| 【発明の名称】 |
フタバガキ科樹木の組織培養による大量増殖法 |
| 【発明者】 |
【氏名】中村 健太郎
【氏名】曽田 良
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| 【要約】 |
【課題】フタバガキ科樹木の組織培養による大量増殖法。
【解決手段】フタバガキ科樹木の茎頂部を、ゼアチン、グルコース、マルトースを含むMS培地又はその改変培地で液体回転培養することにより効率よく多芽体を誘導、増殖することができ、次いでこの多芽体を同様の培地で液体旋回又は液体静置培養することにより効率よくシュートを伸長することができる。更に伸長したシュートをNAAを0〜1.0mg/l含むMS培地又はその改変培地で固体培養することにより植物体を効率よく再生することができ、短期間に大量の苗を生産することが可能である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フタバガキ科樹木の茎頂を含む茎頂部を、多芽体誘導培地で培養して大量の定芽,不定芽を有する多芽体を誘導し;得られた多芽体を多芽体増殖培地で増殖させ;増殖させた多芽体をシュート伸長培地に移植して大量のシュートを生産し;次いでシュートを発根培地に移植して発根させ、植物体を再生する、ことを特徴とするフタバガキ科樹木の大量増殖法。 【請求項2】 多芽体誘導培地、多芽体増殖培地及びシュート伸長培地として、ゼアチンを1.0〜4.4mg/lを含有するMS培地、又はその改変培地を用いる請求項1記載のフタバガキ科樹木の大量増殖法。 【請求項3】 シュート伸長培地として、ゼアチン1.0〜4.4mg/lを含有するMS培地、又はその改変培地を用い、液体旋回、又は液体静置培養する請求項1または2記載のフタバガキ科樹木の大量増殖法。 【請求項4】 発根培地として、NAA0〜1.0mg/l添加したMS培地、又はその改変培地を用いる請求項1から3のいずれか1項記載のフタバガキ科樹木の大量増殖法。 【請求項5】 多芽体誘導培地、多芽体増殖培地、シュート伸長培地及び発根培地として、1種もしくは2種以上の単糖類、あるいはグルコースと二糖類を含有するMS培地、又はその改変培地を用いる請求項1から4のいずれか1項記載のフタバガキ科樹木の大量増殖法。 【請求項6】 多芽体誘導培地、多芽体増殖培地、シュート伸長培地及び発根培地として、グルコースとマルトースを含有するMS培地、又はその改変培地を用いる請求項5記載のフタバガキ科樹木の大量増殖法。 【請求項7】 フタバガキ科樹木がShorea属に属するものである請求項1から6のいずれか1項記載フタバガキ科樹木の大量増殖法。 【請求項8】 フタバガキ科樹木がShorea roxburghii である請求項1から7のいずれか1項記載のフタバガキ科樹木の大量増殖法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フタバガキ科樹木、特にShorea属に属するShorea roxburghii の組織培養による大量増殖法に関する。 【0002】 【従来の技術】フタバガキ科樹木は東南アジアの主要用材樹種であるが、結実に豊凶があり、また鳥獣虫による食害が甚だしく、且つ種子の採取後の貯蔵が困難であり、数週間で発芽力を消失するなど、実生による繁殖には問題が多い。また、挿し木についても研究がなされたが、成木からの増殖が困難であり、精英樹等の増殖が難しい。このように繁殖力が極めて低いとされているフタバガキ科樹木は、遺伝子保存や造林に際しての苗の確保が大きな問題となっている。近年、幾つかの研究グループが、これらの問題点の解決を目的として組織培養技術を用いた研究がなされているが、成功した報告は非常に少ない。特に、Shorea roxburghii については今日まで2例の報告がある(Eileen S. Scotto, A. N.Rao and C. S. Loh (1988) Production of plantlet of Shorea roxburghii G.Don. from embryonic axes cultured in vitro. Annals of Botany 61: 233 -236, D. S. Gunasekara, E. S. Scott and A. N. Rao (1988) Suspension culture of the dipterocarp Shorea roxburghii G. Don. Somatic Cell Genetics ofWoody Plants: 137 - 141) 。しかしながら、これらの方法は、胚組織及びカルスを培養する方法であり、大量増殖の目的を達成することはできない。また、本発明者が特許出願した特願平7−121521に記載のフタバガキ科樹木の多芽体作出技術も、植物体の再生には至っていなかった。したがって、より効率的な大量増殖方法の開発が望まれている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、フタバガキ科樹木、特にShorea属に属するShorea roxburghii の大量増殖を可能にする大量増殖法を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者は、フタバガキ科樹木の苗木を用いて、大量増殖を可能にする多芽体による大量増殖法を開発することを目的として鋭意研究した結果、フタバガキ科樹木の茎頂を含む茎頂部から植物体を再生することに成功し本発明を完成させた。 【0005】即ち、本発明は、フタバガキ科樹木の茎頂を含む茎頂部を、多芽体誘導培地で培養して大量の定芽,不定芽を有する多芽体を誘導し;得られた多芽体を多芽体増殖培地で増殖させ;増殖させた多芽体をシュート伸長培地に移植して大量のシュートを生産し;次いでシュートを発根培地に移植して発根させ、植物体を再生する、ことを特徴とするフタバガキ科樹木の大量増殖法である。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明によれば、苗の枝から茎頂を含む茎頂部から多芽体を誘導し、次いで得られた多芽体からシュートを伸長させ、更に伸長したシュートを発根培地に移植することにより、大量の幼植物体を得ることができる。本発明で対象とするフタバガキ科樹木としては、より具体的には、Shorea属に属するものが挙げられ、特にShorea roxburghii が更に具体的なものとして例示することができる。 【0007】本発明で用いる培養材料としては、温室で栽培している苗木、又は成木から茎頂部を含む頂芽を採取したものが用いられる。採取した頂芽は、通常の方法に従って、エタノール及び次亜塩素酸ナトリウムあるいは塩化水銀(昇汞水)で表面殺菌を行ない、滅菌水で洗浄後、培地中で培養する。本発明において、多芽体誘導培地、多芽体増殖培地、シュート伸長培地及び発根培地に用いる基本培地としては、無機成分及び炭素源を必須成分とし、その他植物成長調節物質、ビタミン、アミノ酸を含有する培地が用いられる。無機成分としては、窒素、燐、カリウム、ナトリウム、カルシウム、硫黄、鉄、マンガン、亜鉛、沃素、硼素、モリブデン、塩素、コバルト等の元素を含む無機化合物が用いられる。炭素源としては、炭水化物、例えばしょ糖又はブドウ糖が用いられる。 【0008】植物成長調節物質としては、オーキシン、サイトカイニンを用い、特にサイトカイニンを用いるのが好ましい。オーキシンとしては、例えば3−インドール酪酸(IBA)、ナフタレン酢酸(NAA)等が挙げられ、サイトカイニンとしては、例えばベンジルアミノプリン(BAP)、カイネチン、ゼアチン、1−フェニル−(1,2,3−チアディアゾール−5−YL)−ウレア(チヂアズロン)等が挙げられる。ビタミンとしては、例えばチアミン、ピリドキシン、ニコチン酸等が挙げられる。アミノ酸としては、例えばグリシン、グルタミン酸、リジン等が挙げられる。 【0009】実際に培養する際に用いる培地としては、植物組織培養に用いられる培地、例えばMS培地(Murashige T(1962) A revised medium for rapid growth and bioassays with tobacco tissue cultures, Physiol. Plant. 15: 473-497 )、B5培地(Gamborg OL(1968) Nutrient requirements of suspension cultures ofsoybean root cells, Exp. Cell. Res. 50:151-158 )、WP培地(Lloyd G(1981) Commercially feasible micropropagation of mountai laurel (Kalmia latifolia) by use of shoot tip culture, Pro. Inc. Proc. Int. Plant Prop. Soc. 30:421-427 )等が挙げられる。 【0010】これらの培地を、本発明の多芽体誘導培地、多芽体増殖培地、シュート伸長培地及び発根培地に適当に選択して用られる。本発明では、フタバガキ科樹木の茎頂部を多芽体誘導培地で培養して大量の定芽、不定芽を有する多芽体を誘導するためには、多芽体誘導培地として、特に、MS培地及びその改良培地が好ましい。定芽及び/又は不定芽の誘導及び成長を促進するため、ゼアチンを1.0〜4.4mg/l程度含有する培地を用いることが好ましい。更に1種もしくは2種以上の単糖類(例えばグルコース、フルクトースなど)、あるいはグルコースと二糖類(例えばマルトース、ラクトースなど)を含有する培地が好ましい。特にゼアチンに加えてグルコース及びマルトースを含有する培地が好ましい。グルコース及びマルトースの含有量はそれぞれ5.2g/lが好ましい。培地は液体培地が好ましい。ゼアチンとしては、trans−ゼアチンが好ましい。培養温度は、通常15〜35℃、好ましくは25℃程度である。光照射下で培養するのが好ましく、特に1日当たり16〜24時間程度、照度1,000〜12,000ルクスの条件下で培養すると、定芽、不定芽の成長が促進される。こうして得られる多芽体は、効率よく増殖させることができる。 【0011】次いで、得られた多芽体を多芽体増殖培地に移植し、効率よく増殖させる。多芽体増殖培地としては、前記の無機成分及び炭素源、ビタミン、アミノ酸等を含有し、ゼアチン1.0〜4.4mg/lを含有する液体培地が好ましい。更に、多芽体誘導培地と同様に、1種もしくは2種以上の単糖類(グルコース、フルクトースなど)、あるいはグルコースと二糖類(例えばマルトース、ラクトースなど)を含有する培地が好ましく、特にグルコース及びマルトースを含有する培地が好ましい。グルコース及びマルトースの含有量はそれぞれ5.2g/lが好ましい。培養温度は、通常15〜35℃、好ましくは25℃程度である。1日当たり16〜24時間程度、照度1,000〜12,000ルクスの光照射の条件で培養するのが好ましい。増殖培地に移植する際には、誘導した多芽体をそのまま移植するか、あるいは1〜数個の定芽、不定芽に分割して移植するのが好ましい。 【0012】次いで、増殖した多芽体をシュート伸長培地に移植し、効率よくシュートを伸長させる。シュート伸長培地としては、前記の無機成分及び炭素源、ビタミン、アミノ酸等を含有し、ゼアチン1.0〜4.4mg/lを含有する液体、又は固体培地が好ましい。更に、多芽体誘導培地と同様に、1種もしくは2種以上の単糖類(グルコース、フルクトースなど)、あるいはグルコースと二糖類(例えばマルトース、ラクトースなど)を含有する培地が好ましく、特にグルコース及びマルトースを含有する培地が好ましい。グルコース及びマルトースの含有量はそれぞれ5.2g/lが好ましい。培養温度は、通常15〜35℃、好ましくは25℃程度である。1日当たり16〜24時間程度、照度1,000〜12,000ルクスの光照射の条件で培養するのが好ましい。培養は、液体旋回培養または液体静置培養により行うのが好ましい。 【0013】次いで、伸長したシュートを発根培地に移植し、効率よく発根させる。発根培地としては、前記の無機成分及び炭素源、ビタミン、アミノ酸等を含有し、NAA0〜1.0mg/lを含有する固体培地及び前記の無機成分及び炭素源、ビタミン、アミノ酸等を含有し、NAA0〜1.0mg/lを含有する液体培地、好ましくは更に1種もしくは2種以上の単糖類(例えばグルコース、フルクトースなど)、あるいはグルコースと二糖類(例えばマルトース、ラクトースなど)を含有する培地、特にグルコース(好ましくは5.2g/l)及びマルトース(好ましくは5.2g/l)を含有する液体培地を添加した、土壌を主成分とした培地支持体(例えば、バーミキュライトを主成分とした培地支持体)が好ましい。培養温度は、通常15〜35℃、好ましくは25℃程度である。1日当たり16〜24時間程度、照度1,000〜12,000ルクスの光照射の条件で培養するのが好ましい。 【0014】 【発明の効果】本発明によれば、フタバガキ科樹木の組織培養、挿し木用に供する芽を、試験管内で短期間に大量に生産することができ、更にフタバガキ科樹木の苗の大量生産が可能になる。 【0015】 【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。 実施例タイから入手したShorea roxburghii 種子を温室で発芽させ、育成した苗木(高さ20〜70cm)から供試材料を採取した。 (1)材料の滅菌Shorea roxburghii の実生苗から頂芽を採取し、70%エタノルで30秒間及び2%次亜塩素酸ナトリウムで7分間表面殺菌を行い、滅菌水で5回洗浄後、滅菌濾紙上で風乾させた。 (2)材料の調整風乾後、実体顕微鏡下で頂芽の葉原基を取り除き、長さ0.2〜5mmの茎頂部を摘出し、液体培地中で培養した。 (3)多芽体の誘導【0016】多芽体誘導培地としては、改変MS培地(全培地成分を半量にしたMS培地)にグルコース5.2g/lとマルトース5.2g/l及び植物成長調節物質としてゼアチンを1.0〜4.4mg/l添加し、pH5.7に調整した後、殺菌して用いた。摘出した茎頂部は、温度26±2℃、1日当たり24時間蛍光灯(上部12000lux,下部1,000lux)照明下で、1rpmの回転数で回転液体培養した。多芽体の形成結果を表1に示した。表1から明らかなように、ゼアチン、グルコース及びマルトースを含有する培地では培養3ヶ月後に多芽体が効率良く誘導された。 【0017】 【表1】
【0018】(4)多芽体の増殖(3)で得られた多芽体をそのまま、あるいは1〜数個の芽に分割し、多芽体増殖培地に移植した。培地には、ゼアチン1.0〜4.4mg/lを添加した改変MS培地(前記(3)と同じ)をpH5.7に調整し、殺菌して用いた。多芽体は、温度26±2℃、1日当たり24時間蛍光灯(上部12,000lux,下部1,000ルクス)照明下で、1rpmの回転数で回転液体培養した。多芽体の増殖結果を表2に示した。表2から明らかなように、ゼアチン1.0mg/lあるいは4.4mg/lで、活発な多芽体の増殖が認められ、現在までに1.5年間継続培養を行っているが、活発な増殖を維持している。また、対照試験として、改変MS培地(前記(3)と同じ)に、ゼアチン1.0〜4.4mg/lを添加し、グルコースとマルトースの代わりに、炭素源としてショ糖30g/lを用いた場合、培養開始から6ヶ月後には、全ての多芽体が褐変枯死した。 【0019】 【表2】
【0020】(5)シュートの伸長(4)で増殖させた多芽体を、シュート伸長培地に移植した。培地には、ゼアチン1.0〜4.4mg/lを添加した改変MS培地(前記(3)と同じ)をpH5.7に調整し、殺菌して用いた。多芽体は、温度26±2℃、1日当たり16時間蛍光灯照明(3,000ルクス)下で、液体旋回、又は液体静置培養、又は固体培養(ゲルライト3.0g/lで固化させたもの)した。シュート伸長結果を図1に示した。図1から明らかなように、液体旋回あるいは液体静置培養を行うことにより、活発なシュート伸長が認められた。 【0021】(6)発根(5)で伸長させたシュートを、発根培地に移植した。培地には、NAA0〜1.0mg/lを添加した改変MS液体培地(前記(3)と同じ)をpH5.7に調整した後殺菌して、フロリアライト(日清紡製,バーミキュライトを主成分とした培地支持体)に15ml添加した。また、対照区として、NAA0〜1.0mg/lを添加した改変MS固体培地(3.0g/lのゲルライトで固化)をpH5.7に調整した後殺菌して用いた。シュートは、温度26±2℃、1日当たり16時間蛍光灯照明(3,000ルクス)下で培養した。表3に、発根に対する炭素源及びNAA濃度の影響を示した。 【0022】 【表3】
【0023】表4に、発根までに要する日数と枯死率を示した。 【表4】
【0024】表5に、シュート材料の長さとNAA濃度との関係を示した。 【0025】 【表5】
【0026】表6に、培地支持体の違いによる発根に与える影響を示した。 【表6】
表3〜6に示した結果から明らかなように、全ての処理区で発根が認められた。炭素源別でみると、マルトース+グルコース区において高い生存率が得られ、発根に効果があることが認められた。NAAの濃度は、材料となるシュートの長さに関係しており、シュート長が短い場合はNAA0mg/l区が有効であり、シュート長が長い場合はNAA1.0mg/lが有効であることが認められた(表3,4,5参照)。また、フロリアライト培地区と固体培地区を比較すると、フロリアライト区で良好な発根が認められた(表6参照)。
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| 【出願人】 |
【識別番号】592211183 【氏名又は名称】熱帯林再生技術研究組合
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)11月17日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】浅村 皓 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−146738 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)6月2日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−314921 |
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