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【発明の名称】 養殖真珠貝挿核手術後の処置方法及び薬浴剤
【発明者】 【氏名】本田 実

【氏名】安部 敏男

【要約】 【課題】挿核手術を施した養殖真珠貝の斃死率及び脱核率を低減させる方法並びにそれに用いる薬剤を提供する。

【解決手段】挿核手術を施した養殖真珠貝をニトロフラン誘導体の溶液で薬浴することを特徴とする養殖真珠貝の挿核手術後の処置方法並びにニトロフラン誘導体からなる挿核手術を施した養殖真珠貝用の斃死低減剤及びニトロフラン誘導体からなる挿核手術を施した養殖真珠貝用の脱核低減剤が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 挿核手術後の真珠貝をニトロフラン誘導体の溶液で薬浴することを特徴とする養殖真珠貝の挿核手術後の処置方法。
【請求項2】 ニトロフラン誘導体がニフルスチレン酸もしくはその塩である請求項1記載の養殖真珠貝の挿核手術後の処置方法。
【請求項3】 ニフルスチレン酸もしくはその塩の濃度が10〜800ppmである請求項2記載の養殖真珠貝の挿核手術後の処置方法。
【請求項4】 ニフルスチレン酸もしくはその塩溶液で1〜4時間薬浴する請求項2記載の養殖真珠貝の挿核手術後の処置方法。
【請求項5】 ニトロフラン誘導体からなる挿核手術を施した養殖真珠貝用の脱核低減剤。
【請求項6】 ニトロフラン誘導体がニフルスチレン酸もしくはその塩である請求項5記載の挿核手術を施した養殖真珠貝用の脱核低減剤。
【請求項7】 ニトロフラン誘導体からなる挿核手術を施した養殖真珠貝用の斃死低減剤。
【請求項8】 ニトロフラン誘導体がニフルスチレン酸もしくはその塩である請求項7記載の挿核手術を施した養殖真珠貝用の斃死低減剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、挿核手術を行った真珠貝の斃死率及び脱核率を低減させる方法並びにそれに用いる薬剤に関する。
【0002】
【従来技術】養殖真珠を作るために、母貝に真珠の核とする貝殻等の材質からなる核を、母貝の卵巣等に挿入する挿核手術が行われている。しかし、その手術の際に生じる傷等から細菌感染を起こし、手術後に母貝が斃死したり、また挿入した核が母貝から脱落したりするので養殖真珠の挿核手術の成功率は必ずしも満足いくものとはなっていない。
【0003】挿核手術の成功率を高めるために、アルコ−ルその他の消毒剤による手術器具の消毒を行うのは勿論のこと、手術前の母貝の消毒や、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン等の抗生物質による手術後の母貝薬浴が試みられている。しかし、手術前後の母貝の消毒、薬浴は、母貝に与える消毒剤、殺菌剤、抗菌剤の悪影響や、殺菌作用、抗菌作用の不完全さから、まだ実用的に確立された技術とはなっていない。
【0004】ニフルスチレン酸ナトリウムは、薬浴及び経口投与のいずれにおいても魚体によく吸収され養殖魚の細菌性疾病に対して強い抗菌力を有する魚類用医薬品、また微生物抑制効果を有する動物用医薬品として知られている(特開昭63−303974号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、挿核手術を行った真珠貝の斃死率及び脱核率を低減させる方法並びにそれに用いる薬剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、挿核手術後の真珠貝をニトロフラン誘導体の溶液で薬浴することを特徴とする養殖真珠貝の挿核手術後の処置方法並びにニトロフラン誘導体からなる挿核手術を施した養殖真珠貝用の斃死低減剤及びニトロフラン誘導体からなる挿核手術を施した養殖真珠貝用の脱核低減剤に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】ニトロフラン誘導体としては、例えばニフルスチレン酸[5−ニトロ−2−(p−カルボキシスチリル)フラン]及びその塩があげられる。ニフルスチレン酸の塩としては、例えばニフルスチレン酸ナトリウム、ニフルスチレン酸カリウム等があげられる。ニフルスチレン酸及びその塩は公知の化合物であり、市販されている。
【0008】本発明の薬剤は、前述のニトロフラン誘導体からなり、必要に応じて界面活性剤、賦形剤、色素等を含有していてもよい。界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ショ糖脂肪酸エステル等があげられる。賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、ブドウ糖、還元麦芽糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン、プルラン等のデンプン類およびその誘導体、結晶セルロース、微結晶セルロース等のセルロース類、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シトルリン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ホモセリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸、アミノブチル酸、アミノカプロン酸、グリシルグリシン等があげられる。
【0009】本発明の薬剤は、ニトロフラン誘導体10重量部に対して、界面活性剤0〜1重量部、好ましくは、0.1〜0.5重量部、賦形剤0〜1000重量部、好ましくは10〜500%となるように調製される。本発明の薬剤の剤型としては、液剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等いずれでもよい。こららの剤型は、常法で製造できる。
【0010】本発明の適用対象となる養殖真珠貝としては、養殖される真珠貝であれば海産、淡水産のいずれでもよく、海産真珠貝では例えばアコヤガイ、シロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイ等が、淡水産真珠貝では、例えばイケチョウガイ等があげられる。本発明の薬浴とは、挿核手術を施した養殖真珠貝をニトロフラン誘導体の溶液に一定時間浸漬することを意味する。
【0011】ニトロフラン誘導体の溶液としては、海産真珠貝では天然海水もしくは人工海水を使用し、淡水産真珠貝では淡水を使用する。本発明に使用するニトロフラン誘導体としては、ニフルスチレン酸及びその塩が好ましく、ニフルスチレン酸及びその塩溶液の濃度は、10〜800ppm、好ましくは50〜200ppmである。浸漬時間は、1〜4時間の範囲が好ましい。
【0012】薬浴は、水温10〜30℃、好ましくは23〜25℃で行う。薬浴処理中、酸素濃度が低いと貝の呼吸が抑制されるので、エアレーションや攪拌等の酸素供給処理を行うことが好ましい。本発明に使用する薬剤は、紫外線により分解しやすいので薬浴処理は日陰で行うのが好ましく、暗中で行うのが特に好ましい。
【0013】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0014】
【実施例】
実施例1水産用ニフルスチレン酸10%「協和」[ニフルスチレン酸ナトリウムを10%含有、協和醗酵工業株式会社]100g、ペニシリンGカリウム(和光純薬工業株式会社)10g、ストレプトマイシン硫酸塩(和光純薬工業株式会社)10g、塩酸オキシテトラサイクリン(ファイザ−製薬株式会社)10g、アクリノ−ル(和光純薬工業株式会社)1gをそれぞれ100リットルの海水を入れた水槽に溶解して、各抗生物質100ppm、アクリノ−ル10ppm試験溶液を調製した。
【0015】アコヤガイ母貝600個につき常法に従い挿核手術を施した後、100個づつの6グル−プに分け、1グル−プは無処理対照区とし、5グル−プについてはそれぞれ上記に示した試験溶液を入れた100リットル水槽に、通気攪拌しながら2時間浸漬して薬浴を行った。試験溶液で薬浴した5グル−プ及び無処理対照区の母貝はそれぞれ別の真珠養殖用網かごに収容した後、真珠養殖用筏に垂下して15日間、常法により養殖管理を行った。
【0016】15日間経過後、試験貝を収容した網かごを回収して試験母貝の斃死率を調査した。結果を第1表に示す。
【0017】
【表1】

【0018】ニフルスチエレン酸ナトリウム処理区では、斃死率が顕著に減少した。
【0019】実施例2アコヤガイ母貝210個につき挿核手術を施したのち30個づつの7グル−プに分け、1グル−プは無処理対照区とし、6グル−プについてはそれぞれニフルスチレン酸10%「協和」を用いて、ニフルスチレン酸ナトリウムの12.5ppm、25ppm、50ppm、100ppm、200ppm、400ppmを含む100リットルの海水溶液に通気攪拌しながら2時間浸漬して薬浴を行った。
【0020】試験溶液で薬浴した6グル−プおよび無処理対照区の母貝はそれぞれ別の真珠養殖用網かごに収容した後、真珠養殖用筏に垂下して15日間通常の養殖管理を行った。15日間経過後、試験貝を収容した網かごを回収して試験母貝の斃死率を調査した。結果を第2表に示す。
【0021】
【表2】

【0022】実施例3アコヤガイ母貝120個につき挿核手術を施したのち20個づつの6グル−プに分け、1グル−プは無処理対照区とし、5グル−プについてはそれぞれニフルスチレン酸10%「協和」を用いて、ニフルスチレン酸ナトリウムの100ppm、200ppm、400ppm、800ppm、1600ppmを含む100リットルの海水溶液に通気攪拌しながら1時間浸漬して薬浴を行った。
【0023】試験溶液で薬浴した5グル−プおよび無処理対照区の母貝はそれぞれ別の真珠養殖用網かごに収容した後、真珠養殖用筏に垂下して15日間通常の養殖管理を行った。15日間経過後、試験貝を収容した網かごを回収して試験母貝の斃死率を調査した。調査結果を第3表に示す。
【0024】
【表3】

【0025】実施例4アコヤガイ母貝300個につき挿核手術を施したのち50個づつの6グル−プに分け、1グル−プは無処理対照区とし、5グル−プについてはそれぞれニフルスチレン酸10%「協和」を用いて、ニフルスチレン酸ナトリウムの100ppmを溶解した100リットルの海水溶液に通気攪拌しながら30分、1時間、2時間、4時間、8時間浸漬して薬浴を行った。
【0026】試験溶液で薬浴した5グル−プおよび無処理対照区の母貝はそれぞれ別の真珠養殖用網かごに収容した後、真珠養殖用筏に垂下して15日間通常の養殖管理を行った。15日間経過後、試験貝を収容した網かごを回収して試験母貝の斃死率を調査した。調査結果を第4表に示す。
【0027】
【表4】

【0028】実施例5真珠養殖場において28,800個のアコヤガイ母貝について挿核手術を行い、16,470個についてはニフルスチレン酸10%「協和」を用いて、ニフルスチレン酸ナトリウム100ppmを溶解した海水溶液で2時間薬浴を実施、残り12,330個については無処理区としてそれぞれ網かごに収容後養殖筏に垂下して通常の養殖管理を行った。
【0029】手術後35日目にネット立て作業を実施する際、斃死貝の調査およびレントゲン選別機(島津製作所製)にかけて脱核貝の調査を行った。調査結果を第5表に示す。
【0030】
【表5】

【0031】ニフルスチレン酸ナトリウム処理区では、脱核率が顕著に減少した。
【0032】
【発明の効果】 本発明によれば、養殖真珠の挿核手術の成功率を高上させる薬浴剤が提供され、それを使用することにより真珠養殖における挿核手術後の母貝斃死率及び脱核率が低減される。
【出願人】 【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和醗酵工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月16日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−4635
【公開日】 平成11年(1999)1月12日
【出願番号】 特願平9−158634