| 【発明の名称】 |
合成周縁キメラ植物の茎頂起源層構成の確定方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】菅原 邦明
【氏名】吉田 賢二
【氏名】西山 聡
【氏名】脇塚 巧
【氏名】大和田 厚
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| 【要約】 |
【課題】茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2、3層のキメラ植物体の層構成を栄養成長期の段階で確定する方法、該方法を用いて作出した従来のミカン科植物の育種法では得ることのできない新しいミカン科の合成周縁キメラ植物等を提供する。
【解決手段】周縁キメラ植物体のキメラ性を幼植物の段階で確定する方法であって、2種のミカン科植物により構成されている周縁キメラ植物体の展開直後の植物体の一部を酵素処理することにより表皮細胞と内部の細胞に分離した後、これらの細胞由来のDNAをDNAマーカーを用いて、分析を行い、茎頂起源層第1層の種と茎頂起源層第2および第3層の種を確定することを特徴とするミカン科の合成周縁キメラ植物の茎頂起源層構成の確定方法、および該方法を用いた新規合成周縁キメラの選抜、作出/育成方法、該方法により育成した新植物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 周縁キメラ植物体のキメラ性を幼植物の段階で確定する方法であって、2種のミカン科植物により構成されている周縁キメラ植物体の展開直後の植物体の一部を酵素処理することにより表皮細胞と内部の細胞に分離した後、これらの細胞由来のDNAをDNAマーカーを用いて、分析を行い、茎頂起源層第1層の種と茎頂起源層第2および第3層の種を確定することを特徴とするミカン科の合成周縁キメラ植物の茎頂起源層構成の確定方法。 【請求項2】 ミカン科植物以外の植物で、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層とが互いに異なる種で構成されている周縁キメラ植物において、周縁キメラ植物体の展開直後の植物体の一部を酵素処理することにより表皮細胞と内部の細胞に分離した後、これらの細胞由来のDNAをDNAマーカーを用いて、分析を行い、茎頂起源層第1層の種と茎頂起源層第2および第3層の種を確定することを特徴とする合成周縁キメラ植物の茎頂起源層構成の確定方法。 【請求項3】 合成周縁キメラ植物を幼植物の段階で確定し、効率よく合成周縁キメラを生産する方法であって、請求項1または2記載の方法により合成周縁キメラであることを栄養成長期の段階において確定し、それを基準として合成周縁キメラを、早期選抜することによって、効率的に合成周縁キメラを作出/育成することを特徴とする合成周縁キメラの生産方法。 【請求項4】 2種のミカン科植物により構成されている合成周縁キメラ新植物体を作出/育成する方法であって、請求項1記載の方法により温州ミカンとオレンジならびにポンカンとオレンジの組合せで植物体の茎頂起源層構成の確定を行い、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層が相互に異なる種から構成される合成周縁キメラを選抜し、育成することを特徴とする合成周縁キメラ新植物の生産方法。 【請求項5】 請求項4記載の方法により2種のミカン科植物を用いて生産された合成周縁キメラ新植物であって、温州ミカンとオレンジならびにポンカンとオレンジの組合せで茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層とが相互に異なる種から構成されることを栄養成長期の段階で確定した植物体。 【請求項6】 以下の工程; a)キメラ植物体果実の所定の部分(果皮あるいは果肉)に発現させるべき2種の供試植物を予め設計/選択し、b)該2種の植物を用いて、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2層および第3層とが互いに異なる種で構成されている周縁キメラ植物を合成し、c)請求項1または2記載の方法により目的の合成周縁キメラであることを栄養成長期の段階において確定し、d)それを基準として、所定の合成周縁キメラを早期選抜し、作出/育成する、によって、効率的に所定のキメラ植物体果実を発現する合成周縁キメラを作出/育成することを特徴とする合成周縁キメラの生産方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、植物の茎頂起源層構成を確定する方法、該確定方法を利用して新しい合成周縁キメラ植物を作出/育成し、生産する方法、およびその新植物体に関するものであり、さらに詳しくは、本発明は、植物の茎頂起源層構成を栄養成長期の幼植物の段階で確定することを可能とする方法、また、該方法を用いて合成周縁キメラ植物を早期に選抜し、効率よく合成周縁キメラを作出/育成し、生産する方法、さらに該方法で得られた新規植物体、特に、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層が2種の既存のミカン科植物細胞により構成され、それぞれの種の各茎頂起源層由来の各組織における優良形質がほぼ元の種と同様に発現可能な合成周縁キメラの新植物に属する植物体に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ミカン科植物において、偶発的に発見された周縁キメラとして、国内では、小林ミカン(ナツダイダイと温州ミカン)、金柑子温州(金柑子と温州ミカン)およびイヨカンと温州ミカンのキメラが知られている。また、接ぎ木によりナス科植物のキメラを人為的に作出する方法がWinkler(Winkler,H.,Ueber Pfropfbastarde und pflanzliche Chimaeren,Ber.dtsch.bot.Ges.,25,568−576(1907))によって開発されて以来、キメラの判定は茎葉の可視的な特徴(外観や細胞のサイズ)によって行われてきた。ミカン科植物では、川野ナツダイダイと福原オレンジから作出されたキメラがある(特公平3−46087号および特公平3−46088号)。これらの特許の方法では、ミカン科植物周縁キメラはこの1例の組合せしか作出されていない。また、この植物体のように作出に用いた2種の植物体中の成分が異なっている場合には、成分分析によりキメラ個体の選抜が可能であるが、例えば、温州ミカンとオレンジあるいはポンカンとオレンジの組合せのように成分が類似している場合には、成分分析による選抜法は適用出来ない。したがって、上記方法では、これらの2種の組合せのキメラ個体の選抜は不可能である。従来のミカン科植物の周縁キメラの推定方法は、開花・結実まで待って生殖器官や果実を分析することによるが、ミカン科植物は、永年性作物であるため推定が出来るまでに非常に長い年月を要する。 【0003】このように、ミカン科植物のキメラ植物体を作出することは、上述の方法により可能であるが、この方法では植物体中の成分が異なる場合でないとキメラ候補個体の選抜が不可能である。また、この方法では、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層構成の確定は不可能である。例えば、植物体中の成分が類似している2種の組合せとして温州ミカンとオレンジおよびポンカンとオレンジが挙げられる。これらの組合せにおいては、従来の成分分析法によりキメラ個体を選抜することは困難である。しかし、これらの2種はお互いに優良な形質を持ち合わせており、これらの2種の組合せから作出されるキメラ植物体は優良形質を持ち合わせた個体となる可能性が高い。 【0004】ミカン科植物においては、交雑育種法が確立し、これにより新植物が育成されてきている。一方、キメラ植物体については、明らかになっていない点が多く、その育成法も十分といえるものが確立されていない。また、これまで育成された合成周縁キメラ植物体の組合せも上述の1例しか認められていない。さらに、ミカン科植物は永年性作物でもあるので、開花・結実まで待って、生殖器官や果実分析によりキメラ構成を推定するまでには非常に長い年月を要するという問題がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】このため、本発明者らは、キメラ候補個体を早期に選抜することを可能とする新しい方法、また、栄養成長期の植物の茎頂起源層構成を確定することが可能な新しい方法を確立することを目標として種々検討を試みる中で、以下に説明する新しい方法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明では、作出に用いる2種の植物体中の成分が類似している場合でも、RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)分析を用いることによりキメラ個体の選抜を可能とした。さらに、本発明では、植物体の一部、特に、葉部細胞の酵素処理を行い、表皮細胞と葉肉細胞に分離した後、これらの細胞から得られたDNAを用いてRAPD分析を行うことで、幼植物の段階でのキメラ性の確定を可能とした。本発明は、これらの選抜・確定技術を提供することを目的とするものであり、また、これらの技術を用いて、従来のミカン科植物の育種方法では得ることが困難であった2種の優良形質を合わせ持つ合成周縁キメラ新植物を作出/育成し、生産する方法、およびその新植物体を提供することを目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明は、以下の技術的手段からなる。 (1)周縁キメラ植物体のキメラ性を幼植物の段階で確定する方法であって、2種のミカン科植物により構成されている周縁キメラ植物体の展開直後の植物体の一部を酵素処理することにより表皮細胞と内部の細胞に分離した後、これらの細胞由来のDNAをDNAマーカーを用いて、分析を行い、茎頂起源層第1層の種と茎頂起源層第2および第3層の種を確定することを特徴とするミカン科の合成周縁キメラ植物の茎頂起源層構成の確定方法。 (2)ミカン科植物以外の植物で、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層とが互いに異なる種で構成されている周縁キメラ植物において、周縁キメラ植物体の展開直後の植物体の一部を酵素処理することにより表皮細胞と内部の細胞に分離した後、これらの細胞由来のDNAをDNAマーカーを用いて、分析を行い、茎頂起源層第1層の種と茎頂起源層第2および第3層の種を確定することを特徴とする合成周縁キメラ植物の茎頂起源層構成の確定方法。 (3)合成周縁キメラ植物を幼植物の段階で確定し、効率よく合成周縁キメラを生産する方法であって、前記(1)又は(2)の方法により合成周縁キメラであることを栄養成長期の段階において確定し、それを基準として合成周縁キメラを、早期選抜することによって、効率的に合成周縁キメラを作出/育成することを特徴とする合成周縁キメラの生産方法。 (4)2種のミカン科植物により構成されている合成周縁キメラ新植物体を作出/育成する方法であって、前記(1)の方法により温州ミカンとオレンジならびにポンカンとオレンジの組合せで植物体の茎頂起源層構成の確定を行い、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層が相互に異なる種から構成される合成周縁キメラを選抜し、育成することを特徴とする合成周縁キメラ新植物の生産方法。 (5)前記(4)の方法により2種のミカン科植物を用いて生産された合成周縁キメラ新植物であって、温州ミカンとオレンジならびにポンカンとオレンジの組合せで茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層とが相互に異なる種から構成されることを栄養成長期の段階で確定した植物体。 (6) 以下の工程; a)キメラ植物体果実の所定の部分(果皮あるいは果肉)に発現させるべき2種の供試植物を予め設計/選択し、b)該2種の植物を用いて、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2層および第3層とが互いに異なる種で構成されている周縁キメラ植物を合成し、c)前記(1)または(2)の方法により目的の合成周縁キメラであることを栄養成長期の段階において確定し、d)それを基準として、所定の合成周縁キメラを早期選抜し、作出/育成する、によって、効率的に所定のキメラ植物体果実を発現する合成周縁キメラを作出/育成することを特徴とする合成周縁キメラの生産方法。 【0007】 【発明の実施の形態】次に、本発明についてさらに詳細に説明する。以下、ミカン科植物を例として説明する。本発明において、新しい植物体を得るために、本発明者らは、2種のミカン科植物の珠心胚実生を用いて多数の寄せ接ぎ個体を作成し、寄せ接ぎ面を水平にカットし、その接合面から発生した不定芽からキメラ個体を選抜・育成した。さらに、その他の作出法として、本発明者らは、2種のミカン科植物の珠心胚実生を育成し、一方の個体の子葉にやや近い胚軸部分にもう一方の個体の同位置の胚軸部分を切り出して貼り接ぎ(図1)し、活着後、貼り接ぎ面を水平にカットし、その接合面から発生した不定芽からキメラ個体を選抜・育成した。上記実施の例のように、キメラ個体は、供試する2種のミカン科植物体において両種とも不定芽が発生する組織を用いれば、珠心胚実生同士の寄せ接ぎ以外の方法によっても、作出が可能であるが、キメラ個体を作成する方法は、これらに限らず、それらと同効のものであれば適宜使用することが可能である。このようにして作出したキメラ新植物について、不定芽発生から約3ヶ月目にRAPD分析によりキメラ個体の選抜を行った。さらに、鉢上げ育成した後、次の手段により周縁キメラの層構成の確定を行った。本発明においては、まず、展開直後の植物体の一部を採取し、これを酵素処理することにより表皮細胞と内部の細胞に分離する。ここで、植物体の一部としては、後記するDNA抽出/分析が可能であればその部位は特に限定されるものではなく、適宜の部位を利用できるが、例えば、葉部などの任意の組織が好適なものとして例示される。また、表皮細胞と内部の細胞としては、例えば、上記葉部の茎頂起源層第1層由来の表皮細胞と茎頂起源層第2、第3層由来で表皮以外の葉肉細胞が好適なものとして例示されるが、これらと同様の細胞であれば同様に使用することが可能であり、これらに限定されるものではない。また、上記酵素処理の酵素としては、上記表皮細胞と内部の細胞に分離し得る作用を有する酵素であれば適宜のものを使用することが可能であり、例えば、市販の繊維素分解酵素等を利用することができる。また、酵素処理についても、上記植物体の組織を上記酵素を用いて酵素処理すればよく、その方法および条件は、特に限定されるものではない。次に、上記酵素処理により分離した表皮細胞と内部の細胞は、緩衝液等で洗浄し、精製、回収した後、例えば、SDS抽出法などの適宜の方法を用いてDNAを抽出し、DNAマーカーを用いて、RAPD分析法により、組織別にDNAの分析を行い、茎頂起源層第1層の種と茎頂起源層第2および3層の種を分析する。ここで、本発明において、細胞由来のDNAをDNAマーカーを用いて、分析を行うとは、上記細胞由来のDNAをテンペレートDNAとして、プライマーにより増幅されるDNAの検出を行うRAPD分析法を用いて上記組織別にDNA解析を行うことを意味する。RAPD分析法によるDNA解析の手順は、常法に従って行えばよく、特に限定されるものではない(RAPD法については、例えば、Deng,Z.N.,A.Gentile,E.Nicolosi,F.Domina,A.Vardi,and E.Tribulato.1995,Identification of in vivo and in vitro lemon mutants by RAPD markers,J.Hort.Sci.70,117−125.参照)。これにより、上記組織別にDNAを解析し、そのDNAデータに基づいて茎頂起源層構成を遺伝子レベルで分析/確定することが可能となる。すなわち、具体的には、選抜された個体について、葉部の表皮細胞と葉肉細胞を酵素処理によって分離した後、これらの細胞から別々にDNAを抽出し、後記する実施例で具体的に説明するRAPD法を用いてそれぞれの元の種由来のDNAであることを確認し、その茎頂起源層構成を明らかにすることで、キメラ性の確定を行った。この方法により、開花・結実を待つことなく選抜個体のキメラ性の確定が可能となり、それを基準として所望の合成周縁キメラ植物を早期選抜することが可能となった。 【0008】ミカン科植物では、葉部の表皮細胞と果肉組織は共通の茎頂起源層に由来している。したがって、葉部の表皮細胞になったキメラの元の種を特定することにより果実における果肉組織となるキメラの元の種をあらかじめ推定することができる。葉肉組織と果実における果皮の関係も同様である。このため、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層の周縁キメラについては2種のミカン科植物の組合せを変えることにより、果皮と果肉が互いに異なる2種のミカン科植物からなる果実を結実させる新植物となることがあらかじめ予想可能である。例えば、茎頂起源層第1層がオレンジ、茎頂起源層第2および第3層が温州ミカンの細胞により構成された周縁キメラは、温州ミカンの果皮の中にオレンジの果肉の入った果実を結実させることが予想される。しかし、従来、栄養成長期の幼植物の段階で周縁キメラ植物の茎頂起源層構成を確定する方法がなく、実際に、果実の特性を幼植物の段階で予想することは不可能であった。本発明の方法によれば、栄養成長期の幼植物の段階で周縁キメラ植物の茎頂起源層構成を確定することが可能であり、それにより、幼植物の段階で果実の特性を予想することが可能である。これにより、各種の優れた形質を、期待するキメラ植物体果実のどの部分(果皮あるいは果肉)に発現させたいかを計画的に組み込み、供試する2種の植物を選択することで、実際にこれらの優良形質がそれぞれに発現されたキメラ果実を得ることが可能である。 【0009】本発明において、キメラ性が確定された個体は、試験圃場の温州成木に高接ぎを行い、約1年間、高接ぎ個体のキメラ構成の調査を行い、高接ぎ後もキメラ構成を維持していることを確認した。また、一方では、キメラ個体から得られた穂木をカラタチ台に高接ぎし、これらの個体から発生した側枝についてもキメラ性を維持していることを確認した。以上のことから、これらの個体は安定した周縁キメラであり、高接ぎによる増殖が可能であることも確認した。これらの新植物(後記する実施例の系統NO.14、NO.15、NO.17、NO.19)は、株式会社愛媛柑橘資源開発研究所(所在地;愛媛県松山市安城寺町478番地)に存在(図2−5)するとともに、必要により分譲可能な状態で保存、管理されていることを宣言する。 【0010】本発明によるミカン科植物周縁キメラ新植物は、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2、3層が異なるミカン科植物により構成されている。このため、オレンジと温州ミカンあるいはオレンジとポンカンの組合せにより得られたこれらの植物体の果実は、オレンジが茎頂起源層第1層の植物体では果肉がオレンジで、果皮が温州ミカンあるいはポンカンというまったく新しい果実が結実することが予想される。反対に、茎頂起源層第1層が温州ミカンあるいはポンカンの植物体では果肉が温州ミカンあるいはポンカンで、果皮がオレンジというまったく新しい果実が結実することが予想される。本発明により得られた系統NO.14およびNO.19の果皮が温州ミカンおよびポンカンで果肉がオレンジであるキメラ新植物は、カイヨウ病に病害抵抗性があり、食用においては、剥皮性が良く、香味的にはオレンジの香味を有する植物体となることが予想される。また、系統NO.15およびNO.17についても果皮がオレンジで、果肉が温州ミカンおよびポンカンのキメラ植物体であるので、果実の貯蔵性がよく、果皮はオレンジ香を有する植物体となることが予想される。このように、これらの周縁キメラ新植物から得られる果実は、生産性、流通性および嗜好性に関して既存種にはない優れた点を有する可能性がある。さらに、どの周縁キメラ新植物も既存種の優良形質を組合せて有しており、ミカン科植物の周縁キメラ新植物としての新規性も高く、また、果実の品質および栽培特性が良好な系統は新しい栽培植物となる可能性は非常に高い。以上、ミカン科植物を例として説明したが、本発明は、ミカン科植物以外の植物で、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2および第3層とが互いに異なる種で構成されている周縁キメラ植物においても、同様に適用されるものであることは云うまでもない。 【0011】 【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は該実施例によって何ら限定されるものではない。以下、本発明に係る植物の茎頂起源層構成の確定、キメラ個体の選抜/作出、新植物の育成過程およびその特性等を記載する。 実施例1(1)珠心胚実生寄せ接ぎによる温州ミカンとオレンジあるいはポンカンとオレンジのキメラ個体の作成および選抜1)寄せ接ぎ・活着実生の胚軸部を子葉から上の部分約1.5〜2.0cmをカミソリを用いて中心部分まで縦にそぎ取り、温州ミカンとオレンジ、あるいはポンカンとオレンジの実生の削り取った部分を密着させ、固定した後、鹿沼土を用いてプラスチック容器に移植を行った。この寄せ接ぎ苗を恒温恒湿室(26℃、湿度70%、蛍光灯14時間日長)で2週間育成し、接ぎ木部の活着を完了した。 【0012】2)カット・不定芽観察活着後、接合部分を水平にカットし、2種の植物の形成層が十分に活着している個体のみを育成した。カット後、カット面にパスツールピペットで蒸留水を滴下し、透明プラスチックカップをシュート部全体に被せ、切断面が乾燥しないようにした。このカット苗を恒温恒湿室内で育成した。不定芽の観察は実体顕微鏡を用いて行い、カット面における2種の植物の接合部分以外から発生した不定芽は切除し、接合部分から発生した不定芽のみを育成した。 【0013】3)RAPD法によるキメラ個体の選抜顕微鏡観察によって不定芽の選抜を行い、約3ヶ月育成した個体について、以下に示す手順で、RAPD法により、キメラ個体の選抜を行った。育成した幼苗から葉部の一部を採取し、SDS法を1/5にスケールダウンした改変法により該葉部からDNAを抽出した後、30ng/μlに調整し、テンペレートDNA溶液として用いた。このテンペレートDNA溶液0.5μlに、12merのプライマー((株)BEX社製の動植物および微生物に存在する遺伝子(アミノ酸)配列に基づいてデザインされたコモンプライマー(ランダムプライマー))10pmol/0.5μlおよびTthDNAポリメラーゼ(東洋紡(株)社製)0.5ユニットを加え、最終の反応液の量を12.5μlとした。この反応系でDNAを増幅し、増幅されたDNAバンドは、1.5%アガロースゲルで電気泳動した後、エチジウムブロマイドで染色し、紫外線照明下で観察した。分子量マーカーとしては、Marker 4(φX174/HaeIII digest;(株)ニッポンジーン社製)を使用した。電気泳動の結果、温州ミカンおよびポンカン由来の増幅DNAバンドは1300bp付近に、オレンジ由来の増幅DNAバンドは1050bp付近にそれぞれ観察された。また、キメラ個体では、1300bp付近および1050bp付近の両方に温州ミカンとオレンジあるいはポンカンとオレンジ由来の増幅DNAバンドが観察された。前述の方法により、2種の植物由来のバンドを合わせ持つ個体をキメラ個体として選抜した。 【0014】すなわち、本実施例においては、温州ミカンとオレンジ450個体の寄せ接ぎを行い、活着後、接合部位をカットし、顕微鏡観察により197不定芽を選抜した。RAPD検定の結果、4個体がキメラ個体として選抜され、このうちキメラ性が異なる系統NO.14およびNO.15の2系統をキメラ個体として得た(表1の系統NO.14、15)。また、ポンカンとオレンジ113個体の寄せ接ぎを行い、活着後、接合部位をカットし、顕微鏡観察により62不定芽を選抜し、RAPD検定の結果、系統NO.19がキメラ個体として得られた(表1の系統NO.19)。 【0015】(2)キメラ個体の葉部分析による茎頂起源層構成の確定および新植物の作出次に、成葉が十分に展葉したキメラ個体について、葉部組織の分析により茎頂起源層構成の確定を行い、得られたキメラ個体が茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2、3層の周縁キメラかどうかの確認を行った。以下に、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2、3層の周縁キメラの層構成の確定方法の詳細を記載する。 1)葉部の採取および葉部組織の前処理キメラ個体の葉部試料として、展開直後の黄緑色の柔らかい新葉を採取し、葉部全体を丁寧に洗浄した後、背軸面を削った。残った葉部組織は、乾燥しないように、直ちに、浸透圧を調整した下記組成の酵素希釈用緩衝液に浸漬した。 酵素希釈用緩衝液(組成) ・ 10mMCaCl2・ 0.6Mマンニトール・ 1.0mM MES−カリウム塩【0016】2)葉部酵素処理酵素溶液は、ヤクルト薬品工業(株)社製のマセロチームR−10とセルラーゼオノズカR−10を使用し、酵素希釈用緩衝液を用いてこれらの酵素をそれぞれ3%および5%を含む混合酵素液を調製し、pHは5.7に調整した。まず、ファルコン社製60mmφディッシュに酵素液10mlを分注し、これに葉部組織を入れ、40℃、50回/分のシーソー振とう下で60分間酵素反応を行った。この酵素処理を2回繰り返した。 【0017】3)表皮細胞の精製合計120分間の酵素反応の後、0.24MCaCl2 溶液で2回、TE溶液(10mM Tris−HCl,1mM EDTA,pH8.0)で2回洗浄の後、さらにTE溶液を交換したディッシュ中に表皮細胞を移し、5℃で1晩浸漬することによって葉肉細胞の混入のない表皮細胞を単離、回収した。 【0018】4)葉肉細胞の回収表皮細胞の回収が終了した酵素溶液中には葉肉細胞が浮遊している。この酵素溶液を50μmのナイロンメッシュで濾過した。メッシュ上の残渣を0.24MCaCl2 溶液で回収液量が約40mlとなるように洗浄・回収を行った。 【0019】5)葉肉細胞の精製洗浄・回収を行った葉肉細胞懸濁酵素液を10ml容の遠沈管4本に移し、150×gで遠心した。上澄み液を捨て、残渣を0.24MCaCl2 溶液に懸濁させ前述の遠心操作で2回酵素溶液により洗浄を行った後、0.24MCaCl2 溶液中で全DNA抽出の直前まで5℃で保存した。 【0020】6)RAPD検出用テンペレートDNAの抽出表皮細胞は、TE溶液からピンセットで採取し、液切りした後、0.6ml容のマイクロチューブに移し、これに抽出用緩衝液を0.2ml加え、SDS抽出法を1/5にスケールダウンした方法により抽出を行った。葉肉細胞は、上記保存細胞を、抽出直前に、遠心し、抽出用緩衝液に懸濁し、表皮細胞と同様の抽出法により抽出を行った。 【0021】7)RAPD検出前述のテンペレートDNA溶液0.5μlを用いて、キメラ個体選抜に用いたRAPD分析法に従い、組織別にDNAの分析を行った。酵素処理により得られたキメラ個体の表皮細胞では、系統NO.14に1050bp付近のオレンジ由来の増幅DNAバンド(図6)、NO.15に1300bp付近の温州ミカン由来の増幅DNAバンド(図7)、NO.19に1050bp付近のオレンジ由来の増幅DNAバンド(図9)がそれぞれ検出された。すなわち、系統NO.14およびNO.19は、茎頂起源層第1層がオレンジで構成されていることが確定された。また、系統NO.15は、茎頂起源層第1層が温州ミカンで構成されていることが確定された。一方、酵素処理により得られたキメラ個体の葉肉細胞では、系統NO.14に1300bp付近の温州ミカン由来の増幅DNAバンド(図6)、NO.15に1050bp付近のオレンジ由来の増幅DNAバンド(図7)、NO.19に1300bp付近のポンカン由来の増幅DNAバンド(図9)がそれぞれ検出された。すなわち、系統NO.14およびNO.19は、茎頂起源層第2、3層が温州ミカンおよびポンカンで構成されていることが確定された。また、系統NO.15は、茎頂起源層第2、3層がオレンジで構成されていることが確定された。 【0022】その結果、系統NO.14は、茎頂起源層第1層がオレンジ、茎頂起源層第2、3層が温州ミカンの、周縁キメラ新植物であることが判った(表1の系統NO.14)。系統NO.14から得られる果実は、果皮が温州ミカン、果肉がオレンジのまったく新しい果実が結実することが期待される。系統NO.15は、茎頂起源層第1層が温州ミカン、茎頂起源層第2、3層がオレンジの、周縁キメラの新植物であることが判った(表1の系統NO.15)。系統NO.15から得られる果実は、果皮がオレンジ、果肉が温州ミカンのまったく新しい果実が結実することが期待される。系統NO.19は、茎頂起源層第1層がオレンジ、茎頂起源層第2、3層がポンカンの、周縁キメラ新植物であることが判った(表1の系統NO.19)。系統NO.19から得られる果実は、果皮がポンカン、果肉がオレンジのまったく新しい果実が結実することが期待される。このようにして、本発明の茎頂起源層構成の確定方法により得られた分析結果から、キメラ個体の果実を予想することが可能となった。 【0023】 【表1】
【0024】実施例2(1)珠心胚実生貼り接ぎによるポンカンとオレンジのキメラ個体の作出本実施例では、作出に供試する2種のミカン科植物の珠心胚実生のどちらか一方を寄せ接ぎの要領で胚軸を削ぎ、その部分にもう一方の胚軸の一部分を切り出して、貼り接ぎ(図1)し、活着の後、貼り接ぎ部を水平にカットした。これ以降、寄せ接ぎで行った手順と同様の手順でキメラ個体の選抜を行った。キメラ個体は、2種のミカン科植物組織の接合部分において、両方の組織からの不定芽の発生の見られる場合には、寄せ接ぎの手法以外の、貼り接ぎの手法等の他の手法を用いても作出は可能であった。貼り接ぎの手法は、どちらか一方の品種の種子や珠心胚実生の数が、もう一方の実生より不足している場合に1本の実生から4個程度の貼り接ぎ用の組織の採取が可能であるというメリットがあり、また、寄せ接ぎと比較すると作業工程が簡単で作業効率がよいというメリットがある。 【0025】RAPD分析により、系統NO.17は、1300bp付近のポンカン由来の増幅DNAバンドと1050bp付近のオレンジ由来の増幅DNAバンドを合わせ持つキメラ個体として選抜された。すなわち、本実施例においては、ポンカンとオレンジ84個体を貼り接ぎ法により接合し、活着の後、接合部位を水平にカットし、顕微鏡観察により、53の不定芽を選抜した。RAPD検定の結果、系統NO.17がキメラ個体として得られた(表1の系統NO.17)。次に、前述の茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2、3層構成の確定方法を用いて、貼り接ぎ法により得られた系統NO.17の表皮細胞および葉肉細胞を実施例1と同様にRAPD分析法により分析したところ、表皮細胞からは、1300bp付近のポンカン由来の増幅DNAバンド(図8)、葉肉細胞からは、1050bp付近のオレンジ由来の増幅DNAバンド(図8)がそれぞれ検出された。すなわち、系統NO.17は、茎頂起源層第1層がポンカンで茎頂起源層第2、3層がオレンジで構成される周縁キメラであることが判った。 【0026】以上のように、上記実施例1、2により作出された系統NO.14、NO.15、NO.17、NO.19は、すべて茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2、3層の周縁キメラであり、それぞれの系統について茎頂起源層の異なるミカン科植物の組合せにより構成されている。そのため、得られる果実は、それぞれが異なるまったく新規の果実となることが予想される。茎頂起源層構成の確定が終了した上記4系統は、すべての系統について穂木を採取し、鉢植えのカラタチ台木および試験圃場の温州成木に高接ぎし、約1年間にわたりキメラ性の安定性試験を行った。調査は、高接ぎを行ったすべての高接ぎ個体において発生した第1次側枝および第2次側枝について、採取可能な側枝を可能な限り調査した結果、すべての葉がキメラ性を維持しており、上記4系統は、周縁キメラであることを確認した。 【0027】このように、本発明により、茎頂起源層第1層と茎頂起源層第2、3層で構成される周縁キメラ植物の作出において栄養成長期の段階で層構成の確定が可能であるため、より効率的な育種選抜が可能となる。また、本発明のミカン科の合成周縁キメラ新植物は、果皮と果肉が異なる種から構成されているため、得られたキメラ植物体は耐病性品種を果皮に利用した系統や、香り、色、味における果皮と果肉のバランスが既存品種にないキメラ植物体である。また、本発明により、既存品種の優れた特性がほぼ直接的に形質発現されたキメラ植物体であって、これらの特性を組合せ作出されたミカン科の合成周縁キメラの新植物が提供される。 【0028】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、周縁キメラ植物体のキメラ性を幼植物の段階で確定する方法であって、2種のミカン科植物により構成されている周縁キメラ植物体の展開直後の植物体の一部を酵素処理することにより表皮細胞と内部の細胞に分離した後、これらの細胞由来のDNAをDNAマーカーを用いて、分析を行い、茎頂起源層第1層の種と茎頂起源層第2および第3層の種を確定することを特徴とするミカン科の合成周縁キメラ植物の茎頂起源層構成の確定方法等に係るものであり、本発明の葉部分析によるキメラ個体の選抜法および葉部組織の層別分析による茎頂起源層の確定法により、作出されたキメラ候補個体の中から、確実に合成周縁キメラを選抜することが可能となり、さらに、そのキメラ個体の茎頂起源層の確定が可能となった。このため、合成周縁キメラであり、かつ茎頂起源層構成の確定した個体のみを圃場あるいは園地栽培に供することができるので、圃場面積の有効利用や育成年限の短縮が可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】596135755 【氏名又は名称】株式会社愛媛柑橘資源開発研究所
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)10月2日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】須藤 政彦
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| 【公開番号】 |
特開平11−103706 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)4月20日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−286038 |
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