ケージであって、前記ケージB前面上部より、ケージB上面前方側から後方側にかけて、ケージB前面側(つまり正面側)より見たときに略凹状となるようにケージを切り欠くと共に、ケージ上面の切り欠き部Dに摺動自在に部材を取付けてスライド式の扉4とし、種雄禽飼育用としたことを特徴とするものである。なお、図4において、右側のケージBには、スライド式の扉4を開け、切り欠き部Dを露出させた状態のものを示した。
【0034】また、図4,5,7に示すようなものの他、必要に応じて、ケージB前面上部より、ケージB上面前方側から後方側までの全てを、ケージB前面側(つまり正面側)より見たときに略凹状となるように切り欠いたものとしても良い。
【0035】そのような切り欠きのうち、ケージ上面の切り欠き部Dに、該切り欠き部Dを覆うように、摺動自在に部材、例えば棒状部材や板状部材を取付けてスライド式の扉4とし、このスライド式の扉4を開閉することにより、種雄禽を出し入れする。即ち、通常は、スライド式の扉4を閉めておき、種雄禽の出し入れの必要性が生じたときに、スライド式の扉をスライドさせて(開けて)切り欠き部Dを露出させ、ケージの前面から上面にかけて種雄禽を取り出せるような開口部が現れるようにして、種雄禽を取り出せば良い。
【0036】この扉4を開けた際に現れる開口部の形状や大きさは、飼育者が腕を差し入れて種雄禽を取り出すのに支障がない程度の形状や大きさとなっていれば、特に限定はない。
【0037】また、上部に設ける扉4の開閉方式には、スライド式,押し戸式,開き戸式など種々考えられるが、コスト面、安全面、出し入れのし易さ等を考慮して、スライド式の扉としている。
【0038】請求項3記載の本発明の種禽用単飼ケージは、単飼用であり、種雄禽1羽が動くのに支障がなく、かつ、飼育者が中の種雄禽を捕獲するのに支障がない程度の大きさのものであれば良い。通常は、幅370〜400mm、奥行き400〜550mm、高さ600〜700mmの範囲とすれば良い。
【0039】また、ケージBの設置位置についても、特に限定はないが、飼育者がケージBの上面に取付けられた扉4を開けることにより現れる、ケージB前面上部より、上面前方側から後方側にかけての開口部から、種雄禽を容易に取り出すことができる程度の高さとすることが好ましい。従って、通常はケージ架台の上に載せられるが、このケージ架台を従来よりも高さを低くし、床から300〜500mm程度の高さとすると作業性が良くなる。
【0040】請求項3記載の本発明の種禽用単飼ケージを実際に用いて種雄禽を飼育する場合には、常法に従い、給餌樋、給水装置等の付属器具を付設することができる。請求項3記載の本発明の種禽用単飼ケージの場合、扉4がケージBの上面に設置されているため、上記各種付属装置を設置する位置が制限されない、という点でも優れている。
【0041】請求項3記載の本発明の種禽用単飼ケージは、扉4がケージBの上面に位置するため、ケージBの前面に位置する水樋等は扉4の障害物とならない。従って、扉の開口部が広く使え、種雄禽に対してストレスを与えることなく、ケージから出し入れを行うことが可能である。さらに、通常のケージでは、捕獲しようとする飼育者に対して、種雄禽は足の爪や嘴による攻撃を仕掛けることが多いが、請求項3記載の本発明の種禽用単飼ケージでは、ケージの上部から捕獲することができるため、足による攻撃を受けることがなく、また、嘴による攻撃も、顔の位置より低いものに限って行うこと習性があることから、飼育者が負傷するおそれは殆どない。従って、請求項3記載の本発明の種禽用単飼ケージを用いれば、ケージ前面に開口部を有する従来の単飼ケージを用いた場合に問題であった捕獲の際の労力を著しく軽減することができ、より迅速に捕獲作業を行うことができる。
【0042】
【実施例】実施例1〔種雌禽用ケージ〕
図1〜図3に示す種雌禽用ケージを用いて、種雌鶏(白色ロック123羽、名古屋種・三河種128羽、20〜40週齢まで)の飼育を行った。具体的には、この種雌禽用ケージは、幅241mm、奥行き390mm、高さ432mmの1構成単位をなす単飼ケージBを左右方向に4つ連設したものであり、幅191mm、高さ200mmの左開きの押し戸式の扉1を有するものであって、ケージの下部が床から1000mmの高さとなるように設置した。
【0043】その結果、従来の上下スライド式扉を有するケージに比べて、図1〜図3に示す種雌禽用ケージを用いた場合には、種雌鶏の出し入れ、人工授精、体重測定、ワクチネーションの各作業とも時間が短縮され、作業効率が向上することが分かった。また、従来の上下スライド式扉を有するケージに比べて、ケージ間口が広くなっているため、種雌鶏の出し入れ時の事故が無くなった。
【0044】実施例2〔種雄禽用ケージ〕
図4〜7に示す種雄禽用ケージを用いて、種雄鶏(ロードアイランドレッド種16羽)を30週齢より40週齢まで飼育した。具体的には、この種雄禽用ケージは、図7に示すように、幅375mm、奥行き444mm、高さ850mmの1構成単位をなす単飼ケージを2つ左右方向に連設したものであり、ケージBの前面上部より、上面前方側から後方側にかけての切り欠きの大きさは、幅(つまり扉の間口)が219mm、高さが60mm、奥行き(つまり扉の間口の長さ)が300mmであった。なお、図7中に示されている数値の単位は、mmである。また、この種雄禽用ケージの前面には大型の給餌器とニップルドリンカーを取付けた。
【0045】飼育を開始して4週後から、2日おきに各個体について精液採取を計5回行い、1羽当たりの平均精液量を算出した。
【0046】その結果、1羽当たりの平均精液量は0.2〜0.7mlであった。この量は、従来のケージに入れた場合の1羽当たりの平均精液量と変わらないことから、図4〜7に示す種雄禽用ケージを用いた場合、採精前に種雄禽に対してストレスを与えていないことが分かった。また、人工授精の授精時のストレスが緩和されていることからか、授精作業自体もスムーズに行なうことができた。
【0047】
【発明の効果】請求項1記載の本発明の種雌禽用単飼ケージは、押し戸式の扉としているため従来の上下スライド式扉と比較して、扉のサイズを大きくすることができ、間口を広くすることができる。このため、左開きとしていることと相まって、作業効率が良く、また、種雌禽の出し入れにも支障がないため、人工授精操作、種雌禽の移動、体重測定、ワクチネーション等を円滑に行うことができる。
【0048】また、殆どの種雌禽は、ケージの前に人が立つと、ケージの奥に下がり、扉の開閉に支障は無く、軽い力で扉の開閉ができるため、間口が広いことと相まって、種雌禽の取り出しに無理が無く、種雌禽にストレスを与えることが少なくなっている。
【0049】さらに、請求項1記載の本発明の種雌禽用単飼ケージは、押し戸式の扉としているため、扉の開閉を頻繁に行ったり、或いは古くなったりしても、摺動部分の多い従来の上下スライド式扉と比較して、錆の発生が少なく、また扉が変形して開かなくなるおそれが少ないものとなっている。
【0050】次に、請求項3記載の本発明の種雄禽用単飼ケージは、ケージ上部に摺動自在に部材を取付けてスライド式の扉4としているため、ケージ上部から種雄禽を容易に捕獲することができ、種雄禽からの攻撃を受けることなく、ケージからの出し入れを行うことができる。また、ケージ前面上部は凹状に切り欠かれているため、扉の開閉が非常にスムースに行える。
【0051】また、ケージ上面だけでなく、ケージ前面上部が凹状に切り欠かれているので、間口が広く、このため種雄禽に対してストレスを与えることなくケージから出し入れを行うことが可能である。従来のようにケージ前面にスライド式の扉を設けたものでは、種雄禽を捕獲する場合、横から種雄禽の体や脚を捕まえてケージ外に出す方式であるため、種雄禽が警戒して人が手をケージ内に入れると、跳び上がり、騒ぐことが多く、採精がスムーズに行かず、計画的な人工授精の実施に影響があったが、請求項3記載の本発明の種雄禽用単飼ケージによれば、ケージ上部にスライド式の扉が設けられているため、ケージ上部から種雄禽を引き上げるようにして容易に捕獲することができ、種雄禽を騒がせることなく取り出して、スムーズに採精作業等を行うことができる。言い換えれば、採精前に種雄禽に余分なストレスを与えることが無い。
【0052】さらに、ケージ上部に扉を設けているため、給餌樋など各種付属装置を設置する位置が制限されない、という点でも優れたものである。従って、請求項3記載の本発明の種雄禽用単飼ケージを用いて種雄禽を飼育すれば、計画的な人工授精の実施を実現することが可能である。
【出願人】 【識別番号】592003094
【氏名又は名称】農林水産省家畜改良センター所長
【出願日】 平成10年(1998)6月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
【公開番号】 特開平11−341932
【公開日】 平成11年(1999)12月14日
【出願番号】 特願平10−167761