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【発明の名称】 養殖真珠用人工核及びその製造方法
【発明者】 【氏名】乾 靖彦

【氏名】服部 昌晃

【要約】 【課題】毒性がなく、穿孔加工等の加工性に優れ、核と真珠層との間の剥離を生ずることのない養殖真珠用人工核及びその製造方法を提供する。

【解決手段】炭酸カルシウム60〜80重量%、少量のフッ化リチウム及びジルコニア40〜20重量%からなる混合物に、有機バインダを配合し、通常の加圧成形及びこれに冷間静水圧プレス法を組み合わせる等の方法により成形体とする。その後、炭酸カルシウムの分解温度以下の温度、特に400〜600℃の範囲の温度で焼成する。次いで、この焼成体を、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物を重合開始剤として含むトリエチレングリコールジメタクリレート等のアクリル酸樹脂モノマー中に浸漬し、これら重合開始剤及びモノマーを焼結体に含浸させる。その後、60〜80℃の温度で3〜8時間加熱してモノマーを重合させ、硬化体とし、白色の外観を有する養殖真珠用人工核を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 無機成分と有機成分との複合体からなる養殖真珠用人工核において、上記無機成分は、炭酸カルシウム、フッ化リチウム及びジルコニアを含むことを特徴とする養殖真珠用人工核。
【請求項2】 上記無機成分を100重量%とした場合に、上記フッ化リチウムは0.1〜10重量%であり、上記ジルコニアは1〜50重量%であって、残部が上記炭酸カルシウムである請求項1記載の養殖真珠用人工核。
【請求項3】 上記有機成分がアクリル酸樹脂である請求項1又は2記載の養殖真珠用人工核。
【請求項4】 炭酸カルシウム、フッ化リチウム及びジルコニアを含む混合物を調製する工程、該混合物を成形体とする工程、該成形体を焼成して焼成体とする工程、該焼成体を重合開始剤を含むアクリル酸樹脂モノマーに浸漬し、上記焼成体に、重合開始剤を含む該アクリル酸樹脂モノマーを含浸させる工程、このアクリル酸樹脂モノマーを重合手段を用いて硬化体とする工程、を備えることを特徴とする養殖真珠用人工核の製造方法。
【請求項5】 上記成形体の成形圧力が500kgf/cm2以上である請求項4記載の養殖真珠用人工核の製造方法。
【請求項6】 上記焼成の温度が400〜700℃である請求項4又は5記載の養殖真珠用人工核の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、養殖真珠用の人工核及びその製造方法に関する。本発明の養殖真珠用人工核は、毒性がなく、穿孔加工等の加工性に優れ、また、この人工核と、その表面に形成される真珠層との剥離を生じ難い等、優れた特性を有する。
【0002】
【従来の技術】養殖真珠は、アコヤ貝等の母貝に核を挿入し、その母貝を一定期間飼養し、核の表面に真珠層を形成させて製造されている。この養殖真珠の核としては、一般にドブ貝等の淡水性の二枚貝などの貝殻を球状に加工したものが用いられている。しかし、近年、環境の悪化或いは乱獲などによりドブ貝等が減少し、且つ小型化している。そのため核の確保が難しくなってきており、また、この核の大きさは貝殻の厚みによって制約されるため、直径が7mm以上の大きな核は特に入手し難いのが現状である。このような状況下、天然のドブ貝等から得られる貝殻核に代わる人工核の開発が必要となり、特に天然の貝殻核と同じ成分、即ち、炭酸カルシウムを主成分とする人工核が提案されている。
【0003】これまでに種々の原材料からなる人工核が数多く提案されているが、それらの中で特に炭酸カルシウムを主成分とした人工核が以下の特許公報に開示されている。
■特開昭48−52594号公報;軽微性炭酸カルシウム又は重質炭酸カルシウムの粉末に耐水性接着剤又は耐水性合成樹脂を混合し、造粒して、平滑な真円の球とする。
■特開昭60−259135号公報;特定の粒径のサンゴ粉と炭酸カルシウムの粉末及び無機顔料を所定の量比で混合し、加熱、加圧して成形体とする。
【0004】■特開昭63−219325号公報;炭酸カルシウムと合成樹脂、必要に応じて無機顔料を含み、特定の線膨張率を有する成形体を用いる。
■特開平4−108326号公報;炭酸カルシウムを含有してなるマトリクスとガラス等とからなる核材料を用いて核を得る。
■特開平6−22662号公報;消石灰、炭酸カルシウム及びジルコニアからなる混合粉末を成形し、これに樹脂モノマーを含浸させ、重合して硬化体とする。
【0005】一方、養殖真珠用の人工核には、(1) 母貝の死滅或いは挿入された核を母貝が吐き出す、所謂、脱核等をもたらす毒性を有さないこと、(2) 真珠は重量によって取り引きされるため、天然の貝殻核のかさ比重2.8と同等のかさ比重を有すること、(3) 真珠をネックレス等に用いる場合、専用の穿孔機によって穿孔加工がなされる。この専用の穿孔機に備えられている刃は、ハイス鋼製であって先端を尖らせただけの三角柱状である。そのため、核が硬すぎる場合は核表面のチッピングを生じたり、穿孔ができないことがある。従って、天然の貝殻核のロックウェル硬さ(15N)50と同等のロックウェル硬さを有し、穿孔等の加工性が良好であること、【0006】(4) 核と真珠層との熱膨張係数が異なる場合、長期に渡る温度変化による歪みによって、真珠層に亀裂を生じ、また、核と真珠層とが剥離することがある。そのため、天然の貝殻核の熱膨張係数1.5×10-5/℃と同等の熱膨張係数を有し、核と真珠層とが剥離せず、耐久性に優れること、(5) 真珠層は透光性であるため、核の色は真珠の色や輝きに影響する。そのため、色むらのない白色であること、【0007】(6) 核の表面が粗面であると、真珠層の表面にも影響が及び、真珠の輝きが低下する。そのため、容易に研磨加工を行うことができる程度に表面が平滑であること、(7) 表層が多孔質構造である場合は核の表面が平滑にならず、研磨加工が困難となり、また、養殖は海水中で行われるため海水が核の内部に侵入する恐れがある。一方、内部が多孔質構造である場合は、たとえその表面に緻密なコーティング層を形成したとしても、穿孔加工等が施された製品として使用している間に水や汗等の水分が侵入する可能性がある。そのため、表層及び内部ともに緻密な構造であって、海水等の水分が侵入しないこと、等の特性が要求される。しかし、前記■〜■の特許公報に記載された人工核では、上記の要求特性が必ずしも十分に満たされてはおらず、天然の貝殻核と同等の性能を有する人工核は得られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題を解決するものであり、無機成分として、炭酸カルシウム、フッ化リチウム及びジルコニアを併用し、これらからなる成形体にアクリル酸樹脂モノマーを含浸させ、このモノマーを重合させて有機成分とした養殖真珠用人工核及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明の養殖真珠用人工核は、毒性がなく、加工性に優れ、且つ核と真珠層との剥離を生じ難い等、人工核に要求される特性を十分に備えたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1発明の養殖真珠用人工核は、無機成分と有機成分との複合体からなる養殖真珠用人工核において、上記無機成分は、炭酸カルシウム、フッ化リチウム及びジルコニアを含むことを特徴とする。
【0010】また、第4発明の養殖真珠用人工核の製造方法は、炭酸カルシウム、フッ化リチウム及びジルコニアを含む混合物を調製する工程、該混合物を成形体とする工程、該成形体を焼成して焼成体とする工程、該焼成体を重合開始剤を含むアクリル酸樹脂モノマーに浸漬し、上記焼成体に、重合開始剤を含む該アクリル酸樹脂モノマーを含浸させる工程、このアクリル酸樹脂モノマーを重合手段を用いて硬化体とする工程、を備えることを特徴とする。
【0011】上記「炭酸カルシウム」としては、貝殻粉、サンゴ粉、真珠粉等の海洋性炭酸カルシウム、石灰石、あられ石等の重質炭酸カルシウム、及びこの重質炭酸カルシウムを化学的に精製して得られる軽質炭酸カルシウムなど、いずれも使用することができる。その粒径は特に限定されないが、平均粒径が100μm以下、より好ましくは1〜50μmのものが好適である。また、上記「フッ化リチウム」も一般に提供されているものをそのまま用いることができる。その粒径も特に限定されないが、平均粒径が50μm以下、特に0.1〜10μmのものが好ましい。更に、上記「ジルコニア」としては、1000℃以上の温度で焼成して得られる安定化ジルコニア、イットリア等を含む部分安定化ジルコニアなど、通常、提供されているものをそのまま使用することができる。その粒径も特に限定されないが、平均粒径0.1〜10μm程度のものを用いることができる。
【0012】フッ化リチウムは炭酸カルシウムの焼結性を向上させる焼結助剤として作用する。その結果、得られる人工核のかさ比重が大きくなり、硬度が高くなる。そのため、ジルコニアの含有量を減らすことができ、相対的に天然の貝殻核の主成分である炭酸カルシウムの量比を高くすることができる。フッ化リチウムの含有量は、第2発明のように、上記「無機成分」を100重量%とした場合に、「0.1〜10重量%」とすることが好ましい。フッ化リチウムの含有量がこの上下限を外れる場合は炭酸カルシウムの焼結性が十分に向上しない。この含有量が0.5〜5重量%、特に0.5〜2重量%であれば、炭酸カルシウムの焼結性がより向上するため好ましい。
【0013】また、ジルコニアの含有量によって人工核のかさ比重を適宜に調整することもできる。更に、ジルコニアの量比が高くなるにつれて人工核の硬さが向上する。従って、上記のフッ化リチウム及びこのジルコニアの含有量によってかさ比重と硬さとのバランスを調整し、天然の貝殻核に近似の特性を有する人工核とすることができる。ジルコニアの含有量は、第2発明のように、「1〜50重量%」とすることができる。この含有量が1重量%未満では、得られる人工核はかさ比重が小さく、硬度の低いものとなり、50重量%を越える場合は、硬くなりすぎて穿孔加工性が低下する。この含有量が20〜40重量%、特に25〜35重量%であれば、かさ比重が大きく、適度な硬さを有する人工核が得られる。
【0014】第2発明において、フッ化リチウムとジルコニアとを除いた無機成分の「残部」は炭酸カルシウムである。この炭酸カルシウムは55〜80重量%とすることが好ましく、炭酸カルシウムの量比をこの範囲とすることによって、より容易に適度なかさ比重及び硬さを有する人工核を得ることができる。尚、この炭酸カルシウムの量比は特に60〜80重量%、更には65重量%以上とすることが好ましい。天然の貝殻核の主成分である炭酸カルシウムの量比をこのように高くすることによって、より天然の貝殻核に近似の特性を有する良質な人工核を得ることができる。
【0015】上記「有機成分」は、液状のモノマーを重合触媒、光等によって重合させ、硬化させたものであり、特に、第3発明のように「アクリル酸樹脂」であることが好ましい。このアクリル酸樹脂は、第4発明のようにアクリル酸樹脂モノマーを重合させることによって得られる。上記「アクリル酸樹脂モノマー」としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート及びベンジルメタクリレート等の非官能性モノマーの他、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの一官能性モノマー、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマーを用いることができる。これらのアクリル酸樹脂モノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】炭酸カルシウム、フッ化リチウム及びジルコニアの「混合物」は、ポットミル等の適宜のブレンダーなどによって調製することができ、また、温度も特定はされず常温で混合することができる。上記「成形体」は、この混合物を成形型に填入し、加圧成形する等、周知の成形方法によって得ることができる。この際、成形性を向上させるためにバインダを添加してもよい。このバインダとしては、通常、セラミックの成形などにおいて使用されるメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを用いることができる。
【0017】加圧成形の圧力は第5発明のように「500kgf/cm2以上」とすることが好ましい。この圧力が500kgf/cm2以上であれば後工程の焼成によって得られる焼成体の緻密性が高くなる。しかし、2000kgf/cm2を越えるような高圧では装置が大型化し製造コスト面で不利となるため、上記圧力は500〜2000kgf/cm2の範囲が好ましい。成形の圧力を上記の範囲とすれば、天然の貝殻核と同等の適度な硬さを有し、穿孔加工等、加工性に優れた人工核を得ることができる。また、最終的に緻密な人工核が得られ、この人工核は海水中でも吸水することがない。
【0018】更に、この成形は、比較的低圧、例えば200〜700kgf/cm2程度の圧力下に所定形状に成形した後、冷間静水圧プレス法(CIP法)によって1500〜2000kgf/cm2の高圧下に再度加圧し、より緻密な成形体とする方法であってもよい。また、加圧成形をホットプレス法により行ってもよい。尚、加圧成形後、必要であれば適宜トリミングすることにより形状を整えることもできる。また、この成形体の形状及び寸法は目的とする人工核とほぼ同様のものとすることができ、通常、球形又は楕円球形等である。
【0019】上記のようにして成形体とした後、これを「焼成」して「焼成体」とする。この焼成の温度は、第6発明のように、「400〜700℃」とすることができる。焼成温度が400℃未満では、焼成体の緻密性が低下し、また、バインダを添加した場合など、このバインダ等の除去、即ち、脱脂が十分に行われないことがある。一方、焼成温度が700℃を越える場合は、炭酸カルシウムが分解することがある。この焼成温度は、特に400〜600℃、更には450〜550℃とすることが好ましい。この範囲の温度で焼成すれば、有機バインダ等を確実に除去することができ、且つ炭酸カルシウムの焼成が促進され、強度の高い焼成体が得られる。また、天然の貝殻核と同等の硬度を有し、穿孔加工等の加工性に優れた人工核を得ることができる。
【0020】その後、焼成体を、重合開始剤を含むアクリル酸樹脂モノマーに「浸漬」し、このモノマー等を焼結体に「含浸」させる。この浸漬は常圧において行うことができ、また、密閉容器を使用し、内部を減圧状態にして浸漬することによって、より効率的に含浸させることもできる。上記「重合開始剤」としては有機過酸化物、特に過酸化ベンゾイルが使用される。過酸化ベンゾイルのみを用いた場合は加熱による重合処理を必要とするが、過酸化ベンゾイルとN,N−ジメチルアニリンとを用いた場合には常温での重合が可能となる。また、両者の配合比により重合速度を調節することもできる。その他、カンファーキノンとN,N−ジメチルパラトルイジンとを用いて光重合を行うこともできる。重合開始剤はアクリル酸樹脂モノマー100重量%に対して0.1〜2重量%、特に0.5〜1.5重量%配合される。
【0021】次いで、重合開始剤を含むアクリル酸樹脂モノマーを含浸させた焼成体を、必要であれば加熱し、アクリル酸樹脂モノマーを重合させ、「硬化体」とする。このモノマーは、重合開始剤として有機過酸化物のみを用いた場合は、常圧下、50〜90℃、特に60〜80℃の温度で1〜10時間、特に3〜8時間加熱することにより重合させることができる。このようにしてアクリル酸樹脂モノマーを重合させ硬化体とした後、焼成体の成形時のバリ或いは焼成体の表面に付着した硬化体などを適宜除去し、更に、これを加工、研磨して養殖真珠用人工核を得る。
【0022】本発明の養殖真珠用人工核は、天然のドブ貝などを研磨して得られる貝殻核とまったく同様に使用することができる。淡水産のカワシンジュ貝、イケチョウ貝等、及び海水産のアコヤ貝、クロチョウ貝、シロチョウ貝等、種々の貝類に挿入して用いることができる。また、成形体の寸法を容易に調整することができ、挿入する母貝に合った大きさの人工核とすることができる。例えば、海水産のアコヤ貝では直径6〜8mm程度のものを使用することができ、海水産のクロチョウ貝、シロチョウ貝及び淡水産のイケチョウ貝では直径10〜17mmのものを用いることができる。
【0023】この人工核は、無機成分として、天然の貝殻の主成分である炭酸カルシウム、人工関節等の生体材料として使用されているジルコニア及び少量のフッ化リチウムを含み、有機成分として特に好ましいアクリル酸樹脂は、生体用セメントとして用いられているものである。そのため、毒性がなく、母貝の死滅、脱核等の問題がまったくない。また、フッ化リチウム及びジルコニアの含有量によって人工核のかさ比重、硬さ等を自由に調節することができ、かさ比重及び硬さを容易に天然の貝殻核に近似の値に調整することができる。そのため、穿孔加工等、加工も容易である。
【0024】尚、人工核のかさ比重は、CIP法等を用いて成形圧を高くすることによって大きくすることもできる。この場合、天然の貝殻核の主成分である炭酸カルシウムの量比を、例えば60重量%以上に高めることができ、得られる人工核の組成の面からは好ましい。但し、フッ化リチウム及びジルコニアの量比の低下とともに人工核の硬さが低下するため、それらの含有量及び成形圧を適宜調整することによりバランスのよい特性を有する人工核とすることが好ましい。
【0025】更に、本発明の人工核は天然の貝殻核と同等の熱膨張係数、即ち、1.5〜2.5×10-5/℃、特に1.8〜2.2×10-5/℃の範囲の熱膨張係数を有する。そのため、核と真珠層との間で熱履歴による剥離を生ずることがない。また、無機成分は白色であり、有機成分であるアクリル酸樹脂は無色透明であるため、色むらのない白色の美しい人工核とすることができ、且つ表面が平滑であって研磨加工も容易であるため、美しい色、輝きを有する真珠を得ることができる。更に、表層及び内部ともに多孔質ではないため、穿孔加工を施された場合であっても吸水することもない。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
実施例170重量%の炭酸カルシウム粉末、1重量%のフッ化リチウム粉末及び29重量%のジルコニア粉末をポットミルによって攪拌、混合し、この混合物に有機バインダを配合した。得られた混合粉末を500kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形して球状の成形体とした後、この成形体を更にCIP法によって1500kgf/cm2に加圧した。その後、成形体を520℃の温度で3時間焼成して焼成体とした。次いで、得られた焼成体を、1重量%の過酸化ベンゾイルを含むトリエチレングリコールジメタクリレート中に浸漬し、これら重合開始剤及びモノマーを焼成体に減圧下に含浸させた。その後、70℃で5時間加熱してモノマーを重合させ、硬化させた。次いで、成形時のバリ或いは付着したアクリル酸樹脂を球状加工機によって除去し、更に、その表面を研磨して養殖真珠用人工核を得た。尚、この人工核は、炭酸カルシウムとジルコニアとが均一に分散し、また、バインダが除去されて形成される空隙も均一に存在しており、この空隙にアクリル酸樹脂が充填された非常に均質な高品質なものであった。
【0027】実施例1の人工核及びドブ貝の貝殻を加工して得られた貝殻核について、かさ比重、ロックウェル硬さ、吸水率、30〜100℃における熱膨張係数、表面粗さ(Ra)、穿孔性及び色相を評価した。結果を表1に示す。尚、これらの評価は以下の方法又は装置によって行った。
【0028】かさ比重;JIS C2141ロックウェル硬さ;JIS Z2245吸水率;JIS C2141熱膨張係数;熱機械分析装置(TMA)(理学電機株式会社製、型式「TAS−300」)
表面粗さ;表面粗さ計(Taylor-Habson 社製、型式「Form Talysurf S5CSeries- I)
穿孔性;専用の穿孔機によって穿孔した場合の人工核のチッピングの有無等を観察する。
色相;目視により観察する。
【0029】
【表1】

【0030】表1の結果によれば、本発明の養殖真珠用人工核は、天然核と同等のかさ比重を有し、硬さは天然核を越えることはなく優れた加工性を有することが推察され、実際、穿孔性に優れたものであることが分かる。また、天然の貝殻核と同様に吸水率は0%であって、表面、内部ともに緻密で空孔を有さないものである。更に、熱膨張係数は天然核をやや上回るが問題となるほどではなく、表面は天然核に比べ、より平滑であり、色相も濁りのない白色であって、天然の貝殻核と同様に用い得るものであることが分かる。
【0031】尚、本発明においては、上記の具体的な実施の形態に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した他の実施の形態とすることができる。例えば、上記の白色の人工核を用いた場合、乳白色の外観を呈する真珠が得られるが、本発明の方法によって得られる人工核の優れた特性を損なうことのない限り、適宜の顔料を適量配合することができる。このように着色された人工核を使用することによって、所望の色相を有する真珠とすることができる。
【0032】
【発明の効果】第4発明の製造方法等によって得られる第1発明の養殖真珠用人工核は、天然核と同等のかさ比重及び硬さを有し、チッピング等を起こすことなく容易に穿孔加工をすることができる。また、多孔質ではないため吸水性もない。更に、色むらのない白色の美しい外観を有し、且つ表面も平滑であるため、色、輝き等、美しい真珠を得ることができる。また、天然の貝殻核と同等の熱膨張係数を有するため、核と真珠層との間で剥離を生ずることもない。更に、この人工核は、毒性がないため、母貝の死滅、脱核等の問題もほとんどない。
【出願人】 【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月5日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
【公開番号】 特開平11−75608
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平9−257505