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【発明の名称】 両軸受リール
【発明者】 【氏名】生田 剛

【要約】 【課題】スプールと同芯に配置されたドラグ機構を有する両軸受リールにおいて、押圧力を抑えて制動性能を向上させる。

【解決手段】両軸受リールは、リール本体1と、ハンドル軸31を有するハンドルと、ハンドル軸31に平行に配置されたスプール軸5と、スプール4と、ドラグ機構6と、ハンドルの回転をドラグ機構に伝達する第1回転伝達機構9aとを備えている。スプールは糸巻胴部4aと糸巻胴部の両側に形成されたフランジ部4b,4cとを有している。ドラグ機構6は、スプールと同芯に配置されスプールに連動する制動円板55と制動円板に対向して圧接可能に配置され糸繰り出し方向に回転不能な摩擦円板56とを有する制動部26と、制動円板と摩擦円板とを圧接する方向に相対移動させることでスプールを制動するためのスプール軸移動機構25とを有し、制動直径がスプールの糸巻可能径の90%以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】リール本体と、前記リール本体に回転自在に支持されたハンドル軸を含むハンドル部材と、前記ハンドル軸と平行に配置されたスプール軸と、前記釣り糸を巻き取る糸巻胴部と前記糸巻胴部の両側に形成されたフランジ部とを有し、前記スプール軸に装着されたスプールと、前記スプールと同芯に配置され前記スプールに連動する制動円板と、前記制動円板に対向して圧接可能に配置され糸繰り出し方向に回転不能な摩擦円板と、前記制動円板と摩擦円板とを圧接する方向に相対移動させることで前記スプールを制動するための移動機構とを有し、前記制動円板及び摩擦円板の直径に関連する制動直径が前記スプールの糸巻可能径の90%以上であるドラグ機構と、前記ハンドル軸の回転を前記ドラグ機構を介して前記スプールに伝達するための回転伝達機構と、を備えた両軸受リール。
【請求項2】前記回転伝達機構は、前記スプール軸に支持され前記摩擦円板と一体で回転するピニオンギアと、前記ハンドル軸に回転不能に装着され前記ピニオンギアに噛み合うメインギアと、前記ハンドル軸又はそれに連動する回転部品の糸繰り出し方向の回転を禁止する逆転禁止機構とを有し、前記逆転禁止機構により前記摩擦円板を糸繰り出し方向に回転不能にする、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】前記ドラグ機構は、前記制動円板と摩擦円板とを収納する収納ケースをさらに有する、請求項1又は2に記載の両軸受リール。
【請求項4】前記制動円板は、前記スプールのフランジ部の一端面に固定されている、請求項1から3のいずれかに記載の両軸受リール。
【請求項5】前記スプールは前記スプール軸に回転自在かつ前記スプール軸とともに軸方向に移動可能に支持され、前記移動機構は、前記スプール軸を前記スプールとともに前記リール本体に対して軸方向に移動させる、請求項4に記載の両軸受リール。
【請求項6】前記制動円板は、前記スプールのフランジ部の外方に配置され、前記スプール軸に回転不能に支持されている、請求項1から3のいずれかに記載の両軸受リール。
【請求項7】前記スプールとスプール軸とを係合・離脱するクラッチ機構をさらに備え、前記スプールは前記スプール軸に回転自在かつ前記スプール軸とともに軸方向に移動可能に支持され、前記移動機構は、前記スプール軸を前記スプールとともに前記リール本体に対して軸方向に移動させる、請求項6に記載の両軸受リール。に記載の両軸受リール。
【請求項8】前記移動機構は、前記スプール軸の一端に軸方向移動不能かつ回転自在に装着されたキャップ部材と、前記リール本体に前記スプール軸回りに揺動自在に装着されたドラグレバーと、前記リール本体に回転不能に装着され前記ドラグレバーとキャップ部材との間に配置され、前記ドラグレバーの揺動により前記キャップ部材を前記軸方向の一側に移動させるカム部材と、前記スプール軸を前記軸方向の他側に付勢する付勢部材と、を有する、請求項1から7のいずれかに記載の両軸受リール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、両軸受リール、特に、レバーによりスプール軸を軸方向に移動させてスプールを制動するドラグ機構を備えた両軸受リールに関する。
【0002】
【従来の技術】両軸受リールとして、レバーによりスプール軸を軸方向に移動させてスプールを制動するレバードラグ型の両軸受リールが知られている。この両軸受リールは、1対の側板を有するリール本体と、リール本体に軸方向移動自在に支持されたスプール軸と、スプール軸に回転自在に支持されたスプールと、スプールを制動するドラグ機構と、ハンドルの回転によりスプールを回転させるための回転伝達機構とを備えている。
【0003】スプールはスプール軸とともに軸方向に移動可能である。ドラグ機構は、スプールのフランジ部の一端外側面に設けられた制動円板と、制動円板に圧接可能な摩擦円板と、スプール軸を軸方向に移動させるスプール軸移動機構とを備えている。摩擦円板は、スプール軸に回転自在に支持されており、摩擦円板にはハンドルからの回転が回転伝達機構を介して伝達される。スプール軸移動機構は、リール本体に揺動自在に支持されたドラグレバーと、スプール軸の一端に固定されたキャップ部材と、ドラグレバーとキャップ部材との間に配置されリール本体に回転不能に装着されたカム部材とを有している。カム部材には傾斜カムが形成されており、ドラグレバーを揺動させることでドラグレバーが傾斜カムに乗り上げ、カム部材がキャップ部材を押圧してスプール軸を軸方向の一方に移動させる。スプール軸の他方側への移動は、たとえば摩擦円板と制動円板との間に配置されたコイルバネの付勢力により行われる。
【0004】このような両軸受リールでは、ハンドルの回転による駆動力が、回転伝達機構を介してドラグ機構の摩擦円板に伝達され、摩擦円板と制動円板との圧接によりスプールに伝達される。このような構成のドラグ機構では、ドラグ力(制動力)の調整は、スプール軸の一端に装着されたドラグレバーを一方向に揺動させることにより行われる。ドラグレバーを一方向に揺動させるとカム部材によりスプール軸が軸方向の一方に移動し、スプールがドラグ機構に接近し、制動円板が摩擦円板に圧接される。このような両軸受リールでは、ドラグレバーの操作により、ドラグ機構の制動力を調整するとともに、制動円板と摩擦円板とを離反させてスプールを自由回転状態にする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般にこの種のドラグ機構では、制動力の大きさは圧接する2つの円板の枚数、制動力を発生させる部分の直径・面積に依存する。特に制動力を発生させる部分の直径が大きいほど同じ押圧力に対する制動トルクは大となり、面積が大であるほど摩擦力は大きくなる。しかし、前記従来のドラグ機構を有する両軸受リールでは、スプールの端面に制動円板が設けられているので、制動円板の直径、あるいは面積はスプールのサイズ(フランジ部の直径)に依存する。このため、従来の両軸受リールでは、制動面積がフランジ部の面積よりかなり小さくなり、直径が小さいスプールほど制動力が小さくなる。したがって、小径のスプールに装着されたレバードラグ機構では、大きな制動力を生じさせるためには押圧力(スラスト荷重)を大きくする必要がある。押圧力を大きくすると制動性能が低下する。たとえば、レバー操作が重くなりレバーの細かな操作による制動力の微調整を行いにくい。また、摩擦円板と制動円板との接触面の凹凸等による制動力の変動が顕著になり、ドラグ作動時の滑らかさが低下する。さらに、摩擦円板又は制動円板の耐久性が低下する。このように、特に小さい直径のスプールにおいては、大きな制動力を得ようとすると押圧力を大きくする必要があるため、制動性能を向上させるのが困難である。
【0006】本発明の課題は、ドラグ機構を有する両軸受リールにおいて、押圧力を抑えて制動性能を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明1に係る両軸受リールは、リール本体と、ハンドル部材と、スプール軸と、スプールと、ドラグ機構と、回転伝達機構とを備えている。ハンドル部材は、リール本体に回転自在に支持されたハンドル軸を含んでいる。スプール軸は、ハンドル軸と平行に配置されている。スプールは、釣り糸を巻き取る糸巻胴部と糸巻胴部の両側に形成されたフランジ部とを有し、スプール軸に装着されている。ドラグ機構は、スプールと同芯に配置されスプールに連動する制動円板と、制動円板に対向して圧接可能に配置され糸繰り出し方向に回転不能な摩擦円板と、制動円板と摩擦円板とを圧接する方向に相対移動させることでスプールを制動するための移動機構とを有し、制動円板及び摩擦円板の直径に関連する制動直径がスプールの糸巻可能径の90%以上である。回転伝達機構は、ハンドル軸の回転をドラグ機構を介してスプールに伝達するための機構である。
【0008】この両軸受リールでは、ハンドルを糸巻取方向に回転させると、回転伝達機構を介して摩擦円板が回転する。そして、その回転が制動円板を介してスプールに伝達されスプールが巻取方向に回転して釣り糸がスプールに巻き付けられる。この巻取途中で釣り糸の先端に取り付けられた仕掛けに魚がかかりドラグ機構が作動してスプールが糸繰り出し方向に回転すると、制動円板がスプールに連動して糸繰り出し方向に回転する。このとき、摩擦円板は糸繰り出し方向に回転できないので、制動円板と摩擦円板との圧接力に応じた制動力がスプールに作用する。このときの制動力は制動直径、即ち制動円板と摩擦円板とが圧接する部分の最大直径に依存する。この制動直径が、スプールの糸巻可能径、つまりフランジ部の直径の90%以上であり従来より大きいので、小さい直径のスプールであっても制動力の大きくするのに押圧力をそれほど大きくする必要がなくなり、制動性能を向上させることができる。
【0009】発明2に係る両軸受リールは、発明1に記載のリールにおいて、回転伝達機構は、スプール軸に支持され摩擦円板と一体で回転するピニオンギアと、ハンドル軸に回転不能に装着されピニオンギアに噛み合うメインギアと、ハンドル軸又はそれに連動する回転部品の糸繰り出し方向の回転を禁止する逆転禁止機構とを有し、逆転禁止機構により摩擦円板を糸繰り出し方向に回転不能にする。この場合には、糸巻取時にはハンドル軸の回転がメインギアを介してピニオンギアに伝達され、摩擦円板が回転する。一方、ドラグ機構が作動するとスプールの糸繰り出し方向への回転(逆転)により制動円板が回転し摩擦円板を回転させようとする。しかし、摩擦円板は逆転禁止機構により糸繰り出し方向の回転が禁止されているので、制動円板を介してスプールに制動力が作用する。ここでは、回転伝達機構に設けられた逆転禁止機構により摩擦円板の逆転を禁止しているので、摩擦円板に逆転禁止機構を設ける必要がなくなる。
【0010】発明3に係る両軸受リールは、発明1又は2に記載のリールにおいて、ドラグ機構は、制動円板と摩擦円板とを収納する収納ケースをさらに有する。この場合には、2つの円板が収納ケース内に配置されるので、その圧接部分に海水等が侵入しにくくなり、制動力が変動しにくい。発明4に係る両軸受リールは、発明1から3のいずれかのリールにおいて、制動円板は、スプールのフランジ部の一端面に固定されている。この場合には、制動円板を固定している側のフランジ部の直径を他方に比べて大きくすることで、制動直径を大きくすることができる。
【0011】発明5に係る両軸受リールは、発明4に記載のリールにおいて、スプールはスプール軸に回転自在かつスプール軸とともに軸方向に移動可能に支持され、移動機構は、スプール軸をスプールとともにリール本体に対して軸方向に移動させる。この場合には、移動機構によりスプール軸を軸方向の一方に移動させると、スプールに固定された制動円板が摩擦円板に圧接しその圧接力に応じてスプールが制動される。
【0012】発明6に係る両軸受リールは、発明1から3のいずれかのリールにおいて、制動円板はスプールのフランジ部の外方に配置され、スプール軸に回転不能に支持されている。この場合には、制動円板がスプールに固定されていないのでその直径がスプールの直径に依存しない。このため、2つの円板の直径を任意に設定できる。
【0013】発明7に係る両軸受リールは、発明6に記載のリールにおいて、スプールとスプール軸とを係合・離脱するクラッチ機構をさらに備え、スプールはスプール軸に回転自在かつスプール軸とともに軸方向に移動可能に支持され、移動機構は、スプール軸をスプールとともにリール本体に対して軸方向に移動させる。この場合には、スプールを自由回転状態にして釣り糸を繰り出す際に制動円板と摩擦円板とを離反させることなくクラッチ機構によりスプールとスプール軸とを遮断すればよい。このため、ドラグ機構の圧接状態を常に一定に維持でき、制動力の変動を抑えることができる。
【0014】発明8に係る両軸受リールは、発明1から7のいずれかに記載のリールにおいて、移動機構は、スプール軸の一端に軸方向移動不能かつ回転自在に装着されたキャップ部材と、リール本体にスプール軸回りに揺動自在に装着されたドラグレバーと、リール本体に回転不能に装着されドラグレバーとキャップ部材との間に配置され、ドラグレバーの揺動によりキャップ部材を軸方向の一側に移動させるカム部材と、スプール軸を軸方向の他側に付勢する付勢部材とを有している。この場合には、ドラグレバーを一方向に揺動させてカム部材によりキャップ部材を軸方向の一側に移動させると、それに応じてスプール軸が移動し制動円板と摩擦円板との圧接力が変化する。また、ドラグレバーを他方向に揺動させると、付勢部材によりスプール軸が軸方向の他側に移動し制動円板と摩擦円板との圧接力が変化する。
【0015】
【発明の実施の形態】図1及び図2において、本発明の一実施形態による両軸受リールは、レバードラグ型のものであり、内部にスプール4が配置されたリール本体1と、リール本体1の側方に揺動自在に配置されたドラグレバー2と、ドラグレバー2の下方でリール本体1に回転自在に支持されたハンドル3とを備えている。
【0016】リール本体1は、左右1対の側板11a,11b及び側板11a,11bを連結する複数の連結部12からなるフレーム10と、フレーム10を両側で覆う側カバー13a,13bとを有している。リール本体1の上部にはカウンターケース15が固定されている。カウンターケース15には、液晶表示部16や操作キー部17が設けられている。液晶表示部16はスプール4から繰り出された釣り糸先端部の仕掛けの水深を表示するものである。操作キー部17は、棚位置や表示モードの選択操作等の各種の操作を行うときに使用される。
【0017】リール本体1の内部には、図3及び図4に示すように、スプール4が設けられている。スプール4は、筒状の糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの両側に形成された大径のフランジ部4b,4cとを有している。フランジ部4b,4cは同径でありその糸巻側の曲線は中心対称の形状である。スプール4は軸受20a,20bによりスプール軸5に回転自在に支持されている。スプール軸5は、軸受21a,21bによりリール本体1に回転自在に支持されている。
【0018】スプール4のハンドル3側にはスプール4を制動するドラグ機構6が設けられている。またスプール4のドラグ機構6と逆側にはスプール4とスプール軸5とを係合・離脱するクラッチ装置7が設けられている。さらにスプール4の前方にはスプール4に釣り糸を均一に巻き取るためのレベルワインド機構8が設けられている。また、側板11bと側カバー13bとの間には、ハンドル3の回転をスプール4に伝達する第1回転伝達機構9aが設けられている。側板11aと側カバー13aとの間には、スプール4の回転に連動してレベルワインド機構8を動作させる第2回転伝達機構9bが設けられている。
【0019】側カバー13bのドラグレバー2の下方には、外方に突出する突出筒14が形成されている。この突出筒14の内部には、スプール軸5に平行にハンドル軸31が配置されている。ハンドル軸31は、図5に示すように、突出筒14の両端に配置された2つの軸受32,33により突出筒14に回転自在に支持されている。軸受32,33の間にはローラ型の第1ワンウェイクラッチ62が配置されている。第1ワンウェイクラッチ62は、ハンドル軸31の糸巻き取り方向の回転だけを許容する。またハンドル軸31には、爪式の第2ワンウェイクラッチ63も配置されている。この第2ワンウェイクラッチ63も、ハンドル軸31の糸巻き取り方向の回転だけを許容する。第2ワンウェイクラッチ63は後述するメインギア60と軸受32との間に配置されている。ここで2つのワンウェイクラッチ62,63を設けたのは、第1ワンウェイクラッチ62により逆転時の遊びを少なくし、第2ワンウェイクラッチ63によりドラグ機構6が作動したときに第1ワンウェイクラッチ62の限界を超える強い力がメインギア60を介してハンドル軸31に作用してもハンドル軸31が逆転しないようにするためである。
【0020】ハンドル3は、図3に示すように、ハンドル軸31の先端に固定されている。ハンドル3は、ハンドル軸31の先端に固定されたアーム部材40と、アーム部材40の先端に回動自在に支持された回動部材41と、回動部材41の先端に固定された把手部材42とを備えている。ドラグ機構6は、図5に示すように、スプール軸5を軸方向に往復移動させるためのスプール軸移動機構25と、制動部26とを備えている。なお、図5では、スプール軸5の上半分が最大ドラグ作動時の軸方向位置を示し、下半分がドラグ力減少位置を示している。
【0021】スプール軸移動機構25は、リール本体1の側カバー13bに回転自在に支持されたドラグレバー2と、スプール軸5の軸端に装着されたキャップ部材27と、キャップ部材27とドラグレバー2との間に配置されたカム部材28と、スプール軸5を図5左側に付勢する皿バネ29とを備えている。ドラグレバー2は、中心部に形成されたボス部2aが側カバー13bに回転自在に支持され、そこから径方向に延びるレバー部2bが側カバー13bに周方向の複数箇所で係止されるように構成されている。キャップ部材27は、スプール軸5の軸端を覆うように配置されたダイヤル部27aと、ダイヤル部27aとビス43により締結された軸支部27bとから構成されている。軸支部27bは、スプール軸5の軸端にねじ止めされたナット44との間でスラスト軸受45を挟んで配置されており、スプール軸5に軸方向移動不能かつ回転可能に支持されている。また、軸支部27bの先端は側カバー13bのスプール軸5貫通部分に嵌め込まれている。この嵌め込み部分において側カバー13bとの間にはOリング49が装着されている。この結果、スラスト軸受45はOリング49で封止された水密空間内に配置されることになり、海水等による浸食を受けにくくなる。
【0022】カム部材28は、側カバー13bに回転不能かつ軸方向移動自在に支持されている。カム部材28は、ドラグレバー2との接触面に斜面カムを有しており、ドラグレバー2の、たとえば図2反時計回りの揺動により図5の軸方向左側に移動しドラグ力が弱くなる。カム部材28はキャップ部材27の軸支部27bとネジにより連結されており、キャップ部材27を回動させることでスプール軸5の軸方向の初期位置を設定可能である。これにより、ドラグレバー2の揺動開始位置におけるドラグ力を調整できる。なお、この実施形態では、軸支部27bとカム部材28とは逆ネジで連結されている。すなわち、図2において、キャップ部材27を反時計回りに回して軸支部27bとカム部材28との螺合が進むにつれてスプール軸5は、図5の左側へ進み、初期ドラグ力は弱くなる。これは、ドラグレバー2の操作の方向とキャップ部材27の操作の方向とを統一し、釣り人が違和感なくドラグ調整できるようにするためである。
【0023】カム部材28とキャップ部材27との間には第1発音機構50が配置されている。第1発音機構50は、カム部材28の端面に球面の一部をなすように周方向に間隔を隔てて多数形成された凹穴51と、凹穴51に接触可能に配置された音出しピン52と、音出しピン52を凹穴51側に付勢するコイルバネ53とを有している。音出しピン52は先端が球状のキノコ型の軸であり、キャップ部材27のダイヤル部27aと軸支部27bとの間に連通して形成された取付穴54に軸方向移動自在に装着されている。コイルバネ53は、音出しピン52の軸部の外周側に圧縮状態で配置されている。
【0024】制動部26は、スプール4の外方に配置されている。制動部26は、スプール軸5に回転不能に装着されかつスプール軸5とともに軸方向に移動可能な制動円板55と、制動円板55に対向して配置された摩擦円板56と、摩擦円板56を覆う薄肉のカバー円板57とを有している。制動円板55は、スプール4の糸巻可能径であるフランジ部4bの径より大きく、かつ外周部に筒状部55bを有している。この筒状部55bにカバー円板57が回転不能に連結されている。したがってドラグ機構6の外径は、スプール4の糸巻可能径より大きい。摩擦円板56は、制動円板55より小径であり、スプール軸5に軸受59により回転自在に支持されている。摩擦円板56は、後述するピニオンギア61に内周面で噛み合っている。また、摩擦円板56は、ピニオンギア61を介してリール本体1により図5の軸方向右方への移動が規制されている。
【0025】制動円板55と摩擦円板56とは、対向面に互いに圧接可能に装着されたほぼ同径のドーナッツ状の摺動ディスク55a,56aをそれぞれ有している。摺動ディスク55aは、たとえばカーボン繊維の織布にフェノール樹脂等の耐熱樹脂を含浸させた繊維強化樹脂等の耐熱合成樹脂製である。摺動ディスク56aは、たとえばステンレス等の耐熱耐食金属製である。なお、制動部26の制動直径(制動円板55と摩擦円板56とが圧接する部分の最大直径、この実施形態では摺動ディスク55aと摺動ディスク56aのうちの小さい方の外径)はスプール4の糸巻可能径の90%以上であり、従来より大きくなっている。
【0026】このため、同じ糸巻可能径のスプールを装着した従来のリールに比べて大きな制動力が得られるようになっている。ここで、スプール4の糸巻可能径とはスプール4に最大限釣り糸を巻き付けたときの外径であり、フランジ部4b,4cのうち小さい方のフランジ部の外径のことである。この実施形態ではフランジ部4b,4cは同径であるので、フランジ部4b,4cの外径である。
【0027】また、制動直径が大きいため大きな制動力が得られるので、押圧力を大きくする必要がなくなり、制動性能が向上する。たとえば、レバー操作が軽くなりドラグ力を微調整しやすい。また、摩擦円板56と制動円板55との接触面の凹凸等による制動力の変動が少なくなりドラグ作動時の糸の繰り出しが滑らかになる。また、摩擦円板56又は制動円板55の耐久性が向上するとともにハンドル3の回転が軽くなる。
【0028】カバー円板57は、制動円板55に外周側で回転不能に連結されかつ制動円板55との間で摩擦円板56を覆うように配置されている。摩擦円板56とカバー円板57との間は中央部においてOリング58で封止されており、摩擦円板56側に外部から海水等の液体や異物が侵入しにくいようになっている。カバー円板57と摩擦円板56との間には、ドラグ作動時(制動円板55と摩擦円板56との相対回転時)に発音する第2発音機構64が装着されている。第2発音機構64は、カバー円板57の端面に周方向に間隔を隔てて多数形成された矩形状の凹穴65と、凹穴65に接触可能に配置された音出しピン66と、音出しピン66を凹穴65側に付勢するコイルバネ67とを有している。音出しピン66は先端が球状のキノコ型の軸であり、摩擦円板56の摺動ディスク56aの装着部より中心側に形成された取付穴56bに軸方向移動自在に装着されている。この取付穴56bは、図6に示すように、カバー円板57側に開口しており、摩擦円板56の軸方向に対して回転方向Rの上流側に角度α傾けて形成されている。この角度αは、10度〜40度の範囲が好ましい。この結果、音出しピン66もこの角度α傾斜して摩擦円板56に装着される。コイルバネ67は、音出しピン66の軸部の外周側に圧縮状態で配置されている。ここでは、制動円板55ではなく比較的肉厚が薄いカバー円板57に音出しピン66が衝突するので、歯切れの良い音が発生することになる。また、取付穴56bが斜めに形成されているので、音出しピン66のストロークを維持して制動円板55の厚みを薄くすることできる。
【0029】第1回転伝達機構9aは、図5に示すように、ハンドル軸31の他端に固定されたメインギア60と、スプール軸5の外周側に回転自在に装着されメインギア60と噛み合うピニオンギア61とを有している。ピニオンギア61は制動部26の摩擦円板56に回転不能に係止されている。この結果、ハンドル3からの回転はメインギア60、ピニオンギア61、摩擦円板56を介して制動円板55に伝達され、制動円板55からスプール軸5に伝達される。
【0030】クラッチ装置7は、図7に示すように、スプール軸5とスプール4とを係合・離脱するクラッチ機構69と、クラッチ機構69を係脱操作するためのクラッチ操作部70とを備えている。クラッチ機構69は、クラッチ部材71とクラッチ板82とを有している。クラッチ部材71はほぼ筒状の部材であり、スプール軸5に回動不能かつ軸方向移動自在に支持されている。クラッチ部材71の内周面には矩形の係合孔71aが形成されており、スプール軸5の外周面に形成された面取り部5aに軸方向移動自在かつ回転不能に係合している。クラッチ部材71の外周面には、後述するクラッチヨーク77の当接部77aに係止されるリング状の係止溝71bが全周にわたって形成されている。
【0031】クラッチ板82は、スプール4のフランジ部4bの端面に装着された円板状の部材である。クラッチ板82の中心部には十字状のクラッチ係止孔82aが形成されている。また、クラッチ部材71の右端面には、このクラッチ係止孔82aに噛み合うクラッチ突起71cが直径に沿って2か所形成されている。クラッチ操作部70は、左側の側板11aに固定された固定板11cに揺動自在に支持されたクラッチレバー75と、側板11aに回動自在に支持されたリング状のクラッチカム76と、クラッチカム76により軸方向に移動するクラッチヨーク77とを有している。
【0032】クラッチ操作レバー75は、リール本体1の外周側に配置された把手部72と、把手部から内方に延びるレバー部73とを有している。このレバー部73が側板11aに回動自在に支持されている。レバー部73の先端はクラッチカム76の外周面に形成された係合凹部76aに係止されている。このクラッチ操作レバー75が揺動することでクラッチカム76が回動する。レバー部73は、回動部分で略周方向に延びるトグルレバー74を有している。トグルレバー74の先端にはトグル部78が回動自在に連結されている。トグル部78は内部にトグルバネを有するものであり、クラッチ操作レバー75が、図7に示すクラッチ係合位置とそれから時計回りに揺動したクラッチ離脱位置との両位置でその状態を保持するために設けられている。
【0033】クラッチカム76は、外周面に前述した係合凹部76aを有している。また、クラッチヨーク77側に2つの傾斜カム部76b,76cを有している。傾斜カム部76b,76cは図7軸方向左方に突出して形成され、それぞれクラッチヨーク77に当接してクラッチヨーク77をスプール軸5の軸方向左方に移動させる。クラッチヨーク77は、スプール軸5の外周側に配置された半円弧状の当接部77aと、当接部77aの両端から径方向外方に延びる支持部77bとを有している。当接部77aは、クラッチ部材71の係止溝71bに係止される。支持部77bは、ガイド軸80に軸方向移動自在に支持されている。ガイド軸80は、固定板11cから突出しており、スプール軸5を挟んで対称に、かつスプール軸5と平行に配置されている。ガイド軸80の外周側にはリターンバネ81が圧縮状態で巻回されており、クラッチヨーク77はリターンバネ81により図6右方(クラッチ係合方向)に付勢されている。
【0034】このクラッチ装置7では、クラッチ操作レバー75を図7時計回りに揺動させクラッチカム76を反時計回りに回動させることで、クラッチヨーク77がクラッチカム76の傾斜カム部76b,76cに乗り上げ、クラッチカム76がクラッチヨーク77を押圧する。これにより、クラッチヨーク77が軸方向外方に移動し、クラッチ部材71が軸方向外方に移動してクラッチ係止孔82aとクラッチ突起71cとの係合が解除されクラッチ機構69が離脱状態になる。逆に、クラッチ操作レバー75を図7反時計回りに揺動させクラッチカム76を時計回りに回動させることで、クラッチヨーク77がクラッチカム76の傾斜カム部76b,76cから離脱する。この結果、リターンバネ81の押圧力によりクラッチヨーク77が軸方向内方に移動しクラッチ部材71が軸方向内方に移動してクラッチ係止孔82aとクラッチ突起71cとが係合しクラッチ機構69が係合状態になる。
【0035】レベルワインド機構8は、図4に示すように、スプール4の前方で側板11a,11bに回転自在に支持された螺軸90と、螺軸90の周囲に螺軸90に沿って配置されたガイド部材91と、ガイド部材91に案内される釣り糸ガイド92とを有している。螺軸90は側板11aと側カバー13aとの間に配置された第2回転伝達機構9bによりスプール4に連動して回転する。螺軸90の外周面には、交差した螺旋状溝90aが所定長さにわたって形成されている。釣り糸ガイド92には、螺軸90の螺旋状溝90aに係合する係合部材(図示せず)が装着されており、係合部材が螺旋状溝90aに係合することで、釣り糸ガイド92は螺軸90の回転に応じてスプール軸5に沿って往復移動する。釣り糸ガイド92には、図3に示すように釣り糸を案内する長円状の硬質リング98が装着されている。
【0036】第2回転伝達機構9bは、スプール4のフランジ部4bの端面においてクラッチ板82の外側に装着された第1ギア95と、第1ギア95に噛み合うように側板11aに装着された第2ギア96と、螺軸90の一端に装着され第2ギア96に噛み合う第3ギア97とから構成されている。ここではスプール4の回転が3つのギア95〜97を介して螺軸90に伝達され、釣り糸ガイド92がスプール4に連動して往復移動する。
【0037】このように構成された両軸受リールにおいて、仕掛けを下ろす際には、クラッチ操作レバー75を操作してクラッチ装置7を離脱状態にする。この結果、スプール4は自由回転状態になり、仕掛けの自重で釣り糸が繰り出される。このとき、ドラグレバー2の位置がどのような位置にあってもクラッチ操作レバー75を離脱位置に操作するだけでクラッチ機構69が離脱状態になり、スプール4を簡単に自由回転状態にすることができる。
【0038】液晶表示部16により仕掛けが所定の水深に到達したこと確認するとクラッチ操作レバー75を係合位置に操作してクラッチ機構69を係合状態にする。クラッチ機構69を係合状態にすると、ワンウェイクラッチ62,63によりハンドル軸31の糸繰り出し方向の回転が禁止されているので、ドラグ機構6及び第1回転伝達機構9aを介してスプール軸5の逆転が禁止され、糸の繰り出しが止まる。この状態で仕掛けに魚がかかると魚の引きによりスプール4が糸繰り出し方向に回転しようとする。このとき、ドラグレバー2の操作により設定された所定のドラク力で釣り糸が繰り出されるようにする。ここで、ドラグレバー2を図2時計回りに揺動させると、カム部材28によりスプール軸5が図5右方に移動し、制動円板55と摩擦円板56とが強く接触しドラグ力が大きくなる。一方、ドラグレバー2を図2反時計回りに揺動させると、皿バネ29によりスプール軸5が図5左方に戻され、制動円板55の摩擦円板に対する押圧力が小さくなり2つの円板55,56の圧接力が弱くなってドラグ力が弱くなる。そして、ドラグ作動時に2つの円板55,56が相対回転すると、摩擦円板56とカバー円板57との間に配置された第2発音機構64の音出しピン66がカバー円板57への衝突を繰り返し、比較的薄肉のカバー円板57との間で発音する。この結果、ドラグが作動したことが釣り人に直ちに告知される。
【0039】〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、制動部26をスプールの外方に配置したが、図8に示すように、制動部26の制動円板55をスプール4のフランジ部4cと一体で構成してもよい。このフランジ部4cの端面に摺動ディスク55aが固定されているとともに周縁部にカバー円板57が固定されている。また、スプール4を支持する軸受20bと制動円板56を支持する軸受59との間のスプール軸5の外周側にスプール軸5を図8左側に付勢するコイルバネ29aが圧縮状態で配置されている。摩擦円板56は内周部が制動円板55側に突出しており、その突出部にOリング58aが装着されている。このOリング58aにより内周側から海水等が侵入しないようにしている。なお、この実施形態ではクラッチ装置は不要であり、スプール4を自由回転状態にする場合には、ドラグレバー2を操作して制動円板55と摩擦円板56とを離反させる。
【0040】この実施形態では、スプール4の糸巻可能径は、2つのフランジ部4b,4cの外径が異なるので小さい方のフランジ部4bの外径になる。また、制動直径は摺動ディスク55a,56aのうちの小さい方の直径になる。この実施形態でも制動直径は糸巻可能径の90%以上である。
(b) 前記実施形態では、スプール4がスプール軸5に回転自在に支持されていたが、スプールがスプール軸に回転不能に装着されていてもよい。この場合には、ハンドルからの回転は回転伝達機構を介してスプール軸に伝達されスプールが回転する。また、ドラグ機構は、スプールのフランジ部に一体で形成された制動円板とリール本体に固定された摩擦円板とで構成されている。
【0041】(c) 前記実施形態では、スプール軸を軸方向に移動させてドラグ力を調整したが、スプールだけを軸方向に移動させてドラグ力を調整するようにしてもよい。
(d) 制動円板55と摩擦円板56とに配置された摺動ディスクを逆に配置してもよい。つまり、制動円板55に金属製の摺動ディスクを配置し、摩擦円板に繊維強化樹脂製の制動ディスクを配置してもよい。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ドラグ機構の制動直径が、スプールの糸巻可能径、つまりフランジ部の直径の90%以上であるので、小さい直径のスプールであっても制動性能を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
【出願日】 平成9年(1997)6月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男 (外1名)
【公開番号】 特開平11−9160
【公開日】 平成11年(1999)1月19日
【出願番号】 特願平9−164579