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【発明の名称】 植物培養法および容器
【発明者】 【氏名】古在 豊樹

【氏名】鳥取 義己

【要約】 【課題】ラン科植物などの苗の大量安定急速生産技術の提供。簡単な方法、設備で植物の成長を促進し、また順化以降の生育と生存率を増加する植物培養法および容器の提供。

【解決手段】エアホース差し込み孔、および通気膜を装着する開口部を設けた袋状に加工した軟質シートの培養容器を用い、当該密閉培養容器に炭酸ガス混合槽からエアホースを通して定量供給することにより、光独立栄養培養による植物の成長を促進し、無糖培養を行うことを特徴とする植物培養法および植物培養容器。エアホース先端を培養液中に入れ、通気ガスを培養液の中に導入しその後、通気膜から外に排出するようにした。密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することにより植物の蒸散速度を増加させる。培養容器に入れる培養液が、無糖の溶液を使用し、培養液内に植物体を移植する支持体を浸透させて使用する。密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することにより培養液中の溶存酸素量を高くし、また培養液を循環させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エアホース差し込み孔、および通気膜を装着する開口部を設けた袋状に加工した軟質シートの培養容器を用い、当該密閉培養容器に炭酸ガス混合槽からエアホースを通して定量供給することにより、光独立栄養培養による植物の成長を促進し、無糖培養を行うことを特徴とする植物培養法。
【請求項2】 エアホース先端を培養液中に入れ、通気ガスを培養液の中に導入しその後、通気膜から外に排出するようにした請求項1の植物培養法。
【請求項3】 密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することにより植物の蒸散速度を増加させる請求項1または2の植物培養法。
【請求項4】 培養容器に入れる培養液は、無糖の溶液を使用し、培養液内に植物体を移植する支持体を浸透させて使用する請求項1、2または3の植物培養法。
【請求項5】 密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することにより培養液中の溶存酸素量を高くし、また培養液を循環させる請求項1ないし4のいずれかの植物培養法。
【請求項6】 エアホース差し込み孔、および通気膜を装着する開口部を設けた袋状に加工した軟質シートの密閉培養容器、炭酸ガスの濃度を調整する混合槽、および混合槽から炭酸ガスの濃度を調整されたエアを供給するエアホースからなり、該エアホースがその先端を培養液中に入れ、エアを培養液の中に導入しその後、通気膜から外に排出されるようにされていることを特徴とする植物培養容器。
【請求項7】 培養容器内に混合槽から常時、送風する手段を設けた請求項6の植物培養容器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物類の生育方法に係り、特にくわしくは果実、野菜等の農作物や果樹、植林などが行う光合成を活発にしてその生育を促進し、結果として農作物等の生育速度を促進させる。本発明は、種子、組織培養外殖体及び幼苗を袋状の培養容器に入れ、炭酸ガスを供給することにより植物の成長を促進し、また順化以降の生育と生存率を増加する植物培養方法および容器に関する。
【0002】
【従来の技術】地球環境保護、砂漠緑化、熱帯雨林再生、食料欠乏などの国際的問題の解決が急がれる今日、良質な苗を安価に大量に生産するための技術開発へ寄せられる期待が大きくなっている。苗の大量安定急速生産技術は、農林業技術、バイオテクノロジー、工業技術などの応用技術であり、新しい技術体系として成長していくと期待されているものである。また、苗は、今後、国際商品としての性格を次第に強め、その市場規模は急速に拡大していくと考えられる。苗の大量安定急速生産のためには、環境調節と自動化がとくに重要である。
【0003】植物の成長には、窒素、リン、カリの三要素に加えて適度な温度、光、水が必要であることが知られている。幼植物培養においてはそれらに加えて無菌の培養液に糖を添加し、従属栄養培養状態で成長させる方法がとられている。コンタミネーションと呼ばれる雑菌汚染による培養植物の損失を恐れるために、培養器の小型化、密閉化がすすめられ、例えば、培養容器は使い捨てのガラスフラスコにゴム栓で蓋をする方法、もしくはポリカーボネ−ト製等の密閉容器の1部に滅菌のフィルターを装着し培養室内の炭酸ガス濃度を高めて自然換気を促進することで容器内に炭酸ガスを供給する方法を使用している。こうした小型化は、結果として培養器内の環境調節と自動化を阻む要因となり、密閉化は、弱光、高湿度といった培養器内異常環境の特徴をもたらす。
【0004】従来の培養方法の問題点を、下記に列記する。
1.有糖培養液で培養することにより完全な殺菌処理が必要であり、コンタミネーションによる損失の危険性も高い。また有糖培養に依存するために従属栄養状態になり培養期間中の成長が遅くなる。さらに培養容器から移植後も光独立栄養状態に変わる間、成長が停滞する。
2.容器の換気回数が極めて低いために炭酸ガスの供給が伴わなく光合成速度が低下する。
3.容器内の気流速度が低いために成長速度が遅い。
4.容器内が高湿度のために気孔の開閉機能が発達せず、低湿度環境に移植した場合に枯死する比率が高い。
5.フラスコ内等の狭い環境において植物体が、重なり合ったり不自然な形で成長するので均一な成長が期待できない。
6.移植後には、断根などによる植え傷みで成長を抑制する欠点がある。
【0005】このような事情により、機械化や省力化が進まないことから、培養苗の価格が低下せず普及を遅らせている背景がある。一方、最近の研究により、培養器内にある培養植物は光合成能力をもつことが明らかとなっている。培養植物の光合成を促進するように培養器内環境を調整することにより、組織培養苗生産コストが大幅に引き下げられる可能性があり、無糖培養による大型培養容器の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】近年、ラン科植物は、植物組織培養技術を用いたマイクロプロパゲーションにより増殖され、それ以降の培養器内の培養体は、培地中の糖を重要な炭素源とする従属栄養生長、あるいは培地中の糖や培養体の光合成から得られた炭水化物を炭素源とする光混合栄養生長を行っている。従属栄養生長、あるいは光混合栄養生長の場合、培地に添加する糖のために、コンタミネーションが生じやすい。この問題を解決するために培養体を光独立栄養生長へ転換させることが必要となる。また、光独立栄養生長をより促進させるためにCO2施用、高光合成有効光量子束密度(以下、PPFD)条件下で、培養する必要がある。本発明はこうしたラン科植物などの苗の大量安定急速生産技術の提供を目的としている。また、本発明は組織培養苗の生産コストを大幅に引き下げることを目的としている。本発明は種子、組織培養外殖体及び幼苗を袋状の培養容器に入れ、炭酸ガスを供給するという簡単な方法、設備で植物の成長を促進し、また順化以降の生育と生存率を増加する植物培養法および容器を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、エアホース差し込み孔、および通気膜を装着する開口部を設けた袋状に加工した軟質シートの培養容器を用い、当該密閉培養容器に炭酸ガス混合槽からエアホースを通して定量供給することにより、光独立栄養培養による植物の成長を促進し、無糖培養を行うことを特徴とする植物培養法を要旨としている。上記植物培養法において、エアホース先端を培養液中に入れ、通気ガスを培養液の中に導入しその後、通気膜から外に排出するようにしたことを特徴とする。上記植物培養法において、密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することで植物の蒸散速度が増加し、これにより環境変化に対するストレス耐性を高め、移植後の生存率と成長速度を増加させる。上記植物培養法において、密閉培養容器内の培養液中に送風するために培養液中の溶存酸素量が高くなり、植物体の根圏の成長が促進し、また培養液が循環するので、均一に施用できる。
【0008】本発明は、エアホース差し込み孔、および通気膜を装着する開口部を設けた袋状に加工した軟質シートの密閉培養容器、炭酸ガスの濃度を調整する混合槽、および混合槽から炭酸ガスの濃度を調整されたエアを供給するエアホースからなり、該エアホースがその先端を培養液中に入れ、エアを培養液の中に導入しその後、通気膜から外に排出されるようにされていることを特徴とする植物成長環境制御容器を要旨としている。本発明の培養容器において、培養容器内に混合槽から常時、送風する手段を設けたことを特徴とする。密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することで植物の蒸散速度が増加する。これにより環境変化に対するストレス耐性を高め、移植後の生存率と成長速度を増加させることができる。本発明の培養容器において、密閉培養容器内の培養液中に送風することにより培養液中の溶存酸素量が高くなり、植物体の根圏の成長が促進する。また、培養液が循環するので、均一に施用することができる。
【0009】培養液は、無糖の溶液を使用し、培養液内に植物体を移植する支持体を浸透させて使用する。植物体が支持体に付着した状態のまま移植することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の対象とする植物は、優性個体のみの増殖、ウィルス除去、増殖率が低い、均一な植物の需要が高い等の理由により組織培養等の増殖が望まれている植物、遺伝子を組み換えた植物や細胞融合された植物を始め、通常の種子から育苗する植物等の総ての植物である。好ましくは、主として独立栄養を営み、そのため動物系、感覚系、神経系を欠き、光合成を行い固着生活をする植物を対象とする。
【0011】本発明の植物培養法は無糖培養法である。通常は、炭素源となるグルコース、シュークロースなどの糖を1〜3%程度添加した、植物ホルモンと無機成分と有機成分とを含んだ培地で培養されるが、本発明においては炭素源となるグルコース、シュークロースなどの糖を除いた培地を採用している。
【0012】培養苗の生長・発育に影響を及ぼす環境要因これまで、培養植物のもつ光合成能力に着目し、培養器内の環境調節を行うことによって培養植物を光独立栄養生長させる培養方法が数種の主要培養植物種について試みられ、その生長促進が確認されている。光独立栄養培養法において、培養器内の培養植物の生長・発育に影響を及ぼすいくつかの環境要因について簡単に説明する。
1)光培養植物の生長は、培養器内の二酸化炭素濃度と光強度を高めることによって促進される。従来法におけるように培養植物の光合成の制限要因が二酸化炭素濃度であるとき、二酸化炭素濃度を通常のレベルに高めなければ、光強度を高めることによる成長促進は期待できない。明期と暗期の時間周期(明暗周期)もまた、培養植物の生長に影響を及ぼす。一般に広く適用される明暗周期24時間・明期16時間条件下と比較して、明暗周期6時間・明期4時間条件下で、培養植物の生長は促進されるという報告がある。
2)培養器の通気性(換気回数)
培養器の栓にどのようなものを用いるかによって、培養器内のガス環境、光環境が異なってくる。培養器の通気性は換気回数(培養器の単位時間あたりの通気量を培養器の容積で除したもの)によって表される。広く一般に用いられるアルミフォイルキャップ、成形プラスチックを栓とした場合の平底試験官(口径25mm、管長120mm)の1時間あたり換気回数は、それぞれ約0.2、1.5回である。培養器の栓にメンブランフィルタを取り付けることによりこの値は3回程度に高められる。本発明は培養器内に混合槽から常時、送風することにより換気回数は非常に高められる。
【0013】3)相対湿度および水ポテンシャル培養器内の空気湿度および培地浸透圧は、培養植物の水収支、生長、発育および光合成などに影響を及ぼしている。培養植物の形態異常として知られるビトリフィケーション(水浸状化、ガラス化)の原因の一つとして培養器内の高相対湿度があげられている。培養器内の水収支を解明するには、水ポテンシャルという概念に基づいて行うのが適当である。液体培地の水ポテンシャルの絶対値は、浸透圧に一致する。空気の相対湿度は、単純な物理法則を用いて、水ポテンシャルに換算することができる。培養植物、培地、培養器内空気の間の水分移動は、すべて水ポテンシャルにより表すことができる。
4)温度一般に、養室内の気温設定は明期暗期一定とする方法が広く採用されている。培養器内の気温は明期において、培養器外よりも通常1℃程度高くなっているが、明期の培養器内外の気温差は光強度、培養器の形状、材質によって異なると考えられる。明期と暗期の気温差(DIF)が植物体の形態に影響を及ぼすことが知られている。植物組織培養においても、DIFは重要な制御因子の一つとなる。
【0014】5)二酸化炭素濃度、酸素、エチレン培養器内のガス組成を変更するには、(a)培養器内に特定ガス成分の吸着剤あるいは発生剤を封入する、(b)培養室内のガス環境調節を行うとともに培養器の通気性を高める、(c)培養器内に強制的通気を行う、といった方法がある。本発明は炭酸ガス混合槽からエアホースを通して定量供給することにより行う。培養器内の二酸化炭素濃度は、0.5〜30%である。炭酸ガス混合槽で炭酸ガスと空気を混合して必要な二酸化炭素濃度の混合ガス(エア)を作り、エアホースを通して定量供給する。培養器内に供給された二酸化炭素濃度は、低下することが無いように各成長段階に応じて、1)培養器内のエアーをシリンジにてサンプリングしてガスクロマトグラフによって二酸化炭素濃度を測定する、2)培養器のエアーをサンプリングするためのエアーホースを取り付け、そこから赤外線検出器を通して二酸化炭素濃度を測定する等の方法から、培養器内の二酸化炭素濃度を測定、把握する必要がある。測定の結果、培養器内の二酸化炭素濃度が培養器内に供給されている濃度より下回る場合には、1)炭酸ガス混合槽において二酸化炭素濃度を調節し培養器内に供給している二酸化炭素濃度の設定を高くする、2)供給しているエアー量を増加させる、等の対応が必要になる。しかし、培養する植物のサイズや数量、培養環境等が同じであれば、培養植物の成育による二酸化炭素濃度供給量が常に同じ変化を示すためにその培養時間の経過による二酸化炭素濃度の変化を把握すれば、随時測定する必要はなく、その培養の時期的経過の例に基づいて二酸化炭素濃度が低下しないように対応すれば良い。C3植物の光呼吸は、総光合成量の約25〜50%を占めるといわれている。酸素濃度を低下させれば、光呼吸を抑制することが可能であり、その結果、純光合成量を増大できる。酸素濃度の抑制は困難であるために、従来上述の事実は単に科学的興味にとどまっていた。ところが、培養器内の酸素ガス濃度制御は困難ではないので、植物組織培養においては、C3植物に対する酸素ガス濃度制御を実用的観点から検討する必要がある。ただし、酸素濃度の低下は、増殖器官の形成を阻害することがあるといわれているので、そのことを考慮する必要がある。また、エチレンガスの存在が植物の生長、分化に影響を及ぼしていることは広く知られている。また、植物自身が特定の条件下でエチレンを発生する。培養時におけるエチレンの消長は重要かつ複雑な問題である。
【0015】6)空気流動植物の純光合成速度および蒸散速度は、空気流動の影響を受ける。小植物体の純光合成速度は、培養器内に強制的に通気を行った場合に大きくなることが報告されているが、炭酸ガス混合槽からエアホースを通して定量供給する系における影響については報告がない。本発明は密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することにより植物の蒸散速度を増加させている。
7)支持材および培地無機成分組成植物組織培養の培地には、寒天などをゲル化剤とした固体(ゲル状)培地を使用する場合が多い。しかし、ゲル状培地の組成、pHなどの連続的計測・制御は困難である。また、従来法に広く用いられている培地の無機成分組成は、光独立栄養培養法に適するとは言いがたい。光独立栄養培養法によりカーネーションを培養した場合、培地として水耕栽培で広く用いられている水耕養液を使用し、糖およびビタミン類を添加しなかったもので、培養植物の生長が促進された。従来法でよく用いられているMS培地の場合、1/2濃度にしたものではNH4+,Mn2+の濃度が水耕養液の5〜8倍であり、逆にPO43-、Ca2+、Mg2+の濃度は0.3〜0.5倍である。また、MS培地基礎成分を用いてイチゴを光独立栄養培養したところ、やはり従来法よりも培養植物の成長は促進されたが、このとき培養後期には培地中のPO43-がほとんどなくなっていたという報告がある。閉栓培養器内では、通常、相対湿度が高いために培養植物の蒸散速度は低くなっている。したがって従来法では、蒸散が小植物体の養分吸収に寄与しているとは言いがたい。さらに培地のイオン濃度は、小植物体がイオンを吸収するにつれ減少している。蒸散速度を高めることにより、培養植物の養分吸収と生長は促進されると思われる。
【0016】本発明の袋状に加工した軟質シートの培養容器について説明する。軟質シートは袋状に加工できるガス非透過性の軟質シートであれば特に制限はなく、低密度ポリエチレンシート等でも問題はない。しかし、低ガス透過性、高透明性、日光による影響が少なく、さらにオートクレーブ等による高温殺菌を実施する場合を考慮するとポリプロピレンが理想的である。
【0017】通気膜を装着する開口部について説明する。通気膜は、雑菌の侵入を防止する為に孔径0.5μm以下が望ましく、面積は、培養植物や培養容器の大きさによって変わる強制換気量によって変わる。また取り付け位置は、上部からの光を通気膜によって妨げることが無いように側面が良い。しかも、側面に張り付けることで、培養容器の結露水が流れ落ちるので通気膜の結露水による詰まりが無くなる。(この通気膜の代わりに外部フィルターを使用した場合、培養容器内の高湿度によって直ちに水詰まりを起こす。また、水詰まりを防止するために培養容器とフィルターの間に水切り装置や乾燥装置が必要になり培養容器を複雑化する。)材質は、高熱殺菌を行う事を考慮して耐熱性のあるテフロン製もしくはポリプロピレン製の通気膜が理想である。
【0018】炭酸ガス混合槽について説明する。外気の空気とガスボンベから供給された炭酸ガスを混合槽にて最適な濃度に調整し混合槽内のエアーポンプによって培養容器に供給する。混合槽内の炭酸ガス濃度は、常に炭酸ガスモニターで測定され、モニターからの信号によって電磁弁が開閉されることでボンベから供給される量を調整する。それによって槽内の炭酸ガス濃度を最適な一定濃度に維持する。通気口は、培養容器に送風する送風量に影響がなければ、可能な限り小さい穴が理想である。また通気口は、外気に浮遊しているゴミ等の混入がないように編み目状の膜等で覆う。混合槽は、空気透過性が低く、長時間の使用でも劣化の少ない材質であれば、特に限定しないが、硬質アクリル材等が良いと思われる。
【0019】常時送風手段について説明する。混合槽で最適な炭酸ガス濃度に調節されたエアーは、混合槽内のエアーポンプによって随時送風され、分配管により各培養容器に配分され、さらに流量調節バルブによって最適な流量に調節される。エアーポンプは、常に安定した送風が可能であれば、特に制限はない。分配管、流量調節バルブにおいても調整した設定の維持が可能であれば制限はない。
【0020】
【作用】本発明によれば、混合槽で最適な濃度に調整された炭酸ガスをエアーホースを通して培養容器内に供給されるので、植物体は、光合成能力が向上し、糖を使用しない光独立栄養培養が可能になる。また。容器内の気流速度を増加することで炭酸ガス濃度を均一に施用するとともに環境に対するストレス耐性を高める。また、培養容器の構造体を大きくすることで、植物体同士や容器への接触が少ないために生長抑制ストレスが少なくなる。密閉培養容器内に混合槽から常時、送風することで植物の蒸散速度が増加し、これにより環境変化に対するストレス耐性を高め、移植後の生存率と成長速度を増加させる。密閉培養容器内の培養液中に送風するために培養液中の溶存酸素量が高くなり、植物体の根圏の成長が促進し、また培養液が循環するので、均一に施用できる。
【0021】
【実施例】本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0022】実施例1本発明の培養容器の一実施例を図面を参照しながら説明する。まず構成について説明すると、炭酸ガス濃度を調整する混合槽1、培養植物体を収納する培養容器2から成る。
【0023】混合槽1は炭酸ガス濃度調整装置を形成する。この混合槽1は通気穴2のある密閉型容器を使用する。この混合槽1には、炭酸ガスモニター3に接続され常に測定される。測定値が、設定値より低濃度になった場合は、設定濃度まで炭酸ガスボンベ4よりエアーホース5、電磁弁6を通して供給される。設定値になると自動的にその供給が停止する。混合槽内部には、エアーポンプ7が備えつけてあり各培養容器に配分する配分管8、培養植物体の光合成に必要な炭酸ガス量を流量調節バルブ9によって調節し、エアーフィルター10を通して培養容器11に送気される(エアーフィルター10は、無菌状態を維持した場合のみ装着する)。
【0024】培養容器11は、例えばポリプロピレン等の軟質素材で製作した袋状の培養容器である。培養容器11の密閉した側面にはエアーホース5が、側面を通して培養液12中のエアーレーション管13に接続され培養容器の1辺から均一に気泡として放出される。その気泡によって培養液の溶存酸素量が増加すると共に培養液が循環し、植物体に均一に施用される。開封口は、凹型凸型の2部品で構成され、ワンタッチで取り外しが可能な密閉棒15により開封口を密閉する。なお、植物体を移植直後からの短期間は、移植ストレスを削減するために培養容器11の通気膜14の内側を密閉棒15を用いて密閉し、その後、取り外し送気を開始する。
【0025】また、植物体は、培養液が浸透し易いように側面と底面に幾つもの穴が空いている支持体トレー16に装着したロックウール等の支持体17に移植後、培養容器内に収納する。
【0026】実施例2実施例2では強制換気型培養容器を用い、ファレノプシス培養体を供試して、無糖培地、強光、強制換気条件下で培養体を光独立培養して生長に及ぼす影響について検討した。
材料及び方法供試植物にはファレノプシス(Phalaenopsis Musashino'Jujo')のPLBから2〜3枚の葉が分化した物を用いた。試験区は、無糖培地CO2施肥環境下において、密閉型容器、通気膜付容器、強制換気型容器、有糖培養フラスコ容器に通気膜を装着した4試験区に、有糖培養、CO2無施肥環境下で従来から使用しているフラスコ容器の試験区を加え、計5試験区を設置し、表1(供試植物の培養条件)の条件で培養した。実験開始時における各測定結果を表2に示した。培養体植え付け後、密閉状態、16時間明期、3μmolm2slPPFDの条件下(従来法の試験区を除く)で14日間培養した後、試験を開始した。最初の試験期間は90日とした。実験開始90日目における全体重、乾物重、乾物率、葉面積の測定結果を表3に示した。さらに試験を試験期間180日まで継続した。実験開始180日目における全体重、乾物重、乾物率、葉面積の測定結果を表4に示した。
【0027】結果および考察培養開始後90日目において強制換気型容器による培養体の生体重は、密閉型容器の2.6倍、通気膜付容器の1.1倍、通気膜を付けた有糖培養の1.4倍に、そしてCO2無施肥下で培養した従来のフラスコ培養については1.7倍以上の生長結果を測定した。さらに有糖培養条件下の培養体は、無糖条件下の培養体に較べて根圏が伸長しS/R比の差が大きく生じた。培養開始後180日目においてこれらの差がさらに大きく広がった。培養容器内CO2濃度の経時変化を測定した結果、CO2無施肥下で培養したフラスコ培養及びCO2施肥下で培養した通気膜付フラスコ培養は共に容器外のCO2濃度を大きく上回った。これは有糖培養の場合において光独立栄養に至らないことを証明する結果になった。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【発明の効果】この本発明の培養容器によれば、下記の効果を得ることが可能になる。炭酸ガスを供給することにより光独立栄養培養が可能になることから、成長が大幅に促進するだけでなく、培養容器から移植した以後も成長が停滞することがない。また、無糖培養が可能になり培養器の滅菌処理が軽減でき、しかもコンタミネーションによる損失が激減する。さらに随時、送気することによって成長がさらに促進するだけでなく、蒸散速度が増加することにより気孔や表皮細胞が発達し移植の際の湿度変化に対するストレスが減少する。培養容器内の炭酸ガスが停滞せず均一に施用できる効果がある。培養溶液中に送気することにより培養液の蒸発が抑制される。また気泡が液面まで上昇することによって培養液も沈殿せずに循環し植物体に均一に施用できる。さらに溶存酸素量が増加するために根圏の生長につながる。培養容器を広く大きくすることで植物体同士や容器の接触による生長抑制ストレスが減少する。また従来の培養苗に比べてかなり大きく生長さすことが可能になるために繁雑な幼植物の管理が不要になる。容器の上面に栓等の障害物が無いために光量を有効に利用できる。培養後、植物体は、支持体の付いた状態での定植が可能になり、断根等の損傷が減少することで成長停滞や枯死が少なくなる。また機械化による輸送や移植も可能になる。
【出願人】 【識別番号】595145740
【氏名又は名称】四国コカ・コーラボトリング株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
【公開番号】 特開平11−75593
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平9−237978