トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 きのこの栽培方法及びきのこ栽培用装置
【発明者】 【氏名】藤沢 博一

【要約】 【課題】収穫したきのこの株を容易且つ適切に分割でき、包装作業の省力化ができること。

【解決手段】収穫の際にきのこの株を複数に容易に分割すべく、栽培瓶10に詰められて設けられた培養基12にきのこの種菌を接種して培養後、菌掻きして形成された菌床面14に溝状の切り込み16を入れて該菌床面14を複数に分割する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 収穫の際にきのこの株を複数に容易に分割するためのきのこの栽培方法であって、栽培瓶に詰められて設けられた培養基にきのこの種菌を接種して培養後、菌掻きして形成された菌床面に溝状の切り込みを入れて該菌床面を複数に分割することを特徴とするきのこの栽培方法。
【請求項2】 栽培瓶に詰められて設けられた培養基にきのこの種菌を接種して培養後、収穫の際にきのこの株を複数に容易に分割すべく、菌掻きして形成された菌床面に溝状の切り込みを入れて該菌床面を複数に分割する際に用いるきのこの栽培用装置であって、前記栽培瓶の軸心方向と平行に往復動され、菌床面の一部を溝状に栽培瓶の内部へ押し込むことで前記切り込みを入れる刃部材を備えることを特徴とするきのこ栽培用装置。
【請求項3】 前記刃部材の刃先の端面が、前記切り込みの幅を好適に設けるべく、該切り込みの幅に対応して所定の幅の断面略矩形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のきのこ栽培用装置。
【請求項4】 前記菌床面に当接して該菌床面を押さえる押さえ面と、前記刃部材が突出して前記切り込みを形成すべく、該刃部材が前記押さえ面から突出可能に挿通される挿通孔とが設けられた押さえ部材を備えることを特徴とする請求項2又は3記載のきのこ栽培用装置。
【請求項5】 上下駆動装置と、該上下駆動装置の動力で上下方向へ移動可能に設けられ、前記刃部材が下方へ向けて固定された第1上下動プレートと、該第1上下動プレートに上下方向へ接離動可能に吊持され、前記押さえ部材が固定された第2上下動プレートと、前記第1上下動プレートと前記第2上下動プレートとの間に装着され、常時は第1上下動プレートと第2上下動プレートとの上下方向の間隔を保持し、第2上下動プレートの下動が阻止されても所定の区間において第1上下動プレートの下動を許容する弾性部材とを備えることを特徴とする請求項4記載のきのこ栽培用装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はきのこの栽培方法及びきのこ栽培用装置に関し、さらに詳細には、オガ粉及びコヌカ等の材料成分を瓶詰めして培養基として用い、人工的にエノキタケ、しめじ、ナメタケ等のきのこを栽培する方法及びその栽培方法に用いる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】きのこの人工栽培は、その栽培方法が急速に進歩し、瓶詰めにされた培養基の養分を効率よく利用して一回の発芽で高収量のきのこを得ることが可能になっている。例えば、従来は一瓶について200g程度であった収穫量が、現在では300g程度になっている。これに対して、出荷をする際の袋詰めの分量は、従来から一般的に100gが標準になっている。このため、従来は、一瓶で300gの収量があった場合は、きのこの株を適宜手作業で3分割して袋詰めし、出荷することになる。すなわち、栽培瓶から収穫したきのこは、根元部に培養基の一部が付いた状態で一体の株状になっているが、これを適当なところで割き、秤量して所定の重量分を袋詰めすることを要する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、根元部に培養基が付いた状態のきのこの株を、常に適切に分割することは、各株において根元部の硬軟にバラツキがあることなどから困難であるという課題があった。特に、栽培瓶を用いることによって形成される円形のきのこの株を三分割するには、単純に2分割する際と異なり、円周角度を三等分して分割された各株の形状が扇状にならないと、均等に三分割したことにならない。これを、作業者が常に適切に行うことは全く困難であり、ある程度きれいに分割するためにも、非常に高い集中力を要し、作業性に劣るという課題があった。また、きのこの株の分割がきれいになされず、きのこの商品価値を低下させてしまう。
【0004】そこで、本発明の目的は、収穫したきのこの株を容易且つ適切に分割でき、包装作業の省力化ができるよう、きのこを人工栽培するきのこの栽培方法及びきのこ栽培用装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。すなわち、本発明は、収穫の際にきのこの株を複数に容易に分割するためのきのこの栽培方法であって、栽培瓶に詰められて設けられた培養基にきのこの種菌を接種して培養後、菌掻きして形成された菌床面に溝状の切り込みを入れて該菌床面を複数に分割することを特徴とする。
【0006】また、本発明は、栽培瓶に詰められて設けられた培養基にきのこの種菌を接種して培養後、収穫の際にきのこの株を複数に容易に分割すべく、菌掻きして形成された菌床面に溝状の切り込みを入れて該菌床面を複数に分割する際に用いるきのこの栽培用装置であって、前記栽培瓶の軸心方向と平行に往復動され、菌床面の一部を溝状に栽培瓶の内部へ押し込むことで前記切り込みを入れる刃部材を備えることを特徴とするきのこ栽培用装置にもある。
【0007】また、前記刃部材の刃先の端面が、前記切り込みの幅を好適に設けるべく、該切り込みの幅に対応して所定の幅の断面略矩形状に形成されていることで、きのこの株を適切且つ容易に分割するための切り込みを、好適に形成することができる。
【0008】また、前記菌床面に当接して該菌床面を押さえる押さえ面と、前記刃部材が突出して前記切り込みを形成すべく、該刃部材が前記押さえ面から突出可能に挿通される挿通孔とが設けられた押さえ部材を備えることで、刃部材を引き抜く際に菌床面が崩れること(剥離現象)を防止し、切り込みを好適に形成できる。
【0009】また、上下駆動装置と、該上下駆動装置の動力で上下方向へ移動可能に設けられ、前記刃部材が下方へ向けて固定された第1上下動プレートと、該第1上下動プレートに上下方向へ接離動可能に吊持され、前記押さえ部材が固定された第2上下動プレートと、前記第1上下動プレートと前記第2上下動プレートとの間に装着され、常時は第1上下動プレートと第2上下動プレートとの上下方向の間隔を保持し、第2上下動プレートの下動が阻止されても所定の区間において第1上下動プレートの下動を許容する弾性部材とを備えることで、上下方向の一回の往復動で、切り込みを自動的に形成でき、作業効率を向上できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる好適な実施例を添付図面と共に詳細に説明する。図1は本発明によるきのこの栽培方法の一実施例を説明する説明図であり、図1(a)は栽培瓶中に設けられた菌床面に切り込みを入れた状態の正面図であり、図1(b)はその断面図である。また、図2は切り込みの入った菌床面にきのこ60が生育した状態を示す断面図である。図1に示すように、本発明の特徴は、収穫の際にきのこの株を複数に容易に分割すべく、栽培瓶10に詰められて設けられた培養基12にきのこの種菌を接種して培養後、菌掻きして形成された菌床面14に溝状の切り込み16を入れて該菌床面14を複数に分割することにある。
【0011】溝状の切り込み16を形成することで、菌糸を切断することができ、収穫の際に生育したきのこの株を好適に分割することができる。特に図1に示すようにきのこの株を3等分する際にも、作業者は特段の注意を払うことなく容易に分割することができ、作業効率が向上する。また、従来のようにきのこの株を強引に分けなくてもよいため、きのこの株をきれいに分割することが可能であり、出荷形態のきのこの品質を向上でき、商品価値を高めることができる。なお、18は通気用の孔であり、栽培瓶10の奥深くまで空気を行き渡らせるために設けられている。
【0012】次に、上記のきのこの栽培方法に用いるきのこ栽培用装置の一実施例について図3〜図6に基づいて詳細に説明する。図3は刃部材の一実施例を示す説明図であって、図3(a)は正面図であり、図3(b)は側面図である。図4は押さえ部材の一実施例を示す説明図であって、図4(a)は平面図であり、図4(b)は側面図である。また、図5は本発明にかかるきのこ栽培用装置の4つの作動状態を区分けして一つの図面中に段階的に示した断面図である。図6は、図5に示した装置の平面図である。
【0013】20は刃部材であり、栽培瓶10の軸心方向と平行に往復動され、菌床面14の一部を溝状に栽培瓶10の内側へ押し込むことで切り込み16(図1参照)を入れる。すなわち、栽培瓶10は広口瓶になっており、その上端の開口10aから所定の厚さを有する平板状の刃部材20が進入して、瓶口(開口10a)の近傍に形成された菌床面14に切り込みを入れる。栽培瓶10は栽培用コンテナに複数本(本実施例では16本)が収納されており、本実施例では、栽培瓶10の軸心方向は上下方向に一致する。
【0014】また、本実施例では、図3に示すように、刃部材20の刃先の端面20aが、切り込み16(図1参照)の幅を好適に設けるべく、切り込み16の幅に対応して所定の幅の断面略矩形状に形成されている。このように端面20aが角張っていることにより、きのこの株を適切且つ容易に分割するための切り込み16を好適且つ確実に形成することができる。このように切り込み16を形成することで、単純に切れ目を入れたのとは異なり、確実に所定の幅の切り込み16になる。すなわち、前記刃先の端面20aが、菌床面14を形成する培養基12(菌床)の一部を栽培瓶10の内部へ好適に押し込み、後で菌糸がつながらないように溝状の切り込み16を好適に形成するため、収穫の際に生育したきのこの株を好適に分割することができる。なお、本実施例では、装着性及び機能性が適することから、棒状の部材からなる支持棒部20bの先端側に、短冊状の刃がピンで固定されて、刃部材20が構成されている。
【0015】また、切り込み16の幅Xは、きのこの子実体を好適に発生させるよう菌床面14の面積をなるべく広く確保するには狭い方がよく、菌糸の成長よる架橋を防止してきのこの株を確実に分割するには広い方がよいが、実際的には3mm程度が好適である。また、切り込み16の深さYは、5mm程度では効果がなく、きのこの生育に阻害とならない範囲で、きのこの株を確実に分割するためには、30mm程度が好適である。
【0016】ところで、刃部材20の先端部がテーパ状に尖って形成されている場合でも、菌床面14に単純に切れ目を付けることは可能である。しかしながら、きのこの培養基12は、オガクズ(オガ粉)等を構成成分とし、栽培瓶10に充填及び圧縮されて形成されたものであり、スポンジ状であって、弾性を有している。このため、テーパ状の刃を用いて切れ目を付けても、その刃を菌床面14から抜き出すと、菌床面14は培養基12の弾性によって元に戻ってしまい、本願のような切り込み16を形成できない。切り込みを所定の幅の溝状に形成できないと、きのこの菌糸は再度成長して、その切れ目は繋がってしまい、収穫の際にきのこの株を好適に分割するという所期の目的を達成できないことになる。
【0017】22は押さえ部材であり、菌床面14に当接してその菌床面14を押さえる押さえ面22aと、刃部材20が突出して切り込み16(図1参照)を形成すべく、刃部材20が押さえ面22aから突出可能に挿通される挿通孔22bとが設けられている。本実施例の押さえ部材22は、断面略扇状の三つの部品が、略Y字状の隙間を形成するように、全体形状として略円柱状に配置されることで構成されている。これにより、刃部材20を引き抜く際に、刃部材20に伴う摩擦抵抗で菌床面14が剥離して崩れること防止するよう、菌床面14を好適に押さえることが可能であり、切り込み16を好適に形成できる。
【0018】次に図5及び図6に基づいて、前述した刃部材20及び押さえ部材22を作動させる作動機構について詳細に説明する。24は上下駆動装置であり、本実施例ではエアシリンダ装置が利用されているが、電動モータとラック・ピニオン、或いは電動モータとチェーン・スプロケットによる往復運動機構等を用いてもよいのは勿論である。また、上下駆動装置24は、ロッド24aが上下方向に伸縮可能に、上部が門型で枠体状の本体枠部26に下向きに固定されている。
【0019】28は第1上下動プレートであり、上下駆動装置24の動力で上下方向へ移動可能に設けられ、刃部材20が下方へ向けて固定されている。30は第2上下動プレートであり、第1上下動プレート28に上下方向へ接離動可能に吊持され、押さえ部材22が固定されている。押さえ部材22には刃部材20が挿入されている。32はスプリングであり、第1上下動プレート28と第2上下動プレート30との間に装着され、常時は第1上下動プレート28と第2上下動プレート30との上下方向の間隔を保持し、第2上下動プレート30の下動が阻止されても所定の区間において第1上下動プレート28の下動を許容する弾性部材として作用する。
【0020】34は位置決め部材であり、本体枠部26の下部に固定されており、各栽培瓶10の軸心と、その栽培瓶10に対応する各押さえ部材22の軸心とを合わせるよう、各栽培瓶10を所定の位置に案内する。本実施例の位置決め部材34は、第1上下動プレート28及び第2上下動プレート30を上下駆動装置24を介して吊持する本体枠部26と共に、両側部に配設された昇降装置36によって上下動される。そして、この位置決め部材34は、栽培瓶10の開口10aに相当する大きさの透孔34aを備え、その透孔34aの周縁下面側がテーパ面34bに形成されている。従って、栽培用コンテナ40に収納されてコンベア装置50によって概ね位置決めされた各栽培瓶10が、位置決め部材34の降下に伴って、その瓶口が当接するテーパ面34bに案内され、刃部材20及び押さえ部材22の直下である所定の位置へ保持された状態になる。なお、39は上下動ガイドであり、本体枠体26と位置決め部材34の間に固定されており、第1上下動プレート28及び第2上下動プレート30を、本体枠体26内でスムースに上下動できるように案内している。
【0021】次に、以上の構成からなるきのこ栽培用装置による作動状態について、図5に基づいて説明する。図5では作動状況を4分割して経時的に左側から右側へ順に記載してある。先ず、昇降装置36によって位置決め部材34を降下させることで、上述したように、各栽培瓶10が所定の位置に案内される。次に、上下駆動装置24によって、第1上下動プレート28及び第2上下動プレート30を降下させると、第2上下動プレート30の下面に固定された押さえ部材22が栽培瓶10の開口10a内に進入し、その押さえ面22aが菌床面14を押さえる状態になると共に、第2上下動プレート30の下面に設けられたストッパ38が位置決め部材34の上面に当接し、第2上下動プレート30の下降が停止される。
【0022】そして、上下駆動装置24によってさらに第1上下動プレート28が下降されると、第2上下動プレート30は位置決め部材34上で停止した状態で、第1上下動プレート28がスプリング32の付勢力に抗して下動することになり、その第1上下動プレート28の下面に固定された刃部材20が、押さえ面22aから下方へ突出して菌床面14に切り込み16を好適に形成する。次に、上下駆動装置24によって第1上下動プレート28を上昇させると、先ずはスプリング32の付勢力によって第2上下動プレート30は停止した状態で第1上下動プレート28のみが上昇することになり、押さえ部材22によって菌床面14が押さえられた状態で、刃部材20を好適に引き抜くことができる。さらに第1上下動プレート28を上昇させると、第2上下動プレート30も共に上昇して、押さえ部材22も刃部材20と共に栽培瓶10上へ引き抜かれる。そして、昇降装置36によって位置決め部材34を上昇させることで、位置決め部材34によって各栽培瓶10が位置決めされると共に保持された状態が解除される。
【0023】すなわち、本実施例によれば、上下駆動装置24の1ストロークによって、押さえ部材22の動作と、刃部材20の動作が好適に行われ、菌床面14に切り込み16を入れる作業が効率的になされる。そして、コンベア装置50によって、栽培瓶10が収納されたコンテナ40が所定のピッチ(本実施例では図6に示すように栽培瓶10の2個分の距離)が移動され、菌床面14に切り込み16を入れる作業の1サイクルが完了する。この作業サイクルを順次繰り返すことで、菌床面14に切り込みを順次好適に形成することができる。
【0024】以上の実施例で説明したきのこの栽培用装置によれば、1つの上下駆動装置24によって、押さえ部材22と刃部材20の双方を作動させるが、本実施例はこれに限らず、押さえ部材22と刃部材20とを別々の駆動装置によって作動させてもよい。また、1つの駆動装置によって、位置決め部材34、押さえ部材22及び刃部材20の3者を作動させるように構成してもよいは勿論である。また、以上の実施例では菌床面を3分割する場合を説明したが、2分割する場合又は4分割以上する場合にも、本発明を応用できるのは勿論である。以上、本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、栽培瓶に詰められて設けられた培養基に種菌を接種して培養後、菌掻きして形成された菌床面に溝状の切り込みを入れて該菌床面を複数に分割するため、収穫の際にきのこの株を容易且つ適切に分割できる。従って、包装作業の省力化ができると共に、好適に分割できるためきのこを傷めず、その商品価値を向上できるという著効を奏する。
【出願人】 【識別番号】598059549
【氏名又は名称】有限会社エフ・エフ
【出願日】 平成10年(1998)5月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 隆夫 (外1名)
【公開番号】 特開平11−313542
【公開日】 平成11年(1999)11月16日
【出願番号】 特願平10−124458