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【発明の名称】 二枚貝の除毒方法及び人工デトリタス
【発明者】 【氏名】今田 克

【氏名】白幡 公勝

【要約】 【課題】有毒プランクトンによって毒化した二枚貝を除毒する。

【解決手段】毒化した二枚貝に人工デトリタスを供給することを特徴とする毒化した二枚貝から毒成分を除去する方法及びそれに用いる人工デトリタスが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 人工デトリタスを二枚貝に供給することを特徴とする毒化した二枚貝から毒成分を除去する除毒方法。
【請求項2】 人工デトリタスが、二枚貝が消化可能な人工飼料からなり、粒径が1〜200μm、比重が1.00〜1.25、水中での減量率が飼育水に48時間の浸漬を行ったときに10%以下である請求項1記載の除毒方法。
【請求項3】 二枚貝が消化可能な人工飼料からなり、粒径が1〜200μm、比重が1.00〜1.25、水中での減量率が飼育水に48時間の浸漬を行ったときに10%以下である人工デトリタス。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有毒プランクトンによって毒化した二枚貝から毒成分を除去する除毒方法及びそれに用いる人工デトリタスに関する。
【0002】
【従来の技術】アサリ、ハマグリ、赤貝、タイラギ、カキ、ホタテ貝、アコヤガイ等の二枚貝は、産業的に養殖されている。これら二枚貝の養殖方法は、天然の海面、海中に籠や枠等に収容又は固定して懸吊するか又は海底に養殖する貝を撒布する方法が採られている。これら二枚貝の養殖に用いられる餌料は、天然のデトリタスである。天然のデトリタスは、細菌、微細植物プランクトン等の生物体並びにその破片、死骸、排泄物及びそれらの分解物などからなっている。これら混合物は水中で団塊となって存在しおよそ数μmから数百μmの大きさを有する。これら天然のデトリタスは、二枚貝の吸水管を介して二枚貝に摂取される。従って、養殖二枚貝の生育の大小、品質の良否等は制御不能な環境中の天然デトリタスによって大きく異なり、現状では安定した生産管理ができない。
【0003】例えば、養殖中の二枚貝には自然壊死、肉質の変化又は毒化する現象が生じることがあるが、その原因は二枚貝が摂取した天然のデトリタスに由来するといわれている。カキ、ホタテ貝、アサリ、タイラギ、ヒオウギ等の食用に供される二枚貝では、しばしば毒化現象が認められ、これら二枚貝の毒化現象は北海道、青森の養殖ホタテ貝、広島、宮城の養殖カキなどで顕著である。近年毒化現象の頻度が高まり、食品安全上憂慮すべき状況にある。毒化の事例はフランスのムール貝、アメリカのチエリーストン貝、カナダのホタテ貝等の天然に採取された貝にも見られ、その対策として、これら諸国では行政府や公的研究機関が対象の二枚貝の毒化状況を把握し、採取禁止、出荷停止などの処置をとるとともに広報活動によって広く市民に周知せしめているが、なお中毒の事例が後を絶たない。
【0004】一方、日本では、養殖生産される二枚貝が毒化するので産業的に影響が甚大である。すなわち養殖生産された二枚貝が毒化した場合には規制値を定めてこれを超えた二枚貝類は生産者が自主的に出荷を取りやめているが、出荷停止期間が年によっては数カ月の長きに及ぶこともあり、生産者の経済的打撃はきわめて大きい。
【0005】二枚貝の毒化は主に二枚貝が摂取する天然のデトリタス中に有毒プランクトンが混在し、この有毒プランクトンの含有する貝毒化合物が二枚貝の体内に移行蓄積することにより起こると考えられている。天然のデトリタス中の有毒プランクトンとしては、渦鞭毛藻類、藍藻類、珪藻類等に属する特定の種が知られているが二枚貝の毒化の進行と特定の有毒プランクトン種の増殖は必ずしも一致しないので因果関係は必ずしも明確でない。
【0006】ただ、日本近海では春から夏にかけて有毒渦鞭毛藻類が大量に発生し天然のデトリタスの主要成分となるので二枚貝の毒化も4月から10月までに集中する。天然海域におけるこれら有毒渦鞭毛藻類の発生・増殖はそれぞれの地域の年毎の気候・海況によって支配されている。現在、毒化した二枚貝からの効率的な除毒の方法が知られていないので、二枚貝の養殖業者は毒化期間が過ぎ去り自然に除毒されるのを待つのみである。
【0007】毒化した二枚貝の除毒に関しては、ろ過処理及びオゾン処理した海水で二枚貝を養殖し、これに珪藻類等の無毒プランクトンを給餌する方法[日本食品衛生学雑誌、33、223(1992)]が知られている。また、養殖二枚貝中に細菌、真菌類及びウイルス等が侵入し感染症を発症、死亡する病害も現象として知られているがその対策の具体的な方法、例えば、殺菌剤、ワクチン等の施用方法が確立されておらず防除策は全くなされていない。
【0008】一方、二枚貝に飼料を与える試みは、例えば米粉末を用いた研究が発表されている[日本水産学会誌(Bull. Jap. Soc. Sci. Fisheries),34,191(1968)]が、米粉末は物性並びに栄養性に乏しく、容易に腐敗するので実用には供しにくい。また、マイクロカプセル化された0.1〜30μmの粒子径でかつ5μm以下の粒子が50%以上という単細胞植物プランクトン粒子を想定した二枚貝用の人工配合飼料及びそれを用いた二枚貝の養殖方法(特開平6−237706号公報)及び二枚貝の蓄養方法(特開平8−322420号公報)並びに海藻類および卵類を含有しかつ粒子径が10μm通過80%という単細胞植物プランクトン粒子を想定した二枚貝用の人工配合飼料及びそれを用いた二枚貝の養殖方法(特開平8−140588号公報)が知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、有毒プランクトンにより毒化した二枚貝が含有する毒を効率的に除去する方法及び該方法に用いる人工デトリタスを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】有毒生物により毒化した二枚貝の除毒を達成するにはいかなる方法が適当であるかを検討した結果、人工デトリタスを毒化した二枚貝に供給することにより、貝の栄養価値を損なうことなく除毒されることを見出し、本発明を完成した。本発明は、人工デトリタスを毒化した二枚貝に供給することを特徴とする毒化した二枚貝から毒成分を除去する除毒方法及び二枚貝が消化可能な人工飼料からなり、粒径が1〜200μm、比重が0.95〜1.05、水中での減量率が飼育水に48時間の浸漬を行ったときに10%以下である人工デトリタスを提供する。
【0011】
〔発明の詳細な説明〕人工デトリタスは、二枚貝が消化可能な人工飼料からなる。人工デトリタスの粒径は、好ましくは1〜200μm、より好ましくは6〜100μmの微粒子である。また、人工デトリタスの比重は、好ましくは1.00〜1.25、より好ましくは1.05〜1.10である。また、人工デトリタスの水中での減量率は、飼育水に48時間の浸漬を行ったときに好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0012】これらの微粒子の粒形、比重、減量率は、以下のようにして測定できる。粒径は、レーザ解析散乱式粒度分布測定装置及び乾式測定ユニット(LA−910W及びLY−108、日立−堀場製作所製)を用い測定する。比重は、化学天秤で測定した重量と水中に投入しその増量によって測定した容積から算出する。水中での減量率は、微粉末試料を水もしくは海水等の飼育水に添加し2日後にろ紙で回収し残存重量を測定し求める。
【0013】二枚貝が消化可能な原料としては、例えば動物性原料、植物性原料、発酵生産物、油脂類及び特殊添加剤等があげられる。動物性原料としては、例えばイワシ、サバ及びスケソウダラ等の魚肉、牛、豚及び鳥等の獣肉、アミ、エビ及びミジンコ等の甲殻類、イカミール及び貝ミール等の腹足類の肉、クラゲ、ワムシ及びミミズ等の小動物肉等があげられる。植物性原料としては、例えば穀類、糟糠類、豆類、クロレラ及びスピルリナ等の微細藻類、各種海藻類があげられる。発酵生産物としては、酵母類及び微生物菌体等があげられる。油脂類としては、例えばラード、豚脂等の獣脂、タラ肝油、イカ肝油等の魚介類油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、綿実油等の植物油等があげられる。特殊添加物としては、例えばビタミンA、ビタミンB各群、ビタミンC、パラアミノ安息香酸等のビタミン類、リジン、グルタミン酸等のアミノ酸類、ステアリン酸、パルミチン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の脂肪酸、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン等のミネラル類、α−トコフェロール、アスコルビン酸等の抗酸化剤、カルボキシルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、小麦グルテン、アルギン酸、ゼラチン、寒天、コンニャクマンナン等の粘結・賦型剤、β−カロチン、アスタキサンチン等の着色剤等があげられる。
【0014】人工デトリタスは例えば以下の方法で製造できる。上述の各種原料を複数組合せて混合した後、粉砕機や磨砕機等にて200μm以下、好ましくは100μm以下の微粉にまで粉砕する。得られる微粉末原料に必要に応じて水又はアルコール等の溶媒を添加しスラリーとし、スプレードライヤーにて噴出微粉化させる。スプレードライヤーで微粉化した後更に分級機で分級し1〜200μmを選別して製造することができる。また、上述のスラリーを加熱押出成形機にて加熱成形して製造されたペレットを再度粉砕し乾燥することにより製造することもできる。
【0015】人工デトリタスの比重は、各種原料の組合せ及び構成比率を変えることにより調整でき、例えば油脂類の含量で調節できる。粒径は、破砕と篩い分けにより調整できる。水中での減量率は、各種原料を混合し、酸・アルカリ浸漬処理、加熱乾燥処理、表面加工処理等の処理を行うことにより低下できる。酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸があげられ、アルカリとしては例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等があげられる。加熱乾燥処理の温度としては、100〜120℃、好ましくは105〜115℃である。表面加工処理としては、例えばトウモロコシ蛋白質(ゼイン)等を溶解したアルコール水に各種原料又は粉砕物を浸漬し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0016】人工デトリタスは、例えばイカミール40〜100重量%を含む動物性原料を50〜80重量部、大豆粉、トウモロコシ澱粉、米粉等の植物性原料を15〜30重量部、ラード、トウモロコシ油、イカ肝油等の油脂類を1〜20重量部、ビタミンやミネラル等の特殊添加物を1〜5重量部を混合し200メッシュ以下に微粉砕した後必要に応じて適量の水分を与えて、加熱押出成形機にて押し出し成形後、再度粉砕し、6〜100μmの粒径のものを篩分けして製造することができる。
【0017】次に、本発明の人工デトリタスを用いて、毒化した二枚貝の除毒方法について述べる。本発明の除毒の対象となる貝類は、例えばホタテ貝、カキ、アサリ、ハマグリ、タイラギ、赤貝、ムール貝、ヒオウギ貝等の毒化した二枚貝があげられる。毒化した二枚貝としては、有毒プランクトン及び有毒細菌等の有毒生物を摂取して毒化した二枚貝があげられる。有毒プランクトンとしては渦鞭毛藻類、藍藻類、珪藻類に属するプランクトンがあげられる。
【0018】渦鞭毛藻類としては、例えばアレキサンドリウム・カテネラ(Alexandrium catenella)、アレキサンドリウム・ミヌタム(Alexandrium minutum)、アレキサンドリウム・タマレンセ(Alexandrium tamarense)等のアレキサンドリウム属、ギムノディニウム・カテナタム(Gymnodinium catenatum)等のギムノディニウム属、ピロディニウム・バハメンセ(Pyrodinium bahamennse)等のピロディニウム属、ジノフィシス・フォルティ(Dinophysis fortii)、ジノフィシス・アクミナート(Dinophysis acuminate )、ジノフィシス・アクータ(Dinophysis acuta )、ジノフィシス・ノルベジカ(Dinophysis norvegica )、ジノフィシス・ミトラ(Dinophysis mitra )、ジノフィシス・ロトンダータ(Dinophysis rotundata )、ジノフィシス・トリポス(Dinophysis tripos)等のジノフィシス属、プロロセントラム・リメ(Prorocentrum lime)、プロロセントラム・オセアニカム(Prorocentrum oseanicam )、プロロセントラム・ペルシヂアム(Prorocentrum pellucidium )等のプロロセントラム属があげられる。
【0019】藍藻類としては、例えばアファニゾメノン・フロスアクア(Aphanizomenon fros-aqua)等のアファニゾメノン属、アナベナ・キルキナリス(Anabaena circinalis)等のアナベナ属等があげられる。珪藻類としては、例えばニッチア・プンゲンス(Nitzchia pungens )、ニッチア・シュードドリカチシマ(Nitzchia pseudodlicatissima)、ニッチア・シュードセリアタ(Nitzchia pseudoseriata )等のニッチア属があげられる。
【0020】具体的な貝毒としては、麻痺性貝毒、下痢性貝毒、健忘性貝毒、神経性貝毒等があげられるが、本発明の除毒方法はこれらの貝毒の除毒に限定されるものではない。麻痺性貝毒としては、例えばサキシトキシン、ゴニオトキシン1〜4、デカルバモイルゴニオトキシン1〜4、デオキシデカルバモイルゴニオトキシン2〜3、ネオサキシトキシン、デカルバモイルネオサキシトキシン、デカルバモイルサキシトキシン、デオキシデカルバモイルサキシトキシン、C1、C2、C3、C4等のサキシトキシン類縁体等があげられる。
【0021】下痢性貝毒としては、例えばオカダ酸、ジノフィシストキシン−1、ジノフィシストキシン−3、ベクテノトキシン−1、ベクテノトキシン−2、ベクテノトキシン−3、ベクテノトキシン−4等があげられる。健忘性貝毒としては、例えばドウモイ酸等があげられる。神経性貝毒としては、例えばブレブトキシン等があげられる。
【0022】これらの貝毒を測定する方法としては、例えばフード・サニテーション・リサーチ(Food Sanitation Res.),31,565(1981)等に記載されたマウス毒性試験法があげられる。具体的には、二枚貝から希塩酸で抽出した抽出液を段階的に希釈しマウス腹腔内に注射し致死時間から毒量を求めることができる。投与毒量の対数値と致死時間の逆数がほぼ直線関係になることを利用するもので、毒量の単位は体重20gのマウスが15分間で死亡する毒量を1マウスユニット(以下、MUと略記する場合がある)と規定されている。
【0023】また、各毒成分を高速液体クロマトグラフィー等の機器分析により定量することもできる。麻痺性貝毒の測定方法は、例えば大島の分析法[ジャーナル・オブ・エイオーエイシー・インターナショナル(J. AOAC International ),78,528(1995)]等を用い各毒成分を直接定量し、上述のマウスユニットに換算することができる。
【0024】また、下痢性貝毒の測定方法は、例えばリー(J. S. Lee )の分析法[アグリカルチャル・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Chem.),,877(1987)]等を用いて直接各毒性分を定量し、上述のマウスユニットに換算することができる。麻痺性貝毒及び下痢性貝毒の標準品は、アメリカ食品医薬品局、カナダ国立科学協議会、カルビオケム社(Calbiochem,USA )、キラル社(Chiral Corp.)、和光純薬等から入手できる。
【0025】日本で生じている二枚貝の貝毒は、主に麻痺性貝毒と下痢性貝毒の二種類が知られており、それぞれ4.0MU/g及び0.5MU/g以上の二枚貝及び製品が食品衛生法第4条の危険な食品として行政的な規制の対象となっている。本発明の除毒とは、毒が蓄積した貝から毒を減少させることを示し、具体的にはこれら規制値以上の毒を持つ二枚貝に人工デトリタスを投与し、上述の規制値以下の毒量にまで減少させることを意味する。
【0026】毒化した二枚貝の除毒は、二枚貝を陸上水槽または海上に浮設した水槽に隔離収容し前述の人工デトリタスを供給することにより行うことができる。飼育水は、天然海水でもまた人工海水でもよい。天然海水に有毒プランクトンが存在する場合は、プランクトン類をろ過して用いることが好ましい。二枚貝の除毒を目的に水槽に該二枚貝を入れる場合は、通常の養殖生産に用いる生育状態と異なり高飼育密度となり、酸素が不足しがちである。そのような場合は、強制通気により酸素を供給することが好ましい。また、本発明の人工デトリタスは常時飼育水中に均一分散するように調製されているが、さらに均一に分散させるために飼育水を攪拌羽根や気泡循環により攪拌することが好ましい。人工デトリタスは、毎日1回から2日に1回の割合で、貝重量(貝殻の重量を除く)の1〜20%、好ましくは2〜10%の割合で供給する。海水は必要に応じて交換するのが好ましい。このように人工デトリタスを与えることにより毒化した二枚貝では、1〜3週間で目的のレベルまで毒量を低減することができる。
【0027】次に実施例を示す。
【0028】
【実施例】
実施例1ホタテ貝の養成年齢、通気攪拌の程度、供試飼料のサイズの3要因を比較検討するため以下の実験を行った。生きたホタテ貝の殻長、約3cm、7cm、15cm、の3種を各10個ずつを1組として殻長の半分の目合いのステンレス篭に収容し、直径40cmの内容積約60リットルの円筒水槽の中央に吊下げ、槽底よりの通気を毎分3、30及び60リットルになるように多孔質スパージャーを用いて通気攪拌した。
【0029】人工デトリタスとして乾燥クロレラ粉末(協和醗酵工業社製)2重量部、イカミール(協和醗酵工業社製)4重量部、魚粉(ホワイトフィッシュミール、日本水産社製)1重量部、ラード・魚油混合物2重量部、ミネラル混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)、ビタミン混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)、ベーターカロチン(ロシュ社製)各0.1重量部、カゼイン蛋白質(トーメン社製)0. 7重量部、合計10重量部からなる組成の材料を微粉砕(200メッシュ以下)混合したものに0.7重量部の水分を与えて、加熱押出成形機(ウエンガー社製)にて110℃、2.5kg/cm2 の加熱・加圧下で、押出速度10cm/分、押出径3mmφにて押出加熱成形した後、再度ハンマーミル粉砕機(佐竹製作所)にて300rpmの条件で粉砕し、これを篩分けして、1〜6μm、6〜30μm、30〜60μm、60〜100μm、100〜200μmの5段階に分別して試験に供した。この組成中ベーターカロチンは摂餌の有無を肉眼で容易に検出するための指標とした。
【0030】供試貝を予め3日間ろ過自然海水を用い上記試験水槽で飼育し、供試貝の中腸腺が空であることを剖検によって確かめた後、上記供試人工デトリタスを各区とも浮遊分散するに充分と思われる量を毎日与え、7日後に供試貝を取り上げ、中腸腺内の人工デトリタス量を肉眼で比較した。水槽の水温は15℃とし、換水は2日毎に行なった。また換水時に槽底残存人工デトリタス量を調べ水流による分散の良否の参考とした。各粒径の人工デトリタスの摂取度合いの結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【0032】第1表は、1〜200μmの範囲の人工デトリタスが摂取されていることを示す。
【0033】実施例2イカミール(協和醗酵工業社製)70重量部、大豆粕(昭和産業製)19重量部、ラード6重量部、イカ肝油3重量部、ミネラル混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)0.9重量部、ビタミン混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)1重量部及び安息香酸エステル0.1重量部からなる組成の材料を微粉砕(200メッシュ以下)混合したものに適量の水分を与えて、スプレードライヤー(ヤマト理化学製)にて、スプレー圧3.5kg/cm2 、ノズル径3.5mmφにて微粉化しこれを篩分けして、6〜100μmの人工デトリタスを得た。この人工デトリタスの比重は1.05、水中での減量率は24時間で10%であった。
【0034】実施例3魚粉(ホワイトフィッシュミール、日本水産社製)70重量部、馬鈴薯澱粉(ホクレン製)19重量部、トウモロコシ油(昭和産業製)5重量部、イカ肝油4重量部、ミネラル混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)1重量部、ビタミン混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)0.9重量部及び安息香酸エステル0.1重量部からなる組成の材料を微粉砕(200メッシュ以下)混合したものに適量の水分を与えて、加熱押出成形機にて押し出し成形後、再度粉砕し、これを篩分けして、6〜100μmの人工デトリタスを得た。この人工デトリタスの比重は1.20、水中での減量率は24時間で10%であった。
【0035】実施例4血粉70重量部、米粉19重量部、イカ肝油(理研ビタミン製)9重量部、ミネラル混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)1重量部、ビタミン混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)1重量部及び安息香酸エステル0.1重量部からなる組成の材料を微粉砕(200メッシュ以下)混合したものに適量の水分を与えて、加熱押出成形機にて押し出し成形後、再度粉砕し、これを篩分けして、6〜100μmの人工デトリタスを得た。この人工デトリタスの比重は1.18、水中での減量率は24時間で10%であった。
【0036】実施例5殻長7cm前後のホタテ貝各100個体ずつを6個の飼育篭に収容し、篭を内容積300リットルの円筒水槽6基に一個ずつ吊り下げその水中重を計測した。海水温度は15℃とし、各水槽とも自然海水を砂ろ過器とミリポアフイルターの2段ろ過して供給し、換水は5日毎とした。通気量は毎分60リットルとし、槽底の数カ所より噴気供給し、気泡攪拌による人工デトリタスの分散浮遊と酸素の供給を行った。実施例2、実施例3、実施例4で製造した人工デトリタスを一日おきに貝重量(貝殻の重量を除く)の5〜10%を目安に供給した。人工デトリタスを供給して10日後の飼育貝の水中重を計測し、体重増化率を求めた。対照として、米粉及びコーンスターチを10〜100μmに選別した飼料を用いて同様の試験を行った。結果を第2表に示す。
【0037】
【表2】

【0038】実施例6乾燥クロレラ粉末(協和醗酵工業社製)3重量部、イカミール(協和醗酵工業社製)4重量部、魚粉(ホワイトフィッシュミール、日本水産社製)1重量部、ラード1重量部、ミネラル混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)0.1重量部、ビタミン混合物(ハルバー処方、河合製薬社製)0.1重量部、カゼイン蛋白質(トーメン社製)0. 8重量部、合計10重量部からなる組成の材料を微粉砕(200メッシュ以下)混合したものに適量の水分を与えて、加熱押出成形機にて押し出し成形後、再度粉砕した。さらにトウモロコシ蛋白(ゼイン)5%を含むアルコール溶液に浸漬し、直ちに風乾した。これを篩分けして、6〜100μmの人工デトリタスを得た。この人工デトリタスの比重は1.17、水中での減量率は24時間で5%であった。
【0039】実施例7麻痺性貝毒に汚染されている殻長10cm前後のホタテ貝各100個体ずつを6個の飼育篭に収容し、篭を内容積300リットルの円筒水槽6基に一個ずつ吊り下げた。海水温度は15℃、10℃、の二段階とし、各水槽とも自然海水を砂ろ過器とミリポアフイルターの2段ろ過して供給し、換水は4日毎とした。通気量は毎分100リットルとし、槽底の数カ所より噴気供給した。試験区には、実施例6で製造した人工デトリタスを用いた。人工デトリタスは一日おきに貝重量(貝殻の重量を除く)の5〜10%を目安に供給し、二日毎に槽底に残っている人工デトリタスをサイホンで回収した。一方対照区は無供給区と市販の淡水産クロレラを供給する区の二区とした。淡水産クロレラの粒径は3〜5μmであり、供給量は海水1ml当たり1×109 個体とした。試験の期間は10日とし、二日毎に貝毒の残存量の測定を行った。貝毒の測定は毎回10個体の貝を各槽から無差別にサンプリングし、貝の重量(貝殻を除く)を測定した後その中腸腺を集めてホモゲナイズして試料とし液体クロマトグラフイーを用いた大島の分析法[ジャーナル・オブ・エイオーエイシー・インターナショナル(J. AOAC International ),78,528(1995)]に準拠してサキシトキシン類を分別定量し、各換算値を乗じてマウスユニット(MU)に換算し、貝殻を除く貝1g当たりの毒量を求めた。結果を第3表に示す。
【0040】
【表3】

【0041】第3表より明かなように人工デトリタス区は対照区をはるかに上回る貝毒の減少が認められ人工デトリタス供給の効果が確認された。また貝毒の減少量は水温によってかなり変化するが、その傾向は一定していて人工デトリタス供給の効果は明瞭であり、毒性値は、温度10℃のとき10日目以降に、温度15℃のとき8日目以降に規制値以下に減少した。
【0042】実施例8下痢性貝毒に汚染されている殻長7cmのホタテ貝を各100個体ずつ飼育篭に収容し、実施例7と同様の設備、方法を用いて貝毒の除去試験をおこなった。試験区に用いた人工デトリタスとしては実施例1に用いた試験用人工デトリタスの組成から乾燥クロレラ3重量部を脱脂大豆粉末3重量部に変更しベータ−カロチン0.1重量部を除いた汎用の材料による人工デトリタスとした。製法は実施例1と同様で、この製品の6〜100μmの粒径区分を試験に用いた。一方対照区は無供給区と市販の淡水産クロレラ区の二区とした。毒量の測定は毎回10個体の貝を各槽から無差別にサンプリングし貝の重量(貝殻を除く)を測定した後、その中腸腺を集めてホモゲナイズして試料とし、液体クロマトグラフイーを用いて分析を行った。定量手法はリー(J. S. Lee )の分析法[アグリカルチャル・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Chem.),51,877(1987)]に準拠し、オカダ酸とジノフィシトキシンを分別定量し各換算値を乗じてマウスユニット(MU)に換算し、貝殻を除く貝1g当たりの毒量を求めた。結果を第4表に示す。
【0043】
【表4】

【0044】第4表より明かなように人工デトリタス区は対照のクロレラ区、無供給区よりも顕著に貝毒の減少が生じ人工デトリタス供給効果が認められた。また貝毒の減少する傾向は水温によって異なり高水温の方が速かった。人工デトリタス区では、毒性値は、温度10℃のとき10日目以降に、温度15℃のとき6日目以降に規制値以下に減少した。
【0045】実施例9下痢性貝毒に汚染されている殻長12cmのホタテ貝を用いて、実施例8と同様に試験し、貝殻を除く貝1g当たりの毒量を求めた。結果を第5表に示す。
【0046】
【表5】

【0047】第5表より明かなように人工デトリタス区は対照のクロレラ区、無供給区よりも顕著に貝毒の減少が生じ人工デトリタス供給の効果が認められた。また貝毒の減少する傾向は水温によって異なり高水温の方が速かった。人工デトリタス区では、毒性値は、温度10℃のとき10日目以降に、15℃のとき8日目以降に規制値以下に減少した。
【0048】実施例10麻痺性貝毒に汚染されている殻長8cm前後のマガキ各100個体ずつを6個の飼育篭に収容し、篭を内容積300リットルの円筒水槽6基に一個ずつ吊り下げた。海水温度は15℃、10℃、の二段階とし、各水槽とも自然海水を砂ろ過器とミリポアフイルターの2段ろ過して供給し、換水は4日毎とした。通気量は毎分100リットルとし、槽底の数カ所より噴気供給した。試験区には、実施例6で製造した人工デトリタスを用いた。人工デトリタスは一日おきに貝重量(貝殻の重量を除く)の5〜10%を目安に供給し、二日毎に槽底に残っている人工デトリタスをサイホンで回収した。一方対照区は無供給区と市販の淡水産クロレラを供給する区の二区とした。淡水産クロレラの粒径は3〜5μmであり、供給量は海水1ml当たり10億個体とした。試験の期間は10日とし、二日毎に貝毒の残存量の測定を行った。貝毒の測定は毎回10個体の貝を各槽から無差別にサンプリングし、貝の重量(貝殻を除く)を測定した後その可食部全体を集めてホモゲナイズして試料とし液体クロマトグラフイーを用いた大島の分析法[ジャーナル・オブ・エイオーエイシー・インターナショナル(J. AOAC International ),78,528(1995)]に準拠してサキシトキシン類を分別定量し、各換算値を乗じてマウスユニット(MU)に換算し、貝殻を除く貝1g当たりの毒量を求めた。結果を第6表に示す。
【0049】
【表6】

【0050】第6表より明かなように人工デトリタス区は対照区をはるかに上回る貝毒の減少が認められ、8日目には出荷規制値以下になり、人工デトリタス供給の効果が確認された。
【0051】
【発明の効果】本発明により、有毒プランクトンを摂取することにより毒化してしまった二枚貝の含有する毒を除去することができる。
【出願人】 【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和醗酵工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月30日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−46617
【公開日】 平成11年(1999)2月23日
【出願番号】 特願平9−203687