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【発明の名称】 緑化基盤材
【発明者】 【氏名】中野 裕司

【氏名】鈴木 美知代

【要約】 【課題】重金属の影響を回避し、環境に優しく安全性の高い緑化基盤材を提供すること。

【解決手段】焼却灰と下水汚泥コンポストと重金属を吸着する有機系の多孔質吸着材とを主材として構成する。多孔質吸着材にはバーク堆肥、ピートモス、ベントナイトの単一又は複数を組み合わて用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼却灰と、重金属を吸着する有機系の孔質吸着材とを主材として構成することを特徴とする、緑化基盤材。
【請求項2】 焼却灰と、下水汚泥コンポストと、重金属を吸着する有機系の多孔質吸着材とを主材として構成することを特徴とする、緑化基盤材。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の緑化基盤材において、多孔質吸着材がバーク堆肥、ピートモス、ベントナイトの単一又は複数の組み合わで構成する構成することを特徴とする、緑化基盤材。
【請求項4】 請求項3に記載の緑化基盤材において、バーク堆肥とピートモスを容積比で2対1の比率にしたことを特徴とする、緑化基盤材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は緑化を目的とした厚層基材吹付工法や客土吹付工法に用いられる緑化基盤材に関し、より詳細には下水汚泥の焼却灰(以下「焼却灰」という)の有効活用を図る緑化基盤材に関する。
【0002】
【従来の技術】焼却灰に多量に含まれるリンや窒素等に着目し、焼却灰を肥料材料として有効活用することが特開平9−328385号公報に開示されている。焼却灰には植物成育に望ましい肥料成分が含まれている反面、重金属が微量含まれることが知られている。つぎの表1は処理水量2万m3 /日の単独公共下水道施設から発生する焼却灰の重金属の溶出試験データを示す。併せて重金属(カドミウム(Cd),鉛(Pb),六価クロム(Cr(VI)),ヒ素(As),水銀(Hg),セレン(Se))に関するいくつかの廃棄処理基準(産廃基準、排水基準、土壌環境基準)を示す。
【0003】
【表1】

【0004】データの最大値をとれば、概ね産廃基準を満たしているものの、As,Seについては排水基準及び土壌環境基準を上回る傾向にあることが判明した。このなかで土壌環境基準が数値的に最も厳しいが、この基準を満たせば一般の良質土砂と同様に用いることができる。
【0005】また焼却灰は土質改良材、セメント原料、焼成製品等の原料として有効利用が進められているものの、現在のところその利用は年間発生量の15%程度に過ぎず、その大半が高いコストをかけて廃棄処分している。このような現状の下で、焼却灰を大量に活用できる新たな分野の開拓が切望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、重金属の影響を回避し、環境に優しく安全性の高い緑化基盤材を提供することにある。
【0007】さらに本発明の他の目的は、より大量の焼却灰を緑化基盤材の配合材として有効活用することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、焼却灰と、重金属を吸着する有機系の孔質吸着材とを主材として構成することを特徴とする。請求項2に係る発明は、焼却灰と、下水汚泥コンポストと、重金属を吸着する有機系の多孔質吸着材とを主材として構成することを特徴とする。請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の緑化基盤材において、多孔質吸着材がバーク堆肥、ピートモス、ベントナイトの単一又は複数の組み合わで構成する構成することを特徴とする。請求項4に係る発明は、請求項3に記載の緑化基盤材において、バーク堆肥とピートモスを容積比で2対1の比率にしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態1】以下、発明の実施の形態の一例について説明する。
【0010】〈イ〉緑化基盤材本発明は焼却灰を主材とし、これに多孔質吸着材を配合して緑化基盤材を構成する。緑化基盤材は少なくとも上記二つ配合要素を含むものであればよく、その他の配合要素については用途や植生植物の種類、植生環境、施工方法等を考慮して適宜選択する事項のものである。
【0011】〈ロ〉多孔質吸着材多孔質吸着材は例えば樹皮を堆肥化して成熟させたバーク堆肥、ミズゴケを腐食化したピートモス及びベントナイトを含み、これらの単一又は複数の組み合わよりなる。
【0012】一般にバーク堆肥やピートモスは緑化基盤材の肥料成分として用いられてきたが、重金属(Cd,Pb,Cr(VI),As,Hg,Se,Cu等)を積極的に吸着して溶出抑制する原材料として用いることは知られておらず、またこの目的で実施された事実もない。
【0013】バーク堆肥やピートモス或いはベントナイトは多孔質であり、上記した重金属を吸着して保持する性質の点で優れている。多孔質吸着材は重金属をイオンにより吸着保持できる多孔質性の部材であればよく、例示したバーク堆肥、ピートモス、ベントナイトに限定されるものではない。
【0014】〈ハ〉重金属の溶出量対比実験[実験装置と実験方法]有効容積20リットルのプランターを10台準備し、各2つのプランター毎に次の表2に示す配合の緑化基盤材(植物(トールフェスク)の種子入り)を夫々充填すると共に、2種の灌水条件の下で10の試験区区A1〜A5,W1〜W5を設定した。試験区A1〜A5は5種の緑化基盤材を対象に酸性雨を想定してpH4.5の硫酸酸性水を灌水し、試験区W1〜W5は5種の緑化基盤材を対象に通常の水道水を灌水した。
【0015】
【表2】

【0016】各試験区A1〜A5,W1〜W5に灌水し、各プランターの底部から回収した浸出水を孔径1ミクロンのガラス繊維ろ紙でろ過した後、下水道試験方法に基づき重金属の分析を行った。また試験区W1〜W5については、浸出水の採取後、各緑化基盤材毎に表層土をランダムに5箇所から採取して混合試料とし、その溶出試験を行った。
【0017】[試験結果]表3に各試験区A1〜A5,W1〜W5のプランター底部から2〜3リットル採取した浸出水の重金属の濃度の分析結果を示し、表4に表層土の溶出試験結果を示す。
【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【0020】■浸出水の重金属濃度産廃基準及び排出基準については、すべての試験区A1〜A5,W1〜W5が満足するものであった。土壌環境基準については、カドミウム(Cd),鉛(Pb),六価値クロム(Cr(VI)),水銀(Hg)についてはすべての試験区A1〜A5,W1〜W5が満足するものであったが、セレン(Se)については対照区とした焼却灰のみの試験区A1,W1だけが基準値を越えていた。銅(Cu)と亜鉛(Zn)については排出基準が夫々3mg/lと5mg/glであるのに対し、約10分の1以下の値であった。
【0021】■表層土の溶出試験結果産廃基準及び排出基準については、すべての試験区A1〜A5,W1〜W5が満足するものであった。土壌環境基準については、対照区とした焼却灰のみの試験区A1,W1を除き、焼却灰にバーク堆肥及びピートモスを混合した試験区A2〜A5,W2〜W5が土壌環境基準を満足するものであった。対照区とした焼却灰のみの試験区A1,W1については、ヒ素(As)及びセレン(Se)が環境基準値を越えた。銅(Cu)と亜鉛(Zn)については排出基準が夫々3mg/l,5mg/glであるのに対し、約10分の1以下の値であった。
【0022】■トールフェスクの成育結果全試験区に亘り、成育障害を示すことなく順調に成長した。対照区とした焼却灰のみの試験区A1,W1が、焼却灰にバーク堆肥及びピートモスを混合した試験区A2〜A5,W2〜W5に比べて、地上部重量及び草丈の点で若干小さかった。対照区である試験区A1,W1が焼却灰の単粒構造となり、孔隙率が他の試験区と比べて低く、根の成長を妨げた可能性が大きく考えられる。重金属が成育を抑制した可能性は低いものとと考えられる。以上のことより、重金属が植物の成育性に与える影響について明確な結論を得られなかったが、焼却灰に適量のバーク堆肥及びピートモスを混合し、さらに理化学性の改善を行えば、さらに良好な成育性を確保できることの確証は得られた。
【0023】
【発明の実施の形態2】前記表2中の配合に関し、下水汚泥のコンポストについては省略する場合もある。
【0024】
【発明の実施の形態3】〈イ〉バーク堆肥及びピートモス単独の重金属吸着能について焼却灰を主材料とする緑化基盤材に混合するバーク堆肥及びピートモスが重金属を吸着する性能について以下のような実験を行った。
【0025】[実験方法]実験はバーク堆肥及びピートモスを吸着材料とし、Cd,Pb,Cr(VI),As,Hg,Seの水溶液を重金属水溶液とし、回分接触法により行い、前記各吸着材料と重金属水溶液が懸濁するように撹拌した。このときの固体と液体の比は1:100とし、20℃高温状態で撹拌したときから、5,10,20,40,60分後にサンプリングを行い、前処理後、重金属濃度を計測した。溶液の金属濃度が一定になった時点が吸着材と水溶液中の濃度が平衡状態になったものとし、その濃度に達した時間を平衡時間とした。
【0026】[実験結果]吸着材料にバーク堆肥を用いた場合の懸濁液中の重金属の濃度変化を図1に示す。撹拌開始より5分後には吸着が進み、Cd,Hg,Asは平衡状態に達した。 Cr(VI)については3日後に平衡に達した。
【0027】吸着材料にピートモスを用いた場合の懸濁液中の重金属の濃度変化を図2に示す。ピートモスの場合は、Cd,Pb,Hg,Seが撹拌開始より5分後に平衡に達した。Asは10分後、Cr(VI)は60分後に平衡に達した。
【0028】〈ロ〉吸着平衡時の重金属濃度について吸着材料と重金属水溶液の濃度を変えて、検液の重金属濃度についての実験を行った。
【0029】[実験方法]実験は回分接触法で行い、吸着材料と重金属濃度を変えた一定量の水溶液を撹拌し、所定時間経過後に前処理をした検液の重金属濃度を測定した。撹拌時間は吸着平衡に要する時間の2倍の時間とした。
【0030】吸着材料には■バーク堆肥単独、■ピートモス単独、■バーク堆肥:ピートモス=2:1(容積比)、■試験緑化基盤材=焼却灰:下水汚泥コンポスト:バーク堆肥:ピートモス=5:2:2:1(容積比)の4種を用いた。
【0031】[実験結果]バーク堆肥単独の重金属吸着能を図3に示し、ピートモス単独の重金属吸着能を図4に示し、バーク堆肥とピートモスの組み合わせによる重金属吸着能を図5に示し、試験緑化基盤材の重金属吸着能を図6に示す。
【0032】図3によれば、バーク堆肥はPb,Hg,Cu,Cdに対して初期濃度に関係なく高い吸着除去率を示した。As,Seの除去率は60%、Cr(VI)では60〜80%と初期濃度の影響を受けた。
【0033】また図4によると、ピートモスはCd,Hg,Cuに対しては初期濃度に関係なく高い吸着除去率を示した。As,Seでは除去率50〜60%であり、Cr(VI),Pbは低濃度で60%であったが、高濃度では高い除去率を示した。
【0034】また図5によれば、バーク堆肥とピートモスの組み合わせたものは、Cd,Hg,Cuに対しては初期濃度に関係なく高い吸着除去率を示し、As,Seは初期濃度が高いなるにつれて旧7h除去率が下がる傾向にある。Pbは低濃度で60%であったが、高濃度では高い除去率を示した。
【0035】最後に図6に示す如く、試験緑化基盤材にあっては、Cd,Pb,Hg,Cuに対して初期濃度に関係なく高い吸着除去率を示し、As,Seでは60〜80%の吸着除去率であった。
【0036】尚、試験緑化基盤材単独で重金属の溶出値を測定したが、Asは0.02mg/lであっが、他の重金属類は検出されなかった。
【0037】また図6を得るためのデータより計算された試験緑化基盤材が存在する系で野基板と重金属水溶液の分配係数を表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】以上のことから、バーク堆肥とピートモスは重金属に対してかなりの吸着性能を示すことが明らかになった。特に、Cu,Hg,Cdの吸着速度は混合開始から5分後にほぼ平衡に達した。この傾向はバーク堆肥とピートモスを2対1の容積比率で混合したものではより顕著になった。
【0040】焼却灰より溶出する可能性がある重金属は、Cd,Cr(VI),Pb,As,Se,Hg,Cuとされているが、実験結果からはこれらの重金属の多くが緑化基盤材中に吸着されているものと想定する。使用する焼却灰の重金属含有量が高い場合は、例えば焼却灰と下水汚泥コンポストの使用量を減じ、バーク堆肥とピートモスなどを増量することで対応が可能である【0041】
【発明の効果】本発明はつぎの特有の効果を奏する。
〈イ〉 重金属を吸着する多孔質吸着材と焼却灰を緑化基盤材の原材料とすることで、重金属の溶出を抑制した安全性の高い緑化基盤材の提供が可能となる。特に、一般公共下水汚泥や焼却灰に含まれる重金属は限られた種類で、しかも微量であるため、化学的な安定処理を施すまでもなく、簡易に重金属の溶出を抑えることができる。
〈ロ〉 焼却灰を緑化基盤材の主材料として用いることで、これまで処分に困窮していた大量の焼却灰の新たな処分方法を提供できる。これまでの焼却灰の処分コストに鑑みれば、焼却灰の処理コストを大幅に低減することができる。
〈ハ〉 多孔質吸着材にバーク堆肥とピートモスを使用できるので、バーク堆肥とピートモスは重金属の吸着材としてだけでなく、従来と同様に肥料材としても機能する。
〈ニ〉 バーク堆肥とピートモスを体積比で2対1の比率にすると、早期に重金属を吸着でき、重金属の溶出抑制効果を最大限に発揮できる。
【出願人】 【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)6月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生 (外1名)
【公開番号】 特開平11−346555
【公開日】 平成11年(1999)12月21日
【出願番号】 特願平10−160613