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【発明の名称】 家畜移動モニタリング装置
【発明者】 【氏名】目黒 良平

【要約】 【課題】放牧草地における輪換管理の省力化等のため放牧家畜の草地間移動経過及び所在草地を無人で連続的に記録し、表示及び図示するモニタリング装置。

【解決手段】床面に設置される個体識別用の1対のアンテナを、2つの草地を結ぶ放牧家畜の移動通路上に1.5〜2mの間隔で設置し、両アンテナは通路外に設置したコントローラに接続され、放牧家畜には無線発信器を組み込んだタグを足首に取り付け、放牧家畜が前記アンテナ上を通過すると家畜番号、時刻、アンテナ番号が前記コントローラ中の指示計に自動的に記録され、指示計に蓄積したデータをデータ収集用ソフトでパソコンに取り込み、データ処理用ソフトで解析し、前記両アンテナの通過記録から家畜個体ごとに前記両草地間の移動時刻、移動方向を求め、これらの記録に基づき家畜個体及び家畜群の草地間移動経過及び所在草地を表示及び図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 床面に設置される個体識別用の1対のアンテナを、2つの草地を結ぶ放牧家畜の移動通路上に1.5〜2mの間隔で設置し、両アンテナは通路外に設置したコントローラに接続され、放牧家畜には無線発信器を組み込んだタグを足首に取り付け、放牧家畜が前記アンテナ上を通過すると家畜番号、時刻、アンテナ番号が前記コントローラ中の指示計に自動的に記録され、指示計に蓄積したデータをデータ収集用ソフトでパソコンに取り込み、データ処理用ソフトで解析し、前記両アンテナの通過記録から家畜個体ごとに前記両草地間の移動時刻、移動方向を求め、これらの記録に基づき家畜個体及び家畜群の草地間移動経過及び所在草地を表示及び図示することを特徴とする家畜移動モニタリング装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放牧草地における輪換管理の省力化等のため放牧家畜の草地間移動経過及び所在草地を無人で連続的に記録し、表示及び図示する移動モニタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】中山間地域の広域な放牧草地において、放牧家畜群の所在する草地や放牧地域内における移動状況を把握することは、放牧管理の省力化及び効率化のため重要である。現状では、これらの情報把握は放牧管理者の多労な作業で行なわれており、機械化、装置化は進んでいない。家畜個体情報の把握については、個体識別装置と各種センサの組合せにより体重計測、飲水量の計測、飼料給与等が行われ、繁殖管理、健康管理にも適用が試みられている。しかし、個体識別装置を利用した放牧家畜の移動や所在情報の把握のための装置は開発されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】放牧草地における放牧家畜の草地間移動経過及び所在草地を長期間にわたり無人で連続的にモニタリングする装置が試験研究、生産現場において望まれている。
【0004】本発明は、このような要望に応えるために案出されたものであり、個体識別用アンテナ1対を2つの草地を結ぶ通路上に設置し、放牧家畜には無線発信器を組み込んだタグを足首に取り付け、放牧家畜がアンテナ上を通過する時に家畜番号、時刻、アンテナ番号を自動的に記録し、そのデータをパソコンに取り込み家畜個体及び家畜群の草地間移動経過及び所在草地等を表示及び図示する家畜移動モニタリング装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の家畜移動モニタリング装置は、放牧家畜の行動習性を利用して移動モニタリングの目的を達成しようとするところに特徴がある。即ち、2つの草地が通路で結ばれている時、放牧家畜は採食のため両草地間を移動形と区分される行動形をとって移動する。移動形においては多頭数の家畜群も狭い牛道を1列縦隊で歩行移動することが多い。このことから移動通路に1対のアンテナを設置し、移動通路を放牧家畜が往来するとき、各アンテナ上を通過する家畜の番号、時刻、アンテナ番号を記録し、これをデータ処理用ソフトで解析することにより放牧家畜の草地間移動経過、所在草地等を求め、これを表示及び図化することによりモニタリングの目的を達成しようとするところに特徴がある。本発明はこれらの作用を1対の床面設置式アンテナ、1対のアンテナからのデータを蓄積、出力するコントローラ、コントローラからのデータをパソコン上で処理、出力するデータ処理ソフトによって達成する。
【0006】アンテナを1対設置することにより、家畜個体について一方のアンテナの通過時刻と他方のアンテナの通過時刻から移動の方向を求めることが可能となる。コントローラは2つのアンテナからのデータを蓄積、出力する機能を有する。データ処理ソフトはこれらのデータを処理し、家畜個体について一方の草地と他方の草地間の移動の方向、所在草地を求め、記録期間中の家畜個体の草地間移動経過、所在草地を解析する。さらに、これを集計し家畜群としての草地間移動経過、所在草地を解析する。
【0007】アンテナを床面設置式にし、無線発信器を組み込んだタグを放牧家畜の足首に付けることによりアンテナと無線発信器の間隔が交信範囲を外れることがなく、データの読みとりを確実にする。無線発信器はマイクロチップ式で軽量、小型のため足首に装着しやすく、草地内での脱落や破損が殆どない。指示計からのデータはノート型パソコン等に現地で出力し、解析が可能である。このため放牧期間を通して昼夜連続的に放牧家畜の移動をモニタリングできることを特徴とする。
【0008】
【作用】本発明の家畜移動モニタリング装置においては、放牧家畜の移動通路上に設置した1対のアンテナが通路外のコントローラに接続されており、足首にタグを取り付けた放牧家畜がアンテナ上を通過するとその家畜番号、時刻、アンテナ番号がコントローラ中の指示計に蓄積される。これらのデータをパソコンに出力し、データ処理用ソフトによって家畜番号、時刻、アンテナ番号について処理し、家畜個体別に通過時刻の時間差から一方の草地から他方の草地への移動と、他方の草地から一方の草地への移動を判断し、これに基づき家畜個体及び家畜群について草地間移動経過、所在草地等を解析し、表示及び図示することにより放牧家畜の移動をモニタリングする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、2つの草地を結ぶ通路上に設置した実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0010】本発明の装置は、図1ないし図3に示すように、1.5〜2mの間隔で設置された1対の床面設置式個体識別用アンテナA,B、このアンテナA,Bからデータを取得、蓄積し、パソコン1に出力するコントローラ2、並びに、データを処理し、表示及び図示するデータ処理ソフト3から構成される。
【0011】2つの草地a,b間における放牧家畜の移動は、図4に示すように、草地aから移動通路上のアンテナA、ついでアンテナBを経て草地bに、あるいはその逆方向に放牧家畜が移動することによって達成される。本装置は、この移動の際のアンテナA,B通過時に家畜番号、時刻、アンテナ番号を記録し、これらのデータをパソコン1上で処理し、家畜個体及び家畜群の草地a,b間移動経過及び所在草地(aまたはb)を表示及び図示し、放牧家畜の移動をモニタリングすることに適用される。
【0012】本実施例において、識別アンテナA,Bは、図2にも示すように、ループアンテナをFRPボードに埋め込んであり、縦16OOmm、横1OOOmm、厚さ6mmで、ボード表面は滑り止め加工が施してある。1対のアンテナA,Bは2つの草地a,bを結ぶ幅lmの通路上に1.5mから2.Omの間隔をあけ、縦列に設置してある。床面はコンクリートが望ましいが、コンクリートブロックを敷き詰めるなどアンテナA,Bが家畜の重量で変形、沈み込みをしないようにすればよい。アンテナA,B間の干渉を避けるため間隔を維持できるようにアンテナA,Bを固定する。アンテナA,Bからコントローラ2に接続するケーブルは家畜の踏み付け等を避けるように保護する。アンテナA,Bからのケーブルはコントローラ2のそれぞれのコネクタに接続する。
【0013】無線発信器は、図5に示すように、マイクロチップ型で小型、軽量のうえ無電源のため長期に使用が可能である。これを樹脂ケースに封入した縦4Omm、横1Omm、厚さ16mmのタグ4をレッグバンド4aで家畜Cの後肢の飛節下部に固定する。
【0014】コントローラ2は、図1にも示すように、2つのタグコントローラ2a,2b、指示計2c、DC電源等を内蔵機器とし、1対のアンテナA,Bからのデータを蓄積、出力する機能を有する。防沫防塵構造で屋外設置も可能である。コネクタに識別アンテナA,Bのケーブルを接続し、放牧家畜通過時にタグコントローラ2a,2b及び指示計2cによりその家畜番号、時刻及びアンテナ番号を記録、蓄積し、通信ケーブルを通じてパソコン1に出力する。指示計2cはコントローラ2から取り外し室内での解析に供することができる。
【0015】指示計2cからのデータをデータ処理用ソフト3で処理し、放牧家畜の草地a,b間移動経過及び所在草地aまたはbを表示及び図示する。データ処理の概要を図6に示す。予め対象家畜群の個体情報(家畜番号、畜種、性別、年齢等)を家畜個体台帳に入力しておく。指示計2cからデータ収集用ソフトにより取得した家畜番号、時刻、アンテナ番号データから、家畜個体ごとに草地aから草地bへの移動またはその逆方向の移動を通過時刻から判断、整理する。この結果に基づき、家畜個体について経時的な草地間移動経過及び所在草地を連続記録として、また、時間単位、日単位及び放牧期間単位で表示及び図示する。さらに、これらを集計して家畜群としての草地間移動経過及び所在草地を表示及び図示する。家畜群については個体情報に基づき任意の群に区分して集計できる。
【0016】放牧家畜の移動時には、移動通路を家畜個体が連続して通過するため、A,Bアンテナ上を家畜個体が1頭ずつ順次通過するとは限らない。本装置では複数個体がアンテナA,B上を通過する場合でも両アンテナA,Bの記録から個体別に通過記録を解析することができる。また、放牧家畜はa草地からb草地方向へ、またはその逆方向に通過するとは限らず、a草地からAアンテナまで来てa草地に戻る、a草地からAアンテナを経てBアンテナまで来てa草地に戻る、a草地からA、Bアンテナを経てb草地側まで来てすぐa草地に戻る、などの行動をとることが見られる。これらについては、データ処理用ソフト3上で適切に処理する。また、指示計の内部メモリに制約があるため、メモリ容量の範囲内で蓄積データをパソコン1に出力し、再セットすることが必要である。
【0017】なお、以上の例では、2つの草地間の移動について説明した。しかし、本発明はこれに拘束されるものではなく、草地と牛舎付属のパドック間や牛舎と飼料給餌場間等2つの家畜行動域間の移動について広く適用できるものである。
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の家畜移動モニタリング装置においては、2つの草地間を移動する放牧家畜の草地間移動経過及び所在草地を無人で長期間にわたり連続的にモニタリングできる。本発明の装置を用いることにより、放牧管理の省力化及び効率化が図れる。
【0019】即ち、現状の放牧管理においては放牧草地を牧区と呼ばれる小区域に区分し、草量に応じ家畜群を牧区から牧区へ順次移動させる小牧区輪換方式が取られている。また、放牧監視で最重要の家畜個体確認は目視によって行われている。これらは放牧管理者の作業に依存しており、多労且つ非効率的である。中山間地域の広域な放牧草地では今後大牧区方式さらには無牧区方式で、超省力的な放牧管理や無人放牧管理、さらには遠隔放牧管理の方向を目指す必要がある。
【0020】本発明の装置は、放牧家畜の移動、所在の把握と同時に個体の確認を行うものであり、自動ゲート等と組み合わせることにより大牧区方式における上記のような省力輪換管理を可能とする。また、無牧区方式における放牧家畜の所在の把握、個体確認が可能となる。
【0021】一方、放牧管理に係わる試験研究においては、放牧草地の採食特性や放牧家畜の行動習性を明らかにすることが重要である。例えば、草種の違う2つの草地間に本発明の装置を設置し、生育ステージの異なる家畜個体を含む家畜群を放牧することにより、各草種の採食特性と各生育ステージ群の行動習性を明らかにできるなど、試験研究の進展が図れる。
【出願人】 【識別番号】591169618
【氏名又は名称】農林水産省東北農業試験場長
【出願日】 平成10年(1998)3月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 信淳
【公開番号】 特開平11−276008
【公開日】 平成11年(1999)10月12日
【出願番号】 特願平10−83219