| 【発明の名称】 |
羽化前甲虫の飼育床および飼育方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】藤本水石
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土ないし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中にキノコ種菌を接種し菌糸を育成させた羽化前甲虫の飼育床において、溜水除去孔を容器底部に穿設することなく、吸湿手段を前記羽化前甲虫飼育床中の容器内下方に備設したことを特徴とする羽化前甲虫の飼育床。 【請求項2】植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土ないし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中にキノコ種菌を接種し菌糸を育成させた羽化前甲虫の飼育床において、該羽化前甲虫飼育床中に、塊状ないしチップ状腐朽木ないし木質植物遺体を埋設したことを特徴とする羽化前甲虫の飼育床。 【請求項3】吸湿手段が、培地充填容器の下部ないし底部に埋設された、吸湿性に富む多孔性木質材であることを特徴とする請求項1記載の羽化前甲虫の飼育床。 【請求項4】吸湿性に富む多孔性木質材が、羽化前甲虫飼育床に埋設される塊状ないしチップ状腐朽木ないし木質植物遺体であってこれらを乾燥させたものであるとともに、該乾燥した状態の塊状ないしチップ状腐朽木ないし木質植物遺体が吸湿手段を構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の羽化前甲虫の飼育床。 【請求項5】多孔性木質材が、甲虫蛹室よりやや大きめの洞状部分を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の羽化前甲虫の飼育床。 【請求項6】飼育床中に接種されるキノコ菌種が、シイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナメコ、カワラタケなどの腐朽性菌類であることを特徴とする請求項1〜5記載の羽化前甲虫の飼育床。 【請求項7】飼育される羽化前甲虫が、クワガタ類甲虫であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の羽化前甲虫の飼育床。 【請求項8】植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土ないし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中にキノコ種菌を接種し、適宜培養温度で菌糸を育成させ、このようにして製造された飼育床に、孵化後間もない甲虫幼生を移植し、適宜飼育温度で飼育する羽化前甲虫の飼育方法において、前記飼育床を請求項1、3〜5のいずれか記載の構成とし、これに請求項6記載の腐朽性菌種種菌を接種して適宜環境下で熟成、即ち菌糸を良好に育成させ、子実体の発生ないしは子実体原基形成が視認可能となった時点を飼育開始時即ち甲虫幼生移植適当時とし、請求項1、3〜5のいずれか記載の飼育床内埋設物の水分含有割合が、該飼育床内埋設物の無水状態重量比にして、飼育開始時において0.80以下、以後1ヶ月後時点において1.00以下、2ヶ月後時点において1.35以下、3ヶ月後時点において1.60以下の範囲に維持される構成としたことを特徴とする羽化前甲虫の飼育方法。 【請求項9】請求項1、3〜5のいずれか記載の飼育床内埋設物の水分含有割合が、該飼育床内埋設物の無水状態重量比にして、飼育開始時において0.15〜0.60、以後1ヶ月後時点において0.30〜0.90、2ヶ月後時点において0.35〜1.15、3ヶ月後時点において0.75〜1.50の範囲に維持される構成としたことを特徴とする請求項8記載の羽化前甲虫の飼育方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】 【0002】本発明は、羽化前甲虫の飼育床および飼育方法に関する。 【0003】昆虫、特に甲虫の中でもオオクワガタ、ノコギリワガタ、ヒラタクワガタ等は、雄の姿形が独特の魅力を持ち、高い市場性を有する。特にオオクワガタは、僅かの大きさの違いが市場価値の大きな違いに直結する。本発明は、オオクワガタを中心とする甲虫の羽化前幼生、いわゆる幼虫の飼育に使用する飼育床および飼育方法に関する。【0004】 【従来の技術】 【0005】従来より甲虫、特にクワガタ虫の幼虫の飼育には、マット飼育法、腐朽材飼育法、菌糸培養体飼育法などが行われてきた。【0006】なかでも菌糸培養体飼育法は、比較的近年に出現したものであり、菌糸培養体飼育法、すなわち植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土ないし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中にキノコ種菌を接種し菌糸を育成させたものを幼虫の飼育床として利用するものである。 【0007】 【解決すべき課題】 【0008】マット飼育法は、朽木や腐葉等を土質化させたものを飼育床マットとして使用するもので、飼育床製造コストが廉価に抑えられる反面、幼虫の生育に必要な栄養素に乏しく、良形の成虫が得られにくい、という課題があった。 【0009】腐朽材飼育法では、幼虫が硬質の餌である腐朽材を食べることが、クワガタムシの顎や雄の角の発達を助長し、小ぶりながらもがっちりとした良形のものが得られる反面、幼虫の成長に必要とされる栄養分が不足がちになり、大きな成虫が得にくく、飼育に手間がかかる点が課題とされていた。 【0010】上記2種の従来技術と比較すれば、菌糸培養体飼育法は、幼虫の必要とする栄養分が多いため、相当の体長がある大きな成虫になる。しかしその反面体幅が細く、良形とはなりにくく、また菌糸の成長が加水分解作用を伴うため、飼育床内が水分過多、云うなれば浸潤状態となり、蛹から成虫になるときに水分の浸潤により死ぬものや、飼育床の脆弱さにより蛹室が押しつぶされ、これによって成虫の奇形が多く出現するという課題があった。【0011】このような課題を解決するために従来試みられてきたことは、水分浸潤状態を改善するために、飼育床容器の底部に排水孔を穿設することであったが、この方法では排水孔より菌糸成長や幼虫の成育に有害となる雑菌が侵入しやすい、という課題があった。 【0012】本発明はこのような課題にかんがみ、甲虫特にクワガタムシ類の幼虫を、簡便な方法により、死滅或いは奇形を生じさせることなく安定して羽化させるとともに、相当の体長を有しつつも良形の成虫を得るための飼育床と飼育方法を提供することを目的とする。 【0013】 【課題解決のための手段】本発明は、上記課題解決の主要手段として、植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土ないし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中にキノコ種菌を接種し菌糸を育成させた羽化前甲虫の飼育床において、溜水除去孔を容器底部に穿設することなく、吸湿手段を前記羽化前甲虫飼育床中の容器内下方に備設した構成、並びにこのような飼育床において、塊状ないしチップ状腐朽木ないし木質植物遺体を埋設した構成としている。 【0014】上記吸湿手段は、培地充填容器の下部ないし底部に埋設された吸湿性に富む多孔性木質材、例えば羽化前甲虫飼育床に埋設される塊状ないしチップ状腐朽木ないし木質植物遺体であってこれらを乾燥させたものであれば、吸湿手段であると同時に良形の成虫を育成する課題解決手段ともなりうる。上記多孔性木質材が、甲虫蛹室よりやや大きめの洞状部分を有すれば、蛹室の保全のための課題解決の手段となりうる。 【0015】上記課題解決の手段において、飼育床中に接種されるキノコ菌種は、シイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナメコ、カワラタケなどの腐朽性菌類とされ、その飼育床にて飼育される対象となるものは、主としてクワガタ類甲虫の羽化前幼生、いわゆるクワガタムシの幼虫である。 【0016】このような課題解決手段となる飼育床にて、主としてクワガタ類甲虫、特に高い市場性を有するオオクワガタの幼虫を飼育するわけであるが、その際には、上記のヒラタケ菌種をはじめとする腐朽性菌種種菌を、後に幼虫の飼育床とする培地に接種して適宜環境下で熟成、即ち菌糸を良好に育成させ、子実体の発生ないしは子実体原基形成が視認可能となった時点で、クワガタムシ類の幼虫をこれに移植する。 【0017】上記乾燥腐朽木を典型例とする飼育床内埋設物の水分含有割合は、該飼育床内埋設物の無水状態重量比にして、飼育開始時において0.80以下、以後1ヶ月後時点において1.00以下、2ヶ月後時点において1.35以下、3ヶ月後時点において1.60以下の範囲に維持されれば、ほぼ課題解決の手段となる飼育方法となるものである。 【0018】特に望ましいのは、上記飼育床内埋設物の水分含有割合が、該飼育床内埋設物の無水状態重量比にして、飼育開始時において0.15〜0.60、以後1ヶ月後時点において0.30〜0.90、2ヶ月後時点において0.35〜1.15、3ヶ月後時点において0.75〜1.50の範囲に維持される飼育床状態である。 【0019】 【作用】一般に腐朽性菌類にあっては、菌糸の成長が進むにつれ、その生化学的作用、特に加水分解作用により培地内、即ち飼育床内にはかなりの水分が生じるが、本発明の主要作用効果を略述すれば、上述の飼育床構成、飼育方法により、生じる水分は吸湿手段に吸収されるため、飼育床内が浸潤状態となるような状況は生じにくくなるということである。 【0020】この作用につき、さらに詳述すると、腐朽していない木質材は、木の道管、仮道管中に水分を吸水できるが、木質繊維質層には、多量の水分を保持することができない。しかし腐朽が進むと木質材中に無数の間隙ができ、いわゆる多孔質となるため、吸湿力、水分保持能力は頗る良好となる。従って多孔質の木質材であれば、例えばピートモスなど、培地素材となりうる木質素材も、菌糸或いは甲虫幼生の生育に適したpH度を整え、必要に応じて硬質塊状とすれば、本発明の吸湿手段となりうる。 【0021】絶対乾燥腐朽材は、乾燥重量の4〜5倍の水分を含むことが可能であるが、腐朽が進んでいない木質材の場合、飼育床容器内で徐々に腐朽がすすみ、その生化学的作用として加水分解がともなう。そのため菌糸成長により生じる水分に加えてさらに余分な水分が生じるため、本発明の吸湿手段とするにはやや適しない。 【0022】しかし腐朽が進んだ木質材は、本発明で使用される腐朽性菌類が順調な生育を行うために必要な栄養に乏しく、腐朽の進行度もこれに応じて小さいものに留まり、余分な水分産出量は僅かなものであるため、本発明においては有効な吸湿手段となりうる。ちなみに、木質材中の菌糸体も、その内に多くの微小間隙を有するため、水分を良好に保持しうる。 【0023】本発明にて羽化前甲虫の飼育床となるものの典型例は、少なくとも2種類挙げることが可能である。 【0024】その第1は、木粉に添加栄養剤として小麦粉、ふすま、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等を加え適度な水分で加湿し培地とするものである。 【0025】本発明で用いられる腐朽材には、ナラ、クヌギ、カシ、シイ、シデ、ブナ、エノキなどの広葉樹の原木に、ヒラタケ、シイタケ、エノキタケ、ナメコ、カワラタケ他の腐朽性菌を接種し、これら菌類の菌糸が木材中に十分に生育し腐朽度が進んだもの、望むらくは、菌類子実体を1〜数回腐朽材中より発生させ収穫を経たものを用いるものがよい。このような腐朽度の進んだ木質材、いわゆる腐朽材を乾燥させ、腐朽材中の水分含量が腐朽材乾燥重量比70〜90パーセント以下にしたものを使用する。 【0026】このようにして得られた腐朽材を容器に入る大きさに切り、容器の下方に置設し、その側面、上面に上記培地を充填する。本発明飼育床の飼育箱となる容器は、フィルターの付いた耐熱状のものが望ましい。加熱殺菌・冷却後に上記培地に本発明で使用される腐朽性菌類種菌を接種し、適宜環境下で菌糸培養を行い50〜120日前後経過後、子実体或いは子実体原基が視認される程度に菌糸生育が進んだ時点で、これを羽化前甲虫の飼育床として使用する。。【0027】第2の方法は、前記培地で培養した菌をそのまま使用するものである。腐朽材も前記第1の方法のものと同様に乾燥腐朽材を使用する。ここで用いられる腐朽材は、培地とは別に加熱殺菌しておき、冷却後無菌室内で滅菌した容器に別に殺菌した乾燥腐朽材を下部に入れ、その側面・上部に菌糸生育の進んだ菌糸塊状の培地を充填し、さらに20〜30日間培養期間経過後の時点で、これを羽化前甲虫の飼育床として使用する。【0028】羽化前甲虫の前期幼生、いわゆる幼虫は、上記飼育床に移植され、環境条件等を生育に適したものに整えてやると、飼育床中に豊富に存在するキノコ菌糸を食し、順調に成長してゆく。キノコ菌糸には、幼虫の成長に必要な栄養分が多量に含まれているからである。 【0029】幼虫生育過程においても、キノコ菌糸はその成長に伴う生化学的作用として、木粉や澱粉を加水分解し、最終生成物である水を大量に産出し、容器内に水過飽和の状態、いうなれば浸潤状態を現出させる。このような水浸潤状態下においては、甲虫の幼虫は、蛹〜成虫になる過程で羽化不全、或いは呼吸不全、病原微生物の繁殖等の原因で死んでしまうことが多い。 【0030】本発明の発明者は、このような水過飽和、浸潤状態に陥らないためにはどのようにすればよいか、また甲虫の幼虫が順調に生育するための飼育床の湿潤状態環境はいかようなものか、ということにつき研究を重ねた結果、乾燥した腐朽材を菌糸培養体の下部に置き、飼育床内の生化学的変化により作り出された水分を乾燥腐朽材に吸収させることにより水過飽和を解決することに想到し、かつこの乾燥腐朽材をきのこ菌培養体と一体化させ、その腐朽材の含有水分がほぼ70〜90重量パーセント以下であれば、幼虫飼育の生理環境を保ち、幼虫の死滅を防止しうることを発見した。この発見を産業上利用可能な発明として完成させたのが、本発明である。 【0031】乾燥腐朽木を典型例とする飼育床内埋設物の水分含有割合は、該飼育床内埋設物の無水状態重量比にして、飼育開始時において0.80以下、以後1ヶ月後時点において1.00以下、2ヶ月後時点において1.35以下、3ヶ月後時点において1.60以下の範囲に維持されれば、ほぼ上記発見の内容に合致するものであり、理想的には、飼育床内埋設物の水分含有割合が、該飼育床内埋設物の無水状態重量比にして、飼育開始時において0.80以下、以後1ヶ月後時点において1.00以下、2ヶ月後時点において1.35以下、3ヶ月後時点において1.60以下の範囲に維持されることとすべきである。このような飼育床環境の維持は、室温域、飼育床容器の大きさ、飼育床となる培地の量を適宜選択すれば、容易かつ簡便になしうるものである。この吸湿手段は、本発明で典型的に使用される例は、塊状ないしチップ状の乾燥腐朽材であるが、このような硬質の木質材は、飼育床内の吸湿手段としての作用を有するのみならず、さらに第2の顕著な効果を奏するものである。このような硬質木質材は、幼虫の成長に必要な栄養素は乏しいものの、幼虫が好んで食するものであり、また腐朽材中にキノコ菌糸が縦横に成長するため、一石二鳥の効果がある。 【0032】またこのような効果のみならず、さらに顕著な効果として、幼虫がこのような塊状ないしチップ状腐朽木ないし木質植物遺体、すなわち硬質の木質材を食すれば、幼虫の摂食運動量も増加し、顎部や体幅の発達も良好となるため、羽化後成虫の角や顎の形成が頗る良好となる。その結果、天然産の昆虫に勝るとも劣らぬ角や顎を有し相当の体長と広い体幅を兼ね備えた立派な成虫が得られる。【0033】このようにして、飼育床内の湿潤状態環境が整備されれば、培地が脆弱化せず、菌糸の成長による培地内の物理的変動、或いは運搬時に生じる培地内の物理的変動もおさえられるため、羽化前甲虫の後期幼生、即ち蛹の過程において蛹室への衝撃や圧迫が抑止され、従来生じがちであった羽化後成虫の奇形出現度合いも減少する。 【0034】クワガタムシ等の甲虫の幼虫は、本能的に上記のような蛹室への有害な衝撃が蛹期に加えられることを回避しようと、従来例においては一般に蛹室を飼育箱壁面などの硬質部分に当接させて形成することが多いが、本発明では腐朽木などの硬質木質材が、蛹室よりやや大きめの洞状部分を備えたものであれば、成虫の奇形の原因となる物理的衝撃も洞状部分の内部に加えられることが少なく、幼虫にとっては絶好の蛹室形成場所となる。 【0035】 【実施例】 (第1実施例)本実施例で使用の飼育床内埋設腐朽木については、直径6〜7センチのナラの原木をシイタケの榾木として使用し、これにシイタケ菌を植菌し、植菌後16カ月経過後、4回浸水発生を行い、このようにして十分腐朽腐朽度の進んだもの(含水率50〜60%)を長さ5センチに輪切りしたものを使用し、これを乾燥手段を用いて乾燥させ、体乾燥重量含水量比率を0.25前後とした。 【0036】本実施例飼育床の下地となる培地については、ナラ:クヌギ=1:1の木粉に、10%小麦粉と5%ふすま、0.05%グルタミン酸ナトリウムを加え水分量が60%になるように構成した。耐熱性のある1リットルポリプロピレン製容器の下部に、上記ナラ榾木を乾燥させた乾燥腐朽材を置設し、その側面、上部に上記培地を充填して加熱殺菌、冷却後、ヒラタケ菌を接種し、適宜環境下で2ヶ月間培養したものを本実施例飼育床として使用した。図1は、本実施例の幼虫飼育中の態様を示す透視模式図である。 【0037】 【表1】 【0038】 【表2】 【0039】このような構成の本実施例飼育床につき、飼育床内に埋設された乾燥腐朽材の水分含有割合の推移を検証したのが表1のグラフである。表2のグラフは、本実施例飼育床との比較の上で、非乾燥腐朽材を埋設した飼育床の腐朽材水分含有割合の推移を併せて検証してみたものである。温度環境は、いずれも23℃としている。 【0040】表1、表2に示されるように、飼育床内は菌糸生育による加水分解作用により、水分が生じ、腐朽材がこの産出水分を吸収していく過程が明確に認められる。表1に示されるように、乾燥腐朽材埋設群は、飼育床として完成化後ほぼ6ヶ月間、良好な吸湿手段となることを示し、6ヶ月後の時点においても飼育床内の目立った浸潤状態は認められなかった。 【0041】これに対し非乾燥腐朽材埋設群は、飼育床として完成化後4ヶ月の時点より吸水能力が低下していく過程が確認され、6ヶ月後においてはほぼ過飽和状態となり、このような水分過飽和状態においては、飼育床内の過剰水分の浸潤水位上昇が明確に認められた。 【0042】本実施例飼育床1は、完成品化時点においては、図1に示されるように、培地素材2、埋設された乾燥腐朽木3および生育したヒラタケのキノコ菌糸4aより構成される。乾燥腐朽木3は、洞状部3aを備えている。また飼育床1の表面にはヒラタケの子実体原基4bの形成が認められる。 【0043】この飼育床1は、広口瓶状の耐熱性ポリプロピレン製1リットル容器である飼育容器5に8分目より9分目辺りまで充填され、その飼育床下方には乾燥腐朽材3が置設されている。飼育容器5は、フィルタ付きの蓋6を備えている。 【0044】この飼育床に移植された羽化前甲虫幼生は、コクワガタの幼虫Sである。コクワガタの幼虫に限らず、クワガタムシ類の幼虫は、硬質木質材を好んで食するため、図1に示されるように腐朽木3の内部にひそんでいることが多い。しかしヒラタケ菌糸4は、その培地素材2とともに、コクワガタ幼虫Sの優良な餌となるため、コクワガタ幼虫Sは、飼育床内を縦横に動き回る。 【0045】その他の飼育環境、温度、暗度、湿度については、一般のクワガタムシ類幼虫の飼育方法に準じたものである【0046】このような本発明の作用効果確認のための対照群には、腐朽材を埋設せず上記同様にヒラタケ菌種菌を接種し菌糸を生育させた培地のみからなるものを、2ヶ月間同様に培養し、これの従来例飼育床として使用した。 【0047】 【表3】 【0048】表3は、コクワガタ(0.3〜0.8g)羽化前前期幼生、すなわち幼虫30匹づつを、室温18℃で6ヶ月間飼育した後、蛹時の態様を示す透視模式図である図2に示されるように、洞状部3a内で蛹化させ、次に25℃に室温を上昇させ蛹Tを成虫にした結果である。但し洞状部内3aで蛹室を作るか否かは個体によって異なる。飼育容器5の壁面に蛹室を形成する例も多い。 【0049】この表3に示されるように、コクワガタ虫の生存率は、腐朽材埋設群の方が高く、また成虫の奇形出現率も低くなり、腐朽材を入れた本発明実施例群の優位性が検証された。 【0050】ただ蛹化の時点以降の飼育床表面においては、飼育床中の菌糸を幼虫が活発に食したため、図2に示されるように、子実体の形成はもはや殆ど見られないのが通常である。 【0051】(第2実施例)本実施例は、直径8〜9センチのクヌギ原木を榾木として、これにヒラタケ菌を接種し、8ヶ月間菌糸培養した後、2回ヒラタケ子実体を発生させ収穫を経たものを飼育床内埋設腐朽材とした。この腐朽材を長さ9センチに切断したもの(含水量の対腐朽材乾燥重量比0.90〜1.10)、即ち通常腐朽材と、腐朽材を同様に切断し乾燥させたもの(含水量の対腐朽材乾燥重量比0.20〜0.25)即ち乾燥腐朽材とし、吸湿手段ないし埋設木質材とした。これらの腐朽材は、殺菌後使用した。【0052】一方ヒラタケ菌の培地については、ナラ:クヌギ=1:1の木粉を用い、これに10%小麦粉と5%ふすま、0.05%グルタミン酸ナトリウムを加え、水分量が60%になるように水を添加し、これを培地とした。この培地を加熱殺菌・冷却後、ヒラタケ菌を接種して適宜環境下で2ヶ月間培養し、菌糸を生育させ、菌糸培養体とした。 【0053】この菌培養体とは別に、殺菌しておいた2.0リットルの容器へ、無菌室中で通常の腐朽材、乾燥腐朽材の2種類の上記殺菌腐朽材下部に置設し、その側面・上部に上記菌糸培養体を充填したのち、さらにこれを20日間再培養したのち羽化前甲虫幼生飼育床として使用するのが、本実施例である。これら2種類の本実施例の対照群として、腐朽材が入っていない菌培養体だけのものを作成し同様に羽化前甲虫幼生飼育床して用い、本実施例の効果検証手段とした。【0054】羽化前甲虫幼生として、本実施例では、オオクワガタの幼虫(3〜5g)各々20匹づつを、20℃の室温中で7ヶ月間飼育した後、25℃に室温を上げ飼育し蛹とさせたのち羽化させ成虫とした。その結果を記したものが表4である。このような飼育期間中、同時に容器中の水のたまり具合も観察した。【0055】なお本実施例における飼育中の飼育床及び幼虫の態様、及び蛹化の態様は実施例1に準じ、図1、図2に示されるものとほぼ同様である。云うまでもなく、蛹室は洞状部3a内に限られるものではない。 【0056】 【表4】 【0057】表4に示されるように、本実施例対照群の場合、羽化することなく死亡する例が多く見られた。また羽化を迎え成虫となっても、成虫の羽や足に奇形を有するものが多く認められた。 【0058】本実施例において、対照群、腐朽材埋設群、乾燥腐朽材埋設群のそれぞれの群について、飼育容器5中の水分のたまり具合を観察したところ、対照群の全てに、容器の中程以上に至るまで水分浸潤が視認された。通常腐朽材埋設群では、飼育容器5の中程まで水がたまっているものが20例中13例あった。これに対し乾燥腐朽材埋設群では、飼育容器5の下部に少量の水分浸潤の認められたものが7例あるのみであった。【0059】また蛹室内を観察してみると、対照群は非常に水分が多く、飼育床の脆弱さゆえに崩壊しやすいのがほとんどであったのに対し、通常腐朽材埋設群のものは、蛹室内が乾燥しているのが認められた。 【0060】このことからオオクワガタが蛹から成虫となる時期、即ち羽化の前後においては、蛹室の水分過多が、死亡率の高さや奇形発生率の高さに大きく影響するものであると推察された。【0061】 【表5】 【0062】表5は羽化を遂げたオスの成虫の全長が同サイズのものを選び、虫体の横幅(最大長の部位)を計測した結果である。両腐朽材埋設区の成虫は、横幅のあるがっちりとした成虫になることが検証された。 【発明の効果】以上詳述したように、本発明羽化前甲虫幼生の飼育床及び飼育方法によれば、甲虫特にクワガタムシ類の幼虫を、簡便な方法により、死滅或いは奇形を生じさせることなく安定して羽化させるとともに、相当の体長を有しつつも体幅のある良形の成虫を得るための飼育床と飼育方法が提供される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】592048420 【氏名又は名称】藤本 水石
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)7月11日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】中島 純一
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| 【公開番号】 |
特開平11−28036 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)2月2日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−236594 |
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